青空に雲が広がる初夏の空。マリカと俺、アメムラ、ヤタノ―つまり再び修行しに行ったレイナ以外―は魔導樹保護域(仮称)に来ていた。今マリカは射撃の練習中。残りの俺達はというと―。
「すごい命中率ね」
「そうなんだよ、マリカに教えたら魔法使ったとはいえ一回で当てたし、その後も魔法無しでバンバン当てるんだよ。俺でも百発百中ってなるまで5日かかってんのにさ。多分今やったら・・・外しまくるな」
「それだけマリカがすごいってことでしょ?」
「魔法も上手いですしね」
「多分飲み込みが早いんだろうな」
「・・・あのさぁ、見てるだけだったらもうちょい向こうに行って?集中できないから」
そのマリカを見ているところだった。ふと空を見ると、太陽がほぼ真上だった。
「向こうに行くのでもいいけど、先に飯にしようぜ。お前も腹減ってるんじゃないか?」
「・・・・・・実は結構空いてるの。そうね、食べましょうか」
少し辺りを見回してこの時間帯で良さそうな木陰を見つけ、そこで食べることにした俺は、二人に声を掛けてシートを敷いてもらい、弁当箱を広げた。
「そう言えばさ、イチハ」
「ん?どうした」
「レイナが修行に行く前にイチハが『生きて帰って来い』って言ってたじゃない?あれってなんで?」
「それは・・・ここに来てからの話になるし、多少長くはなるが、それでもいいなら」
「知りたくて聞いたんだからさ。話してよ」
「わかった。あれは、イザヴェルにきてから1年くらいだったっけか?俺たち3人がそれぞれの師匠を探して、身を守ったり、戦ったりする術を学びに行った時だ。俺とレイナはたまたま同じ人だった。今もそうだが、当時はより恐れられてた。なんせ特訓中に多少とはいえ死人が出るくらいだからな。<非寛大のマジシタ>って呼ばれてる。名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?修行となるとかなり厳しかったよ――」
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弟子入りする前に試験があったんだが、その試験を突破できたのは170人いたうちの40人くらいだった。その後もきついからってやめた人がいたから、最後のほうは15人くらいだったかな。やめてった理由が「月一でやる師匠との対人戦が無理、勝てるわけが無い」だったな。一番最初は皆勝てるだろって舐めてたんだ。レイナも俺も警戒はしていたけども、油断していないとは言えなかった。けど実際見たら無理だって悟った。当然「勝ってやる!」と意気込んだはいいが何回やっても駄目で諦めてやめた奴もいた。
俺とレイナは勝ちはしなかったけれども善戦はできてた。そのときに俺と戦ってくれって頼んだんだ。周りは「無謀だ」「やめておけ」って言ってたけど師匠は引き受けてくれた。アレで死ぬ気でいたくらいだからな。あの戦いは今でもはっきりと覚えてるよ。
「はじめてよいか?」
「いつでもどうぞ、師匠」
「いつも通りだが、一撃入れられたり、倒れたらそこで決着だ。いいな」
「はい!」
そのときには周りも静かになってた。そんな中で先に動いたのは師匠だ。身の丈ほどある両手剣を遠心力を利用して攻撃する戦法だったからな、先に動いたほうが有利だった。だんだんと速くなっていくから攻撃の隙なんてないって皆言ってたが、むしろそこを利用したんだ。剣を避け、弾いて、師匠の予想を誘導したんだ。あそこまで上手くいくとは思わなかった。けどやっぱり苦労したし、傷も受けた。右から来る力を上に、左からのを下に逃がしたりして接近した。最後の最後に柄頭で殴ったけど、実際あんまり意味は無かったみたいだ。決まりで一撃を入れたら勝ちってなってたから勝てたけど、多分師匠が本気出したら今でも勝てるかどうかだと思うんだ。
まあ、他にも卒業試験でレイナとあたって、ぎりぎりで勝ったこともあったし、同じ部屋のやつとふざけてトラップ仕掛けたら、まさかの師匠が引っかかっちまって怒られたり。いろいろあったけど、俺はなんだかんだで楽しかったよ。
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「で、話の最初に戻るけど、かなりの無茶をしたらだけど、レイナは死ぬ。一回目はともかく、二回目からは死ぬ気でやらないとやばいらしいからな」
「そんな・・・じゃあ・・・レイナは・・・・・・」
「待て待て、安心しろ。しくじって死ぬことはあっても、故意に殺されることはない」
泣きそうな顔でそんなことを言うので慌てたが、実際彼女が死ぬことはないだろう。
だが、万が一ということもあるだろうし、マリカはレイナと会って話がしたいはずだ。師匠にも聞きたいことがある。であればすることはひとつだろう。
「また後でにはなるけど、師匠のところに皆で行ってみるか」
第9話<師匠>
彼は、かつての師匠の下へ行く。彼女はどうしているだろうか・・・。