朝食を食べた後の休憩中のことだった。唐突に旭が聞いてきた。
「なあ。イチハのあの剣って魔剣なんだろ?そっちの世界で魔剣っていくつあんの?」
「……いくつだろ。100は軽く超えると思う」
すると旭は目を見開き、嘘だろ、というような顔でこちらを見る。そこで初めて、こちらとあちらの《魔剣》の定義が違うのだということに気付く。
「俺のほうで魔剣って呼ばれてるやつは、普通の剣の3倍くらい魔力を保有しておける剣のことを言うんだ」
「ん……どゆこと?」
更なる解説を求めてくる。どう説明すれば理解してくれるだろうか。周りを見渡すがすぐに例えられそうなものは見つからない。どうするか悩んでいると、台所から飲み物を持ってきた水城が、座りながら解決策を持ってくる。
「剣が器で、魔力が水。コップでも、大きいやつと小さいやつとがあるでしょ。で、この普通のコップが普通の剣だとして、これより多く入るコップって、今どのくらいあると思う?」
「……どんくらいだろ」
「わかんないけど、簡単には数えられないでしょ?でも、小さいのよりは出回ってないと思うんだ。それがイチハの言う魔剣……で、あってるかな?」
旭に教わった、握り拳から親指を上に向けて立てる仕草で「あってる」という意思表示をしてみる。使い方はあってたらしく、「ドヤァ」というのが一番合う表情を見せる。
俺の世界では、魔剣はありふれているとまではいかないが、それなりの数が存在する為あまり珍しくない。能力も、影響力や自分の意思で使えるか、発動確率などなどを考えなければ持ってない人のほうが珍しい。だが、こちらでは少ないどころか持ってる者がいない。いたとしても「アニメ」や「ゲーム」といった空想のものばかりらしい。やはり、世界が違えば常識も変わってくるのだろう。分岐並行世界ということはどこかで繋がっていたはずだが、いったいどこからどうなったらこんなに変わってくるのだろうか。
その思考を止めたのは、水城からの質問だった。
「……あれ?なら、貴重な剣ってなんて呼ばれてんの?」
「神器。武器種それぞれに1つあって、《三種ノ神器》って呼ばれてる特に強い3つもある」
「三種ノ神器……。ちなみに名前は?」
「天叢雲剣、八咫鏡、八尺瓊勾玉」
それを聞いた水城と旭は、思い出そうとするかのように唸る。そして「あっ」と旭が声を上げる。
「日本神話のと同じじゃん!」
話を聞くと、今の日本――水城と旭の住んでいる国の名前――に存在していて、その日本を治める天皇陛下が代々継承しているとのことだ。が、その天皇陛下でさえも実見したことはないらしい。今は熱田神宮という場所で祀られているとのことだ。
俺の世界にも、こちらの世界にも存在する三種ノ神器。もしかしたら、世界を繋ぐ基点となっているのは三種ノ神器なのではないか。そんな想像は旭と水城も思ったらしく、顔を見合わせている。
「神社、か……。なんとなく、行けそうだな」
「けど証拠がない。やってみるにしても、多少は資料が欲しい」
またしばらく黙った後、二人同時に立ち上がり、荷物を用意し始める。
「……どこ行くの?」
「まずは図書館。多分ここのじゃ出てこないだろうから、そしたら現地に行って、そこのを漁ってみる」
図書館には、かなりの冊数の本が置かれているはず。それを今から手あたり次第にやっていく気なのかと思っていると、さすがに顔に出ていたらしく苦笑される。
「全部は読まないよ。ジャンル――分野を絞って、その中からさらに絞る。普段からやって慣れてるから、半日あれば終わるかな、二人だし」
今から二人の向かう図書館にどれだけの冊数があるかは知らないが、半日はかなり早いのではないだろうか。
ささっと準備を終わらせた二人は図書館へ向かった。俺はというと、最初はただぼーっとしていたが、ふと思いつき、台所に向かった。
帰ってきたのは日が暮れてきた頃。半日より少し早かった。しかしそのせいか、かなり疲れているようだった。しかし、その疲れを軽く吹き飛ばすほどの驚きに襲われたらしい。
「ただいまー……って、何この軽く豪勢な料理」
小さくはあるが、一人二人が食べるには十分な大きさのある机に置かれていたのは様々な料理。当然、俺が作ったものだ。
「お帰り。悪いが、勝手に作らせてもらった。せめてもの恩返しだ」
「んなもんは良いってのに……。これ、全部食べていいのか?」
頷く。二人とも顔を輝かせ、「いただきます」と言ってから真っ先にから揚げに手を伸ばす。
「あっつ!……んっ、うまっ」
「噛むと肉汁が出てくるのに衣はサクサクだ。……どやって作ったの?」
「タレにつけて冷やしておいてから、溶き卵に軽くくぐらせて衣つけて、低い温度と高い温度で二度揚げ。……多分、調べれば出てくると思うぞ?そのネット……だっけ?で」
その発想はなかった、と聞こえてきそうな顔で見合わせ、噴き出してしまい、二人もつられて笑った。
その後も他の料理を食べては美味い美味いと喜んで食べ、あっという間になくなってしまった。
「ご馳走様でした……!」
「お粗末様。気に入ったなら作り方残しといてやるよ。……で、結果はどうだった?」
そう問うと、かなり微妙な表情をする。
「わからなかったわけじゃないけど、まだ曖昧なところではある。だから明日、ここにいる全員と僕のお父さんとで、熱田神宮のある愛知に行こうと思う」
次回<過去>
彼と彼女の秘密が一つ、明かされる。