とある交差の電光石火   作:エスル

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ある程度人数が集まっている時の描写で、セリフだけでキャラを書き分けるということが本当に難しいと思います。

自分で見直してみて、このキャラがこのセリフ話しているんだよな?的な感じです…

まだまだ精進していきたいと思います。


路地裏(スキマ)

七月十九日 夜

 

 

 

「がっ……! ごぁあぁぁ!!」

 

 

 深夜の路地裏の闇を切り裂くように声が響いた。

 ここは学園都市、とある学区―――

 

 

「ったく、太ぇ野郎達だぜぇ!? 多人数で一人の女性を拐すなんてよぉ?」

 

 少年は明らかに怒りを剥き出しにした声で対象に言葉をぶつける。

 容貌は赤髪、そして薄手の服からは汗ばんでいるのもあり、刺青が彫られているのが透けて見えていた。

 

「全くだ、顔も醜けりゃ心もだな」

 

 もう一人は黒髪の少年。こちらは腰に手をあて、呆れたように声を吐く。

 しかし青い瞳には怒りの感情が灯っているのが見て取れる。

 

「お、俺達がお前達に何をしたって言うんだ!?」

 

 蹲り二人を見上げる男、周りには同じように倒れているものが複数人。完全に気絶しているもの、うめき声を上げているものと様々だ。

 ただし、一つだけ共通点がある。

 

「何も? お前らの性根が気にいらねぇ、腐ッてやがる。大体『幻想御手』とやらで能力を得た割にはやろうとしている事はこんなことか、下らねぇ」

 

 赤髪の少年の足元を見やる。そこには足元にしがみつき、震えている一人の少女。

『幻想御手』(レベルアッパー)で能力を得た、もしくはレベルを上げた不良集団が女性を襲っていたところ、二人が通りがかり女性の窮地を救ったわけだ。

 黒髪の少年はためらいもせず倒れている男に追い討ちをかけ、転げまわる。

 

「ぐああぁっ!」

 

「くそっ、外道め……っ! 何故ここが見つかったんだ!?」

 

「お、お前らやりすぎだぞ! こんなのが風紀委員でいいのか!」

 

「よく言いやがるぜぇ、自分達は散々な事をしたってのによぉ?」

 

 数人の非難の声に今度は赤髪が呆れた声を出す。

 そして黒髪の少年、久瀬 信士(くぜ しんじ)は答える。 

 

「ふん、俺達が風紀委員(ジャッジメント)? 違うな」

 

 

 学園都市には『スキマ』がある。

 時間的な問題であったり、監視場所の死角的な意味合い、更に『スキマ』の奥にある、蠢く『闇』の部分。

 それは偶然か、作為的によるものなのか。

 

 『スキマ』で犯罪を犯す者、被害を受ける者たちがいる。

 そこに気づき、風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)の一切の制約に囚われる事なく、自分達を必要悪という正義(スジ)で定め、犯罪者達を更なる力で押さえつけて活動する自警集団がいた。

 

 

暴風紀委員(アンジャッジ)だ」

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、久瀬さーん!」

 

「お、二人とも来たな。アイツはどうした?」

 

「いやぁ、遅いんで置いてきましたよ」

 

 同じ暴風紀委員の少年が空から声を掛けてきた。久瀬に声を掛けた後に地上に降り立つ。

 その少年は肌は白く、睫毛も長い。体の線も細く、とても中性的な少年だ。

 きっと遠目からではどちらかはすぐに判断しかねるだろう。

 

「そうかい、ったくアイツはだらしねぇなぁ!」

 

 助け出した女性を安全な場所まで送った赤髪は先程の怒りの余韻冷めやらず、荒ぶる口調で言葉を返す。

 

「ま、ま、軽~く行きましょうよ~」

 

 と、言いながらもう一人、ものすごく大きなスキップで、いやスキップと呼ぶには言い難い跳躍力で三人の元に少年姿が着地した。

 猫背だが身長は非常に背が高く、190cm前後。坊主頭に丸いメガネが特徴だ。

 

芝咲(しばさき)、お前は軽すぎるんだよ……」久瀬はため息をつく。

 

 四人は最後の一人が到着するまでを休憩とし、腰を落ち着ける。

 ここら一帯は元々人通りが少ない道で、深夜時間には全く人は皆無であり、居るとすれば善からぬ行動を起こす輩だけだ。しかし先ほどまで居た不良集団も撤退し、辺りは静寂に満ちていて、無音が四人を包む。

 その中、赤髪が口を開いた。

 

「それにしてもよぉ、さっきのあいつらも『幻想御手』を使ってたなぁ? 能力(チカラ)を手に入れても、使うことは犯罪ばっかたぁな……悲しいねぇ」

 

「使うだけで簡単に能力の強さ(レベル)を格段に上げる……か」

 

「あっ、同じクラスにも聞いたんですけどあくまで(ウワサ)だけでしたよ。どこかの学者が遺した論文とか料理のレシピだとか内容もバラバラで……」

 

「そのレベルでしか広まッていないのか、ただ実際に使われている……と」

 

「通常、能力の開発は学校で何年もかけてするもんでぇ、そんな都合のいい話は無いと思うよなぁ。でもよぉ、何かを媒体にしているのは間違いねいよな?」

 

「あぁ、何かのデータとかがあるんだろ……誰が作ッたのかは知らないけどな」

 

「科学者ですかね? やっぱり」

 

「多分、な。もしくは開発能力者(マインドシーカー)とかがいるとかだ。ま、そんなのがいたら学園都市は偉いことになるぜ……根底が覆る」

 

 話のタネに花を咲かせ、会話が途切れた後、息を切らして一人の少年が四人の集団に向かっている姿が見えた。

 先程の長身の少年と同じく坊主頭で細身。服装は作務衣、顔は何となく穀物のジャガイモを連想させる。

 

「ハァ、ハァ、待ってくださいよぉー!」

 

「やっと追いついたか~、何してんだよ武子~」

 

「だって……! 二人共能力使って俺を置いていくんですもん!」

 

 ジャガイモの少年、武子(たけし)は先程到着していた少年達、特に中性的な少年を睨み付ける様に糾弾する。

 

「仕方ないだろ? 早く合流した方がよかったんだから」

 

「だからって僕は置いていっていいのかよ!」

 

「いやぁ、居ないところで別にいいんじゃない?」

 

「武子~、この評価は重く受け取るべきだろ~」

 

 そのやり取りに久瀬は頭を掻きながら、次の行動に移すべく話を促す。

 

「これで全員揃ッたな。次の場所へ移動しようぜ、ここらは大体見つけて潰してきたんだろ?」

 

「そうっすね~、俺と御崎(おざき)君でやりましたね~」

 

「はい……僕が着く頃には全部終わってました……」

 

 武子は項垂れて肩を落とす。その様子に誰も慰めるものはいない。

 この集団では当たり前の構図なのだ。

 

「そうかよ、ま、行こうぜ? と、その前に」

 

 久瀬は着ていたジャケットの内側に所持していたガスガンの銃口を暗闇に向け、何回か引き金を引く。

 ガスガンといえども通常の10倍以上もの高圧炭酸ガス(CO2)の圧力を直接使い、威力を高め弾丸をプラスチック製から、鉄製(金属製)のベアリングに変える改造を施した改造拳銃だ。

 威力・速度は相当なものであり、大体の能力者相手にもある程度の威嚇になる。

 

 彼らは学園都市の『スキマ』に熟知しており、気配の察知は敏感である。

 久瀬はいち早く察知し、『スキマ』の闇へ潜むモノに牽制をかけた。

 しばらくした後、闇からソレは出てくる。まるで、別の世界から現れてきたかのように。

 

 

「……この時間、この道は誰にも見つからない、気づかれないと言っていませんでしたか?」

 

「……うん? たまにはこういうこともあるものだよ」

 

「そうですか、では彼らの対処はどうするのです?」

 

 ソレとの距離は約10メートル。

 現在の場所は夜は人通りが皆無な為か、電灯も最低限の数だけだ。

 しかし立ち位置の所為か反射している光が目に入り、足元しか見えない。

 久瀬は己の視力、視覚だけを頼りに情報を得ようと目を凝す。

 次第に向けた目が慣れてきた。

 

 二人組。片方はこちらにいる一番長身の芝咲よりも……背が高い。

 恐らく外国人特有のものだろう。服装は教会の神父が着ているような、漆黒の修道服らしきモノ。

 もう一人はTシャツに片足だけ大胆に切ったジーンズ。身体の起伏で女性と判る。

 服装で特徴は把握出来た。が、前を空けているとはいえ二人は真夏の夜に黒いコートを羽織り、頭にフードを深く被せて顔を隠していた。

 『顔を見られてはいけない』というのはフードで見当がつくが、あまりにも特徴的な服装が隠しきれていない。

 結論、どちらにしても二人組は不審者以外に例え様が無かった。

 

「何モンだお前ら?」

 

「答える義務はありません。私達は目的を果たしたら早々に帰るつもりです」

 

「その目的とやらも何もわからねぇのにハイ、そうですかとで言うと思ッたのか?」

 

「全く、『ソチラ側』の人間が僕らのジャマをしないで欲しいね」

 

「……このまま話していても質問だらけになるな。 手ッ取り早く交渉決裂だ」

 

「仕方がありません。幸い顔は見られてませんし、こちらとしましても『手っ取り早く』片付けたいと思います」

 

 女性の上げた右手を見ると、背後の闇に紛れる程の黒い布に包まれた『ナニか』を持っている。

 長さは彼女自身の身長―――もう一人の不審者と同じくらいか。

 解析をしていると女性はおもむろに布を解き始めた。

 布が解かれた瞬間に凍えるような殺気が辺りに振り撒かれる。中身は日本刀。

 刀身は鞘に納まり見えないが、漆黒の鞘が『本物』の雰囲気を醸し出していた。

 

 相手の得物を確認し、久瀬、赤髪の前の位置に居た三人は臨戦態勢になる。が、

 

 女性の手が刀の柄に触れ、ほんの一瞬、何か電波の悪いテレビの様に手がブレて、消える。

轟!と風の唸りと共に何かが放たれた。そして、チン、という音が聞こえた時には―――

 

 臨戦態勢を取っていた三人が倒れていた。

 

「な、何をしたんでぇ!?」

 

 ワケの解らない手品を見せられたかのように赤髪は戦慄する。

 

「視て解らないのならまず結果を受け止めるべきです。手加減をしたとはいえ、早く手当てはしたほうがいいですよ? では私達はこれで」

 

 当然の結果。

 と言わんばかりに、まるで世間話の様な気楽さで女性は言葉を置き、二人組は再び闇に溶けた。

 

 立って残されたのは呆然とする赤髪と舌打ちをする久瀬。

 

 久瀬は複数の線状で切断された地面(アスファルト)を一瞥した後、倒れた三人を見やる。

 裂傷はひどいものの、全て急所は外してある事を確認し、安堵の息を吐いた。

 

「一体どうなッているんだ……」

 

 それは先程の女性の剣術ともつかない行動の事か、それとも『幻想御手』によって加速している犯罪か、またはここ、学園都市全体についての言及なのかは久瀬自身もわからず息をする様に呟く。

 

 直後、辺りを照らしていた数少ない電灯が停電、久瀬達は闇に包まれた。

 

 

 

―――遠くの空では電光が閃く。

 

 




原作の前夜には魔術サイドは既に学園都市へ入り込んでいるという推測、妄想の上で絡めてみました。

今回もご精読ありがとうございました!
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