「にしても、どうして戻ってきたんだい?帰ってこないだろうと思ってたけど」
興味がない……というよりも、彼へのほうが強いのだろう。そっちのけで話しかける。
「いろいろと複雑でな。調べものをしに来た」
瞬間、明るかった表情が暗くなる。
「君がってことは……。まあ、わかった。資料のある場所は把握してるから案内するよ」
ついてきな、というように彼と私に目配せをし、そのまま上へと向かう。しばらく二人で後ろについていくと、ある廃墟へと着く。マリカは待ってろ、そう言ってシェナさんと一緒に入っていく。少しして、シェナさんだけが出てくる。
「イチハは一人で調べもの~」
と、しゃがんでいた私の隣に、同じようにしゃがむ。細くて小柄。年上のようでも、年下のようでもある。男の子のようで、女の子のよう。そんな不思議な人だった。しかし、かなり自由気ままなようで、急に立ち上がって廃墟の周りをうろうろと走り回りだしたかと思えばまた隣に座ったり。そんなシェナさんに対して、話しかけられないのはその不思議さからか、もしくは――罪の意識からか。
「気にしてるんでしょ、イチハとやったこと」
ふとそちらを見ると、逆立ちをしながら笑顔でこちらを見ている。困惑しながらも頷く。
「あなたがこうして一人で過ごすことになったのは、彼が……私達が殺してしまったから。そうでしょう?」
「まあ、そうだね。けど、それを恨んだこともない。それどころかありがたく思ってさえいるよ。多分、クロトもそう言ったでしょ」
彼女――シェナさんはどうやら女性で、しかも私より年下らしい――は、動き回りながらも私にこの村のことを教えてくれた。正直、いろんなことを一気に言われすぎて覚えてない。けどそのほとんどが私にとって衝撃的だった。随分と長い時間説明されていたようで、明るかった空には星が瞬いている。
横から、草を踏んで近づいてくる足音があった。イチハだ。その手には一冊の本。すっと私に差し出されたそれを受け取り、目を通しながらぱらぱらとめくっていってみる。
「私もそれ読んだ時に、もしかしてと思ったけど……」
「ああ、俺の事だ」
ふと目に留まった文章。それを最初から辿っていく。そこに書かれていたのは――
「三人の子供と、その特徴。使った道具と俺が見ていた物。報告にあった物と俺やここにいたっていうクロトの経験。それを全部事実とすれば――」
駄目。それ以上はやめて。
ここまで読んだ私は、もうわかっていた。けど、それを認めたくなかった。彼が……いえ、"それ"が。
「その実験の成果、つまり造られたモノは、俺だ」
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この村に、四人の少年少女がいた。それはそれは仲が良かった。何をする時も大抵は一緒。怒られる時も一緒だし、褒められれば全員で共有する。正直、周りの大人も羨んでいたくらいに仲が良かった。
この村は、傍から見れば普通の村だし、暮らしている人の大半もそのつもりだった。だが残りはそうじゃなかった。犯罪者も同然の事を平然としているような集まりがあった。そのまた一部は、生体を使った実験を数多く行っていた。彼らはある時能力者に目を付け、そして思った。アレを自らの手で生み出せないだろうか、と。だが結果は失敗。しかし諦めなかった彼らは、次の手を考え、実行した。
村の中にいる能力者を合成してしまえばいい。
魔力の保有量が多く、ものを覚えるのが早い少女。壊すことの多い少年。普段の生活ではまず分からないが、神に等しい存在となりえる少年。そう、それが仲の良い少年少女の内の三人だった。結果として実験は成功。それぞれの能力と身体的特徴を受け継いだ新たな存在を造り出せた。だがソレの制御は簡単ではなかった。故に、地下へと幽閉した。
生み出したのは俺の両親――そう名乗っていた二人。生み出されたのが、今、『イチハ・リーゼリヴ・ノヴァ』と言う名を持つ俺。そしてその時に取り残された少女が――ジャックだった。
次回<事実の先へ>
過去と向き合うか。それとも突き放すか。