他の方の作品を拝見させていただくと、こんな解釈、考えもあるんだと目を見張ります!
それも二次創作の楽しみの一つですね!
一ヶ月前 六月某日
真藤は日が暮れて間もない街を一人さまよう。
夏至の前後とはいえ、日が伸びるにはまだまだ時間がかかりそうな空を見つめながら歩いていた。
「はぁ……」
そしてため息をつく。
理由は真藤が愛読している『世界の武術・最強必殺技全集』の新刊が売切れていたからだ。
「しっかしあんなマイナーな本が売り切れているなんてなー」
少なからずショックなだけに思わず独りごちる。
そのままブツブツ呟き、歩いていると目の前に人だかりが見えた。
近づいていくとどうやら一人の少女を大人数の男達が囲んでいるようだ。
顔は良く見えないがその少女の服装は灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーターという何の変哲も無い格好の中学生。
しかしその服装は知る人ぞ知る、というにはあまりにもここ学園都市では有名すぎる制服であった。
「常盤台のお嬢様か……」
常盤台中学
学園都市の中でも5本の指に入る名門校であり、同時に世界有数のお嬢様学校。
『義務教育終了までに世界に通じる人材を育成する』が基本方針で生徒数は200人弱で
「能力は高くても『アノ手』の輩のあしらい方は慣れていないだろうな……」
例外を除いて。幼馴染が脳裏に浮かんでそこだけはと心に留めて置く。
常盤台中学に入学するのはほとんどが箱の中の更に金庫の中に入れられているようなお嬢様達だ。能力の扱い方は教わっても街の不良の扱い方など教わっていない。
(どうすっかな……)
真藤は考える。さっきも考えたとおり例外はいる。
中々無い話ではあるが、問答無用で蹴散らす怖いもの知らずのお嬢様も中にはいるのだ。
ならば自分の助けは必要ない。助けにと言っても注意を引きつけて自分は逃げるだけ。
そのぐらいしかやってあげることが出来ない。それに何よりも怖いし。
少女が囲まれている場所からパチン、と音がした。
(……何だ今の?)
真藤は
例え自分の能力は大したことが無くても相手が同じエレクトロマスターならば電磁場を皮膚で感知することも可能でもあるし、距離が近ければ特定の人物を識別する事は出来る。それが相手の能力が強ければ尚更だ。
(おいおい、さっきの感覚……俺に良く似た……いや、俺自身の力の放射を外から浴びせられた感じは?)
『
指紋みたいな物である。それが今感じている電磁場のエネルギーは『全く同じ質』なのだ。
真藤には電気を放射する能力は無い。あくまで生体電気を操るだけだ。
だがそれでも断定出来る。自分の電気と同じ
本能に近い行動でその電磁波の発信先を見る、少女の髪が見える。茶髪であり長くは無い。
---そして顔が見える。
目が合う。その瞬間、少女の顔をロクに確認もせず真藤はその場から逃げ出した。
怖かったのだ。男達の集団ではない。『自分と同じ電気』の少女の顔を見ることが。
まるでそれは自分のクローンを見てしまうかの様な感覚だった。
途中、ツンツン頭の黒髪の少年とすれ違うが、慌てて逃げる真藤の知る由では無かった。
「見られてたのか……」
ガクッと肩を落とす真藤。
逃げた言い訳をしない漢なのだ。
「たまたま
黄泉川は眩しいばかりの笑顔で真藤を見る。
「それに二人にも一芝居うってもらったじゃん」
「そ、そうなのか!? てっきり本気で倒れていたものかと……」
驚いた真藤は目を大きく見開いたまま二人に顔を向ける。
「いや、済まないな、
済まなそうな顔で片目をつぶり、ペロと舌を出す幸徳井、全く持って可愛くない。
「ワリぃなぁ! 真の字! まぁオイラ達もオメェも思っての行動だって事でぃ! メンゴメンゴ!」
かなり時代錯誤な言語を口にする赤髪。
「ただな? 俺達は信じていたぞ?」
「おうよ、逃げずに仇討ちをしてくれるってよ?」
「お前ら……」
思わず真藤は胸からジンと熱いものがこみ上げて来るのを感じ、ガシッと三人で円陣を組むように肩を組む。そして流れるようにヒソヒソと会話が始まる。
「まぁ俺達にも役得はあったってワケだ。」
「どういうことだ?」
「普段近寄り難かったあの先生の
「うむ、俺も態勢を正されている時にな、当たったんだよ……」
「当たったって……! プロテクター着いてるだろ!? わからないだろ?」
「わかるんだよ、確かに表面上は判らない、だが
「……ッ! 真の字! 幸の字も! 後ろ! 後ろ!」
「なぁーに話している? 懲りていないじゃん?
後ろを振り返るとにっこり笑顔が超怖い黄泉川が立っている。
そして、
ゴン!
ガン!
ゴキ!
三つの音が体育館に響き渡った。
「「「失礼しましたー」」」
タンコブをお土産に三人は頭を抑えて体育館を出る。殴った黄泉川の顔は笑顔だったものの、こめかみはひくついていた。本気で殴ったのだろう。痛みは未だ収まらない。
「やーっぱり噂は当てになんねぇなぁ、黄泉川先生が怖いなんてよぅ」
「そうだな、こうして考えてみればすごく生徒思いの先生じゃないか」
「あぁ、
幸徳井、赤髪が先に行き、続いて後を追おうとした時、
「真藤!」
黄泉川が体育館の入口で声を掛けてきた。
先行ってるぜぃ、と二人は先に行き、真藤はまだ何かあるのかと怪訝な顔を浮かべて黄泉川の元へ向かう。
「どうしたんですか?」
「ん、私だけがお前の過去を知っているのはフェアじゃない気がしてな……だからお前にだけは言うじゃん」
----それはウワサの真相。
驚愕。
理由を聞けば仕方ないものだった。それが例え言い訳だったとしても。
生徒たちを愛しすぎるが故に起こってしまった
「……それ以来、子供達には武器を向けていないじゃんよ」
「……ん? いやいや! さっき使ってたろ!」
「あれは盾だから防具、セーフじゃん☆」
「何て理不尽な……」
そう言い頭を抱えつつも真藤はこの教師に信頼感が一気に増した。自分の過ちをしっかりと受け止め前を向き、生徒の過去を知り、心配して文字通り身体を張って今まで逃げていた真藤を導いてくれたのだ。信頼感が沸かないはずがない。しかし同時に疑問が出てきた。
「何でこの
噂話を真相を話せば今までみたいな目では見られないはず。
こんないい先生がずっと冷遇されていいはずがない、率直にそう思って疑問を口にした。
「あの子達が噂話で私に怯えているのは知ってるじゃん。でもこの事は進んで言う事じゃない。この話をせずにクラスの皆には今の私を有りの侭で見て欲しいじゃん。」黄泉川は俯きながら話す。
真藤は口を一文字に結んだまま黙ったまま聴いている。
「だから言わない。……真実でも何でも皆が私の
今はまっすぐ、しっかりと、そして迷いの無い顔の黄泉川が真藤を見ている。
真藤は黙って頷いた。返事はしない、出来ないのだ。
感動したのだ。素直に。
目頭に熱いものが溜まっている。
そして黄泉川は真藤の肩にポンと右手を置き、
「そうそう、そう言えばさっきの体育館で暴れた掃除、してもらうじゃんよ? アタシはさっきので左手、恐らく捻挫してるかもしれないじゃん!」
「へ?」
真藤は目を見開く。
後ろを向いても二人は既にいない。とっくにクラスに戻って帰り支度を整えているだろう。
「ひ、一人で掃除……り、理不尽だぁぁぁぁーッ!!」
真藤の見開いた目からは溜まっていた
という訳で事の発端の多少の食い違いはあったものの、主人公のトラウマを克服してもらうために先生が奮闘したということでした!
多少強引ですが、今回も勢いで見ていただければ幸いです!
ご精読ありがとうございました!