「なるほど。要するにこの世界では変人扱いされる人のうちのごく一部の集まりってことか」
「なんか棘のある言い方だけど、そういうこと」
昼食後、シークザミステリーズとおおまかなこの世界のことを聞いた。
噛み砕いた表現がさらっと出てきていたあたり、かなり頭が良い。
「俺達は、自分達のやりたいようにやってるんだ。たまたま集まったってだけでさ」
寝転がりながら旭が言う。
やりたいこと。
俺のやりたいことって、何なんだろう。今までなんとなく決めてきていた。自分でしっかり考えたことなんてなかった。平和に楽しく暮らしたいなら、剣なんてものは手に取らなくていい。でも、戦いを求めてるわけでもない。なら、俺は一体何を求めてるんだ。何のために今まで皆を連れてきたんだ。
勝手にお願いしてきて、勝手についてきた。そう言うのは簡単だ。だが、それならなぜ引き受けたのか、という疑問が生まれる。あの時に断ってればそうならなかったかもしれないじゃないか、という。
皆を連れて、本当は何なのか分からない存在に命を懸け、それを延々と繰り返している。それが俺のやりたいことだとは思えないし、思わない。思いたくない。だが、その何かと戦っているのは事実で、これからも繰り返すかもしれない。それでも求めているものがあるのか、全く違うところにあるのか……。
思考の沼に嵌りつつあった俺は、旭が背中を叩いてきたことで抜け出した。
「なんか悩んでんなら、とりあえず風呂に入ってこいよ。一応拭いたりはしてたけど、3日経ってるし。それに、風呂は命の洗濯っていうし」
「あれ、アニメの中でなんだけどな」
「え、マジ?」
と、どうやら少し間違っていたらしい知識に突っ込みが入る。少し笑ってから、立ち上がる。
「んじゃあ、お言葉に甘えて……って、これじゃ沁みそうだな」
「あー確かに。これ大丈夫なん?水城」
「うーん、入ること自体はそろそろ大丈夫だろうけど、相当痛いと思う」
「……じゃ拭くくらいにしとこ」
と言って、濡らしてもらったタオルで体を拭く。まだしばらくは傷の様子を見ながら包帯を替えることになる。しばらくはお世話になるしかないが、いつまでも迷惑をかけるわけにも行かない。何かの機会で離れるべきか……と考えていると、
「迷惑だ、なんて考えてんだろ。」
「ッ!」
急に図星を当てられ、動揺してしまう。それに少し笑いながら続ける。
「分かるんだよね、なんとなく。……迷惑だ、なんて思って出てくくらいなら、その分を話で返してくれよ。俺ら、そういう不思議なこととか大好きだからさ」
「そうだな。多分、お前が普通の人なら救急車呼んで終わり。パッと見で異世界の人だって分かったからこうやって担ぎ込んだわけだし」
「なんか言い方悪い気がするけど、そういうこと」
自分達のやりたいことがはっきりしているからこその線引きだ。欲望に正直、とも言えるだろう。多くの人が「良くないことだ」と言うのかも知れないが、俺は好きだ。素直に自分のやりたいことが言えて、それを実行に移している。なんとなくで動いていた俺とは訳が違う。その後も、俺からの話と旭達からの話で盛り上がり、その夜は二人が寝たところで――次の日の話では「寝落ち」というらしい――俺も横になり、幕を閉じた。
そして、夢を見た。
普通の夢ならば良い。悪夢でも、比較的見るほうではあるので特に言わない。が、今回の夢はかなり異質だった。
「やりたいこと、本当にないのか?」
話しかけて来たのは俺だった。けど、どこか違う。だがそんなことに気付くのは大抵起きた後で、夢の中の俺は違和感を感じることなく答える。
「ないわけじゃない。分からないんだ」
「分からない……ねぇ。なら、考えぬけ。そうしたほうが、自分が納得のいく答えが出る。幸い今も一人じゃないんだ。相談なりなんなりしてみると良い。突拍子のないことでピンとくることもあるだろうし」
確かにそうだ。正直、第三者としての立場から見てくれる同年代なんていなかった。世界が違うということは常識も違うだろうが、参考にはなるはずだ。
「ありがとう」
「どういたしまして。ほら、さっさと目覚まして考えてみろ」
やけに現実味のあるようで、やはり嘘のような夢だった。けど、俺の――彼の言うことは今でもはっきりと頭に残っている。そしてそれを、呟いて繰り返した。
「考えぬけ……。そうしたほうが、自分が納得のいく答えが出る……か。」
最もらしい考えだ。
傷のこともある。変に急ごうとせず、帰る方法と共にゆっくりと考えよう、そう思った。
次回<気晴らしに>
私たちは、落ち込む少年を連れ出す。