とある交差の電光石火   作:エスル

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今回、オリジナルキャラと原作キャラが入り乱れる回です。

と言っても多少ではございますが…

それではどうぞ!


六芒星(6バカ)

 

「お前はわかっていない! 年上の持つ遥かなる母性を!」

 

「お前こそロリの無限の可能性を理解していないようだにゃー」

 

「ボクぁ落下型ヒロインのみならず、義姉義妹義母義娘双子(以下省略)あらゆる女性を迎え入れる包容力を持ってるんよ?」

 

「はっ、包容力だぁ? 哀しいねぇ、その中に含まれてねぇモンがあんだろうが!? 妊婦ってジャンルがよぉ! そこに気づかねぇたぁ何が包容力よ……」

 

 なんという内容の会話だ、補習の授業中ですらこんな話になるとは。真藤は嘆息する。

 この四人のせいで補習は中々進まず、しかも言い争っている声でほとんど聞こえないのだ。

 

 そして目の前で講義を行っている先生も

 

「はーい、それでは次に補習のプリントを作ってきたので配るですー」

 

 一言で言うと「ありえねぇ」だ。

 上条達のクラス、一年七組の担任、月詠小萌(つくよみこもえ)先生は教卓の前に立つと首から上しか見えないトンデモ教師だった。

 身長は一三五センチでジェットコースターの利用を断られた経歴(でんせつ)を持つ成人。

 誰がどうみても小学生にしか見えない幼女先生だ。

 

「おしゃべりは止めませんが聞いてもらわないと困るですー、小テストも作ってきたので点が悪かったら罰ゲームは『すけすけ見る見るですー』」

 

 『すけすけ見る見る』とは本来は透視能力専攻のカリキュラムであるらしく、目隠しをした状態でポーカーに10回連続で勝たなくては帰して貰えないらしいというものだ。ある程度のレベルの透視能力(クレアボイアンス)の能力者ではなければ翌日の朝までナマ居残りは必至だ。

 

 しかしそんな恐ろしい『すけすけ見る見る』という言葉ですら、

 

「確かに透けて見えるチラリズムもいいもんだぜい、どこかのインターネットでそれを謳い文句にしてたメイド服があったにゃー」

 

「何を言うか! それよりもモロリズムだ! モロリこそがあるがままの美で全だ!」

 

(お前は数日前オアシスだって言ってブラ透けで楽しんでただろ!)

 

 真藤はそんな事は声に出せず心で突っ込む。っていうか何だよモロリって。

 

 赤髪が青髪に対する態度もそうだが、それ以上に幸徳井の様子が土御門と言われる金髪グラサンに会ってからというもの、どうもおかしい。普段なら冷静に、エロを語る男が何やら熱くなっている。

 それ以前に相手の意見(フェチ)を受け入れ尊重も出来る(おとこ)が、こと土御門相手に関しては徹底的に反対意見を述べている。

 二人の間には何かあるのだろうか? とは言えこの状況を何とかしなければ補習は進まない。とても真藤一人では抑え切れないと後ろにいるツンツン頭に助け舟を出してもらう。

 

「おい、上条……?」

 

 上条は何やら、はぁ、とため息をついて窓の外を眺めていた。

 

「……気になるのか? 『あの子』(インデックス)の事。」

 

「まあな」

 

 真藤は上条の自室での事を思い出す。

 

「確かに『あの子』の着ていた修道服はお前の右手に反応していたけど、もしかしたら『魔術』なんてものじゃない、ただの自然現象が不思議(オカルト)に見えていただけかもしれないぞ」

 

「まあな」

 

 窓の外を見たまま上条はわかりすぎる空返事をする。真藤は少しムッとし、

 

「まぁ、お前はワザとフードの事言わないでおいたもんなぁ、清掃ロボのせいにしてよ。渡そうと思えば渡せたのにな?」

 

「なっ!」

 

 上条は視線を真藤に向け、少し顔が紅くなっている。

 それを見た真藤はしてやったりの表情だ。続けて真藤は言葉を紡ぐ。

 

「『返せなかった』じゃない『返さなかった』だ。逃がした魚はデカかったか? やっぱり引き止めた方が良かったかもなぁ? でも、少しでも繋がりを残しておきたかったんだろ?」

 

 続けた言葉に上条の方はプルプルと小刻みに震えている。図星で恥ずかしいのだろうか?

 そんな、詩人のような心情を吐露されて。上条は俯いて表情は見えないがすぐさま顔をあげ、

 

「テメェ! もう黙れ! 黙れ馬鹿!」

 

 先程よりも真っ赤に染まった顔で叫ぶ。

 

「へっ、ウジウジしてんじゃねえよ! おっと、右手だけはカンベンな!」

 

「センセー? 上条クンと真藤クンが外のテニス部のスコートのひらひらで言い争ってまース」

 

 上条が拳を振り上げ、真藤が止めようとしていると誰が突然先生に言いがかり言い付けた。

 小萌を見ると、いつまでも補習に集中してくれない二人を見て泣きそうな目でこちらを見ている。

 他にもクラスにいる生徒たちから子供の人権を護るかのごとく、視線が突き刺さっていた。

 

 そして小萌がしゃくり始め、泣き出すかと思いきや手を上に挙げ大きく二回叩く。

 すると閉ざされていた教室の扉が勢い良く開かれた。

 

「やっぱり迷惑かけたんだねっ!」

 

「もはや救いようもない」

 

 場末のスナックの用心棒のごとく、教室に入ってきたのは知っている二人。

 同じ容姿ながらも一人は髪が短く、言葉に躍動感のある女の子。

 もう一人は髪は長く、言葉に感嘆がない、静やかな女の子。

 

 花鳥(はなとり) 瑞穂(みずほ)瑞稀(みずき)

 

「なんで二人がここにッ……!」

 

「黄泉川先生からの要請」

 

「先生がねっ『三人が心配だから、もしよければお目付け役になってほしいじゃん!』ってねっ!」

 

「三人を心配していた」

 

「うんっ! すごく生徒思いだよっ! とても噂とは違うと思ったんだっ!」

 

「だから快く引き受けた」

 

(そうか、黄泉川先生が…あのウワサ話(しんじつ)による生徒たちとの壁を乗り越えようとコミュニケーションを取っているんだな。……とは言え感慨に浸っていてもダメだ。こちらの状況を何とかしなければいけない。今はこの絶望の双璧を乗り越えなければ。昨日みたいに上条を盾に……)

 

「って、いない!?」

 

「小萌先生! 本当に申し訳ありませんでしたぁ! ですので何卒この上条当麻にお情けを!」

 

 つぶらな瞳からは涙が零れ落ち、既に泣いていた月詠小萌。

 そして素早くその元へ馳せ参じて、一分のスキもない見事な土下座でいる上条。

 

「小萌センセーすまないにゃー、カミやんがやりすぎたぜよ」

 

「ええなぁ~、泣いている小萌ちゃんも~」

 

 

 上条は土御門と青髪の犠牲となったのだ。

 

 

「いや花鳥、実は俺達もやめろと言ったんだ」

 

「そうでぇ、それなのによぉ……」

 

 真藤は上条の様を見て、呆然としている矢先で聞きなれた声の方向へ目線を向けると幸徳井と赤髪は花鳥姉妹に何やら訴えかけている。すぐさま二人の思惑に気付き、あくまで声は出さず睨んでいると二人は双子(カベ)の後ろに回りはじめた。

 

(や、やられたっ……! アイツ等は俺をオチにしないと気がすまないのか!?)

 

 口は笑っているが目は笑っていない双子が真藤に向かって歩き始めた。

 その奥では口は真一文字だが完全に目が笑っている幸徳井と赤髪。

 どうすることも出来ない。双子(カベ)との距離は徐々に迫り、縮まっていく。

 

「さあっ!」

 

「覚悟は」

 

「「いい(っ?)」」

 

「り、理不尽だああぁぁぁあ!!」

 

 

 

真藤に壁を乗り越えることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「結局、完全下校時刻まで居残りか……、不幸だ」

 

「しょうがないだろ、ああなるとなぁ」

 

 真藤と上条は夕焼けにギラギラと光る風力発電のプロペラを眺めながらお互い独り言のように会話をする。

 用心棒達(みずほとみずき)が現れてからも、バカの六芒星(ヘキサグラム)を相手に滞りなく補習が進む。なんて事は全くなく、騒ぎが起きるその度に真藤が狙われ、上条が盾にさせられた。

 結果、予定していた半分も消化することも無く、夏休み補習初日は終わったのだ。

 

「でもまぁ、気を取り直して! 今日はよ、晩飯と一緒に昨日の地獄から生き延びれた乾杯といこうぜ?」

 

「おっいいな! 上条さんも大賛成ですよ! ただし、今日の分も含めて晩飯も真藤のオゴリな!」

 

「く……まぁいいだろ。そういやお前アルコールは飲むのか?」

 

「いや、俺は全くダメだな」

 

「そうか! ま、俺はどっちでもいいけど! そしたら昨日の約束通り、ヤシの実サイダーで乾杯と行くか!」

 

 夏の暑さも相まってか、頭がやられたかの様に二人はテンションが上がり始め、ドラム缶型の警備ロボットと合わせるかのようにアハハ、ウフフとクルクルと回っていると

 

「アンタたち、随分と楽しそうじゃない。私も混ぜなさいよ?」

 

 二人の半ば現実逃避に水を差す声が聞こえ、振り返る。

 中学生くらいの女の子。肩まである茶色い髪は夕焼けで燃えているように赤く輝いている。

 服装は灰色のプリーツスカート、上は半袖のブラウスのサマーセーター。

 ポーズは腰を手をあて、顔は何故か満足げだ。

 ここ最近見慣れた服。そして顔を見て、真藤は「あ」と声を漏らし、上条はげんなりとした表情で口を開く。

 

「……あー、またかビリビリ中学生」

 

「ビリビリ言うなぁっ! 私には御坂美琴ってちゃんとした名前があんのよ! いい加減に覚えなさいよ!」

 

「そうだぜ上条。昨日の(アレ)見たろ? ビリビリじゃない。バリバリだよ、ありゃ」

 

「私は一昔前の不良(ヤンキー)か!」

 

「実際、さっきの絡み方がそのものだったじゃねぇか……」

 

「そ、そんなことより勝負しなさいよ! あと天パーのアンタにも話があるんだからね!」

 

 顔面を真っ赤に染め、学園都市に七人しかいない超能力者は二人に物申すが、

 

「そういや、真藤は晩飯の献立は何にするつもりなんだ?」

 

「そうだなぁ、夏だけど逆にキムチ鍋ってどうだ!?」

 

「おおっ! いいねぇ! テンションが上がってきましたよ!}

 

「よっしゃ! 『膳』は急げだ! 早速スーパーに」

 

「逝っけぇぇええ!」

 

 ドン! と、御坂美琴は勢い良く足を歩道のタイルを踏みつけ、電撃を二人に向け放射する。

 

「うお!?」

 

「あぶねぇ!」

 

 美琴が放った電撃の余波で 辺りを歩いていた通行人達の一斉に不吉な音を立てた。

 商店街の有線放送や先程まで一緒に回っていた警備ロボットですらも。

 余裕綽々の笑顔。そして風で舞い上がる前髪の毛先が火花で散った、最大一〇億ボルトを操る女子中学生。

 

「ふん。どうよ、これで少しはやる気になったでしょ? ……でもね、これだけは言わせて貰うわ。何でアンタ『たち』は私の電撃が効かないのよ!?」

 

 美琴の言葉通り、そこには無傷の男が二人立っている。

 一人は右手を前に突き出し、呼吸が荒れて肩を上下させているツンツン頭。

 もう一人は特に何も動作を行っておらず、いや、驚愕の顔で美琴を見ている天然パーマ。

 

「隣のツンツン頭はまだいいわ。『何か』は良くわからないけど電撃を無効にしているのが見て解る。でもね、アンタのはまるで―――」

 

 美琴が言い終える前に警報が鳴り響く。

 真藤と上条は脳裏で数日前に場所はコンビニATM前で起きた出来事がフラッシュバックされた。

 横に倒れ、煙を吐いている警備ロボット。先程まで一緒にダンスを踊っていたのがウソのようだ。

 今は何か『エラー』というよく解らない単語を繰り返し呟いている。

 

 当然、逃げる。

 昨夜のように。不良たちから逃げるように。路地裏に入り様々な障害物を蹴散らし駆け抜ける。

 今回はあの時望んだように隣には異性がいる。ただし、この逃走の原因だ。前回もそうだったのだが。

 

「あのロボット一体の値段、一ニ〇万円だってよ。ワイドショーでこの前やってたぜ」

 

 真藤は慄然と呟く。

 

「うう、ぐすっ。ふ、不幸だ。……こんなのと関わったばっかりに」

 

 上条は戚然と嘆く。

 

「こんなのって言うな! 私には御坂美琴って名前があんのよ!」

 

 美琴は憤然と叫く。

 

「論点はそこじゃねぇだろ!? 何度でも言うぞ上条! これで今のところお前といると走る確率は一〇〇パーセントだ!」

 

 

 話が微妙に噛み合わないまま三人が辿りついたのは路地裏の裏の裏の裏。

 ストリートバスケに向いているような四角い空間。

 

「だぁぁああーっ! もう我慢の限界だ! 言わせて貰うがな、ビリビリ! 昨日テメェがド派手に雷なんぞ落とすからウチの電化製品がまとめて殺られちまったんだぞ!?」

 

「アンタがムカつくから悪いのよっ!」

 

 これまたヒドい会話だ。もちろん補習の時ほどではないが。

 会話に参加しない真藤は口ゲンカをしている二人をやや離れた場所で見て、思う。

 まずは御坂美琴への印象だ。以前、銀行強盗事件の際が『恐らく』初対面だが、白井や初春、佐天との会話の際には言葉一つ一つに思い遣りが溢れ、姉御肌なイメージがあった。

 今はどうだ。何となくだが、背伸びをしていない素の自分自身で上条にぶつかっている気がする。

 どちらも同じ、これが『御坂美琴』という少女。

 ここ、『学園都市』において、ニ三〇万の中で七人しかいない特別な存在、超能力者(レベル5)が不器用ながら良くも悪くも、色んな自分自身を表現出来ている。それはとてもいいことなのだろう。

 

 そして、数日間だけの付き合いだが、上条当麻は比較的温厚な性格だ。

 昨日だって何だかんだ能力を打ち消す為に右手を使うだけで適当にあしらっていた。

 だが、今は違う感じに見受ける。本当に御坂美琴に向けてだけの感情なのか?

 上条の発言にはややトゲが含まれているようにも聞こえた。

 

 上条が右手を挙げて、一歩、二歩とよろめいた美琴を見かねた真藤はさすがに仲裁に入る。

 昨日、災害(カミナリ)まで出して見事に受け止めた上条に対し、脅しまがいに言われれば『力の正体』の分からない美琴としては『未知の恐怖』そのものだ。

 

「上条、もういいだろ? ま、仕方ねぇよな。部屋の電化製品は全滅で、朝は自称(エセ)魔術師に補習が終われば夕方にはビリビリ中学生とくればよ」

 

「ま、まじゅつしって……なに?」

 

 美琴はチラリと上条に目を向ける。

 

「……えっと、何なんだろう?」

 

 上条の言葉に美琴はびくびくしている。先程の脅しが余程効果的だったのだろう。

 無能力者とはいえ、男子高校生が女子中学生を脅している。見た目は色々とマズい光景である。

 

(魔術師、ねぇ……)

 

 真藤は美琴の反応を見て思い出す。『あの言葉』(まじゅつ)は『学園都市』では全くの『非日常』(オカルト)なのだ。

 朝の時にはあの白いシスターがポンポンと口にしていたものは今では全く現実から外れたものと感じる。

 インデックスが口した時は少しでもそう信じられる、神秘的な『何か』があったのだろうか?

 三人が押し黙り、四角の空間に静寂が訪れるとすぐさま上条が呟いた。

 

「……ていうか、ナニ考えてるんだか」

 

 その表情を伺い知ることを真藤は出来ない。

 上条にとっては魔術師とかどうとかはもはや関係無い。寮の前で縁を切った彼女と偶然会うこともまず無い。しかし『一緒に地獄の底までついてきてくれる?』と言ってきた彼女を忘れる事なんて出来ないはずだ。

 きっと、部屋にあるフードが『繋がり』という針になって、上条の心をチクリと刺しているのだろう。

 

 

 真藤は薄くため息をつき、心の中で毒づく。

 

 

(ナニ言ってるんだか。神様でも殺せる男のくせに)

 

 




原作の学校内での雰囲気が表現出来ていればと思います。

今回もご精読ありがとうございました!
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