伏線回収の回にしようとしたら伏線を張っていたこの現実。
どこを伏線として使う予定なのかも忘れそうになるし、むやみやたらに伏線作るのやめるべきかな。
天地を裂き、星を殺した悠久の大戦。
世界の絶対支配権『唯一神の座』を巡った争いは、不戦勝で唯一神の座についた神───テトにより終焉を迎えた。
テトにより『十の盟約』が制定された世界。
武力を禁じ、一切の諍いをゲームで決することが定められた盤上の世界。
そんな世界で唯一神、テトが普段何をしているか。
ほぼ全知全能の神、唯一神の私生活。
───唯一神は灰と化していた。
「……待て待て待て」
「……?どうかしたかい?」
「なんでおまえの私生活の話になってんだ。別に興味ねぇよ!」
「酷い!?これでもけっこう恥ずかしいのに」
「真剣な顔で何話すかと思えば、はぁ……」
期待外れといった表情でため息を吐く空。
突然テトの雰囲気が変わったかと思えば、この始末。本当にこいつは何がしたいのやら。
さきほどの話は全て聞いてたし頭に入っているが、テトを思いやる様子は微塵もない。
存在自体が規格化のバケモノをどうしてわざわざ心配する必要があるのか。そんな暇があれば自分の安全の確保に使う。
当の本人であるテトはしゃがみこんでぶつぶつと何かを呟いていた。
適当にあしらわれたのがよほどショックだったらしい。
こんな豆腐メンタルが神様やってるなんて、この世界は大丈夫なのだろうか。
「いや、この世界より狂ってるもんなんてないか、ははっ……」
改めて世界の不条理さを理解させられ、苦笑いの空。
案外神様も人間とそんなに変わらないのかもしれない。
そんな空の発した声すら耳に入っていなかったようで、未だにテトは落ち込み不貞腐れていた。
空は頭を掻き、呆れたように再びため息一つ。
「あー、もう聞いてやるから、早く戻ってこい」
「ふふっ……どうせ……」
「めんどくせえなっ!いいから話せよ」
渋々といった感じだったが、どうにかテトは話を続けた。
「…………で、話は少し戻るよ」
前述の通り、唯一神が制定した『十の盟約』で、全てがゲームで決するようになった。
だがいかに唯一の神と名乗ってみても、独り遠くを眺めていては、退屈する。
まして“元・遊戯の神”なら尚のこと、ゲームをしたくなるのは、当然だろう。
そこで適当に世界をぶらつき、遊んでは帰る。それがテトの日常だった。
特に目的があるわけでもなく様々な世界を視てきたけど、どれも壮観だった。
科学が発達した世界もあれば、魔法の発達した世界もあり。
戦争の絶えない日々を過ごす世界がある一方、平和そのものの世界も存在して。
人間が暮らす世界、獣がはびこる世界、妖精、吸血鬼、天使や悪魔に至るまで。
世界広しと言うけれども、蓋を開ければそんな生易しいモノじゃない。
それはもう退屈なんてしないほどに輝きに満ち溢れていた。
そんな日々の最中、偶々視ていた世界でとある噂を耳にした。
曰く───無敵。
曰く───二八〇を超えるゲームのオンラインランキングで、不倒の記録を打ち立てた。
曰く───グランドマスターすら破ったチェスプログラムを完封した。
曰く───常軌を逸したプレイスタイルであり手を読むことが出来ない。
曰く───ツールアシスト、チートコードを使っても負かされた。
インターネット上で、まことしやかに囁かれる
少し興味を持ったからね、更に探りを入れてみた。
コンシューマーゲームやパソコンゲーム、ソーシャルゲームのネットランキングで1位を取っているのなら、そのゲーマーのアカウントは当然存在しているはず。
存在しているなら、実績を閲覧することも当然出来るはず。
けどそんな者本当にいるのか、と鼻で笑って調べれば驚きだよ。
何故なら
また誰でもその実績を閲覧出来るそこに並ぶのは、文字通り無数と表現されるべき数のトロフィーと、ただひとつの黒星もない対戦成績であるから。
そんな姿に魅せられた。すぐにでも戦ってみたいと思った。
でも、結果は惨敗。ミスを誘発させることはできたけど、出し抜くとまではいかなかった。
遊戯の神である自分にとって、はじめての敗北。それが悔しくて悔しくてたまらなくて。それで君達をこっちの世界に呼んだ。
「次は“こっちのルール”で勝つ為に、ね。だからぶっちゃけ、この世界がどーとか、わりと本気でどうでもいいんだよ。僕は僕個人の勝負を楽しみたいから。
僕が欲しかったのはただ一つ。僕の心を熱くするプレイヤーの存在だけさ」
「……なんつーか、自由というかお気楽というか」
子供っぽい。それが素直な感想だった。元々ゲームするために呼び出したとは聞いてたことだが、それにしたってそこへ至るまでが残念すぎる。子供というより、むしろガキの発想に近い。神とは一体誰を指しているのやら。
終始引き攣った笑みを顔に浮かべ話を聞き終える。
だが会話が止まることはなく、再び空が口を開く。
「そんで、続きは?」
「ん、これで全部のつもりだけど。お気に召さなかった?」
「何分かりきったことを。そもそもおまえの話、間違っちゃいないんだろうが正しくもねーだろ。隠す気もない口振りのくせにしらばっくれやがって」
指を立てて空は続ける。
「まず特に目的もなくってとこ、ゲームすることよりおまえは探すことを第一に置いてただろ」
「………」
ぴくり、と。人の目には感知するのも困難な、だが空には十分すぎる反応を示すテト。
「偶々視ていたってのはまぁ本当だろう、だが俺らとゲームして気が変わったのか、その勝敗に関係なく俺らをこの世界に呼ぶと決めた。
元々異世界にいるプレイヤーをこっちへ呼ぶつもりで、そのために世界を視て回っていた。ゲーム中の揺さぶりも、自分を理解してもらうためにわざと仕掛けた。違うか?」
「……あっはははは。いやぁーそこまでバレてるとは思ってなかったよ。君の思った通り君達が、いや君が呼ばれたのは偶然じゃなく必然。ちゃんと意味があってのことだったんだ」
不敵に問いかける空に、テトは気持ちよく大笑いして不敵に返した。
その僅かな機微を見逃さず、少しずつ、だが確実に必要であるだろう情報を引き出す。
似た相手にはかつて何度も対等に戦った、その謎の自信が空の眼に輝きを灯す。懐かしさに浸る事もなく、ただ目の前の敵へと詰め寄る。
「なあテト、笑ってていいの?おまえ、一度俺らに負けてんの忘れてね?」
「ふふ、たった一度勝てたくらいでずいぶん余裕そうだね。そんなんじゃまた足元すくわれるよ」
「はっ、負け惜しみか」
「いや?ただの事実さ。なんせ君達ならともかく、君自身は僕に一度だって勝てたことはない。そうだろ、
テトが放ったその一言で、部屋の空気が一変する。リク、確かにそう言った。聞き間違えるはずがない。
これまでのあっけらかんとした様子から、刺すような威圧感になるテト。その姿や纏う雰囲気に一瞬呑まれそうになる空だが、なおも表情は一切変えることなく、反応一つ見せやしない。それらと呼応するかのように、お互いを見つめ合う眼光はより強くなった。
だがそれが思い通りの反応でなかったためか、テトは顔に手を当て首を傾げながらぶつくさと唸り始めた。
「うーん、やっぱあんまり驚かないんだね」
自分は今どんな顔をしてるのだろうか。
怒りや憎しみといった感情は特にない。それは今更改まって言ったところで仕方の無いことで、そもそもこいつ相手にそれをぶつけたところでお門違いもいいとこだ。
だからなのかは分からないが、無表情でいることは多かった。弱い自分、惨めな心の内をさらけ出せる場所が減り、これまで以上に感情を表に出さなくなった。
テト曰く“やっぱ”ということは、おそらくある程度予想はしていた反応なのだろう。驚きはしない、これで全て繋がった。つまり───
「なるほど、そういうことか」
「……気づかれちゃったかな」
「いや、送られてきたメールの文章、あれ自体はわかっていたさ」
この世界へと呼び出す直前の、テトが送ってきたメールの数々。
最初に送られた
【魅了されたよ、君ら兄妹、生まれる世界を間違えたと感じたことはないかい?】
ゲーム終了後にきた
【突く所がエグいね、一体どんな思考してるんだい。それほどまでの腕前、さぞ世界が生きにくくないかい?】
その次の
【けして良くは感じてないはずだ。君達はその世界をどう思う?楽しいかい?生きやすいかい?】
そのまた次の
【単純なゲームで全てが決まる世界があったら───】
そして
【よいかい?目的も、ルールも明確な、盤上の世界があったら、どう思うかな?】
初めは読みづらい、というか変な文章だなと思う程度だった。ところどころ誤字に見えなくもない言葉が続いてるが、偶然か送り主の性格故のものだと考えてた。
しかし最後に届いたメール
【
見
せ
て
ご
ら
ん
。
】
「どう考えてもおかしいだろ?普通のメール文でわざわざ縦横変えるなんて」
しかも、最後に送られた文章は行間を一列ズラして持ってきている。まるでそこに合わせて読めと言わんばかりに。
つまりこのメールこそ本当に読むべきポイント。それも全てのメールを繋げることでまた読む必要があるだろう。
各メールの文章を平仮名表記に直し、頭文字から順に並べると
『
みりょうされたよ
つくところが
けしてよくは
たんじゅんな
よいかい?
み
せ
て
ご
ら
ん
。
』
初めから句点のとこまで読み進めれば
「『見つけたよリク、真意魅せてごらん。』ってな。まさかあれがそのまま答えだったとは」
「えーっ!?なんだ、もうそんなすぐ解けちゃってたのか。そりゃ確かに難しくしたつもりはなかったけど」
「だから俺もすぐ返信しただろ。『どういう意味だ』って」
最初はテトを問いただそうかとも思っていたが、そんな気も失せた。つまりこいつは俺の返信をあえて無視したのではなく、そのままの意味で捉えてしまった。
ようするに、気づいてなかっただけなんて。誰が考えるか。
自分のことは隠すくせに相手の意を汲み取れないとは。深く考えすぎた自分が馬鹿みたいで、もはや怒りも通り越して呆れてくる。
「まあいいさ。変に別の意図があるとか思い込んでたけど、結局おまえの目的はそこにあったんだろ?」
「………」
「黙るってことは図星か」
「……はぁ、わかったよ。バレたものは仕方ないし素直に負けを認める。それで、何が聞きたい?」
テトはため息をつくと、諦めたように両手を挙げて降参といった風にする。さすがにこれだけボロを出しては言い逃れはできないと踏んだのだろう。無論、空がそれを許すとは思えないが。
張り詰めていた緊張の糸が一気に緩み、その場に座る空。
終始空とテトは対等に話していたが、腐っても相手は神。しかも情報を引き出させるために空が問いただすような形をしていた。そんな状態で襲って来るテトからの重圧は通常とは比較にならないだろう。
だが会話を止めるわけにもいかないので、空はなんとか声を絞り出してテトの問いに応じる。
「いや、俺はおまえの目的が知りたかっただけだし、もう充分聞かせてもらったさ」
「そうかい……なら僕からも聞かせてくれ、今のこの世界のこと。君の本心が知りたい」
「俺の、本心……」
生きる目的も、意味も見失った心で、ただがむしゃらに逃げ続けた日々。幽霊達と、シュヴィと、文字通り命を賭して終わらせた大戦。それによって生まれ変わった、この世界。
あの時命を落とした俺は、そこでその役目を終えたと思っていた。だからその先のことは、生き延びた者達にこそふさわしい。それを今更どうこう言える資格も居場所も、俺にはない。
けれども、こんな俺にもまだ生きてることが許されるのなら、そうさせてくれた世界も悪くなかったと思える。
「いい世界になったな……ほんとに………」
あんな『
今度こそ、誰も犠牲にせず済むゲームで全て決まる世界。もう誰も死なないし、死なせない。
そんな荒唐無稽な、聞けば誰もが鼻で嗤い一笑したであろう、そんなご都合主義。
それが実際に実現する日が来るとは夢にも思わなかった。
俺がやってきたことは間違ってなかったんだと、こうなって良かったと、そう思う。
『───
そう問いかける誰かの声は、だが正面から響いた気がした。
加速し続けていく思考の中、どう答えればいいか、何が正しいのか、やはりわからない。
だがそれでも自分の本能が断じた。こうするしかなかったから、と。
根拠など、ありはしない。
延々と無限に敗北を重ね、負けて負けて負け続けてひたすら殺されて喪って、世界と引き分けて、誰にもなしえなかったことをやってみせた。
永遠に続く大戦を終わらせた、世界を救った、『十の盟約』のきっかけを作った。
たとえ間違った方法なのだとしても、その方法しか知らなかったのだから。
『───でも、
嗚呼、また今更なことを。何度だって言ってやる───
本当は全部解っている。だが解らないとしておかなければならない事実に、空はただ頭を振る。
そうさ、解りきったことだ。どれほど結果を出そうと、言い訳がましく語ろうと、
手を伸ばしても、失ったものは戻って来ない。その意味に気付かずに。いや、気付かないフリを続けて。
自分自身をペテンにかけて、シュヴィの想いをダシにして。無限の犠牲を出し続ける戦争を、終わらせる為の最後の犠牲にして。
そうやって、ずっと言い訳をしてきた己に殺意すら生じる。
世界なんて本当はどうだって良い。終結しようと、今この瞬間まで続いていようと、特に何とも思わない。
ただ気に入らなかった、それだけだったのだ。ただ好きに生きることを選んだ、それだけだったのだ。
俺は、ただ単に笑顔が見たかった。
傍でずっと笑っていて欲しかった。
それが『大戦の終結』という壮大な手段に至った。
世界など知るかと全てから逃げ出しては、笑ってくれないから。
犠牲ゼロで変えてみせると、そんな『定石』の向こう側を、愚かにも程があるような夢を、変えようと二人でした決意を。しかし、それら全てを忘れたように、目的もなくただ生きるだけの今は、果たしてどうだと言う。
「……ふざけてんのか?」
「………?」
ずっと言い聞かせてきた。今にも壊れそうな心の『鍵』を押し殺してきた。何を勘違いしてやがる。
いい加減認めるしかない。たとえ納得できなくても理解するしかない。無駄な希望は更なる絶望を招くことは一番よく知ってるだろう。
この期に及んでまだ、赦してもらおうなど。自分のしてきた事実を正当化しようなど、どれだけ虫のいい話をすれば気が済む。どこまで堕ちる気だクズ野郎。
嫌いだ。
───誰もが尊敬の目で見る、みんなが頼りにしている
───ふとした瞬間に弱い方へ、楽な方へと逃げ出してしまう
……嫌いだ。
『
ありがとう、シュヴィ。こんな俺を愛してくれて。でもおまえの好きでいてくれた
変えてみせると、変わってみせると言いながら、
仲間を救うことも。自分を抑えることも。自立することすら。
何も……何も………。
いつまで自分のしてきた事実から目を背ける。甘ったれるな。
自分なんて大っ嫌いだ。
俺には、前を向くべき理由がある。
「……すまん、何でもない」
「ふふ、どうやら心の整理はついたようだね」
「全部お見通しかよ、ったく………その、なんだ。ありがとなテト」
「どういたしまして。それでこそ君達を探した甲斐があったってもんだ」
ああ、テトには感謝している。それこそ言葉に言い表せないくらいに。
『十の盟約』を作ってくれたことや、この世界を変えてくれたことだって、本当はすごく嬉しかった。だがそれ以上に、この世界にまた呼んでくれたこと。
もう二度とあるはずはなかった、そう思っていた。
光を失った目で、半ば義務感のようなもので生きてくだけの日々。そんな日常が意味を持つようになった。誰かの為でなく、自分の意志が生きたいと思えるようになった。
だからこそ、それに応えねばならない。
テトが見たがっている景色を自分も見てみたいし、見せてやりたい。それが今、俺に残されたやるべきこと、やりたいことだから。
「今度こそ勝ってみせるさ。今の俺には途方もない話だけどよ」
「あっはは。そこはまあ、これからに期待ってことで」
あの姿の自分は、今の自分よりもずっと強い。なぜなら
それが最後は苦し紛れの泥仕合だったとはいえ、元よりステイル・メイトとはそんなものだから。
ステイル・メイトもパーペチュアル・チェックも、ほぼ必敗の劣勢から、それでも諦めず一矢報いることそのものだから。
でも、それでも。弱い今のままではそこにすら到達出来ない。一人ではまた同じことを繰り返してしまう。
だからこそ二人で一人。空と白、二人で
「なあテト、やっぱり質問というか確認いいか」
「うん、なんだい?」
「俺は知ってる、ってことでいいんだな」
たっぷり数十秒、考えるような仕草をしながら部屋を歩いて一周するテト。そして空の正面に向き合い、声を低くして軽く挑発するように答えた。
「……迂闊だったよ。でもさすがにそれには答えられないかな。
どうしてもっていうなら、僕は待ってるから」
「はっ……あくまでも報酬が欲しけりゃゲームで決着をつけろってか」
「そゆこと、それじゃ僕はそろそろ行くよ。もうじき夜も明けそうだしね」
お話出来て楽しかったよ、と。笑ってそう告げたのを最後に、テトは去っていった。
二人の間にはもはや別れの挨拶など必要なかった。それはまた遠くないうちに会えることを信じているから。絶対に追いついてみせると、自らの元へ辿り着くはずだと、互いに願っているから。
だから言うべき言葉、返すべき答えも決まっている。もうテトの影も形も見えないが、その言葉だけは届くとなぜか確信がある。
それを思いながら不敵で不遜で、負けず嫌いな笑みを浮かべて告げた。
「さぁて───ゲームを
オリジナル要素ってどうなんですかね。
原作沿いにすればするほどこの作品の更新速度は上がると思うけど、あまりにも原作通りすぎることはしたくないんですよね。いいから早く更新しろって言われたら考えるけど。
まあどっちにしろ元々遅いという事実は変わらないんですけどね。
感想待ってます!