それではどうぞ!
少女は自室の湯船に身を沈め、目を閉じる。
また幼馴染の危機をアイツが助けてしまった。
また自分で救えなかった。
少女は重く息をつき、昔に耽る。
―――数年前
少女の幼馴染はとある病気にかかっていた。
詳しいことはわからなかったが命に関わる病気だという。
少女にとって幼馴染は全てだった。
家が近く、親同士が知り合いということもあり
いつでも、どこでも一緒に二人は毎日を過ごしていた。
離れていても、友達から虐められて泣いていればすぐに飛んできて守って、助けに来てくれる。
彼女にとって幼馴染は大事な友達であり、家族であり、ヒーローでもあり、それは例え幼くともハッキリと意識出来る初恋でもあった。
ある日、幼馴染は病院へ入院するという。
入院する前は徐々に家にいることが多くなり、次第に寝たきりの状態になる。
それでも、彼女は幼馴染と居れる、会えるならばと特に疑問を持たなかった。
それは入院しても変わらず、毎日病院へ親を引っ張っては見舞いに行った。
お見舞いも行くことが出来なくなったのは、それからしばらくしてから。
どうやら遠くの所に入院する。これからはもう幼馴染と会えないとの事だった。
少女は両親に聞いた
どこにいったの?
少女はせがんだ
あたしもそこにいきたい。
少女は願った。
あいたい。
少女の両親は悩んだ。
病気の内容は知っている。それがどれだけのものなのかも。
そして少女に教える。病気の内容を。幼いながらも理解してくれることを願って。
聞いた少女は両親にこう答えた。
あたしがなおしてあげるの。
だからあたしをそこにつれていって。
少女は
小さな頭の中にあるのは『幼馴染に会いたい』ただそれだけ。
数年後
少女は学園都市で能力者となっていた。
あれから両親の反対を押し切り、望み通りの場所に来れたが幼馴染に会う事は出来なかった。
学園都市に一人でやって来た幼い少女に頼るべき者はおらず、探す術は無く周囲に翻弄され続けた。
そして少女は能力開発を受ける。
自分が幼馴染を救う
会えない幼馴染を想い、儚くも少女は未だ願うが望んでいた
大切な幼馴染を救えないのなら、そんな能力に興味は無い。
少女の中の一つの
だが、思いに反して能力の成長速度は著しいものがあった。
在り来たりな能力だが、いずれはもっと大きい規模で繊細な操作が出来るかも知れないと有望な将来性を買われ、研究協力の依頼をしてくる研究者達も出てきた。
少女は幼馴染の手がかりが掴めるかもしれないと、規模の大きい研究所へ身を
既に手にしていた本来の能力を見せびらかす気も無く、ただ利用する為だけに。
研究所への関わりが出来てから色々な事を理解し、得た事が沢山あった。
幼馴染の病気の詳しい理解。
その病気へのアプローチは、ここ学園都市ならではの治療と言う名の開発・研究。
中でもよく懇意にしてくれる女性研究者がいて、様々なことを教えてくれた。
優しいと言うと必ず、私は甘いだけ。と返されていたが。
ある日、女性研究者から待望の幼馴染の情報が手に入る。
少女は飛び掛るようにその話題に食入る。
話を聞くと既に少年の治療は成功していたという事。
少女はホッと胸を撫で下ろす。
無事だったのだ。また会えると。
その喜びは計り知れない。
そして、幼馴染を救ったのはとある少女。
詳しくは少女のDNAパターンを参考に
少女は嫉妬した。医者や研究者ならば仕方が無いと思う。
だが解決策の糸口が、治療のための希望の光が、救いが。
自分の見知らぬ、同じ歳の同じ少女であったいうことに。
更に話は続く。その
それも最近で一通り研究し尽くされ、価値は無いということで
もっとも研究者達は探す気も無いらしい、とも。
少女は絶望した。
長い間幼馴染に会えなかったが、それでもいつか会うために
それだけを希望としていたのに。足元が崩れていくような心境。
もう限界だ。
こんな話、聞かなければよかったのではないか?
聞かなければ未だ自分の想像の中でいくらでも幼馴染と自分の再開姿を描けたのに。
少女の何かがガラガラと音も立てず崩れ落ちていく。
そんな中、女性研究者が言葉を置いて離れていった。
私は優しくなんてない、甘いだけ。とそれは寂しげで。
少女は雨の中、濡れたまま街を歩いていた。通常ならば能力を使い雨を避けるが、それも今はしたくない。
ふと路地裏に目が入る、路地裏は屋根があり、雨宿り出来るスペースに少年が一人、ひざを抱えてうずくまっている。
服装は薄汚れており、ところどころボロボロだ。
顔は下半分は隠れて見えないが、その目と特徴的な髪には見覚えがあった。
いや、毎日夢見ていたものであったというべきか。
少女は震える口で声をかける。少年は顔を上げ、うつろな表情で少女の名前を呟く。
お互い成長していても誰かはわかっていたのだ。
その瞬間、少女は雨よりも激しくしかし太陽よりも輝く涙を流し、少年を抱きしめる。
やっと出会えた。
もう離さない。
これからは自分が守り、助ける。
あの時の自分がそうしてもらった様に。
少女は自分を磨くを決心する。
幼馴染を守り、
年上の幼馴染につりあう為、口調、カラダですら。
全てを惜しまず、全ては
幼馴染と再開して数日後、少女の元へ一人の男が研究所に訪れた。
見た目は白衣を羽織った、いかにも学者然とした初老の男性。
人の良さそうな顔で『
少女は息を飲む。
目の前の男性は表情が答えと言わんばかりに話を続ける。
守りたいモノの為に、チカラが必要だろう?
少女の表情は凍りついていた。
まだ生まれて十年と少々しか経っていない少女が、学園都市の裏で生きていた男と対峙するには経験が、全てが足らなさ過ぎたのだ。
そう、少女は決意していた。
これからは自分が幼馴染を守る。
自分がどうなろうとも。
そして、その強く輝く覚悟は一人の少女を闇に堕とさせた。
一通り思いを馳せた後、少女は目を開ける
長湯をしていたらしい、のぼせてしまったようだ。
年齢には似つかわしくない大人びた身体を湯船から引き上げさせる。
湯冷めしない程度に涼もうと一階の入り口、応接間に向かう。
応接間は常に快適な温度に設定されており、もうこの時間なら来客はほとんど無い。
向かう途中、今日の自分を振り返る。
幼い頃からの気持ちは嘘もブレも歪みも無い。
再開の際に決心した守り、助けるという思いも。
だけど現に自分が近くに居ておいて二回も幼馴染は怪我をして危険な目に遭っている。
少女は心が沈みながらも原因を考えた。
最近、自分の気持ちと行動や発言がバラバラな様な気がする。
口が悪いのは生まれつきなのは自覚している。
クレープ屋に行く前にスパッツからとはいえ顔に乗ったのを平気なフリをしたり。
ケンカ通りで不良をに囲まれたときも自分が守ろうとしたけれど、やっぱり甘えてみたくてヒネくれた言い方で守ってと言ってみたり。
何だかんだ言ってそれでも自分の為に戦ってくれている幼馴染を見ていて周りが聞こえないくらい、顔がどうなっているかわからないくらい、嬉しすぎて。
それを見せるのが恥ずかしいから照れ隠しで先に一人で歩いたり。
素直に表せない、解っているのに。
上手く出来ない、だから伝わらない。
結果。これが思春期なのかと自嘲・苦笑しながら応接間へ続く階段を降りた。
常盤台寮の応接間の前は寮の入り口でもあり、そこに人影がある。
最初は寮監と思ったが、居たのは先程も顔を合わせていた相手。
目が合う、お互いに無言だ。
どちらとも目を離す事も、声を掛け合うことも無い。
沈黙が永遠に続くかと思われたが、最初に相手の口が開かれる。
―――アンタの自分より大事なモノってなに?
少女は目を見開き驚く。まさかそんな事を言われるなんて思いもしていなかった。
すぐに脳裏に浮かんだのは幼馴染。
ああ、そうか。と少女は思う。いや、思い出した。
確かに自分が救いたかった。助けたかった。
悔しいけれど、それは自分じゃなくてもいいのだ。
幼馴染が無事でさえ居てくれれば。
そう思えば相手に言える言葉があるのだ。
先程相手に会った時、言えなかった言葉を。
幼馴染に素直になれない分、ここくらい素直になってもいいよね。
質問にはハッキリと答えてやらないけど。
と、心で一人ごちりながら穏やかな表情で口を開く。
さっきはありがとう。
相手は見当違いの言葉にしばらく硬直してから返答の意図を知る。
そうすると納得したのだろう。フッと笑い、相手は自分の部屋へ戻ったようだ。
少女は応接間のソファに身を沈め、目を閉じる。
また幼馴染の危機をアイツが助けるかもしれない。
でも今度は自分でも救えるように。
少女は軽く息をつき、未来に耽る。
いかがでしたでしょうか。
行間では主にオリジナルキャラの過去などを描いてなるべく補完できたらなぁと思います。
今回もご精読ありがとうございました!