とある交差の電光石火   作:エスル

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以前ににじファンにて連載していた作品です。
生活の関係上、ペースは遅いものの意地でも完結させようと思い、ハーメルンにて再開をしました。
文章も不安定で読みづらいかもしれませんが、皆様の勢いと想像、妄想で補っていただければ幸いです。

宜しくお願い致します!


プロローグ

「理不尽だ…」

 

一人の少年は部屋の中、『心の中』で呟く。

 

とある病気で筋肉が衰え、発声機能が失われているのだ。

 

 

実際のところ、少年はこの言葉の意味を正しく理解していない。

 

ここ最近、会っていない両親が少年を前にしてこの言葉を発していたのだ。

 

恐らく今の状況の自分にふさわしい言葉なのだろう。

 

同意することにより、両親との繋がりを感じるような気がして少年も呟く。

 

心の中で。

 

もう、かつてのようにソレを口で言葉に出来ないから。

 

 

 

少年は天井を見つめる。

 

 

身体が動かず天井しか見れないし、その天井もはっきりとは見えない。

 

白い、ということは解るのだけれど。

 

 

扉が開く、人が近づいてくる様な気配を感じた。

 

 

少年の視界にまで近づいてくる。

 

 

髪が短いから男だろうか、白衣を着ていた。

 

 

少年に近づき男は両手を広げ、何かを話している。

 

聴力も衰えロクに聴き取ることもできないのだが。

 

 

かろうじて聴こえた単語は「助かる」という言葉

 

そして、あまり見えないながらも認識できた顔は笑顔。

 

 

少年が理解、認識出来た単語、男の表情から

 

もしかしたらと心に光が灯る。

 

 

まだまだ希望は捨てたものじゃない。

 

この世界に救いはある。

 

幼いからこそ純粋に感じた光、その男に即座に縋ってしまった。

 

 

 

縋ってしまったのだ。

 

 

 

正常に視力があるならば気付いていたであろう。

子供でも本能で警戒する刺青の入った顔と、醜く歪んだ笑顔に。

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

縋った光は闇であった。

 

 

 

「理不尽だ……」

 

 

 

少年はベッドの上で呟く

 

 

 

汚れてしまっている『白いと思っていた』天井に見飽きて横向けに態勢を変える。

 

 

 

変えた態勢の視線の先には身体に直接刺された電極がいくつもあった。

 

 

 

白衣の男が来た後、あれから少年の病気は克服されていた。

 

 

 

とある少女が提供してくれた『何か』を参考に、

 

 

とある治療(かいはつ)によって。

 

 

 

治療後、目覚めた少年が今までいたのは病院ではなく、研究所という事を教えられた。

 

 

少年は研究者から『聞いた』話だと

両親が最後の希望として、20年以上技術が進んでいると言われている学園都市、

その筋ジストロフィー研究所であるここに自分を連れてきたいたということ。

 

 

そしてもう一つ、学園都市は『記憶術』『暗記術』という名目で超能力研究、即ち『脳の開発』を行っている都市であること。

 

 

 

治療の為、開発された自分の能力は『生体電気を操る能力』

 

 

しかしあくまで現段階では『自分が通常に生活できるだけ』のものであり、評価はレベル1。

 

 

最初はそれすらもうまく操れずに研究員の実験(サポート)でリハビリを行い、

 

身体も健常時と変わらなくなり、精神的に余裕が出てきた頃、

 

自分でどうにか操れるようになってからが地獄の日々だった。

 

 

 

微弱な電流から致死量寸前の電流まで。

 

 

全身に流れたかと思えば局部にしか流れないこともある。

 

 

食事よりも多い薬品の投与、時には耳から脳にまで至る電極を刺され後遺症が残らないよう、

調整された電流を長時間流される。

 

 

 

痛みに慣れない少年はいつ死ぬのかもしれない毎日を泣け叫び、堪え続けた。

 

 

 

「一体自分が何をしたって言うんだ……」

 

 

 

 

少年はただ、生きたかっただけなのに。

 

 

 

 

 

睡眠時間は自分が気絶した時だけ。その間も生体電流の実験は行われ、その電流により目が覚める。

 

他にも顔に刺青が入った研究者は何かの八つ当たりなのだろうか、自分を気絶するまで殴る、蹴るの行為に及ぶこともあった。

 

 

気絶以外では恐怖で眠ることは出来なかった。自分が寝ればまた何かされるのかもしれない。

 

 

毎日、少年はベッドの上で考えてしまう。

 

 

いつしかこの狂った実験で能力を失ってしまうのではないかと。

 

それはつまり『死』と同義。

 

 

それだけは

 

それだけは何としても避けたい。

 

 

折角この能力で普通の身体に戻れたのだ、普通(のうりょく)を手放したくない。

 

 

少年は誓う、必ずこの(けんきゅうじょ)から『脱出』する事を。

そしてこの狂った研究を、研究者達に『復讐』する事を。

 

 

ある日、そういえばとベッドに横たわる自分を上のガラスから覗き見る、同じ年くらいの少年少女たちが研究者と一緒にいたのを思い出す。

 

 

日曜日は白い髪で赤い目が特徴的な少年。

 

月曜日はちょっとカッコつけたような感じの少年。

 

火曜日はカエルの人形を抱きしめた女の子。

 

水曜日はどこかお嬢様の雰囲気がある女の子。

 

木曜日はキラキラとした目が印象的な女の子。

 

金曜日はよく思い出せなかった。

 

土曜日はハチマキをした活発そうな男の子。

 

 

毎週決まった曜日に来るあの子たちは一体なんだったんだろうか。

 

自分と同じ病気で早期治療のためという名目でここに連れてこられたのか。

 

 

それとも。

 

 

日々を生き延びること以外での思考に身を浸しつつ、珍しくその日は気絶以外で睡眠を取ることが出来た。

 

 

 

 

 

もう、どのくらい月日が経ったのかわからないが少年の身体はしっかりと成長していた。

 

 

相も変わらず電流を流される日々だったが、その時の実験は主に脳波パターンを取っていた様に思う。

 

通常は本人が意識して初めて発現されるのが能力使用の常識(セオリー)

しかし少年の能力はデータの結果、最初はサポートが必要だった能力も現在では睡眠中等の無意識下でも適応されているらしい。

 

 

どうやら無意識で発現している演算パターンの能力者達を参考にし、

自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を最適化しようとする実験だという。

 

 

少年には興味が無かった。興味があるのは研究所脱出、そして復讐の事だけ。

 

それに明日からはどうせまた電流を流されるのだ、そう考えていた。

 

 

が、この日を境に実験が全く無くなった。

 

聞けば、もう『実験の余地、価値は無い』という。

 

 

退所しても構わない、と顔に刺青が入った研究者は少年に歪んだ笑顔で話してくる。

 

 

 

ふざけるな、今まで自分達のしてきたコトがわかっているのか、

それを価値が無くなったから出て行っていいと、あまりにもふざけ過ぎている。

 

 

研究者(いじょうしゃ)達にそう言いたかった、叫んで、罵倒して

 

 

今まで自分を傷つけ続けた研究者達に牙を向け、殴りたかった。

 

 

 

しかし今まで傷つけられた身体は、殴られた顔は、無理矢理向けられさせられていた視線は、拘束されていた足は研究所の出口に向かい、走り出し、

 

 

 

嘲笑とハッキリわかる笑い声を背中にし、行動も考えも自分の理想とは違う形で研究所から脱出(とうぼう)した。




興味を持っていただければ幸いです。

ご精読ありがとうございました!
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