戦場の虎   作:コンテナ輸送

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ザビ家の寵児

 12月24日も終わろうとしている頃、キシリア少将から受けたソロモン要塞救援のためにソロモン急行にしていたマ・クベは先行していたヘルメス部隊から連絡を受けた。

 

「マ・クベ大佐、ガラハウ中佐から通信が入っております」

 

「シーマから? まったく・・・・・・あのならず者達まだ私に文句でもつけるつもりなのかね」

 

「い、いえ、なんでも脱出ポットを発見したとのことです」

 

「脱出ポット? ならば早く回収してやれ」

 

 そう言ってシーマに回収指示を出そうとする作戦参謀であるバロム大佐にマ・クベはソロモンに向かうことが急務であるとして脱出ポットを無視するように言った。

 

「待ちたまえバロム大佐、私はそのような命令は出していない。脱出ポットなど今は捨て置け、我々はソロモンに一刻も早く救援に向かうことが急務なのだ」

 

 そのマ・クベの命令にバロムは唖然として言った。

 

「失礼だが、マ・クベ殿は宇宙の兵士の気持ちをわかっておられぬ。このようなとき、仲間が救出してくれると信じるから、兵士達は死と隣り合わせの宇宙で戦えるのです」

 

 この言葉には流石のマ・クベも返す言葉もなく、回収を許可した。

 

「わかった・・・・・・許可しよう。シーマに伝えたまえ、脱出ポットを回収するようにと」

 

 そう言うとマ・クベはそれ以降は何も言うことなくただ何か考えている顔で佇んでいた。そんなマ・クベを見てからバロムはシーマに回収するように伝えた。

 マ・クベとしては面白くなかっただろう、なぜなら彼は誰よりもこの救援任務を完遂したかったからだ。どれだけキシリア・ザビに忠誠を誓っていようとその忠誠とは裏腹に、オデッサより撤退した段階でキシリア・ザビ少将はマ・クベを見限っていたのだから。

 それを彼は感じていたから、シャア・アズナブル大佐やミハエル・テラーなどが重用されることが疎ましかったのだろう。

 だからこそ彼はキシリアが自分を見限っている証明とも取れるこの任務を成し遂げてキシリア・ザビの信任を取り戻そうとしていたのだろ。

 マ・クベがどのような人物であろうとも、彼のキシリアにたいする忠誠心は本物だった。それゆえに彼がどのような思いでその命令を下したかは言わずともわかるだろう。

 しかし、この命令こそが後のジオンの未来に大きく関わっているのだが、今の彼らは知る筈もないだろう。

 だが歴史にもしもなどないが思わずにはいられないだろう、もしも彼がその脱出ポットを回収しなかったらどのような未来に変わっていたのだろうか。

 

 

 

 

 ヘルメス部隊の旗艦ザンジバル級機動巡洋艦(リリー・マルレーン)では救援艦隊の本隊からの許可が下りたことにより脱出ポットの回収作業に入っていた。

 そんなときにシーマはブリッジにミハエルがいないことに気がついた。

 

「ミハエルの坊やはどこに行ったんだい?」

 

「ミハエル少佐ならドックの方に行ったみたいですぜ」

 

「ドック? ふふっ、あの坊やも物好きなものだね」

 

 あの甘い坊やならやりそうなことだが本当に変わってるといったやり取りを部下としていると、オペレータからドックのミハエルから通信が入ったと連絡を受けて通信に出るととんでもない人物を脱出ポットから保護したとミハエルの口から伝えられて、シーマは急ぎドックに向かった。

 

 

 急いでドックに来たシーマはミハエルを見つけるやいなや捲し立てるようにミハエルに聞いた。

 

「本当なのかい! 脱出ポットにいたって人物があの・・・・・・」

 

「はっ、本人と言う確証も取れました。事実であります」

 

「しかし信じられないね、あのドズル・ザビ中将の奥方とその娘がこんなところに脱出ポットに乗って宇宙旅行してるわけもないしねぇ。だとするとソロモンは・・・・・・」

 

 そんなやり取りをシーマ達がしていると誰かが脱出ポットから出てきた。金髪の髪をして赤子を抱えながら降りてくる女性こそがドズル・ザビ中将の奥方であるゼナ・ザビであり、その彼女が抱える赤子こそジオンの未来に大きくか関わるザビ家の寵児であるミネバ・ザビである。

 この時、まだミネバは自分の苛酷な未来など知らずに父母の愛情を一身に受けて幸せの中にいた。

 

 ゼナはミネバを侍女に預けてシーマの前まで来ると憂いをおびた様子で助けてくれたことを感謝した。

 

「貴官がこの船の指令ですね。皆を代表として感謝申し上げます」

 

「はっ、ありがとございます、しかし我々に礼など不要です。我々は自分の責務を全うしたまでです」

 

「そうですか、では御名前を御伺いしてもよろしいですか」

 

「はっ、私はジオン突撃機動軍所属独立第901連隊 連隊長シーマ・ガラハウ中佐であります」

 

「ではシーマ中佐、大義でしたこれからもジオンのために責務を全うしてください」

 

 了解を伝えたシーマは、本題である事について聞いた。

 

「了解しました・・・・・・一つ聞いて起きたいことがあるのですがよろしいですか?」

 

「はい、貴女が聞いたい事はわかっております。私も御伝えしたいと思っておりました」

 

 そう言うとゼナは自分達がここにいる理由を伝えた。

 その内容はソロモンが陥落したこと、夫であるドズル・ザビ中将はソロモンに残った事などを伝えた。その内容は船員に衝撃を与えた。そんな中、ミハエルは己の感情をぶつけるように壁を殴り付けた。

 

「くそ! 間に合わなかったのか我々は!!」

 

 殴り付けた拳の痛みや流れる血、しかしそんなことよりも彼を怒りが包む。許せないのだ連邦がそして、何よりもこんなにも無力な自分自身の事が。

 情勢が完全に連邦に傾きだした、ジオンは生き残る事ができるのだろうか。

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