カゲロウ・ソードワールド   作:壱ノ瀬 葉月

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 彼は、何のために彼らの前へと現れたのか―。


第7話<別世界からの来訪者>

 洞窟からでた直後に話しかけてきた奴は、宙を漂っていた。顔に関しては暗いところに慣れていたせいであまり顔は分からなかった。が、アメムラ、ヤタノは既に気付いたようだ。

「お前、何者だ?降りて来い」

「失礼、さすがに見づらいよな」

その言葉と共に降下し始めたとき、俺も感付いた。こいつは、ある意味では俺だ、と。

「え・・・イチハが、二人?」

「なるほど、さっきの《地獄の陽炎(ヘル・ザ・ヒートヘイズ)》ってヤツを忠告しに来たのか?」

「ご名答。ただ、ここじゃなんだから場所を移そうか」

「その前に、これだけは答えてもらおうか。さすがに正体を知らないと信用できないからな」

 背中から剣を抜き、相手に切っ先を向けた。

「お前は誰なんだ」

「俺はイチハ。―と言っても、お前のコピーじゃない。そのことについても話すさ」

「・・・・・・分かった。とりあえず家に来い。案内する。まあ、『俺らのことを観てた』んだから、場所はわかるだろうけどな」

「あ~・・・バレてた?」

「ああ、俺からしたら思いっきり、な」

「いつ気付いた?」

「覚えてる限りじゃゴーレム討伐の依頼受けて、出た直後あたりから」

「マジか~・・・監視し始めたところじゃん。もっと隠蔽性あげないと駄目か」

 そんなやりとりをする俺たちの後ろで、四人のため息が聞こえた。

 

~~~~~~~~~

 

「で、俺のコピーじゃないってのと例の地獄の陽炎について、説明してもらおうか」

 自宅に着き、着替えてから真っ先に聞いたのはこれだ。俺やアメムラ、ヤタノはともかく、二人はイマイチ現状を理解できていないようだったし、ちょうど一つの可能性について考えていたところだった。

「まあ、前者は簡単なことさ。俺は別の世界から来た。観てた感じだとまだ知らないだろうから、そっから話すとするか。この世界っていうのは主軸を中心に8つの世界線にわかれ、さらにその8つの世界線それぞれ軸を中心に無数に分岐している。ちなみに<軸>って呼んでるのはそれぞれの世界の中心、<主軸>は8つの軸となる世界のさらなる中心ってことだ。俺は、いや俺たちはその軸となる8つの世界が主軸となっている世界のそれぞれ受け継いでいるところ、その世界特有のものを分類し8つの世界線と全世界の総称に名前をつけた。総称は、《分岐並行世界(パラレルワールド)》、すべての基礎となったこの世界線、つまり主軸は《基本世界(ベーシックワールド)》と名付けた。他の世界は・・・言ったほうがいいか?」

 知りたい。すげぇ知りたい。だがそこよりも本題のほうが重要なので、ここは我慢しておく。次の機会にでも聞こう。

「いや、いい。余計に話が長くなりそうだしな」

「それもそうか。ま、知りたかったら後で聞いてくれ。で、過去にさかのぼって観てみるとそれぞれの世界はとても安定していた。「ひとつの世界として」という意味でな。で、こっからが地獄の陽炎のことになるんだが、俺たちの世界、《不安定世界(アンステーブルワールド)》で異変が起きたのは三種ノ神器がそろってしばらくしてからだ」

「そろえたのはやっぱりお前か?」

「いや、いくら基本世界線からの分岐とは言えその世界の軸以外は展開が違うんだ。軸でも世界観っていうのにあわせて展開は微妙に違うんだけどな。で俺の場合、存在してるのは軸となる世界じゃなくて、そこからさらに分岐した世界だからな。そうすると余計に変わってくるんだ。ちなみに俺は三種ノ神器を集めた人の知人だ。協力したって点ではそろえたって言ってもいいかもな。で、三種ノ神器を集めてからしばらくって言っても1ヶ月経ったかどうかくらいに異変―というより侵略が起きた。実は侵略で攻めて来たやつら、お前らも一度だけ会って、戦ってるぜ。かーなーり弱体化されてるがな」

「・・・・・・まさか、エンプネイス?」

「そ。アレよりも格段に強いやつが神器をそろえた人と、近くに居た人を襲った。俺はなんとか生き残ったし、攻めてきた奴らは全滅させた。けど襲われた奴のうち、戦えるやつでも三分の二、無力な人たちは言い方は悪いが、全滅した。まあ、そのやられたうちのさらに三分の二が、エンプネイスの親玉みたいなものにやられたんだけどな。そいつは姿さえ分からなかった」

「・・・ようはこのまま神器を集めるとそいつらがでてきて世界が終わる・・・と?」

「そう。確認した世界だけだが、そいつらの強さも数も全部バラバラだった。普通の奴よりかは強いけど、な。つまりどれだけくるか、どれだけ強いかは不確定、けど結果として地獄のような状態になる。だから《地獄の陽炎》と名付けたわけだ。言っておくが、集める理由はどうであれ、これは必ず起きる。観察した世界は全部そうだ」

「そうか。じゃあ、最後にもう一つ。なぜこの世界の俺たちに忠告しに来た?」

「別にここだけじゃないぜ?少なくとも、俺たちがやられてからは、可能性のある世界には全部忠告しに行ってる。じゃあ、一旦戻る。聞いてくれてありがとな」

 別世界の俺はそう言い残し、床に作ったゲートを通って帰っていった。

 

「イチハ、どう思う?」

 彼が帰った後、マリカが聞いてきた。

「どうって言うのは?」

「あの人の話。嘘なのか、それとも本当か」

「嘘ってことは考えにくいな、帰るときのアレは明らかに俺たちの使っているレベルの魔法じゃない。けど本当とも正直思えない。まあ、備えてさえおけば大丈夫だと思うけどな」

「・・・イチハ、ちょっと聞いて」

次に口を開いたのはレイナだった。

「私"あの人"のところにいって、もう一回修行してくる。今まで悩んでたけど、さっきの話で決めた。修行しに行って、強くなって帰ってくる、絶対に」

「レイナ?あなたはもう十分・・・」

 そういうマリカを左手で制し、俺は言った。

「わかった、行ってこい。あーでも・・・あの人の所だもんなぁ・・・うんいいや。ちゃんと生きて帰ってきてくれればそれで」

「大丈夫、」

 その後の夕食は、いつもよりいくらか豪華で、賑やかだった。




第8話<幼き頃の二人>
 二人の言う"あの人"。その人との出会いは、この街に来た頃だった―。
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