カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

22 / 48
 イチハの命を狙う少女。彼女は一体何者なのか。


第20話<虐殺者>

 女の子の体になってから3日。未だこの体での生活に慣れなかった。だんだんと慣れてはいるのだ。しかし、本来の俺の体との大きさが違うせいで、普段のように手を伸ばしたり、あるいは普段なら届く高さの場所に届かないだとか、「周りの目も気にしなさい」とレイナやマリカに言われていることもあり、意識すると動きにくくなってしまうなど、違和感や意識が関係している。

 そして、この体になった俺を皆心配しているのか、今は自分のもの以外に俺の仕事までをもこなしている。しかも嫌々ではなく、「もっと仕事をください!」みたいな顔でくるのでその気がなくてもつい渡してしまう。だが、今日ばかりは動かなくてはいけない。なぜなら、昨日会議で決まったゴーレム・コア・ユニット、その一号機である略称《GCU-001》機体名《マナガルム》を迎えに行くからだ。

 

 

 

「・・・なんで僕まで」

「今のイチハは戦えないんだから、それを守る人は余計に多くつけなきゃ」

 今、俺は右をマリカ、左をレイナ、前をミルキ、後ろをクロトに守られている。ミルキは実際のところ同行者の意味合いが強いので、実際に護衛としてきているのはマリカ、レイナ、クロトだ。今の会話から察するに、クロトはレイナにつれてこられたらしい。距離はそこまで離れているわけではないので、護衛はそんなにいらないと言ったのだが、レイナに押し切られてしまった。

 普段どおりの調子で歩けば20分で着く。研究所に入り、ミルキが連れて来るといって奥に行った。そこで、俺はさっきから気になっていることを口にした。

「マリカ。なんでさっきから頭撫でてるんだ?」

「・・・ふぇ?あっ!ご、ごめん・・・可愛いから、つい・・・」

 少し照れながら言うマリカ。この体になって初めてのときは飛びついてくるほどだったが、今は無意識のうちに触れている。それほどに可愛いものが好きなのだろうか。少し悩み、マリカのほうを見て言う。

「・・・拠点の中だったら、相当変なことじゃなけりゃ何してもいいから」

「ここでは?」

「駄目だ」

 落ち込むマリカ。俺のこの姿が随分と気に入っているのもあるのだろうか。そんなことより、拠点に戻ったら多少は身構えないといけないかもしれない。

 そのうちに、ミルキが戻ってきた。その後ろにはマナガルムの姿があった。

『待たせた、イチハ』

「・・・ミルキ、話でもしたのか」

『話は聞いていない。正直驚いているさ。だが、魔力ではごまかせない』

 普通なのかは分からないが、視覚のほかに聴覚と魔力感知があるらしい。つまり、彼は今魔力で俺を認識したということだ。

「ま、他の事は全部説明したから」

「お、そうか。ありがとう」

 マナガルムと合流できたので、そのまま拠点に帰ることにした。

 歩いて5分ほど経った時、目の前に少女が現れた。そしてそいつは、つい最近見たことがある。4日前だっただろうか。少し身構えたとき、後ろのクロトが肩に手をかけ、前に出てきた。

「僕が止める。皆は逃げて」

「・・・後で聞くからな。皆行こう!」

 彼の横を通って走る。少女とすれ違ったとき、殺気ではないが似ている、妙なものを感じた。が、それをいちいち気にしている余裕はなく、拠点へと急いだ。

 

 

 

 拠点についてから40分。時間稼ぎにしてはかかりすぎだと思ったとき、クロトが帰ってきた。しかし、その彼は傷だらけで、致命傷にはならないがかなり深い傷もある。レイナが自分から治癒能力を使う。かなり体力を使うため、あまり使おうとはしなかったが、珍しい。1分もすればだいたいの傷を塞ぐことができた。ここから先は救護班に任せ、俺達は、全員を集めてこのことを通達した。これ以上、不用意な被害者を出さないように。

 

~~~~~~~~~

 

「・・・ふふっ」

 彼女――のように見える彼を思い出し、笑う。随分と懐かしい姿だった。違うところはあるけれど、ほとんどが記憶通りだ。だからこそ、尚のこと許せない。あの子達の人生を奪ったアイツを。本当のところは、アイツではなく他の大人が招いた結果であり、、巻き込まれたに過ぎない。けど、私が復讐できる相手は、もう彼しか残っていない。何度も口にしていることを言い、しっかりと決意する。

「・・・殺して、あなた達を救う。だから、待っててね?」




次回<安心する場所>
 いつ、どんなときでも。安心できる場所は必ずある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。