とある交差の電光石火   作:エスル

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ようやくここで主役の名前が登場します!

普通ここまで引っ張るのも中々ないと思います(笑)


審判(けっか)

「やーっと今日最後の授業が終わったぜぇ」

 

 アクビをして背伸びをしながら赤髪は言う。

 

「ああ、終わったな、それはすなわち…」

 

 幸徳井がヨダレのついたメガネのレンズを吹きながらそれに返し、

 

 

「おう、決戦(ホームルーム)だ!」

 

 

 さっきまで寝ていた跡(顔にノートの内容が転写済)がある顔で少年の眼がカッと見開く。

 

 

「俺達3人、いやクラス全員のこれまでの成果が出るんだな」

 

 幸徳井は感慨深げに目を閉じ、

 

「そうでぃ、これから出るのが皆の努力の結晶(けっか)ってヤツよぉ」

 

 赤髪もうんうんと大きく頷き、

 

「ホント、気の抜けない日々だったよ、ま、これからもだけどな」

 

 少年もフッと頬を緩ませる。

 

 

-----そして

 

 

「「「「お前らはさっきまで寝てただろ!!!!! 気ィ抜け過ぎだ!!!!!」」」」

 

 

 七月十六日、このクラスで審判が下される-----

 

 

 

 

 

「さ~て、HR始めるじゃん!」

 

 朝と同じく放課後にも行う整理整頓を終え、クラス全員は既に席について待機していた。

 

「ん? 何か空気が違うな? いつもよりも空気がピリピリしているというか……」

 

 黄泉川もこの空気を察知し、訝しがる。

 

「! はは~ん、検査(テスト)の結果を気にしているんだな? 皆、安心するじゃん!」

 

 その言葉と明るい表情にクラスの空気も多少和らぐ。

 

「早速発表するじゃん! 学年ではクラストップ! 落第者は3人! 優秀じゃん!」

 

 黄泉川は笑顔でさらりと言ったが、トップとまで生徒達も笑顔で聞いていた次の言葉の瞬間、クラスの生徒全員がピシリ、石像のごとく固まった。

 

そんな中、

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

 一人の生徒が震える声で何とか疑問を口に出す。

 

「ん~? どうした?」

 

 切羽詰った面持ちで話す生徒に対し、暢気そうな顔で黄泉川は返す。

 

「何故クラスに3人も落第者がいて成績トップなのでしょうか!?」

 

「ん~、今回の検査(テスト)に関しては記憶術(かいはつ)の科目で軒並み生徒達は落第になっていて、他のクラスなんかは2桁行きそうなところもあった。ま、3人の落第者くらい、いない様なもんじゃん?」

 

 まぁ普通でも3人の落第者くらい大したこと無いじゃん、とカラカラ黄泉川は笑っている。

 

「そ、そうですか……」

 

 黄泉川に問いかけた少年は肩透かしを喰らっている。だが、この様子ならば今学期は犠牲者(せんししゃ)は出ないかと思ったが……

 

「ただし、落第は落第、よって夏休みは補習! その3人については後で話があるじゃん!」

 

 急に顔を引き締めた黄泉川の言葉に再度空気が凍りついた。黄泉川は言葉を続ける。

 

 

「それではその3人を発表する!」

 

 

 クラス全員に緊張と戦慄が走った。

 

真藤 豪摩(しんどう ごうま)!」

 

「うぇ!?」

 

幸徳井 弘秋(こうとくい ひろあき)!」

 

「! ……はい」

 

「最後に、あー、赤髪!」

 

「はい! って、ちょ、名前は!?」

 

 赤髪はツッコむ(標準語)が黄泉川に笑って流され、

 

「以上が今回の落第者じゃん! この後体育館に来るよーに!」

 

 黄泉川が教室を出て、ピシャリとドアが閉まると同時にクラスに開放感が溢れた。

 

「あぁ~~! 理不尽だ! 無遅刻無欠席で大丈夫だと思ったのに! 優等生に見られるために髪型まで変えていたのが意味ねーじゃねーか!」

 

 嘆きながら悔しさのあまり、真藤は頭をガシガシと掻きだし始めた。すると、いつの間にかストレート髪がクルクル天然パーマに変わっている。

 

「お前天パーだったのか……」幸徳井は驚きながら問う。

 

「隠してたわけじゃねーけどな、ストレートの方がなんとなーくだけどいいイメージあるだろ? だから毎朝遅刻ギリギリになってもこれで髪形を変えていたんだ」

 

幸徳井の前に差し出されたのは

『~髪の毛のベクトル操作!理想の髪型へ~ 一方通行スプレー』

 

 黒基調のデビ〇マン柄のスプレーを見つめながら、

 

「そうか……実は俺も隠していたことがあってな……」

 

 幸徳井はメガネを外す。

 

「伊達眼鏡なんだ」

 

「ウソだろ!?」真藤は目を見開き、信じられないと驚愕の表情になる。

 

「本当だ……俺は目つきが悪いからな、メガネをかければ少しは和らぐだろうし、かけたら意外に優等生に見えなくもない」

 

 幸徳井は途切れ途切れ言葉を繋げる

 

「だから好印象になって……落第も防げるかもと思ったんだが……くそっ」

 

「幸徳井……」

 

 悔しがる幸徳井を見つめ、真藤は心中を察す。

 落第を防ごうとする気持ちはまさしく自分と一緒だったのだ。

 

 そう、そして

 

「へへっ、オイラも同じさぁ、先生の前じゃあいい子ぶって標準語、敬語使っていたのがこのザマよ。だからオイラはエセ江戸っ子じゃないんだぜ? 江戸(とうきょう)の水道を産湯とした……」

 

 やはり赤髪も同じ気持ちのようだ。本当にどうでもいいところまで言い訳をしているが。

 

 3人とも落第しないために各々が努力をしていたのだ。

 

「ちょっと待って」

 

 瑞稀が抑揚のない声で話しかけてきた。

 

「ん、どうした瑞稀? 今の落伍者(おれたち)の気持ちなんかお前にわかるはずもないだろ?」

 

 真藤は朝の出来事(四回の気持ち悪い)にもめげず言葉を返す。

 

「クラスの皆で『優等生』になるって決めたよね」

 

「そうだ、その為に俺達は髪型や眼鏡、言葉遣いを変えてまでだな……」

 

「成績での『優等生』になる努力は」

 

 

「「「えっ」」」

 

 

「えっ」

 

 

 一瞬、瑞稀の瞳は大き見開かれたあと、俯き身体を震わせ始める。そして隣に並んでおり大きくため息をついていた瑞穂と共に

 

「「早く体育館へ行って来い(っ!)」」

 

 双子ならではのコンビネーションで3バカ(トリニティ)に能力を向けた。

 

「うおぁ! 右熱っ! 左冷た!」

 

 こうして双璧(ふたご)に教室から追い出されてしまった。

 

 

 

「一体なーんだってんでぃ、ったく!」

 

「全くだ、俺達は最大限の努力をしていたというのに」

 

「うぁ……制服が……何て理不尽な……」

 

 追い立てられるように教室から締め出されてしまった3人は廊下を歩き、先程のHRで黄泉川の言いつけ通りに体育館へ向かっている。

 

「しかし話があるといって場所が体育館とはどういう事だ?」

 

 幸徳井の疑問は正しく、職員室や空いている会議室等などで説教(おはなし)するのが普通だ。

 

 それは確かに、と他の2人も思う。

 

「まー、罰則的な意味で体育館の掃除とかでもさせられるのかもなぁ」

 

「いや、『ウワサ』が本当ならばもしかして体罰とかあるんじゃないか?」

 

「流石に学校でそれはねぇんじゃあないかい? 行ってみれば解るってもんでぇ」

 

 3人は体育館へ着き、入館しようと入り口を通る前に恐らく黄泉川が書いたであろうデカデカと豪快な字で書かれた張り紙を見つけ、3人の顔はますます疑問に満ちた顔となった。

 

 

『幸徳井、赤髪の両名は先に入館し、真藤は10分後に入館すること』

 

 

「なんでぇ、こりゃあ?」

 

「ふむ、ますます持って意味がわからないな。しかし仕方ない赤髪、先に入ろう」

 

 真藤は2人と別れ、時間潰しの為に趣味であるストレッチを行う。

 また、ストレッチの最中に今晩の献立を考え今日は近くのスーパーがセールなのを思い出し、該当商品で本日のメニューを頭の中で組み立ていく。

 そろそろ10分が経った頃かと、入口に向かおうとした矢先に大きな音が中から響いた。

 ビビリ性の真藤にはその音が少々刺激的らしく反射的、本能的に身体を強ばらせる。しかし10分も経ち、一人だけ体育館に入らないわけにもいかないと嫌々に、腰が引けながらも体育館のドアをそっと開け、チラリと中を覗く。

 

 

 そこには

 

 

「なッ……!」

 

 

 倒れている幸徳井と赤髪。片目だけで覗いていた真藤は訳が分からないと気が動転したか、勢い良くドアを開け、再度両目で状況を確認する。

 

 

 そして

 

 

 呼び出しの張本人は、ジャージ姿の教師・黄泉川愛穂から、

ヘルメットや盾を装備した警備員(アンチスキル)・黄泉川愛穂と変わっていた。

 

 

 

 

「さあ真藤、オシオキじゃん!」

 

 




次回はバトルになるのですが、これまた描写が難しいです。
ご精読ありがとうございました!
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