旧き神話から新しき神話へ   作:うにゃりん

19 / 23

受験も無事に終わり一段落したので、どうにか投稿。今後は多少ペース上がるかな?
あとタイトルは別に作者の本心ではないです(言い訳)。実際みんな優秀ですからね。



第拾捌話 無能と阿呆

 

 

 

 

 エルキア王城───謁見の間。

 王座の上で脱力して溶けるように身を預けているのは人類種の王、二人。

 

 

「なぁ、いい加減にしろよ東部連合、マジでいつゲーム日を通達してくんの?」

 

「……たい、くつ……」

 

 

 クラミー達との一連のやりとりから、かれこれ二週間が経過した。せっかく引き締めた気も、これだけ待たされるといい加減緩むというものだ。

 そんな空達を普段なら戒める立場のステフも、さすがに言葉が尽きてきた。

 不安そうなステフの脳裏に、ふと一つの可能性が過ぎる。

 

 

「も、もしかして忘れられてるとか。届いてないとか……じゃないですの?」

 

 

 今まで送った書簡がことごとく届いていなかった件を思い出して言うステフ。

 それを聞くと、溶けていた空が身を起こして、これ以上ない程に顔から感情と言える類の物が消えていく。

 

 

「……ほー?だとしたらさすがに見過ごせねぇなぁ?」

 

「空ちゃん、ちょっといいかにゃ」

 

 

 空の怒りが一周まわって冷めていくのとほぼ同時に、アズリールが虚空から姿を現す。

 その手の中の筒に目をとめて、空と白がばっと身を起こした。

 

 

「お、アズリール!それもしかして───」

 

「にゃはは〜東部連合からのゲーム承諾とその日取りについての書簡だにゃ」

 

 

 にっこりと笑ってアズリールは続けた。

 どうやら東部連合とゲームをさせまいとエルキア王城の中で封殺されていたらしい。見つけたのはお手柄だが、それを恫喝してまきあげたのは『十の盟約』に抵触しないのだろうか。

 いやその前に、この書簡を自分に渡していないのは略奪なのでは?そう現実逃避ぎみになる空に、だがステフが頭を抱えて言う。

 

 

「……気付くべきでしたわ……人類種の命運が掛かってるんですもの……ソラ達に対して『虚偽報告をしない』と盟約を交わしていない政府の誰かが、ゲームで“手渡す権利”を巻き上げれば───」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()、ってことか。こんなとこばっか随分小賢しいじゃねぇか……その頭もっと国のために使ってくれよ」

 

「今はソラが人類種の敵ですもの、遺憾なく発揮してるんじゃないですの?」

 

 

 言い得て妙だな、と乾いた笑みがこぼれる。だがその笑みも、書簡の中を確認するとさらに引きつった。

 勝負の指定日は27日。それは同時に今日の日付を意味していた。

 

 

「27日夕方から……って、半日もねぇじゃねぇか!全員急いで支度しろっ!」

 

「わ、わかりま───」

 

「にゃは、いつでも準備出来てるにゃ♪」

 

「……しろ……準備、ばん、たん……」

 

「その兄、空もいつでも準備オールクリアだっ!おいステフお前だけだぞ急げ」

 

 

 すっくと立ち上がっただけで“準備完了”と言ってのける空達に、焦るステフ。

 国家公式戦なのに着替えもしないのかと騒ぐステフへ、“お前はなにを言ってるんだ”という顔で見つめる三人の目が突き刺さる。これが自分達の正装だと言わんばかりに。

 

 

「……わ、分かりましたわよ……もう、このまま行きますわよっ!」

 

 

 異常者の集団の中では正常な者こそ異常呼ばわりされるのは常なのか。

 ソラ達に常識を求めたのが間違ってた。一人そう落胆するステフに向き直る空。

 

 

「じゃあステフ、城の正面に馬車を用意させろ」

 

「あ、空ちゃん、うちの空間転移なら大使館まで今すぐ行けるけど───」

 

「試してみたいが却下だ。ド正門から、堂々と出る」

 

「えっ……ぼ、暴動の最中ですわよっ!?」

 

「だからこそさ。何のために暴動起こさせたと思ってんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エルキア首都郊外、国境線ギリギリの位置にそびえ立つ巨大なビル。

 東部連合・在エルキア大使館。

 馬車から降りた空達を、いのが出迎えた。

 

 

「……お待ちしておりました」

 

「よお爺さん、答えは出たか?」

 

 

 顔を合わせるやそんなことを尋ねる空。だが警戒した様子でいのが言葉少なに『では、こちらへ』とだけ応対する。

 先導されて大使館の中を歩く空達の前を行くいのに、言葉はない。返答がないということは、つまりまだ分からないのだろう。

 

 この前はもうちょっと皮肉飛ばしてたのに、と呆れる空。

 空の言ってる意味が理解できないのか、何の話だと首を傾げるステフ。

 ここを訪れるのは二回目なのに、見るもの全てに興味があるのか涎を垂らすような顔で忙しなく周囲を見回すアズリール。

 対比的に小さくあくびを噛んでケータイを弄る白。

 四人が通されたのは、先日と同じ応接間。

 

 

「……では、ゲーム開始時刻まで今しばらく、ここでお待ちを」

 

「あいよ。観客もちゃーんと通してくれよ?」

 

 

 いのが無言のまま一礼して立ち去ると、空は迷わずソファーに横になる。するとステフがそのことで、と尋ねてきた。

 

 

「民衆に暴動を起こさせたって言ってたけど、どういうことですの?」

 

「あーそれな、大衆の()()()()だ」

 

「え……?」

 

「“俺らならきっと勝てる”なんて甘えた信頼はいらねぇんだよ。俺らが八百長で負けないかどうか、血眼になって観戦してくれる連中が必要なのさ。それが結果的に東部連合のあからさまなチート対策になる。

 疑惑の目以上に信頼できる監視はねぇだろ」

 

 

 にっこりと笑う空。

 そして横になった空のお腹の上で迷わず丸くなって目を閉じる白は、ものの数秒で気持ちよさそうに寝息を立て始める。

 

 

「んじゃ、アズリール、俺も時間になったら起こしてくれ」

 

「了解にゃ♪」

 

 

 白に倣うように眠る空。

 数時間後には、全人類の命運を決める勝負が始まる。

 

 

「ほんと、どういう神経してるんですの……」

 

「一緒に休んだらどうにゃ?空ちゃんの書物によれば、人類種の脳は起きてからの数時間が最も性能を発揮するように出来てるそうにゃ?」

 

「こんな状況で寝られる鋼の心臓があれば、そうしたいですわね」

 

「確かに。空ちゃん達が()()()()()()()()()()()と考えれば、状況は厳しそうだにゃ〜」

 

「……っ!」

 

 

 その一言に、ステフの顔が引きつる。よく考えればこれは異様な光景ではないか。

 あれだけ頑なに寝ることを拒否し続け読書に没頭していたソラが、ゲーム直前に策謀するより体力回復を優先させるなど。

 

 

「この勝負、空ちゃん達をして最大性能の発揮を前提としているにゃ。うちも本気で挑む必要がありそうにゃぁ……」

 

 

 アズリールの無機質な眼に、ステフは凍り付く。態度や表情、仕草に至るまで、そんな些細なことでは気付かせないくらいにソラ達は張り詰めていた。

 その事実に気付いてしまえば最後。ステフはゲーム開始までの数時間、トイレと応接室を往復して過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ゲーム開始時刻。

 

 いのに案内され、一同が通されたのは大使館の中のワンフロア。

 巨大なビルの一階を丸ごと使ったのでは、と思わせるほど広大な四角い広間。壁を埋めるような巨大スクリーン一枚、それが四面に張られたフロアだった。

 そこには、人類の命運を決めるゲームを観戦に来た数百、いや千人に届くのではと思わせる人類種が詰め掛け、疑惑に満ちた眼差しを舞台に向けている。

 

 正面スクリーン前の舞台には、黒い箱。そして五つの椅子が据えられていた。無言でその椅子の一つに正座して待つのは、対戦相手の少女。

 東部連合在エルキア大使・初瀬いづな。

 

 いのに促され、いづなの隣に座る空。順に右へ白、アズリール、ステフが続く。

 着席を確認したいのがいづなの傍らに立ち、手にした書類を読み上げる。

 

 

「では、これより“盟約内容の確認”をはじめます」

 

 

 東部連合大陸代表者、初瀬いづな。

 エルキア国王二名とその従者二名。空、白、ステフ、アズリール。計五名、一対四で東部連合指定のゲームを執り行う。

 

 賭け金。

 ・東部連合『ルーシア大陸に保有する全て』

 ・エルキア王国『種のコマ』

 

 また東部連合が勝利した場合、慣例として“ゲーム内容に関する一切の記憶の忘却”を要求。この要求は全プレイヤー、観戦者を含めた全人類種が含まれるものとする。

 ルール説明はゲーム開始後となる。

 

 

「本当に、宜しいですかな?」

 

 

 メチャクチャな話だった。

 どんなゲームかは賭けた後知らされる?こんな明らかに狂った内容を説明しといて“宜しいですか?”宜しいわけがない。それが観衆全員の思うとこだった。

 だが、それに対してあまりにも気楽に空は『()()()()()()』と一蹴した。

 ただし二つだけ、と付け加えて。

 

 

「俺らが棄権しても、消えるのは“今日のゲームの記憶のみ”だ。不可能ゲー吹っかけて俺らの記憶だけ奪おうって期待は、今のうちに捨てとけ」

 

 

 そしてなおも、いのの目を覗きこむように言う。

 

 

「そして二つ目。“ゲーム中の不正発覚は、敗北と見なす”───『十の盟約』の大前提、そっちが忘れてさえいなければ、何も問題はない」

 

 

 そうあまりに容易く、東部連合が仕込んだであろう罠の一つを切り捨てる空。

 傍目には無謀極まる行動。だが己の敗北など一片も考慮していない様子に観客が、いのといづなが、それぞれ異なる理由で顔をしかめる。

 

 

「……では、同意したとみなし、盟約の宣言を願います」

 

「【盟約に誓って(アッシェンテ)】」

 

「【盟約に誓って(アッシェンテ)】、です」

 

 

 アズリールは迷わず、ステフはためらいがちに、空と白はお互い顔を一瞥してから。

『十の盟約』に従い、相互に誓いの言葉を口にした。

 

 

「……では、はじめさせて頂きます」

 

 

 いのが呟いて黒い箱を操作する。おそらく電源を入れたのだろう。壁を覆う巨大スクリーンに、光が映し出される。

 今まさに人類という種そのものと、世界第三位の大国の大陸領土全てを賭けたゲームが始まる。

 緊張、疑惑、絶望。無数の感情が渦巻きつつも、千に届く観衆が詰めかけた広間は、しかし水底のように静まり返っていた。

 白の隣で、スクリーンを眺めながら空が言う。

 

 

「白、全部終わったら話すよ。これまでの事。俺自身の事……」

 

「……にぃ、それ死亡フラグ」

 

「ははっ悪い悪い。勝とうな」

 

「……うん」

 

 

 ぎゅっとお互いの手を強く握り合って、椅子に背中を預け。そして。

 スクリーンは黒く染まり、空達の意識はスクリーンの中に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 没入していく意識の中、しかし空は冷静に思考を巡らす。

 ゲーム内容は、事前に想定していた通りの『電子ゲーム』。先王が『異世界で行われる』と書いたそれは、意識を仮想空間へと没入させる仮想(ヴァーチャル)現実(リアリティ)───所謂VRのことだった。

 

 そして行われるのは『撃ち合いゲーム』。FPSと称せば日本にもよくあるゲームジャンルの一つだが、VRによる撃ち合いとなれば少し話が変わってくる。

 通常ゲーム内でアクションをとる場合、ボタン一つでシステムが自動的に機能してくれる。そこに自分の意識が介入する余地はなく、システムは組み込まれたプログラムを忠実に遂行する。

 だが現実は不確定要素が大きく関わる。

 

 例えば照準、発砲、装填といった基本動作。これら一つとっても、理想よりだいぶ制限されることになるに違いない。

 体力が減れば動きは鈍るし、精神の乱れはそれだけで銃口がぶれる。常に最善手を打ち続けるにはそれ相応の集中力を維持しなければならないだろう。

 

 どの程度現実を再現しているとか、どこまでを手動で行うかなど、感触を確かめてみるまでこれらはあくまで予想でしかない。

 だが獣人種の特性と、やつらが行うであろうイカサマ、そして観衆の目がある『公開戦』であることを踏まえれば、根本的なゲーム内容が変わることはまずない。なぜならそれ以外のジャンルは必勝とはなり得ないから。

 想定すべきはサバゲーのようなアウトドアのものに近いと見て間違いないはずだ。

 当然挑む側のエルキアにとって分が悪い勝負になる。

 しかし────とそこでロードが終わり、空は思考を強制終了される。そして出現したフィールドに目を見開くこととなるのだった。

 

 

「────────嘘、だろ」

 

「………────」

 

 

 組み立てられた世界は空達を驚愕させるには充分すぎた。

 無数のルール、無数のフィールドを想定し無数の戦略を用意していた。

 だがこのフィールドだけは、まったく、予想すらしてなかった。

 

 

「……すまん、ステフ、アズリール」

 

「え、はい?」

 

「にゃっ!?だ、大丈夫にゃ聞いて、る……にゃ?」

 

 

 ステフとアズリールは戸惑いを隠せないでいた。目の前に広がる見知らぬ景色もそうだが、何より空と白の狼狽える姿がそうさせるのだろう。

 出会った頃と違って最近はこの兄妹が感情的になることを多々目にする。だが今の二人はそれとは異なる、明確な恐怖心が見て取れた。

 

 何をそんなに怯えて、この景色はどんな場所で、どういった意味が込められているのか、ステフとアズリールには分からない。何せそれは空達が頑なに話そうとしなかった内容だから。

 

 そこは間違いない。空達にとっては見慣れた、二度と見たくないと思った、愛しくも憎き、トラウマが詰め込まれた場所。

 

 見紛うはずもない───()()()()()だった。

 

 

「こればっかりは無理だ。すまん、人類種は終わりだ」

 

「ガクガクブルブル」

 

「は……ど、どういうことですの!?あんな啖呵切っといて───」

 

「白が戦えない。それと俺もちょっと想像以上にダメージきてるから役に立たないかも」

 

 

 苦しそうに胸を抑えて膝をつく空と、蹲って頭を抱え震える白。その姿が、言葉が、冗談などではないということを雄弁に語っていた。

 

 

『驚かれましたかな?ようこそ、ゲームの中の世界へ。今回はこの架空フィールドでゲームを行───』

 

「……待て」

 

『───はい?』

 

「確認させろ。ここは()()()()()()()()()()()()、なのか?」

 

『その通りですが、何か?』

 

 

 ナレーション、もといいのの声が響き渡る。それを元に看板を見回して空は冷静に確認する。

 乱立する無数のガラス張りのビルに、アスファルトとコンクリートで構築された世界。確かに東京都心の街並みによく似ている。だが点在する看板の文字は明らかに日本語ではないし、あちこちに鳥居が建てられ気持ち自然が多い。なるほど、よくよく見れば空が知る東京とは微妙に違っていた。

 

 

「つまりここはあんたらが想像して作った人工的な仮想空間だと?」

 

『ええ、御理解が早いですな』

 

脅かすんじゃねぇ!!糞がっ、怨むぞ爺さん」

 

『……何をそこまでお怒りになっているのか……このステージにご不満が?』

 

「不満どころじゃねぇっつの。白なんて虫の息同然だぞ」

 

『それは大変失礼致しました。何せ東部連合の若者に昨今人気の高いSFステージでして、満足いただけると思ってたのですがな』

 

 

 そうだ、落ち着いて考えれば至極当たり前なことじゃないか。この世界はリアルで言う所のファンタジー世界だ。元の世界で思い描いたままのエルフや獣人がいる世界だ。

 それが逆になっただけのこと。こいつらにとっては『現代の地球』のような世界こそ空想の産物。俺が初めて東京を目にした時と同じ感想を抱いても何ら不思議なことは無い。

 

 

「……ガクガクブルブル」

 

 

 トラウマに触れすぎたのか。いのの声さえ聞こえていなかったらしい白は依然として瀕死状態だった。

 どうにか落ち着きを取り戻した空は優しく白を抱きしめると、諭すようにゆっくりと事実を述べた。ここはゲームの中で、外ではちゃんと手を繋いでいて、不安に思うことはないと。

 すると白は若干目が虚ろながらも、気を取り直して立ち上がった。

 

 

「おし、時間取らせたな爺さん。始めてくれ」

 

『……おほん、それではまず、オープニングムービーを』

 

 

 いのの言葉を合図に、フィールドの上空に向こうで見たものと同じ巨大なスクリーンが映し出される。

 

 

『あなたは───モテモテだった』

 

 

 ……オープニングムービー開幕で早くもクソゲー認定しそうになる空。だがゲーマーとしてのプライドが、辛うじて沈黙を保たせた。

 

 

『世界中の女の子にモテにモテて追いかけられる日々のあなた。しかしそんなあなたの心中には、ただ一人と決めている想い人がいるのであった』

 

 

 巫山戯たナレーションとともに映し出されるのは、いづなが可愛く華やかな衣装を着せられた映像。そして大量の獣人種の少女達に追われ、抱きつかれるプレイヤーらしき者の姿が流れる。

 

 

『しかしそんなあなたもあまりに多くの誘惑が続けば、その想いもブレてしまう。多くの誘惑をかいくぐって、あなたは想い人に『愛』を届けられるのか!?』

 

 

 リビン・オア・デッドシリーズ番外

   ラブ・オア・ラベッド2

     〜恋の弾丸あの子に届け〜

 

 

 ───オープニングが、終わった。というか終わっていた。

 何かを堪えるように頭を抱えている空に、無言のまま兄の手を握る白。興味無さげに首を傾げるアズリールの隣で、ステフは意味が分からなかったのかきょとんと呆ける。

 自分の国と人類の命運のかかった大事なゲームにしては、随分とぶっ飛んだモノを用意してきたもんだ。

 

 

『皆さま、足元の箱をご覧ください』

 

 

 言われて一同が足元を見ると、いつの間にか小さな箱が置かれていた。中にあるのはデフォルメされたような、玩具と見紛うほど奇妙な形をした銃。そしてハート形の謎の物体。

 

 

『そちらの銃で、追ってくるNPC達を撃って頂きます』

 

 

 いのが説明を始めると、先程オープニングムービーが流れていたスクリーンの映像が切り替わる。映像内のプレイヤーはいのの言葉に呼応するように銃で狙撃し、ハート形の物体でNPCを爆撃した。

 

 

『時に撃ち、時に爆破し、メロメロにして頂きます』

 

「なるほど、これボムだったか」

 

『メロメロにされた女の子は皆様に愛の力を託して消えます。“めろめろガン”から放たれるのは「らぶパワー」つまり皆様の「愛の力」です』

 

「めろめろガン……?」

 

「……ださぃ」

 

『一方、皆様の誰かがいづなに撃たれますと、いづなの「愛の奴隷」になります』

 

「あのさ……寝返るって言おうぜ?」

 

『世界中の女の子が振り向く中、想い人だけは振り向いてくれない。その愛の力を伝えてメロメロにするのが、このゲームの目的となる───以上、説明書より』

 

 

 つまり片っ端から女の子を振って廻ると。プレイヤーがモテモテな状態で、いづなは空達四人が全員想い人。空達はいづなを単独狙い。

 イラつく設定だが、ようは撃破やゾンビ行為を可愛く言い換えただけだ。銃撃戦や一対四という構図は当初の予定通り。概ね問題ないと言える。

 

 

「ルールを確認 したい、いくつか質問するぞ爺さん」

 

 

 

 一、『(めろガン)』を撃つとエネルギー(らぶぱパワー)を消費する。

 

 二、『NPC』を一人撃破する毎にエネルギーは全回復出来る。

 

 三、『NPC』はエネルギーに惹かれ襲い、触れられるとエネルギーが減る。

 

 四、エネルギーが尽きると『NPC』は寄って来なくなるが、事実上戦闘不能になる。

 

 五、いづなに撃たれると操作不能になる。

 

 六、いづなに撃たれ敵化した味方は、味方に撃ってもらうことで元に戻せる。

 

 七、六の手段でエネルギー切れも回復出来る。

 

 八、ステータスは魔法が使えないだけで全て現実での身体能力を反映している。

 

 

 大まかに振り分ければこんなところか。他には銃は最大十六発や、ボムの所持と使用は無制限など。そういう細かな部分はその都度追って聞くべきだろう。

 具体的なルールの内容を把握し、空は脳内で戦術を組み立てる。そして真っ先に浮かぶ懸念事項といえば、即ち。

 

 

「えーと……ステフ、さっきのルール説明、理解出来たか」

 

「ふ、甘く見ないでほしいですわね。()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 清々しいまでに誇らしげに胸を張るステフに、再び頭を抱えたくなる空。確かに簡単な設定とは言い難いし、FPSというジャンル自体聞くのが初めてなステフにとっては完全に理解の範疇を超えているだろう。

 

 ……いや違う。何を失念していたのか。同じくゲームが初めてで、尚且つステフと凡そ同レベルの阿呆がいるではないか。

 

 

「あ、アズリール。お前はどうだ、分かるか?」

 

「にゃはは〜うちが分かるとでも!?」

 

「こういう時くらいは期待を裏切って欲しかったよッ!!」

 

 

 空と白はもちろんのこと、おそらくステフも運動能力は皆無だろう。対して相手はいづな。ことこのゲームに関して言えば、その強さは火を見るより明らか。

 こちらの勝ち筋としてアズリールに動いてもらうことは必須条件。にもかかわらずこの理解度は控えめに言って絶望的だ。

 

 

「はぁ……もう移動しながら説明してやるから」

 

 

 そう吐き捨てて走り出した空と白を追いかける形で、ステフとアズリールもようやく行動を開始する。

 懸念、焦燥、策謀。様々な思惑がプレイヤー達の間で錯綜していく中、ゲームは幕を開けるのだった。

 

 

 

 

 




ゲームの設定は一部変更してますが、基本的には原作と同じです。全十六発とかはアニメから。もっと撃ってるようにも見えるけど。
感想待ってます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。