《神刀 アメノムラクモノツルギ》。『神器』の中でも特に強いといわれている近距離武器だ。だが・・・。
「こいつの真の力はいまだ見ることができていない。私が神でないからか、それとも・・・」
一瞬偽者ではないのかと疑ったのだが。
「あれは本物だよ、イチハ」
マリカがそっと教えてくれた。
「・・・まあ良い。貴様らを潰すことができるなら」
「・・・!来るぞ!!戦闘準備!!」
レイナ、マリカは後ろに、俺はダーク・クロニクルとクラウ・ソラスを抜剣し、前へ跳んだ。同時に奴―エレヴォス―も剣を構え、俺を待ち構えた。俺の黒い剣と相手の銀色の刀が交錯した。やはり神器だけあって普通の武器ではありえない程の威力があるが、さっきの「真の力」が云々のせいか、相殺できないほどでもなかった。もちろん相手が弱いというわけでもない。
―俺以外の誰も知らないあの「魔法」を使えば、もしかしたら・・・。
そう考えている間も剣と刀の攻防は続けた。少しの鍔迫り合いの後、奴は後ろへ跳び、間をあけた。突進技でも仕掛けるつもりなのだろう。腰を落とし、よく見るような剣先を後ろに向ける姿勢をとった。俺は剣から「紫色の光」を伸ばしながら・・・・・・。
~~~~~~~~~
3週間くらい前、剣の素振りをしているときになんとなく剣に魔力を込めてみた。そしたら剣の威力が倍くらいに上がった。その後、研究をして分かったのが、剣に少量(といっても最低魔法に使う魔力)の魔力を込めるとその「魔法」が発動する。これを上手く利用すれば・・・。そう思って今までずっと反復練習をしてきた。
~~~~~~~~~
相手が動く前に、俺は攻撃していた。相手はブロックしたが、重い突進技だったのか、刀ははじかれた。だが、さすがの反射神経というべきか、刀の落下場所へ行き、すぐに刀を拾った。その後、サッとすぐに間をつめ、斬撃をしてきた。もちろん避け、カウンターを仕掛けたがそれも防がれ、さっきよりも激しい攻防戦となった。
そのとき、俺は見た。奴の刀が不自然に揺れているのを。いや、正確に言えばその刀の周囲の空間だけが歪んでいるのだ。だが攻撃されているときは普通に見ることができる。
そこまで考えた時点で、いや、もしかしたらそれを見た時点で俺は、気付いていたのかもしれない。あの剣には、明確な《魂》があることを。そして、その魂は、別の使用者望んでいることを、他の誰かに気付いてほしいのかもしれない、と。
そして、何回目か分からない攻防で、俺が斬られた。とはいっても頬をかすっただけだが、奴はやっと攻撃を当てることができたのがうれしかったのか、油断し、動きが遅くなった。
そのタイミングを見計らって、槍が刀にあたり、はじいた。もちろん槍を使うのはレイナしかいない。しかもその槍に魔法がかかっていたらしく、当たった刀を淡い光が包み、俺の近くにテレポートしてきた。魔法はおそらくマリカだろう。
「待て!汚らわしき人族がその剣に触れたらどうなるか、分かるだろ!?」
奪わせないと言わんばかりに叫んできた。俺は二本の剣を鞘に戻し、
「そんなこと、俺の知ったことじゃない」
俺は右手でその刀をつかんだ―――。
~~~~~~~~~
「なぜ気付いたのだ?私があの者以外を求めていることに」
そこに現れたのは、言い表しようのない美しさの女性だった。すぐに彼女が女神だと分かったので・・・
「・・・勘です」
敬語で答えた。
「勘・・・か。・・・・・・まて、この気・・・もしや!?」
「な、なんですか?」
「そなたが、能力《
「・・・・・・そうですけど」
「失礼致した!今までの無礼を・・・」
「いやいや待て待て待て!?!?別に気にしてないし、そっちのほうが偉いんだし・・・あ」
さっきの無礼が云々言っていたのを聞いても敬語を使わなかったことに危機感を感じた。
「・・・そなたは優しいのだな。ではなおさら、神化能力を宿し者に協力しなくてはなりません」
まあ、要は俺に協力してくれるというわけだ。
「神刀改め、『
「イチハ・・・です」
「敬語出なくてもよい。それに呼びにくいだろう?好きなように呼べ。・・・・・・《神化》の能力を与えられしイチハ殿に、この身をかけて協力させていただこう!」
~~~~~~~~~
右手にあった刀は、黄色っぽい刀身の片手直剣へと変わっていた。ダーク・クロニクルより大きめだが少し軽めのこの剣は、重めの剣を好み、ついさっきまで相棒を持っていた俺でも、ずっと使っていたくなる様な安心感があった。
「なぜだ・・・なぜ私を裏切る!?」
不意にエレヴォスが叫んだ。その右手には予備で用意していたらしい刀が握られている。
――身体を借りても良いか?
剣の魂がそう呼びかけてきた。呼び方・・・は帰ってから決めることにして、今は目の前のことに集中しなければいけない。否定する理由もないのだが、ずっとそのままというのも困るので・・・。
――少しなら。
――そうか。では、少し借りるぞ。
その後、彼女・・・と呼んでいいのかは分からないが、俺の身体に憑依し、俺と《彼女》の混ざったような声でこう答えた。
「「あなたには、資格がない。いくら神に近しい存在でも、私にはあなたに資格があるとは思えない」」
「なぜだ!?なぜ…」
「「なら、あなたに足りないものを教えよう。それは『仲間を想う心』。それだけだ。あなたは仲間ではなく道具として扱っている。」」
そこで俺は、奴の次の言葉が予想できた。きっと――
「なら、今お前が宿っているそいつも・・・」
「「この者は違う。確かに、過去に同じ村の者を殺した。けれども、そのことは完全に悪いわけではない。そこにいる少女たちを、自分ひとりの力で守ったのですから」」
なぜ俺の、いや、俺たちの過去を知っているのかは分からなかったが、今はその言葉が優しく感じた。
そう思った瞬間、《彼女》の憑依がきれた。いや、本人がきったのだろう。
「貴様・・・貴様だけは・・・!」
突進攻撃をしてくる。右の剣で受け止め、攻撃を捌く。すぐに反撃するが防がれる。激しい攻防戦となり、両方とも徐々にダメージや疲労がたまっていった。何十回目か分からない剣と刀の交錯で、魔力を込めた攻撃を使い、相手の刀が半ばから折れた。そこを逃さず左下から右腕を絶った。俺は数歩下がり、剣を左右に振り払った。剣が光の玉となり、俺の身体に宿るように入ってから、エレヴォスに話しかけようとした。それよりも早く、エレヴォスは言った。
「なぜ、殺さない?」
「俺はもう、これ以上殺したくはないんだ。この先、殺さないと生きていけないときが来ると思う。けど、せめてそのとき意外は・・・」
理解したのかは分からないが、相手は頷いた。
「分かった。もう、今回のようなことはしない。もししたら・・・。そのときは殺してくれ」
その言葉にどうやって返すか悩んでいると背中をそっと叩く手があった。
「大丈夫よ。もし、あのときのようなことになったら、私とレイナで止めるから」
「なんでも一人で抱え込まないで。それ、あんたの悪い癖よ、イチハ」
《彼女》――アメムラ、とでも呼ぶことにしようか――も言っていた、『仲間を想う心』が、今の俺たちをつないでいるのかもしれない。エレヴォスにも、その心が伝わった。そう思えるだけの感覚があった。
「あの街も、私が奪ったすべてを返そう。君たちも、もとの世界に送ろう。今、すぐにできる私の償いだ」
「そうか。帰還魔法もあるんだが、お言葉に甘えてさせてもらおうか」
相手は頷くと、俺たちの周りに魔法陣を展開した。
「困ったときは、私も助けになろう。なれるかは微妙なところだが」
その言葉を最後に、初の実戦が終わった・・・。
~~~数日後~~~
「お疲れ様。どうだった?」
「今日はお前の好きな魚が安かったから、デカいの二匹買ってきた。片方は刺身にしよう」
「いいわね。私も手伝う!」
あの後、戻ってきた俺たちは、元通りになった街を見て安心した。あの事件以降、少なくとも、この街は守り抜いてみせる。そう三人で誓った。
第三話<陽だまりの下で>
一回目の戦いを乗り越え、少しの安らぎを得る三人。彼らは、その安らぎの中で、何を感じるのか。