カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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イチハ、マリカ、レイナの順の視点となります。読みにくいかもしれませんが、どうぞ


第3話 <陽だまりの下で>

~~~イチハ視点~~~

 

 春のとある日の朝。俺たち2人――厳密に言えば俺1人――は、ピクニックの準備をしていた。

「アメムラ!弁当箱!大きめの3つよろしく!!」

「主君、これでいいですか?」

「それだ、ありがとう」

 《神剣 天叢雲剣》である彼女は、本来の姿とは別の姿――女子二人からの感想は「羨ましいほどかわいい」らしい、綺麗な女の子(17歳くらい)の身体――をもち、その姿と、本来の姿である剣だけは実体がある。彼女曰く、「本来の姿以外に一つでも実体があるときは、大抵がその物に取り付いた死者の魂。もちろんそのときの使い手がいい人であれば悪さはしない」らしい。そのことを聞いていたマリカが「じゃあ、あなたは死者ってことなの?」と聞いたのだが、「私は・・・そうね・・・。一言で表すなら『剣を寄り代にしている少女』とでもしておこうかな」と少し笑いながらはぐらかすような返し方をした。俺はそれ以上詮索しようとは思わない。それに・・・。

「主君、手が止まってます」

「あ、悪い」

 それに、その前の主――エレヴォスのときより楽しいし、俺たちが「タメ口でいい」といっているので気が楽だ―ただ、俺に対する話し方は変えたくないらしい―と言っているので今のところはこのままでいいか、と今までの思考を断ち切り、料理に集中することにした。

 弁当には各個人のリクエスト料理も入ってる。俺は「ホロホロ鳥のロースト」、レイナが「サマーコーン入りポテトサラダ」で、マリカが「ムーンライトフィッシュのから揚げ」、アメムラが「ガイアクラブ入り春巻き」だ。俺以外が意外とレア食材を使用する料理だったのだが、入手にさほど苦労はしなかった。といっても、基本的にイザウェルの街の人たちがタイミングよく持ってきてくれたので、実際、捕りに言ったのはガイアクラブだけなのだが。その時に皆が口をそろえて言ったのが、「いつもお世話になってるお礼」だった。それでも後でちゃんとお礼を言いにいかないとな、と思いつつ弁当に入れる料理がすべて作り終わり、盛り付けも終わった。その後することはもう決まっている。いつもなら既に起きている二人――レイナとマリカを起こすのだ。

「そっちはレイナをよろしく」

「了解です」

2階にある寝室へ二人でいき、俺はマリカのほうへ行く。ドアをそっと開き、静かにマリカのところへいき、身体を揺すった。

「ほら、マリカ。そろそろ出るぞ」

「あと・・・5分・・・」

 かなり珍しいことを言うマリカだが、言いだしっぺはマリカなのだ。ここは何とかして起きてもらいたいので、例のあの料理を使って起こす作戦に出る。

「そうか。ならムーンライトフィッシュのから揚げぜぇ~んぶおれが食っちゃおうかなぁ~」

「それはダメ~!」

 叫びながらサッと飛び起きて俺のところへ突進。かなり勢いが乗っていたので倒れてしまった。

「おわぁ!?」

「食べてない?食べてないよね?」

 マリカが心配そうな、しかし愛らしい瞳で見てくるので一瞬意識がどっかにとんでいきそうだったが、何とか持ちこたえることができた俺は、マリカを持ち上げ、ベットに乗せた後寝室から出ながら言った。

「食べてないよ。それより、早く準備しろよ」

「はーい」

 

~~~マリカ視点~~~

 

 イチハが部屋から出た後、クローゼットからイチハには内緒にして買っていた服を出した。薄い水色のタンクトップに紺色の薄手の袖なしジャケットと、膝上辺りまでの白いスカート。頭には黒に白いラインが入った小さいリボン付のカチューシャをつけた。

 部屋を出て下にいくと、イチハが弁当箱とシートを大きめのバッグに入れているところだった。その顔には、今まで見たことのない嬉しそうな笑顔が浮かんでいた。彼の笑顔自体は見たことはあるけど、今までのその笑顔はどこか寂しそうなものだった。そんな寂しさは今の笑顔からはひとかけらも見出せない。その笑顔に無意識に見とれていると、不意にイチハが顔を上げた。

「準備はもう済んだのか?」

「え?・・・あ、うん、終わったよ。レイナは?」

「レイナはアメムラと一緒に先に出て場所とってる」

 レイナのことだからきっと「場所はこだわらないといけないから」と出て行ったのだろう。それが彼女らしいと言えばそうというしかないのかもしれないけど。

少しの静寂が訪れ、先に声を発したのはイチハだった。

「あー、その・・・に、似合ってるな、ソレ。今日の服はずいぶん考えたんじゃないか?」

「そ、そんなことないよ。急にどうしたの?」

「いや、単純にかわいいな~って思って。それに・・・」

少し口は動いているので、何か言ってはいるのだろうが、私のところまで声が届くことはなかった。それでも、「かわいい」と言ってくれただけで嬉しかった。

「さ、いこうぜ。二人を待たせたらなんていわれるか」

「そうだね」

 私とイチハの二人で一緒に家を出て、レイナとアメムラの元へ向かった。その途中に綺麗な景色の場所があっては止まって見ていた私と、何も言わずにそれを待っていたイチハを、アメムラが迎えに来た。

「『あんまりにも遅いからいって来い』って言われたから迎えにきたわ」

「ごめんアメムラ。つい・・・ね」

「主君も止めたらどうですか?」

「止めるのも悪いし・・・止めたら止めたですっげー怒られるし・・・」

 前にも同じようなことを三人でしたのだが、その時「急ごう」と声をかけてくれたイチハに怒ってしまったのだ。きっとあの時のだな、もう向こうは怒ってないといいけどなと思っていると、二人は既に先に行っていたのであわてて追いかけた。

 

~~~レイナ視点~~~

 

「・・・遅い」

 イチハ達らしき人影が見えた瞬間発した言葉はそれだった。

「悪い悪い。マリカが景色に見とれてたもんでさ」

「止めればいいでしょ・・・ってそっか、それ前にやってすっごい怒られたんだっけ」

 イチハが持ってきて敷いたシートに座り、弁当箱を広げ、全員に食器が行き渡ったのを確認してから、一緒にいただきますを言って箸を伸ばした。まずはリクエストした「サマーコーン入りポテトサラダ」を頬張る。

「どうだ?美味いか?」

 しばらく咀嚼し、味を楽しんでから飲み込んで言った。

「とっても美味しい!」

「相変わらず飯に関してはキャラが変わるな」

「そう?」

 そういいながら皆を見ると、イチハ以外は一口目は各個人のリクエストだった。しばらく談笑しながら食べていると、マリカがこんなことをイチハに聞いた。

「そういえば例の技について、何か分かった?」

 例の技とは、イチハがエレヴォスと戦ったときに使った、剣を光らせて―使う結果そうなるらしい―攻撃するものだった。

「ああ、あれか。うん、その後mちょくちょく調べてたんだけど、もう大体終わったかな。で、詳細について言うと・・・」

 ―あれは剣の攻撃力とかをあげるだけならアレでいいのだが、他にもスピード上げたりや属性を付与したりすることができる。そうするためには魔導チョーク―魔法の中でも禁忌を発動するときに使うらしい―で小さいサイズの魔法陣を描いて、その中で剣を振る。その時にちょっとでも重心の動きとかに無理があっちゃいけないらしい。で、その儀式・・・なのかはわからないがそれが成功すると、最初の形だけで後は身体が勝手に動く―というのがその技というか魔法らしい。

「俺はあれをとりあえず《剣技強化(エンハンス・ソード)》と名付けてみた」

「へえ・・・あ、なくなっちゃった」

「なんかひでぇな、その対応は」

 そう言いながらも今まで見せたことのない笑顔を浮かべていた。

 その後、皆で家に帰った。その後、先にイチハが、後に私とマリカで一緒にお風呂に入った。

「今日のイチハ、とっても嬉しそうだったね~」

 髪を洗っている私のほうを見ながらマリカは言った。考えてみれば、今日見た笑顔と今まで見た笑顔は違った。何がどう違うのか、それは私には分からなかった。でも、余計な感情が入っていなかったのはすぐに分かった。

「そうね。きっとあなたのおかげよ」

「そうなのかな・・・そうだといいな」

 そんな話をしつつお風呂からあがり、着替えてそれぞれの寝室へ行った。

 

~~~~~~~~~

 

 いつか、この幸せが途切れることがあるのだろう。でも、そのときまでは、きっと―――。

 

                                    つづく




第4話 <「魔法」という名の技術>
 魔法使いとして二人を支えられているのか、そう悩むマリカ。相談する相手に選んだのは、イチハだった。
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