とある交差の電光石火   作:エスル

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にじファンから読んでいただいた方もいらしてくれて大変感激しております!

以前に読んでいただいた方にはペースが遅く、申し訳ございませんがお付き合い頂きますようお願い致します!




八代 惟代(おさななじみ)

「はぁ……疲れた」

 

 

 日中にギラギラ光る風力発電の三枚プロペラを眺めながら少年は呟いた。

 あれから孤独な体育館の掃除が終わり、一人とぼとぼと真藤は下校している。

 教室に戻れば二人が自分の帰りを待っているものと思っていたが、

 

 机には『学園都市のブラが俺達を待っている!』と書置きのメモが一つ。

 

「ホントにあいつらは友達なのだろうか?」

 

 何が、俺たちは信じていただ。さっさと先に帰ってしまった二人に対し何を信じればいいのだと、不満げに漏らしながらため息をつきながら歩く。

 

 

「ねぇ」

 

 

「まぁ仕方ないか、掃除に結構時間もかかったしな。さて、今日のお買い得品はと!」

 

 裏切り者二人はさておき、気を取り直しカバンの中からチラシを取り出して本日の晩御飯の為のお買い得の情報収集をする。これは下校時の日課でもある。

 

 

「ちょっと待ちなさい」

 

 

「おっ、卵と豚肉が安いじゃないか!」

 

 真藤は背後から聞こえてくる声に気づかない。手元のチラシに夢中でうまくいけば数日間の食事の栄養は心配ないとお買い得品に表情を緩ませている。

 

 

「仕方ないわね」

 

 

 後ろの声にようやく気づいた瞬間、ビュウ、と強い風が吹き真藤は思わず顔を腕で隠す。

そして一瞬の強い風が吹いた後、腕を下ろした時には顔が影に覆われて空から落ちてくる系のヒロインが舞い降りた。

 

 

 

 

 

「いってー……」

 

「さっきから謝ってるじゃない、小さい男ね。でもアナタだって何回も声を掛けているのにもかからわず気付かないのがいけないのよ」

 

「だからってなぁ、惟代(いよ)! 俺の顔の上に降りてくることは無いだろ!? 鼻血が出そうになったわ!」

 

 

 灰色のプリーツスカートに半袖のブラウスにサマーセーター。常盤台の制服に身を包んだ少女。青みがかかった黒髪は腰まで伸ばしており、儚げそうに見える美貌は深窓の令嬢を思わせる。

 

 彼女、八代 惟代(やしろ いよ)は真藤豪摩の学園都市に来る前からの幼馴染だ。

 

「だから悪かったって言ってるじゃない、でもアタシの見たからそれでおあいこでしょ? スパッツだけど」

 

 上目遣いで片目をつぶり、ペロと舌を出す。上目遣いというより下から睨まれている気がするが。しかし幼馴染とはいえ、美少女の部類に間違いなく入るのでそれはもう絵になる。どこぞのメガネ(幸徳井)とは大違いだ。

 

「あのなぁ、確かに見えたけど……ってスパッツなのかよ!?」

 

「細かいことは言いっこなしよ、こっちだってずっと待っていたのよ? 今日放課後会う約束してたの忘れてたわけじゃないんでしょ?」

 

「ん? うーん、ま、まあな……」

 

「ホント? なんか怪しいわね?」

 

「俺が忘れているわけないじゃん! あー今日は楽しみだなぁ」

 

 言えない、黄泉川との補習(けっとう)ですっかり抜け落ちていたなんて。

 いや、本当は朝から抜け落ちていた。きっとこの暑さのせいで頭がおかしくなったに違いない、そうしようと真藤は考える。

 だが、相手は俺でごまかされるほど付き合いが短いわけでも浅いわけでもない。考えを見透かされたように惟代は頭をふって嘆息する。

 

「忘れてたのね……全く、ホントにしょうがないわね、犬でももっと賢いというのに」

 

「俺は犬以下か!? つーか酷い言い草だな!?」

 

「いえ、犬が余りにも可哀想ね、何に例えれば丸く収まるのかしら」

 

「もうそこまで言われている俺の気持ちが収まらねぇよ!」

 

「うーん……路傍の石……ね、これがいいわ」

 

「良くねぇよ!? それどころか生き物ですらない!?」

 

「砂利が騒がないの、ほら行きましょう」

 

「更に扱いが酷くなった!?」 

 

 何故年下の少女に砂利(ジャリ)とまで言われなければならないのかと打ちのめされる。

 一体どこで自分たちの付き合いは間違えたのだろうかと頭を抱え悩む。

 

「はい、この話はもう終わり。早く今日の目的のとこに行きましょう」

 

「目的って?」

 

「やっぱり忘れてたのね……新しいクレープ屋が出来たから食べに行こうって約束したじゃない」

 

 自然に出てしまった言葉に対し、本当に道端に落ちている石を見るような目で真藤を見る。

 

「あ、あぁ……そうか、そうだったよな!」

 

 向けられる憐憫の色にも似た視線に傷つきながらもやっぱり女の子は甘いものが好きなんだなと真藤は思う。

 そうこう話しているうちに二人は新しく開いたというクレープ屋がある広場に着き、早速並んだ。

 

 

「へぇ~、俺たちが並んでからの後ろもまだ結構行列が出来ているな」

 

「そうね、もうすぐで私達の番よ」

 

 二人はこの暑さもあり、アイス入りのクレープを頼む。生地はサクサクとしており、アイスや生クリームも甘さ控えめだ、これはおいしい。

 感心しながら真道は食べる。どうやら惟代も同じ気持ちの様だ、いつもは引き締まっている表情が幾分か緩まって嬉しそうに食べている。

 

「おいしいわね」

 

「ああ、そうだな、しかし俺の奢りとは……」

 

「待たせた上に約束を忘れたという、石のくせに驕りたかぶった故の罰よ」

 

「上手いこと言ったつもりか!? つーか石で決定なの!?」

 

 

 

 

 

『ほら お姉様遠慮なさらず~!』

 

『い、いらないって言ってんでしょ! 何よ納豆に生クリームのトッピングって!』

 

 と、二人のやり取りよりも大きな声で騒いでいる二人組がいた。

 こんな暑い中何をやっているんだと真藤はその方向を見やる、すると惟代と同じ制服が二人、うち一人の髪が肩にかかるくらいの少女がこちらに視線を向けられる。

 何故か一瞬、心臓が止まる様な感じで真藤の体は硬直した。

 

 

「……八代(やしろ)

 

「あら、御坂(みさか)じゃない、さっき学校のプールで会った以来ね」

 

 とても、偶然この場所で友人と出会った様な明るい雰囲気では無い。

 それどころかむしろお互いが歓迎していない空気だ。茶髪で短めの髪で御坂と呼ばれた少女は眉間に皺を寄せて惟代を見ている。

 

「あら八代さん、デートですの?」

 

 先程の雰囲気を取り戻そうとするかのように、もう一人のツインテールの少女は笑顔で礼儀正しく話しかけてくる。

 

「そうじゃないわ、残念ながらね。白井はわかるけどそちらの二人は?」

 

 確かに常盤台の制服とは違うセーラー服が二人いる。真藤がよくよく見ると自分の母校、柵川中学の女子制服だった。だとすると惟代達と同じくらいの年齢だ。

 

「常盤台中学の生徒の方ですね! 柵川中学1年、初春飾利と申します!」

 

 と片手を大きく挙げて元気良く挨拶するのに対し、

 

「あ、どうも、初春の友達の佐天涙子です。」

 

 と少々無愛想でぎこちない笑顔で挨拶するもう一人の女の子。

 

「ご丁寧にありがとう、私は常盤台中学二年の八代惟代よ、宜しく」

 

 たわわに育った中学生らしからぬ胸を支えるかのように腕を組み、非常に大人っぽい雰囲気を醸しだして自己紹介する少年の幼馴染。

 御坂は更に険しい顔をしているが、初春と名乗ったものすごい花飾りの少女はウットリした眼で惟代を見ている。

 どういうことだ? そちら側の子か? と真藤が首を捻って考えていると白井と呼ばれた少女は惟代に話しかけてきた。

 

「それではそちらの殿方は?」

 

「私の幼馴染よ」

 

 惟代や他の四人が唯一の異性である少年を見る。少女たちが注目してくれるのは悪い気分ではないがくすぐったい感じで落ち着かない。真藤は身を捩らせる。

 

「高一の真藤だ、宜しくな」

 

 恥ずかしいのか、滅多にないシチュエーションで緊張したのか簡潔に挨拶を済ませる。

 こちらを訝しげにジト目で見る茶髪で短髪の中学生、御坂が真藤にためらいながら小さな声で質問をする。

 

「ふーん、アンタってさぁ……」 

 

 

 それを初春の声がかき消した

 

 

「あれ?」

 

「どうしたの?」

 

 佐天は条件反射のようにいち早く聞き返す。

 

「あそこの銀行なんですけどどうして昼間からシャッターが閉まっているんでしょう?」

 

 

 と、その瞬間、銀行のシャッターが爆発した。




ようやく原作のメインキャラクター、御坂美琴が登場しました!

また真藤の幼馴染、八代惟代については色んな意味で御坂と対比するようなキャラになれればなと考えておりますので、今後上手く表現できるように精進したいと思います。

今回もご精読ありがとうございました!
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