カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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光は試練を与える。イチハの意思を見定める為に―。


第6話<光の導き>

 最近、不思議な夢を何回も見る。とある洞窟で彷徨っているところに、一つの光を見つける。その光を頼りに進むと途中の結界で弾かれ、その瞬間にその洞窟の場所が見え、「探して」と聞こえたところで目が覚める。その夢はレイナとマリカも1回だけ見たらしく、二人がアメムラに聞いてみたところ「きっと私と同じ神器――三種ノ神器のこと――が何かを伝えようとしてる」ということらしい。絵を描くのが得意なマリカがその夢の地形を描いて、どこか分かるか聞くと

「ここには昔の死者の魂が封じられています。ですが、その時間が長いために悪霊化していました。そこで三種ノ神器の一つである《神鏡 八咫鏡》を鎮魂と結界、この二つの理由で、まだ置かれているはずです。案内するので、準備してください」

ということで、各自の部屋に行き、いつもの戦闘装備を準備しているところにアメムラが入ってきた。

「主君、この剣を使ってください」

 そう言って差し出してきたのは青と緑二本の片手直剣だった。

「これは?」

「《疾風剣(しっぷうけん) ウィンドイーター》と《 テラリアオブガイア》。ウィンドイーターは「幻影剣」と「幻影刃」そして浮遊能力を、テラリアオブガイアは「次元斬」と「幻影剣」を保持している剣です」

「・・・てことは魔剣級?いいのか、本当に」

「それを扱えるのであれば」

 俺も魔剣を―今は本来の性能を引き出せていないが―扱ってるので普通に扱えるとは思うのだが、問題は幻影剣―幻影の剣を生成、目標へと飛ばして着弾した剣の所へワープし、切りつけることができる技―や幻影刃―幻影の刃を生成し、その斬撃を直線上へと飛ばす範囲技―、次元斬―離れた位置から目標を攻撃する技―などの特殊技を扱えるかどうか・・・だが使いたいときに扱えるならそれでいい。

「分かった。ありがたく使わせてもらうよ」

 そして、その二本の剣を鞘に収め、背中に交差するように吊るし、家を出た。

 

 アメムラにナビゲートしてもらいながらしばらく歩いたところで不意にマリカが口を開いた。

「そういえばさ、アメクモ?そのヤ・・・ヤタ・・・」

「八咫鏡」

「そうそれ。それ・・・というよりその子にも魂はあるんでしょ?どんな子なの?」

 とても興味がある様で、遠慮なくそんなことを聞く。

「そうねぇ・・・しっかりした子・・・だったかな、今は分からないけどね。レイナから食い意地を抜いた感じ?」

「そ、そこまで食い意地張ってないわよ!」

「そうかなぁ~。結構張ってる気ぃすっけどなぁ~」

「だからそこまでじゃ・・・」

「あ、着いたみたい」

マリカの声に引かれて見たその洞窟は、どこか禍々しく、見た目からも入ってくることを拒んでいるのが分かった。だが奥から何かが俺たちを求めているような気もする。

「・・・行くぞ、皆」

 そして、アメムラ以外のそれぞれが各々の武器を持ち、洞窟の中へ足を踏み入れた。中にも不穏な空気が漂っていた。やはり死者の魂が関係しているのだろう、レイナとマリカはだんだん息が苦しくなってきているようだ。全員に光・防護属性の魔法《リシット・ガーディアン》をかけてさらに進むと、光がもれている部屋を見つけた。その部屋の入り口には硬く結界が張ってあった。光も通さないらしく、結界は自身が発する光のみで見え、触れると電撃のような感覚が走り、はじかれる。結界に触れた左腕を擦っていると、アメムラが

「3人はここで待っててください」

と言って結界の中へ入っていった。レイナとマリカはそれを見て

「「入れるんじゃん!」」

と二人同時に言ったので説明する。あの結界は悪霊の類と生物を弾くようなもので、概念上非生物であり、霊として扱っても悪霊ではないアメムラは通れるのだ。ということを話しているとアメムラが戻ってきた。と思ったら俺たちの後ろに回って背中を思いっきり押す。当然前に押し出されるが、結界に弾かれることなく中に入れた。

「そのまま進んでください」

「・・・・・・って言われてもさぁ・・・右と左と真ん中とあるんだけど」

「・・・真ん中を」

 ということでそのまま真ん中を通ろうと思ったが、念の為に雰囲気属性の魔法《オーラ・エコー》で確認。するとその先にトラップが仕掛けてある。左右にはトラップはないが、強力な怪物がいる。判断の結果、そのまま真ん中を行くことにし、トラップに注意しろと声をかけて進む。

 そして全員がトラップを回避して進むこと数分。一際明るく、広い部屋に出た。そこには、アメムラと初めて会った時と同じ服の少女が椅子のようになっている壁の窪みに腰掛けていた。

「あなたが、《神化》の所有者・・・ですか」

「ああ、そうだ。ってことは、あんたが八咫鏡・・・でいいのか?」

「ええ」

そういうと彼女は立ち上がり、俺を見て言い放った。

「あなたがアメムラの攻撃を3分耐えられたら、考えましょう。アメムラ、半分をきったら固有技をつかって構いません。本気でやってください」

「で、でも、イチハは、今は私の・・・」

「いいぜ。受けてやるよ、その試練。アメムラ、手加減はするな」

「・・・・・・わかった」

 そしてアメムラから距離を置いて左に持っていた剣、テラリアオブガイアをしまい、右に持っていた剣、ウィンドイーターを構える。アメムラも刀―後から聞いた話ではコピー品らしい―を構える。

「いいですね?それでは・・・始め!」

 その声と共に、突進攻撃を繰り出してくる。剣をぶつけて切っ先を逸らしつつ、右へ避ける。

 止まらずに繰り出してきた右からの水平斬り。これを切り上げではじく。

 はじかれた威力を乗せた左足での回し蹴り。これは後ろに下がって避ける。

 レイナとマリカが言うには、光のような速さで繰り出される攻撃と防御、コレを2分は続けていたらしく「追いきれなくて動きを正確に分析するのは諦めた」と言っていた。

当然そんなスピードに構わず凌いでいたのだが、アメムラが放った遠距離技、というより固有技である「幻影剣」を捌ききれずに自らの後方へ逃してしまった。普段なら無視するのだが、不意に嫌な予感を感じて振り返ると、幻影剣がマリカのほうへと向かっていた。魔力をブーツに込め―そうするとより速く移動できる―マリカと幻影剣の間に入り、自らの身で防ぐ。左肩に鈍い痛みが走り、血が流れる。記憶のどこか奥のほうが刺激されるが、無視してアメムラのほうへ向く。アメムラの顔には恐怖が浮かんでいたが、剣を構え、まだ続ける意思を示す。そこで八咫鏡に声をかけられる。

「なぜ、身を挺して守るのですか?自らの命が消えるとしても」

「当然だろう?仲間を傷つけさせない為だ。当然本当の戦闘だったらそんなことに気を向けていられる余裕はないだろうけどな」

 そう答えると笑顔が浮かび、俺たちを見据え、こう言った。

「我《神鏡 八咫鏡(しんきょう やたのかがみ)》、《神化》の能力を与えられし少年・・・いや、青年イチハに協力しよう!」

「え、試練は?」

「実質あれは嘘です。本当に見定めていたのは『仲間を守る意思』ですから」

「てぇことは・・・アメムラにわざと狙わせたと?」

「いえ、あれは偶然です。もう少し後にやらせましたけど」

「やらせるのかよ!!」

 そんなやり取りをしながらも、こうして《神鏡 八咫鏡》―皆からは後にヤタノと呼ばれるようになった―が、仲間に加わったのだった。

 

 そして、『そいつ』が来たのは、洞窟から出た後だった。

「自らの命を削ろうとも直感的かつ素早く仲間を守る、どの世界でも同じみたいだな、俺たちは。それより、三種ノ神器のうち二つを手に入れたということは、そろそろ、ということだ」

 彼は、少しの間をあけ、言う。

「《地獄の陽炎(ヘル・ザ・ヒートヘイズ)》が」




第7話<別世界からの来訪者>
地獄の陽炎とは一体何なのか。そして、彼の正体とは―。
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