とある交差の電光石火   作:エスル

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黄泉川愛穂(アンチスキル)

「おおオオォッ!!」

 

 真藤は一気に距離を詰め、拳での一撃を放つ。

 しかし警備員(アンチスキル)の装備でもある持ち主の身の丈ほどある盾に防がれ、自分の拳へ鈍い痛みが走った。

 

「ぐっ!? うおわっ!」

 

 真藤が拳の痛みで顔を歪めている隙も無く、黄泉川は盾を前にして体ごと突進してくる。

 回避の体勢も衝撃に備えることも出来ず、女性とは言え有事の為に鍛え上げられた力で脳まで揺れるような衝撃を全身に喰らい、床に叩きつけられた。

 

「げほっ、くそっ正に鉄壁じゃねぇか、どうする……!?」

 

 吹き飛ばされたおかげか距離は離れたものの、このままでは先刻と同じように盾での突進で直ぐに黄泉川に距離を詰められる。

 

 叩きつけられた衝撃で全身に激痛が伴いながらも真藤は考える。

 こちらから攻めては全て盾で防がれ、そのまま盾による体当たりで攻撃に転じられてしまう。

 正に攻防一体だ。そうした僅かな思案の間にも黄泉川は迫ってくる。

 

 黄泉川はこのまま盾を構えたまま向かってくると思われたが、盾を使っての大振りの攻撃を繰り出す。

 大振りとはいえ一撃で意識を刈り取り、骨折をしてもおかしくないようなで勢いで襲い来る。

 

「だあっ!」

 

 真藤は大振りながらも迫力のある動きに逃げるように躱しつつ距離をとる。

 

「やるな! 中々の動きだ、運動神経が悪いってワケじゃなさそうじゃん」

 

 暴走した強能力者(レベル3)を捕縛出来る人間が認めた。黄泉川は息も切らさずその顔は笑顔だ。

 

「あのなぁ、こちとらトラウマで体鍛えるのが趣味になってんだ! 今から先生に向ける武術(これ)はその延長上。人に向けるのは初めてだけどな!」

 

 ただし、参考は本やマンガでの見様見真似だ。とは言わずそれなりに形になっている構えを取りはじめる。

 

「ふん……なるほどね、所詮は臆病者の自己満足じゃん」

 

「うるせー!」

 

 鼻で笑う黄泉川に対し、真藤は攻めようとするが全て盾で防がれる結果が頭をよぎり、結局何も出来ずに距離をとる。

 

 真藤はケンカ慣れを全くしていない。

 今まで過去のトラウマから自分はもちろん、相手を傷つけるということに嫌悪感から来る抵抗があったからだ。

 運動神経は悪くない、むしろいいほうだ。体格だって大きくは無いが標準的。むしろ趣味で身体を鍛えているから低く見積もってもそこらの運動部にだって引けは取らない程引き締まっている。

 幸徳井や赤髪と遊びに行って俗に言う不良たちに絡まれることはしばしばあるが二人が主にその相手をし、真藤は殴り合いなどはせず逃げたりなどで囮になる役を行なっていた。

 当然、二人の友人の理解あってのこと。しかしその二人も今は黄泉川によって倒されている。

 

 自分がやらねば誰がやる。真藤は自らを鼓舞し、握りこぶしを固める。

 

(このまま距離をとり続けても意味がない、今のまま外から攻めても盾で防がれてしまう……

何とかして(せんせい)への攻撃をしないと、そのためには盾をどうにか……!)

 

 

 喧嘩経験は無いが、今までの知識を総動員し一つの策を真藤は思いついた。そして即座に走り、距離を詰める。

 素人丸出しのわかりやすい拳を振り上げる殴るというモーション。黄泉川にはバカの一つ覚えに見えたであろう、若干呆れの表情を浮かべて盾で防ごうとする。

 

 

(かかった!)

 

 

 真藤は素早く、握っていた拳を開いて盾を挟む形で黄泉川の手の部分に自分の手を合わせた。

 

 

「知っているか?戦国時代の武術は鎧の中に直接衝撃を与える技法があるんだぜ?」

 

 

 更に流れるような動作で真藤は黄泉川の盾に当てている自分の手の甲を打ち抜くように拳を貫く。

 

「ぐっ……あっ!」

 

「『鎧通し』ってーんだ。どうだ? 勉強になったかい』

 

 盾を持っている手がまるで電気が走った様な衝撃に、たまらず黄泉川は盾から手を離し盾は落ちた。真藤はすかさず盾を蹴り飛ばし黄泉川と盾の距離を離す。

 真藤はこのまま畳み掛けるため黄泉川の顔に拳を向けて振りかぶる。黄泉川も顔の前で腕を交差させ、ガードしようとする。が、

 

 

「安心しな、女性の顔を殴るのは趣味じゃねー」

 

 

 顔はフェイントで逆の腕でのボディ。黄泉川はその声で狙いに気づくが既に遅し。

 

 真藤の拳が黄泉川の身体を貫く瞬間、

 

「待て!」

 

「待つんでぃ!」

 

 

 勢いのついた拳は黄泉川の寸前で止まる。

 真藤は声が聞こえた方向に顔を向けると、そこには気絶していたはずの二人が立っていた。

 

 

「お前ら……どうして……」

 

「安心しろ、俺等は無事だ」

 

 真藤は疑問が抜けないままの表情。そこに

 

「っつ……私が頼んだんじゃん」

 

 片目を閉じて苦痛の表情で手を押さえている黄泉川が答えた。

 

「どういうことだ?」

 

 真藤が眉間に皺を寄せつつ言葉を投げかけ、黄泉川は痛みを堪えつつ苛立ったような声で問いに対して問いで返す。

 

 

「真藤、お前一ヶ月前のことを覚えているじゃんか?」

 

 

「はぁ!?」




今回も勢いと妄想で読んでいただければ幸いです!

簡単な話、黄泉川先生は盾を構えたまま突っ込むのと盾を振り回すことしかしてません(笑)

ご精読ありがとうございました!
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