とある交差の電光石火   作:エスル

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今回も更新が遅くなってしまいました…
次回こそはなるべく早く更新を…

しかし今話は現在最長の文字数でお送りします!

それではどうぞ!


成長(へんか)

 瞳は深い青。髪は長めで色は漆黒の少年が学校の廊下を走る。

 遅刻の時刻にしてはまだ余裕の時間帯にこの校則破りを行うのは、朝のHR前にクラス全体で行うためのとある理由があるからだ。

 かくして青い瞳の少年はそのまま飛び込むかのような勢いで教室に入る。

 

「悪い、遅くなッた」

 

 小さく息を切らしながら各クラスメイトに挨拶をする。自分もクラス全体の行いに参加するため己の机に向かい、荷物を置く。各生徒が作業についている中、とある三人だけが席について微動だにしない。

 それは正に芸術……とは言いがたい微妙な光景。

 その光景を作り出している三人に作業へ向かう途中の少年は声を掛けられた。

 

「おはよう、久瀬(くぜ)。珍しいなこんな時間に」

 

 最初に声を掛けてくるのは眼鏡の少年。

 

「ちょッとしたボランティアだ。それよりちゃんと3人とも席に着いてるじゃねぇか」

 

「よう、優等生クン。言われた通り皆のジャマはしねーよ」

 

 ややトゲのある呼称で返事したのは天然パーマの少年。

 

「良い心掛けだな、劣等生サマ。何があッたんだ?」

 

 顔をしかめる久瀬。すると他に席に着いていた赤髪の少年も含め、三人は一斉に顔を見合わせる。笑顔で示し合わせるかのように、秘密を共有するかのように「「「なぁー」」」と合唱する。その光景に思わず「うッ」と久瀬はたじろぎ、三人を別の生き物かのように見やった。

 

 当の3人はかなりのドヤ顔でこちらを見たままだ。何も言い返せない。いや、言い返さない。久瀬は黙ったまま他のクラスメイトの元へ向かう。その途中、どこかで聞こえるかどうかの大きさで声がした。

 

 

「気持ち悪い」

 

 

 

 

 時間は過ぎ、昼休み。

 

 朝は微動だにしなかった三人が世話しなく動いている。この学校の中で唯一とも言える楽しみの時間なのだ。クラスでは3馬鹿と言われる三人が各々の昼食を用意し、その中の眼鏡の少年、幸徳井が二人の弁当の感想を述べる。

 

「赤髪は……スーパーで買った惣菜と箱一杯に詰めた日の丸弁当か。流石米屋で下宿しているだけあるな」

 

「そうでぃ! おかずについては仕方ねぇな! こうやって用意してくれるだけで御の字だぁな!」

 

「なるほどな、それもそうだ。真藤(シン)は……昨日の残り物を詰めた感じだな」

 

「まぁな、これも節約術の一つだよ。特に今は夏だ、腐らせないように効率よく食す。これが生活の知恵だ」

 

「その意識見事! さて今日の俺の弁当は姉が作ってくれたものだ。どんなものかな?」

 

「だからそんなにテンションが高かったのか。いきなり他人の弁当を評価してきてよ」

 

「オイラ達のをそんなに言うんだからよぉ、よっぽどじゃねぃのかい?」

 

「いや、俺も作ってもらうのは初めてだからな、つい嬉しくて……気分を害してしまったなら申し訳ない」

 

「別にいいけどさ……まぁ折角だ。俺たちも見させてもらうぜ?」

 

「もちろんだ。さぁ、とくと見るがいい!」

 

 幸徳井が自分の弁当の箱を開ける。

 開ける本人の顔は輝いている。

 他の二人もどんなものかと好奇の目を向ける。

 仰々しく弁当の蓋に手をかけ、蓋は徐々に開かれ、中身が三人の目に映った。

 

 そして

 

「「「なん……だと……」」」

 

 目の前の弁当箱の中身はお菓子の詰め合わせ。箸は備え付けられているのに。

 内容はポテトチップス(のり塩)、ポッ○ー、じゃが○こ、他にいちご味の……彩りとしては完璧だがもう見てられない。

 二人は目を背けるものの、それでも俯いているのが判る幸徳井に何か声を掛けようと言葉を捜していると、

 

バリバリ、ポキッ。

 

 何か音が聞こえる。

 二人は身体がビクリとなったがすぐに状況は察した。

 弁当(おかし)を食べる幸徳井の心情、如何程のものか。

 逆に声を掛けないのが友情と信じ、二人も静かに弁当を食べはじめた。

 この日の弁当の味付けは何故かいつもより塩味が強かったという。

 

 無事、静粛に食事を終えた三人は残りの時間をとある噂話に費やした。

 

「なぁ、そういえば真の字、幸の字。『幻想御手』って知ってっかい?」

 

「何だ? それは?」

 

 常時能力レベル1、天然パーマはレベル5、真藤豪摩が反応する。

 

「何でもよぉ、それを使うだけで使用者のレベルがあがるっつーシロモンらしいぜぇ?」

 

「へぇー、それはすげぇな」

 

「その『幻想御手』があって、レベルが上がったら二人ともどうする?」

 

 そこで先程の主役(ひがいしゃ)、幸徳井が口の周りにチョコがついたままで聞いてくる。

 

「うーん、奨学金が上がって生活が楽になるとか……もっといい学校に転校するとか?」

 

「特にレベルがどうこうするって気はねぇなぁ」

 

「まっ、そりゃそうだよな!」

 

「「「AHAHAHAHAHA!!!」」」

 

 全くの現実味を帯びない与太話に花が咲き、能天気な3人の昼は過ぎていく。

 

 

 

 

 

 学校の授業を終え、太陽の光により運動部の汗の如くギラギラ光り、風でクルクル回る風力発電の三枚プロペラを眺めながら3バカは下校している。

 

「学校も終わったし、これからどうする? ゲーセンにでも行くか?」

 

「悪いな、昨日に引き続き用事があるんだ」

 

「すまねぇ、オイラもなんでぃ!」

 

「何だ、また手伝いか?」

 

 歯に青のりがついたままの幸徳井が赤髪に問う。

 

「それとはちっとばかし違うんだけどよ、んじゃあな!」

 

「そうか、またな。じゃあシン、俺もこれで」

 

「おう! じゃあな! ちゃんと歯ぁ磨けよ!」

 

 二人と別れた真藤は一人下校の道を辿る。今日はこの連日ほど気温も高くは無く、風もいい感じで来ている。たまには一人でブラブラ、フラフラしながらうろつくのもいいだろう、そう思いながら、様々な店を回りめぐっていると

 

「あら、豪摩じゃない」

 

 ビュウ、とさっきよりも一際強い風が巻き起こった後、灰色のプリーツスカート、半袖のブラウスに袖無しのサマーセーター。名門・常盤台中学のお嬢様である『はず』の少女の姿が見えた。

 『はず』とはとても中学二年生とは思えないプロポーションの持ち主だからだ。

 同年代では平均以上の身長で且つ、成人の女性でも羨ましがるようなメリハリのある体型。

 更にロングの黒髪のせいで印象は大人びており私服であるなら間違いなくそこらの大学生に見えるだろう。

 

「おう、惟代か。どうした?」

 

「たまたまよ、一人でブラブラしてたの、洋服でも見にでも行こうかと思って」

 

「常盤台は休日でも制服着用指定だろ? 前に言ってなかったか?」

 

 常盤台中学は休日でも制服で外出するという校則がある。それなのに何故服を買うかを疑問を投げると、

 

「そんな事言っても欲しいものは欲しいわ、それに夏休みに帰省する時とかの為もあるしね」

 

「成る程な、それもあるか」

 

「豪摩は何してたの?」

 

「いや特に、同じくブラブラしてただけだ」

 

「そう、それなら取り敢えず荷物持ちに付き合いなさいよ」

 

「ったく……わかったよ。まさか三日連続でこうなるとは……」

 

「こっちが近道なのよね」

 

「おい、そっちは」

 

 真藤は惟代に方向変換を呼びかけるがズンズンと先を歩いていく。

 

 そこは第七学区三九号線・木の葉通り

 

 通称「ケンカ通り」

 

 表面は賑やかだが、大きな通りを外れると裏との接点が多いとウワサされている場所だ。

 現にここでの騒ぎは日常茶飯事であり、不良の巣窟でもある。

 そして、いや、やはりというべきか。

 

「おいおい、常盤台のお嬢様がこんなところに何の用だ?」

 

 と、明らかにこの日がまだ昇っている中、酔っ払った裏路地の不良たちが声を掛けてきた。まだ通りに入って一分も経っていないのにだ。アルコール臭い息で二人の前後道を塞ぐ様に近づいてくる。やめろ、と真藤は制止するが不良は意に介さない。

 

「おいおい、それは出来ねぇな、折角常盤台のお嬢様がいらっしゃったんだ、丁重におもてなしをしないとなぁ」

 

 下品に笑う不良たち、ため息をつく惟代の肩に不良の手が回される、その瞬間一人の不良は宙に舞った。

 

「オイ、何してくれんだぁ!?」

 

「あら、ごめんなさい。でも臭くて薄汚い格好で気安く近づかないで欲しいわね」

 

「だからやめろと言ったんだ……」

 

 諫言した相手は不良へではなく、惟代へ向けての言葉だった。

 

 真藤が聞いていたのは惟代は空気や風などを操る系統の能力者だということだ。

 超空圧砲(エアブラスト)と言う通り名がそれを物語っている。

 更に御坂美琴といった超能力者(レベル5)とも真っ向に勝負を張れると最近の話で聞いた。

 そんな能力者が暴れれば被害は推して知るべし、だ。

 真藤は一早く惟代の気配に察知して制止を試みたが不良に風撃をお見舞いし、失敗に終わる。

 そのせいかさっきまで笑っていた不良たちが急に顔つきを変え、警戒、臨戦態勢になり、二人を取り囲むようにしている。

 

「はぁ、だから言ったのに……」

 

「いい? 豪摩。私を守りなさいよ?」

 

「お前がケンカ売ったんだろ!?」

 

「それもそうね。なら人間ロケットでもやって仕留めていこうかしら。目の前に弾もあるし」

 

 惟代はニヤリと真藤の顔の方を見る。見られた少年は一瞬で青ざめた。

 一昨日の銀行強盗の苦い記憶が鮮明に思い出される。弾は恐らく、いや確実に自分だろう。簡単に方程式が導かれ、即座に答えた。同じ身を削るならあの方法は避けたいがために。

 

「是非守らせて下さい」

 

「宜しい。その言葉を待っていたわ」

 

「っても俺は普段逃げまくっててケンカに自信は無いしな……惟代、アレをやってくれないか?」

 

「いいわ、人間ロケットね?」

 

「だからそれじゃなくて! あっち!」

 

「冗談よ、わかっているわ。これで一つ貸しね。」

 

 がめつい、なんて今の状況で惟代に言ってしまうと即座に人間ロケットの弾になる。

真藤は返事をせずにスルーをした。惟代は都合よく無言を肯定と受け取り、真藤に手をかざす。

すると真藤の身体を締め付けるように空気の帯状の様な物で覆う。

 

空圧包帯(ブーストテーピング)

 

 超能力がモノをいう学園都市において、自分の能力が生きるためにしか使われない、ある意味『無能力者』の真藤の為に、惟代が自身の能力で創りだした身体補助的な能力操作の一つである。

 これにより真藤は大幅に運動性が強化され、自分達を囲む不良集団たちを蹴散らしていく。幸い不良たちは無能力者の為、拳や棒などの獲物を使うくらいで身体が強化された真藤の相手ではなかった。

 何人かの不良を倒し、行く先の道が開くと惟代はスタスタと先を行く。本当に自分では手を出さないらしい。後ろを振り向かない惟代に真藤は何度目かもわからないため息をつきながらも残りの不良を疾風の如く蹴散らす。

 

「もういい、俺がやる」

 

 と、もはや3分の2を倒したところで残りの集団達が道を開けるかのように一人の男が出てくる。真藤よりも、いや、もっと言うと他の不良たちよりも背が低い。一番低いだろう。しかし、筋肉はがっしりと服の上からでも判る位ついており、見るからに自信が溢れている男であった。

 

「なかなかやるじゃないか、お前も身体強化系か?」

 

「まぁ、そんなところだ」

 

 真藤の能力は生体電気の操作だ、敵方の人間にそうそう話すこともない。

 

「そうか……なら丁度いい、同系統同士『幻想御手』(レベルアッパー)でレベルアップした俺の力、受けてくれないか?」

 

 真藤は『幻想御手』(レベルアッパー)の言葉に反応するがその瞬間、男の両足がハッキリと目に判るほど膨脹し、矢のような速度で真藤に迫る。辛うじて避けるが、先程まで話していた距離程の間合いは無い。男は足の筋肉が収まり、次は腕の筋肉が膨脹した。

 

「何だよ…! その能力は!」

 

「俺の能力は『部分強化(マッスルポイント)』だ。まぁ全身を増強する事も

 出来るようになったんだが、動きづらくてしょうがない。だから敢えて部分部分で留めてある」

 

 そういいながら強化された筋肉の塊が真藤に向かって飛んでくる。これも拳がかすり、服を破かれながらも避けた。避けた拳の行き先はビルのコンクリートの壁だが難なく破壊し、中にある鉄筋もひしゃげている。ただでさえ鍛え抜かれている筋肉を強化させているのだ。その威力は言葉通り正に殺人的。

 真藤はそれを見て背筋を凍らせる。

 

(冗談じゃねぇ! あんなの一発でも喰らったら身体がバラバラになっちまう!?)

 

 ビビリ根性が顔を出した真藤の視線の先は惟代。だが惟代はこちらを向かないまま先を歩く。

 

(うぉおい!)

 

 心の中で叫び、気がついたときには片足・片腕を漲らせている男が迫ってきていた。

 

「どうだ? こうやって全身を自由自在に強化出来るんだ。超能力者(レベル5)とは言わなくとも大能力者(レベル4)は行くだろう。これからは『全身筋肉(マックスビルド)』とでも名乗ろうか」

 

 相手は余裕であり、こちらには余裕が無い。

 本来ならば能力強化後の二人には総合能力的には差が無い。しかしこの精神的余裕差が明暗を分けていた。

 真藤が既に気がついたときには目の前に『全身強化』が身体に拳を貫かせようとしていた。避けれない。そう判断した真藤は苦肉で最善の策として身体の前に両腕をクロスさせ、相手の攻撃に備える。『全身強化』は気にせず拳を叩きつけ、真藤は吹っ飛び、壁に激突してしまう。

 幸い、真藤の全身を覆う『空圧包帯』は衝撃からも身を守るエアバッグの機能も備えている為に出血等はない、が、やはり壁を砕き、鉄を曲げる威力だ。そうそう衝撃を完全に吸収しきれない。

 真藤は脳震盪を起こしてしまったのか、ボンヤリする頭で瞬間的に自分の状況を確認する。

 

(……血は出ていない、骨も折れていないか。でも背中に激痛、腕がしびれて手があがらねぇ)

 

 状況は芳しくない。更に状況が悪化する。

 先程まで真藤の身体を覆っていた『空圧包帯』の効力が切れたのだ。

 

(ウソ……だろ?)

 

 愕然とする。相手は状況に気づいていないのだが気づいていないところで逆転の手があるはずも無い。ましてや先程の『空圧包帯』を覆っている状態でも不利だったのだから。

 

「どうした、これで終わりか?」

 

『全身強化』が腕を増強させて近づいてくる。もはや手を伸ばせば捕まえられる距離だ。

 

 後ずさろうにも既に背中は壁についている。もうダメか。そう思った時。

 バチン、と大きな音がした。

 真藤は音のした方向に目を向け、男の動きも止まる。

 

 

「ったく、こんなところで何やっているのよ」

 

 

 先程まで見ていた灰色のプリーツスカート、半袖のブラウスに袖無しのサマーセーター。

 しかし今は着ている人間が違う。

 

 その人間は、少女は。

 学園都市、二三〇万人中、七人しかいない超能力者(レベル5)の一人で序列は第三位。

 中学二年生にして名門常盤台中学のエースに君臨する少女。

 学園都市最強の『電撃使い』でもあり、異名も兼ねたその能力は『超電磁砲(レールガン)

 

「御坂、美琴……」

 

「そう、御坂美琴サマよ? さっきの私の質問は?」

 

「見ての通りだ。『幻想御手』とやらを使用した偽大能力者(レベル4)にやられている」

 

 『幻想御手』の言葉に先ほどの真藤と同じく美琴が反応するが気にせず言葉を続けた。

 

「でもまぁ心配するなよ? ここから逆転の一手があるからな、そのまま気にせず帰っとけ。それに」

 

 真藤はニヤリと笑って言うが明らかに虚言、強がりの言葉。

 逆転の一手など、無い。

 しかし惟代は勿論、美琴にも自分の代わりに戦わせることはしたくなかった。

 能力(チカラ)は惟代や美琴の方が上だ。実際に戦わせれば恐らく呆気なく勝負はつくだろう。

 それでも。

 先程後ろを気にせず歩いていく惟代に心の中で留めた真意はそこにある。

 

 何でだろう。

 

 真藤は自分に問いかける。

 今まで臆病で逃げ癖のあった自分がこの様な行為をするなんて。

 前ならばあっさりと声をあげて惟代に、御坂に助けを求めていたはずだ。

 ここ最近、黄泉川との補習の時からそうだ。

 

 あの時から。

 

 自分は何の為に発現した能力 『現実覆し』(リアルトリーズナー)で生きているのか。

 研究者が皮肉でつけた能力名に縋って、逃げる為か?

 違う。今を、これから未来(さき)を生きていく為に、戦う為に。

 それを黄泉川は体を張って教えてくれた。

 真藤は壁に寄りかかるようにして何とか立ち上がる。

 

「ありがたい人生の教えを賜ったばかりでね、早々に他人にケツを任せたくないんだよ」

 

 ましてや、幼い自分を死の窮地から救ってくれたと思う少女にそんな情けない姿を見せたくないから。

 

「何よ……」

 

 御坂美琴は機嫌が悪かった。

 それというのも真藤たちは後日ニュースで知ることになるのだが、この時間から少し遡り虚空爆破事件という出来事が発生しており、美琴はその事件に巻き込まれていた。

 解決はしたものの、美琴やその周囲の窮地を救ったのは『無能力者』(レベル0)の少年。

 しかし救ったという功労を振りかざすことなく少年は「皆無事だったのだからそれでいい」と少年は切り捨てる。

 美琴はその言葉を聞いた時に『超能力者』(レベル5)という事がちっぽけに思えてしまった。

 

 そして少なからずそれを誇りにしている自分も。

 

 事件解決後、もやもやとした気持ちで街を歩いていると今度は裏通りでケンカをしている。

 片方は見知った顔。聞くと『幻想御手』でレベルが上がった大能力者にやられているとの事だ。

 助けよう、そう思った時には「心配いらない」と『低能力者』(レベル1)の少年は痛みで引きつった笑顔で言い、立ち上がろうとする。

 強がりとわかっている言葉を聞き、御坂美琴は思う。

 

 『超能力者』(レベル5)とは一体何か?と。

 

 『無能力者』や『低能力者』の少年は年上だ。

 だが、能力の優劣で立場が決まる学園都市では年下である自分の方が優秀なはずだ。

 そして少年達の言っている内容も違うのも理解が出来るが、何故か言葉は重なる。

 それは二人の言葉の根本にある『能力よりも大切な強さ』が見えていたからだ。

 更に御坂美琴は考える。

 

 自分には持っているものなのか?

 

 虚空爆破事件の際、幻想御手で大能力者(レベル4)になった主犯の少年に出会い、自分はこう言った。

 

 『例えレベル1でもアンタの前に立ちはだかる』と。

 

 現実にレベル1の少年がこんなにもボロボロになりながらレベル4の人間に立ち向かっている。

 自分には出来るのだろうか?

 実際には自分はレベル5だからわかるはずも無い。やりきれない思いが駆け巡り、更に機嫌は悪くなる。超能力者(レベル5)の一人で序列は第三位ではあるが、中身(せいしん)は十四歳の少女なのだ。

 少女は反抗するかのように発言する。

 

「そう? 関係ないわよ。見たところ身体強化系の能力者でしょ? レベル4なら手加減もしないわ。一撃で終わらせてあげる」

 

 雷撃の槍。御坂美琴の得意技。

 電流の弱い、飾りの高圧電流ではなく本物の雷撃。

 強力な稲妻を額より放出し、数億ボルトのも及ぶ雷撃を一直線へと飛ばし『全身強化』へ襲わせる。

 しかし、『全身強化』は美琴が何かを仕掛ける動作に気づき、

 とっさに強化してある腕で思うように動けない真藤を引きずるように持ち上げ、盾にした。

 速度は優に音速を超え、更に高速の域に達する雷撃の槍は『盾』に直撃した。

 

「え!?」

 

 美琴は頭が真っ白になり、一瞬何が起こったのか理解できなかった。

 

「おいおい、こんな状況において能力の『事故』で仲間が巻き込まれてもそれは想定内だろ?」

 

 『全身強化』の口元が歪む。真藤はピクリとも動かない。身体は持ち上げられ、全身がダランと脱力したまま。物を落とすかのように手を放されるとドサリと倒れ落ちた。

 甘かった。美琴が戦慄する。雷撃の槍は本来レベル4へ向けて放ったものだ。いくら電撃使いの真藤が電撃に耐性があるといってもレベル1では到底耐え切れるものではない。

 浅はかな考えで首を突っ込むと碌な事にならない。美琴が思い知らされた瞬間だった。

 

「豪摩!」

 

 後ろから追いついて来なくて様子を見に来た惟代もこの状況を把握したらしい。

 

「御坂ぁ……なんて事やってくれてるのよ……!」

 

 美琴はたじろぐ。同じ歳なのにいつも大人びていて、第三位の超能力者の自分にも媚びず、恐れず、卑屈にならず、対等以上に接する八代惟代が。

 今は違う、あの整った美しい顔に眉間にシワを寄せ、犬歯をむき出しにして明らかに怒りの感情を向けて怒っている。

 

「そう心配するな惟代、大丈夫だ。さっきも御坂に言ったがここから逆転の一手があるからな。」

 

 突然、真藤が何とも無いかのように口を開く。今度は虚言や強がりではない、確信にも似た口調でだ。そして立ち上がり、自分より背の低い『全身強化』を笑顔で見下ろす。

 『全身強化』は訳がわからず真藤から恐怖にも似た感覚を感じ、後ずさりする。

 確かに自分は目の前の少年を盾にして雷撃の槍を防いだ。何故、こうもピンピンしているか理解できない。

 

「安心しろ、死体じゃねえよ」

 

 真藤は唖然と見ていた2人にも笑顔を向ける。その隙といわんばかりに混乱した『全身強化』が拳を放つ。

 落ち着いた動きで真藤は攻撃を両手で円形を描くように受け流す。そして受け流した力を利用して、螺旋の軌跡で返すようにして打撃を放つ。そのまま自分の力も利用された『全身強化』は吹き飛び、壁にぶつかり気絶した。

 

「世界の武術・最強必殺技全集、奥義其の二~八卦掌・天馬行空(てんまこうくう)~ってヤツだ」

 

「豪摩!」

 

「アンタ!」

 

 ふぅ、と一息ついた真藤の元へ、学校での通り名は『雷神』『風神』と呼ばれる2人の見目麗しい少女が駆け寄ってくる。

 こんな嬉しい、美味しいシチュエーションは中々無いはずなのだが、通り名を考えると何故か苦笑いしか浮かばない。

 

「あぁ、身体は大丈夫だ。御坂、さっきは助けてくれて有難うな」

 

「……っ!」

 

 今更ながら感じてきた痛みで顔が引き攣りながらも美琴に対して真藤がお礼の言葉を述べると惟代の表情が強張る。

 

「なっ、あたしは別に……そうよ! さっきの出来事といい、前から聞きたいことが」

 

 御坂が真藤に問いただそうとした時、ビュウ、と強い風が吹いた。

 美琴は思わず顔を腕で隠し、腕を下ろした時には2人は見当たらなかった。

 

 

「おい! 惟代! どうした!」

 

「予定が変わったわ、今日は帰る」

 

「はぁ!? なら別に俺はそのまま置いてくれても良かったぞ? 御坂も話があるみたいだったし」

 

「怪我したでしょ、だから送ってあげるのよ。御坂と話したいなら文字通りこのまま落としていくわ」

 

「お気遣い誠に恐れ入ります、是非送って下さい」

 

 現在、真藤は惟代の能力で空を飛んでいる。格好としては『空圧包帯』で強化した惟代が真藤を持ち上げ自身の能力で浮遊し、移動という形だ。

 惟代の突飛な行動にいつもの事かと諦観し、先程の出来事を思い返す。

 

(御坂の電撃を受けた後……頭の中がスッキリしたというか拓けたと表現するか……今も身体が活性化しているみたいだし、実際に相手の攻撃も避けるのがギリギリだったのをハッキリと捉える事も出来た。一体どうなっているんだ? 研究所で電流を流された時とは全く違う……)

 

 散々身体を弄くられた過去を振り返り、すぐに止める。考える事では無い、少なくとも今は。

 

(能力といえば、本当にあったんだな『幻想御手』)

 

 振り払うかのように思考を本日の昼休憩にも挙がった話題(レベルアッパー)に変える。

 真藤はある意味効果を体験した。

 その上で推察する。

 あれ程効果的なものなら画期的な研究としてニュース等にも大々的に流れるはずだ。

 しかし実際に広まっているのはウワサ程度。それに使用していたのは裏通りの不良。

 研究褒賞としては明らかに報われない結果だ。

 では一体誰が研究して、何の為に広めたのか?あまりにも欠片(ピース)が足らなさ過ぎる。

 

「まぁ……風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)じゃあるまいし、考えても仕方ないか」

 

 

 

天然パーマの少年は頭を掻き、少女に抱えられ夕焼けの学園都市の空を飛ぶ。

 

 




バトル描写については本当に難しいと感じるこのごろです。

今後の流れからも増える予定なのに…
もっと精進したいと思います!

ご精読ありがとうございました!

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