カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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自爆に巻き込まれた彼は、見知らぬ世界へと誘われた。


カゲロウ・ソードワールド アナザーヒストリー
第33話<異世界にて>


 ゆっくりと、目を開ける。少しして、視界のぼやけが収まり目に映ったのは、見たことのない天井だった。

 起き上がり、少し違和感のある右腕を確認する。そこには所々赤く染まったところのある包帯が巻かれていた。恐らく、他の場所にも。俺の寝ているベッドの反対側の壁には俺の愛剣――光影魔剣レヴァンテインが立てかけられ、ロングコートは衣服掛けに。

 しかし、その周りは異様……というほどでもないが、見慣れない。

 マリカとともにエンプネイスと戦い、勝利し、あの場所から出た。その後、大量のエンプネイスの自爆から守ろうと、俺を含め、全部を結界で囲んだ所まで覚えている。その後に気を失っていたのなら、普段であれば拠点に連れ帰った後、仲間が気を利かせたり――もしかしたら、俺の覚えている限りの最後の彼女の様子なら我侭を言ったりするかも知れない――して、なんだかんだ近くで見守ってそうなマリカがいない。それだけで判断するのもどうかとは思うが、ということは、俺は死んだのだろうか。だが、もし死んだのならレヴァンテインの存在も、この包帯も必要ないはず。なら、これは一体――。

 と考えていると、扉の開く音がした。そして足音。

「あ、起きてる」

 姿を現したのは少年だった。白い袋を置いて、大きく伸びをする。「あ」と声を出し、こちらを振り向く。

「君、俺の言葉分かる?意味まで」

「……分かる……分かります」

「ふーむニホン語かー。にしては髪がはっきりと紫だし……。染めてないよな、それ」

「これですか?地毛です」

 そう答えると、より悩んでそうな顔になる。先ほどの聞きなれない言葉――語、とついてたということは地名だろう――といい、大きいものと小さいものとある、見たことのない黒い板といい、これではまるで……

「……分岐平行世界を移動した……?」

「え、何!?パラレルワールド!?」

 急に目を輝かせながら顔を寄せてくる。

「い、いや……あくまで可能性の話で、絶対にそうだとは……」

「そりゃそうだよな……。あ、まだ自己紹介してなかったな」

 姿勢を直し、ある程度距離を取ってから話し始める。

「俺は伊藤 旭(いとう あさひ)。16歳で、ここに住んでる。よろしく」

と、右手を差し出してくる。少し考え、この世界でも握手があるのだろうという結論にたどり着く。手を取りながら、こちらも名乗る。

「イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ、18歳。……てことは俺のほうが年上になるのか……。まあ、よろしく」

 はっとした顔で「もしかして今まで無礼を?」というような顔をしていたので苦笑しながら「気にしなくて良い」と言う。

 すぐに「さっきのはどういうこと?」と聞かれ、隠そうとも思わず、すぐに教える。

 ここが俺にとって元の世界ではないということは確かだろう。が、分岐並行世界ではなく、どちらかが過去であり、時間を超えて移動したという可能性――旭はタイムスリップと言っていた――も捨てきれない、という今のところの予想を話した。旭は「ありそうだな」といいつつもタイムスリップとして考えるのは難しいんじゃないか、と言った。

「ちょっと材料が少ないけど、この現状からして、パラレルワールドが本当だっていうなら、ここに来なかったルート……あー、分岐で分かるかな?もあるわけだ。そうするとそれぞれの世界にまずお前が干渉したのとしてないので分岐して、さらに、どんな状態で、だとかどこにっていうのが無限に生成されるんじゃないかって思ってな。それを言ったら普段の生活でだって分岐するんだから今更かもしれないけどさ。そこに時間なんて入ってきたらもっと増えるから、すごい無理がありそうだな、って。俺らの脳みそみたいなものに詰まってるわけじゃなさそうだから、急に全部の世界が消滅、なんてことは起きないだろうけどさ。限界がないってのはちょっと難しそうなんだよな」

 確かに一理ある。分岐並行世界がどんな状況で、どうなっていってるのか、詳細なところは、前に来た違う世界の俺も分からないといっていた。今考えてもしょーがないか……と思った途端に全く違う疑問が出てきたので、それをぶつける。

「なあ、この世界にも治療のための施設ってあるわけだよな?なんでそこに連れてかなかったんだ?」

「いやー最初は俺も思ったんだよ。やべっ人が倒れてるっ病院だ!って。あ、病院ってのが……」

「さっきの治療のための施設だな?分からなかったら聞く。そのまま話しちゃっていいよ」

「そりゃどうも。で、そんだけ綺麗な紫色の髪に、あの剣。これは目が覚めてから知ったけど紫の目でしかもオッドアイ。で、左腕の動く義手ときた。……この世界で病院なんて連れてったら逆に命ないかもしれないなって思ってな」

 俺は理解できず、首をかしげる。それが露骨過ぎたのか、少し噴出してから続ける。

「ここじゃ科学が一番力を持ってるんだ。で、今の世界の現状じゃ「よく分からないものは解剖なりして科学でわかるようにしよう」って考え方だからな。お前みたいなよく分からん存在は……まあ、一番良くて左腕の分解かな?」

 そういわれ、左腕を見た後、無意識に自分の下へ寄せる。その様子を見た旭は苦笑する。「大丈夫。そういうことはしないし、お前がそうなるような行動もしない。俺達……」

 旭の声に、もう一人の声が重なり、その名を呼ぶ。

「「シークザミステリーズは」」




次回<謎を追う者達/彼が消えて>
 彼が出会った少年達の発した言葉の意味は。

 彼が消えてから、どれだけ経ったんだろうか。
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