とある交差の電光石火   作:エスル

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以前のタイトルは雷神・風神だったのですが、原作の方でまさかの婚后さんが雷神風神コンビと言ってしまったことからタイトルだけ変更しました。

自分が考えていることと後に出る原作の内容が一致したりすると、嬉しいようなはたまた微妙な気持ちになるのは自分だけでしょうか…


超電磁砲・超空圧砲(みさか・やしろ)

「な、なんだぁ!」

 

 離れていても大きく響く音に真藤は思わず耳をふさぐ。

 白井は素早く状況を察知し、現場への態勢を整えるべく初春に指示を出した。

 

「初春、アンチスキルへの連絡ととケガ人の有無確認、急いでくださいな!」

 

「は、はい!」

 

「黒子!」

 

「いけませんわ、お姉さま。学園都市の治安維持は私達ジャッジメントのお仕事。そこでお行儀良くしていてくださいな」

 

 我もと御坂が一歩前へ出る。その瞳には自分も手助けを申し出たい意思がハッキリと映し出されている。

 しかし如何に超能力者(レベル5)の御坂美琴であっても一般人。治安を守る風紀委員(ジャッジメント)白井黒子(しらいくろこ)として、巻き込むわけにはいかない。それが彼女の矜持でもある。それを御坂も察してか、任せると言わんばかりに口元を緩め自身の行動を思い留まった。

 

「なら、私達は高みの見物ってことね、白井、油断しないように。」

 

「当然ですの、参りますわ!」

 

 惟代の後押しもそこそこに、現場に向かうため一瞬と言葉通りでその姿は消えた。

 その間にも初春は既に警備員への連絡を行っている。迅速な行動だ。

 爆発したシャッターの中から3人組の男が出てきた、黒ずくめの着衣等のお約束な姿にあれが今回の主犯だろうと真藤は確信する。

 

「おいおい、白井を見て笑われているぞ! 大丈夫なのかよ一人で? 大の男が3人だぞ?」

 

「まぁ見てなさい、何も問題は無いわよ」

 

 御坂が余裕すらうかがえる声色で答えた。

 そして白井の方向に目を向けると能力もさながら素晴らしい体術であっという間に犯人の一人が組み倒されていた。

 

 

「おおっ! 凄い! あれが有名な風紀委員式捕縛術か!」

 

「ホント、格闘技や武術のマニアね…」

 

「すごい…!」

 

「流石、黒子」

 

 興奮する真藤、呆れる惟代、驚く佐天、後輩の活躍に対してどこか自慢げな御坂。四者四様のリアクションを取っていると他の方向から初春の声が聞こえた。

 

 

 

「ダメですって! 今広場から出るのは!」

 

 

「でも!」

 

 

 

「どうした!」

 

 四人はその声の場所に向かうともう一人、バスガイドらしき制服の女性もいた。

 真藤が呼びかけると二人は息を合わせるかのようにこちらを向く。

 

「…それが」

 

「男の子が一人足りないんです。」

 

「えぇ?」

 

「少し前にバスに忘れ物したって言ったっきり!」

 

「じゃぁ、私と初春さんで」と、御坂が言いかけるも

 

「私も行きます」佐天が鬼気迫る声で御坂に懇願する。

 

「御坂、私達も手伝うわ、皆で手分けして探しましょう」

 

「そうだな、俺たち全員で探すのが一番効率がいいかもしれない」

 

 

 

 しかし真藤達は子供を捜すがバスの中も草垣の中を探しても一向に見つからない。

 

「そっちは!?」

 

「ダメです!」

 

「どこ行ったのよ…もう!」

 

 時間も少々経過している。各々が最悪の状況を想定し、焦りながら探していると

 

 

「丁度いい一緒に来い!」

 

「何? お兄ちゃん、誰ぇ?」

 

「いいから来いって! 早く!」

 

 

 探索場所から多少離れた会話のやり取りに佐天のみが気がついた。

 

 しかし状況として佐天一人。佐天涙子は無能力者(レベル0)であり、つい最近まではランドセルを背負った中学一年生の少女だ。

 相手は成人男性、一人で立ち向かったところで相手に能力があろうが無かろうが返り討ちに遭うなんて解りきっている。けれど、

 

 

(わ、私だって!)

 

 

 佐天 涙子(さてん るいこ)は見た。

 

 今日初めて会った同い年の少女が能力を駆使したとはいえ、男性を圧倒しているのを。

 何より、いつも学校では見れない表情、声をして事態を収束するために奔走する友人の姿も見た。

 負けられない、自分も何かしなくては。

 佐天は走る。少年を救出する為にその体は動いた。

 

 

「やっぱり、広場の方をもう一度さが…ん?」

 

 真藤達が付近での探索を諦めかけた頃、その声は聞こえた。

 

 

「あぁ? なんだてめぇ、離せよ!!」

 

「ダメぇえ!」

 

 

 佐天が少年を救出すべく、懸命に犯人へ抗っている光景が映る。

 

 

「あれは佐天! くそっ! この距離じゃ…惟代!『アレ』を頼む!」

 

「わかったわ、『アレ』ね」

 

 真藤が惟代に合図し、背中をトン、と押される。

 すると真藤の背中から噴射口の様に風が吹き出し、身体が弾丸のごとく犯人へ向かっていく。

 

「バカ! ソッチじゃねぇぇー!」

 

「あらやだ」

 

 悪気無しの惟代の声を背に真藤の唇はめくれ、顔は歪む程の勢いで人間弾頭として犯人に突っ込む。

 

「何だぁ、こいつ!」

 

 叫びながらまっすぐ突っ込む大きな弾は犯人の絶好の的。

 犯人の拳がカウンター気味に真藤の顔に叩き込まれ、いや刺さったという方が的確だろうか。

 

 

「ぐぇ」

 

 

 という潰れたカエルの様な声とともに真藤の鼻から血は噴き出し、崩れ落ちた。

 

「豪摩…っ!」

 

 惟代が悲痛の面持ちで言葉を吐き出す。

 

 

「真藤さん! きゃあっ…!」

 

 真藤の身を案じた佐天も気を取られ、力が抜けた隙に犯人に蹴倒されてしまう。

 

 

「佐天さん!」

 

 その光景を見ていた御坂の顔が険しくなる。数時間前とはいえ、知り合いの少女を目の前で傷つけられるのを許すことはできない。佐天の名を叫び、そして

 

「白井!!」

 

「黒子!!」

 

二人の少女に思いがけずフルネームを叫ばれた当人は身体がビクリとなり、その声の方向にギギギと音が聞こえそうに首を回し、強張らせた顔を向ける。

 

「こっからは、私の個人的な喧嘩だから。悪いけど、手ぇ出させてもらうわよ」

 

「御坂、何を言ってるの? 私だって幼馴染を傷つけられたんですもの、手を出す権利はあるわよ?」

 

「ソッチこそ何言ってんのよ! アンタのは自業自得じゃない!」

 

「あら、私のはお茶目。あの男がしたのは極刑ものよ」

 

「はぁ…もういいわ。なら」

 

 

 

「「勝負ね」」

 

 

 

 その言葉が重なったのが合図か一人の少女の身体が放電し始め、

 もう一人の少女の身体の周りに風が吹き始める。

 

「あぁっ! お、思い出した。ジャッジメントにはつかまったが最後、身も心も踏みにじって再起不能にする最悪のテレポーターがいて」

 

「誰のことですの? それ…」

 

 黒子が確保した犯人とやりとりしている中、真藤を殴り、佐天を蹴飛ばした犯人は用意していた自動車の方に逃げ出し、車に乗り込んで少女達に向かって発進する。

 

 

(ちくしょう、このまま引き下がれっかよ!)

 

 

「更には、そのテレポーターの身も心も虜にする最強のエレクトロマスターが…っ!」

 

 確保された犯人は思い出したかのように呟き、驚愕する。

 

 

(へっへへ、こうなりゃ、テメェ等まとめて!)

 

 

「そう、あの方こそが、学園都市230万人の頂点、七人の超能力者(レベル5)の第三位」

 

 黒子の説明が同時か否か、身体に電気を迸らせた少女はコインを指で弾き上空に打ち上げ、落ちてきたコインを犯人の車に向け、放つ。

 

 一方、風を纏った少女はトランプの束を取り出しおもむろに一枚めくる。柄はジョーカー。美しい指先に挟まれたカードは同じく車に向け、投げられる。

 

 

 

 二人が一連の動作を終えた瞬間、

 

 

 放たれたコインは音速の三倍で一筋の閃光となり、投げられたカードは空気が歪むほどの速度を以って、車を目掛けた。

 

 

(なっ!?)

 

 

 車に乗り込んだ犯人は気づいた瞬間、車ごと空中に浮いていることに気づく。

 

 

「『超電磁砲(レールガン)御坂美琴(みさかみこと)お姉さま。常盤台中学が誇る『雷神』。最強無敵の電撃姫ですの」

 

 黒子の足元に伏せられている犯人はあまりの出来事に声が出ない。

 自分が鉄の杭によって縛り付けられている事すら忘れてしまっている。

 

 黒子は尚も説明を続ける。

 

「そして…その『雷神』に真っ向から勝負を挑める常盤台中学の『風神』こと『超空圧砲(エアブラスト)八代惟代(やしろいよ)さん。天下無双の風撃姫ですわ。」

 

 

『車だったもの』が地面に突き刺さり、少女達は口を開く。

 

 

 

「ふん、同時…ね」

 

「まぁ、引き分けって事にしといてあげる」

 

 

 そう言い、共同作成を行ったオブジェを背に二人の女子中学生はすまし顔で髪を同時に掻き払う。

 

 雷神対風神の決着の後、警備員(アンチスキル)が到着し、事件は収束に向かった。

 

 

 

 

 

 本当に有難う御座いました!

 

 いえ、あの…

 

 なんとお礼を言っていいか、ほら、貴方も

 

 おねぇちゃん、有難う!

 

 あ、うん…

 

 

 

 

 

 その光景を少し離れた所で真藤は温かい視線で見つめる。

 鼻腔から口に鉄の味が広がってくる。事件は収まっても鼻血は収まっていなかった。

 

「痛…っててて、鼻血が止まらないな。」

 

 鼻を押さえながら真藤は考える。超電磁砲(みさかみこと)の事を。

 一ヶ月前、路上で絡まれていた娘で間違いないだろう。

 あの電撃の質は前に感じたのと同じ。

 

―――自分の生体電気と同一の(モノ)

 

 間違いなく、あの(みさか)が自分の治療(かいはつ)の素となっている。

 直感だが真藤は確信する。

 

 一ヶ月前に感じた恐怖は鼻の痛みでうやむやになっており、感じてはいない。

 そのお陰でむしろ冷静に物事を考えられる。

 

 そして一つの疑問が沸く。

 どういう経緯で、謂わば命の恩人である御坂美琴はあの治療に関わる事になったのか?

 治療後の先にあった、あの研究と称した行為(ごうもん)の事を知っていたのか?

 

―――自分があの頃毎日泣き叫んでいる事を知っていたのか?

 

 腹の底から出てくるようなドス黒い思いと共に。

 

 掘り下げるとキリが無い。しかし今日見た御坂美琴と言う少女は人の事を思いあって動ける娘だ。悪意があって関わるということは絶対しない。自分はあの娘に感謝しなければいけない。今はそう思い込み、疑問を振り払うかの様に頭を振った。

 

 

「全く…、無理しすぎよ」

 

 

 気持ちが落ち着けた直後、後ろから惟代に声を掛けられる。心配しているのは判る。が、

 

「いやいや! お前が『アレ』の意味を取り違わなければこんなにはならなかったぞ!?」

 

「もう、見せ場が全く無かったからって騒ぎすぎね、少しはケガ人らしく口を閉じなさい」

 

「おいおい!? 少しくらい言わせてくれよ! そりゃお前らは電気とか空気を放出して犯人確保! 俺が放出したのは鼻血だけだよ!? お前に飛ばされて、犯人にぶっ飛ばされてだぞ!?」

 

真藤が興奮し鼻息を荒げ、惟代に向けて『超塵紙砲(はなのつめもの)』なるものを発射し、ソレは音速も超える筈も無く、汚らわしいモノを見る目で躱されている所、またもや声を掛けられた。

 

 

 

「真藤!」

 

「うぉ!? 黄泉川先生? どうして?」

 

「どうしてってアタシも警備員(アンチスキル)だ、通報があってこうして駆けつけたわけじゃん!」

 

「そういえばそうだったな…」

 

「それにしても真藤、やるじゃん!」

 

 あまりの嬉しさからなのか、包帯の巻いた手で背中をバンバン叩く黄泉川。真藤はムセながらも返答をする。

 

「違いますよ、俺は殴られただけでやったのはあそこにいる四人組とここにいる俺の幼馴染ですよ」

 

「そうじゃない、逃げずに立ち向かったじゃん! 見ていないけど私にはわかる!」

 

「…でも」

 

「でもも何も! 結果はどうであれ、そのケガが立ち向かった証拠! 危険に身を投じたのは反省すべき点だけど、それを含めても私は嬉しいじゃんよ! 今日一日で随分成長したじゃん!」

 

 笑顔に一片の曇りも無し。本当に疑っていないのだ。見てはいないが真藤が犯人に立ち向って、出来た傷だという事を。生徒の行動の変化にしっかりと気づき、それを評価してくれている。敵わないなと思いながら真藤は救われた気持ちになり、表情が緩む。

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

「豪摩、いい先生に出会えたようね」

 

 惟代も微笑む、この会話で黄泉川の人となりを感じたのだろう。

 

「あぁ。さて、帰るとするか」

 

「何言ってるじゃん、これから一般の協力者による事情聴取じゃんよ?」

 

「えっ? 俺はこれからスーパーのタイムセールがあって…もうギリギリなんですよ!」

 

 まずい、と真藤は焦る。ここでタイムセールを逃すと『晩御飯(ライフライン)』が絶たれてしまう。成長期真っ盛りの少年としてはこの上ない死活問題だ。

 

「そんな事は気にしない! お前の成長に表して、晩御飯はアタシがご馳走するじゃん!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「豪摩、私は寮の門限があるから付き添えないけど失礼の無いようにするのよ?」

 

「あぁ、わかってるよってお前は俺の母さんか!」

 

「よしよし、それじゃまずは事情聴取だ。お二人さん、宜しく頼むじゃん!」

 

 その後の事情聴取を終えた真藤は惟代と別れ、黄泉川に連れられたのはファミレス等では無く黄泉川の自宅。どうやら最近新しい調理法を考え付いたとの事で味見して欲しいとの事。料理も趣味である真藤にとっては自分もスキルアップするチャンス。真藤は楽しみにどんな料理かと楽しみに待ち、出てきた器具に対して愕然とした様子で言葉を漏らす。

 

「何てことだ…何てことだ…!」

 

 あまりの事に二回呟く。こうして七月十六日晩、真藤の腹は炊飯器のみの調理によるフルコースで満たされた。

 

 

 




本来なら黄泉川先生は危険に首に突っ込んだことに対してもっと怒るようなイメージがありますが…ここではやや態度を軟化してもらいました。

惟代と婚后さんの絡みはどうしようかなぁと割と真剣に悩んでいます。

今回もご精読ありがとうございました!
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