カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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 旭の部屋に入ってきた、少年は一体。

 あれから、私たちは少しずつ、進み始める。だが――。


第34話<謎を追う者達/彼が消えて>

「お邪魔。もう起きてんだな、良かった」

「うん。……あれ?鍵開いてた?!」

「ああ、開いてた」

 驚きながら落ち込む旭を尻目に、部屋に入ってきた少年に視線を向ける。それだけで察したのか、微笑みながら名乗る。

山村 水城(やまむら みずき)。旭の同級生。君の手当てしたのも僕……と言いたいけど、実際は僕のお父さんだ」

「そうか、ありがとうと伝えておいてくれ。イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ。よろしく」

 水城は頷き、近くによって来て座る。そして手当てしたときの状況を説明してくれた。

 曰く、致命傷になるような深いものはなかったが、かなりの数の切り傷があり、いくつかは微妙に深く、大きかったとのことで、包帯が巻いてあるのはその部分らしい。旭も水城も、「お父さんがこういうことに理解があってよかった」と言っている。俺も心底ホッとした。多分先ほど聞いたことがなければ思わなかったが。

「で、さっきの……しーくざみすてりーず?……って何?」

「先にご飯にしよう。早く知りたいならその時に話すから」

 確かに腹は減ってるし、そんなすぐにというわけでもないので、食べてからということにした。

 こちら側の食事もかなり美味しく、しばらく夢中で食べていた。

 

 

~~~~~~~~~

 

 

「大丈夫?まだ休んでたほうが……」

「ううん。いつまでもいじけてる訳には行かないから」

 第二の――あるいは、本当の《地獄の陽炎(ヘル・ザ・ヒートヘイズ)》から3日。黒影剣士団全体が暗、重い雰囲気に包まれていた。それもそうだと思う。今まで皆が従って、信じて、皆を本当の意味で信じ始めていた彼――黒影剣士団の団長で、私の彼氏……ではなく、もう夫である(もしかしたら、あった、かもしれない)、イチハ・リーゼリヴ・ノヴァが消えてしまったのだから。なぜ消えてしまったという表現なのか。それは、まだ皆が、そして私自身も思っているからだ。彼は、実は死んでいないのでは、と。

 死体も残らないほどの爆発の威力だった、というのもおかしくない。それでも、ミルキさんの作った、まだ名の付いていないあの義手もが、跡形もなくなるとは考えにくい。相当な数の素材を厳選し、混ぜ合わせ、ようやくあの物理的・魔力的な硬さを手に入れたのだから。

 そして今一番の希望は彼女――天羽々斬だ。元は天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉という三種ノ神器だったのだが、彼の持つ能力の一つ《神化》と私達の思い、神様に対する信仰に近いものが真の姿をもたらしたらしい。彼女曰く、今の姿を保てているということは、使い手からの信仰が伝わっている――彼がまだ存在していることに繋がる。

 

 最初私は、彼がいなくなった――死んでしまったかもしれない、ということに耐えられなかった。泣いて、泣いて、泣いて。私は、彼を支えられていたかもしれない。でもそれはほんの少しで、それ以上に、彼という存在が、昔から私を支えていた。失ってから気付く、なんてことはない。そう思ってた。私の大切なものは全部分かってると。そんなことは無かった。彼が大切なことには気付いていても、どれだけ大切かは分かってなかった。

 彼らもそうだろう。自分が慕ってきた人を失って、どれだけ無力だったかを実感したかもしれない。

 でも、いつまでも嘆いてるわけにも行かない、と、レイナとマナガルムが行動を始めた。それに影響され、少しずつ――とはいっても3日しか経ってないので結構早いが――立ち直っていった。最後に残ったのは私と思っていたのだが。

「……で、クロトは、受け入れてもいるんだけど、責任感じちゃってて」

「そう……。私でも、ちょっと説得というか、励ますのは難しそうだな……」

 彼が《崩壊》を暴走させる結果を作ったのは自分だ。自分を救おうとし、結果的に救ってはくれたがどこかで恨んだりしてるのでは。そう考えているらしい。確かに、自分の能力を隠していたこと、それによって、防げたかもしれないことが起きたという事実は変わらないし、彼もそれを認めるはずだ。それでも彼は許してくれる、とは、自信を持って言えない。 私だって、もっと積極的だったらとか、細かいところを見ていたらとか、もっと近くにいればとか、そういうことを考えていた。

 けど、起きたことはもう変えられない。これからを変えるしかない。

 彼にも、なんとかそれを伝えられれば……。

『気分転換……とかいうのはどうだ?』

 通りがかりで話を聞いたのか、マナガルムが提案する。

 それを聞いた私たちは、声を揃えて言った。

「「それだ!」」




次回<やりたいこと>
 彼は、改めて自覚し始める。
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