あれから、私たちは少しずつ、進み始める。だが――。
「お邪魔。もう起きてんだな、良かった」
「うん。……あれ?鍵開いてた?!」
「ああ、開いてた」
驚きながら落ち込む旭を尻目に、部屋に入ってきた少年に視線を向ける。それだけで察したのか、微笑みながら名乗る。
「
「そうか、ありがとうと伝えておいてくれ。イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ。よろしく」
水城は頷き、近くによって来て座る。そして手当てしたときの状況を説明してくれた。
曰く、致命傷になるような深いものはなかったが、かなりの数の切り傷があり、いくつかは微妙に深く、大きかったとのことで、包帯が巻いてあるのはその部分らしい。旭も水城も、「お父さんがこういうことに理解があってよかった」と言っている。俺も心底ホッとした。多分先ほど聞いたことがなければ思わなかったが。
「で、さっきの……しーくざみすてりーず?……って何?」
「先にご飯にしよう。早く知りたいならその時に話すから」
確かに腹は減ってるし、そんなすぐにというわけでもないので、食べてからということにした。
こちら側の食事もかなり美味しく、しばらく夢中で食べていた。
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「大丈夫?まだ休んでたほうが……」
「ううん。いつまでもいじけてる訳には行かないから」
第二の――あるいは、本当の《
死体も残らないほどの爆発の威力だった、というのもおかしくない。それでも、ミルキさんの作った、まだ名の付いていないあの義手もが、跡形もなくなるとは考えにくい。相当な数の素材を厳選し、混ぜ合わせ、ようやくあの物理的・魔力的な硬さを手に入れたのだから。
そして今一番の希望は彼女――天羽々斬だ。元は天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉という三種ノ神器だったのだが、彼の持つ能力の一つ《神化》と私達の思い、神様に対する信仰に近いものが真の姿をもたらしたらしい。彼女曰く、今の姿を保てているということは、使い手からの信仰が伝わっている――彼がまだ存在していることに繋がる。
最初私は、彼がいなくなった――死んでしまったかもしれない、ということに耐えられなかった。泣いて、泣いて、泣いて。私は、彼を支えられていたかもしれない。でもそれはほんの少しで、それ以上に、彼という存在が、昔から私を支えていた。失ってから気付く、なんてことはない。そう思ってた。私の大切なものは全部分かってると。そんなことは無かった。彼が大切なことには気付いていても、どれだけ大切かは分かってなかった。
彼らもそうだろう。自分が慕ってきた人を失って、どれだけ無力だったかを実感したかもしれない。
でも、いつまでも嘆いてるわけにも行かない、と、レイナとマナガルムが行動を始めた。それに影響され、少しずつ――とはいっても3日しか経ってないので結構早いが――立ち直っていった。最後に残ったのは私と思っていたのだが。
「……で、クロトは、受け入れてもいるんだけど、責任感じちゃってて」
「そう……。私でも、ちょっと説得というか、励ますのは難しそうだな……」
彼が《崩壊》を暴走させる結果を作ったのは自分だ。自分を救おうとし、結果的に救ってはくれたがどこかで恨んだりしてるのでは。そう考えているらしい。確かに、自分の能力を隠していたこと、それによって、防げたかもしれないことが起きたという事実は変わらないし、彼もそれを認めるはずだ。それでも彼は許してくれる、とは、自信を持って言えない。 私だって、もっと積極的だったらとか、細かいところを見ていたらとか、もっと近くにいればとか、そういうことを考えていた。
けど、起きたことはもう変えられない。これからを変えるしかない。
彼にも、なんとかそれを伝えられれば……。
『気分転換……とかいうのはどうだ?』
通りがかりで話を聞いたのか、マナガルムが提案する。
それを聞いた私たちは、声を揃えて言った。
「「それだ!」」
次回<やりたいこと>
彼は、改めて自覚し始める。