戦うというのは何なのだろう。人のために戦う、自分のために戦う。様々な意味が存在する。人によってその答えは変わってくる。恐らくではあるが、ほとんどの人は『人のために戦う』ということをしないだろう。自分の望みを叶えるために戦うのだ。今までの幻想郷で起きた異変も自分が望んだ世界にするために起こしているのだから。異変解決をしてきた霊夢でさえも『迷惑だから』という理由で解決をしているのだ。すべての生き物は自分の欲望のために動くのだ。やり方は色々あるが、平和に生活してきた俺や龍哉と彩夏は知っていた。世界の残酷さ。そしてその世界がどれだけ思い通りにいかないかを。どんな残酷な世界でも必ず成功への道はあった。それを信じて突き進み夢を叶えたやつも少なくないだろう。俺たちは違った。いくら頑張っても思う通りに行かなかった奴らだ。元いた世界であった出来事すべてそうだった。上手くいくと思った人間関係も途中で崩れさり、自分や信用できる仲間を信じても結果は誰にもわからなかった。悪い方向に結果が進むことがほとんどであり、それを直す気力も失うしかなかった。そう、世界の不条理さはどうしようもならないのだ。『諦めなければ夢は叶う』とか『努力は人を裏切らない』とか色々言われてきた。確かに成功したこともあった。しかし、失敗することの方が多かった。今だってそうだった。
「ガハッ・・・!」
「やはり人間の力などその程度のものなのだな」
戦うことに価値を見いだせなかった。戦い続けることになんの得があるというのだ。自分達の思うがままに事を進ませることが出来る訳では無いのだからもう戦う意味はなかった。
「死ね・・・絶望のうちに・・・」
突如として降り注いだ弾幕を避ける気力もなく直撃。それを受け少ししてから体の力が徐々に抜けていき、動かすことが出来なくなった。
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「何とかなったわね・・・」
横では霊夢が腰に手を当てて大きく息を吐いていた。かく言う自分も魔力の大放出で体はヘトヘトだ。数人の幹部が襲いかかってきたが撃退もしくは殺すことに成功した。私たちの勝利だった。あとは航生が帰ってくるのを待つだけだ。そう、帰ってくればよかったのだ。帰ってこれれば良かったのに・・・。
「うそ・・・・だ・・・ろ・・・?」
目の前に現れたのは目をつぶり、体がピクリとも動かない航生だった。
「航生!!」
霊夢がものすごいスピードで航生に駆け寄り、耳を胸に当てていた。しばらく当てていたが離した時の霊夢の顔は凄かった。全面が絶望の表情に染まり、手をついて首を振っていた。
「嘘よ・・・嘘よね・・・航生・・・」
この台詞で私は察した。航生の心拍がなかったことを。自分の体でさえも冷えていくのが実感出来た。恐れ、怒り、それではない。今ここにいる全員が絶望に染まっている。勝てるはずだった。みんなで酒を交わす約束をした時のことを思い出してしまった。この異変が終わったらみんなで宴会をしようと決めていたのに・・・。
「心配するな。お前達もこいつと同じ場所に連れてってやるよ」
みんなの体は動いていなかった。膝をつき、下を向いているものが多かった。特に一番ヤバイ状態になっている奴がいた。
「嫌よ・・・イヤァァァァァ!!」
横では霊夢が航生を抱きしめ泣き叫んでいる。紫はいつも通りを装っている。さすが妖怪の賢者と言ったところか。それらを見た瞬間、自分の中で何かが吹っ切れたような感じがした。
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
弾幕がゼルエルに降り注ぐがやつはそれら全てを手で弾いている。全くダメージが入っていない。ひたすらに撃ち続ける弾幕は全て反射されていた。ものによっては自分に跳ね返ってきて自分がくらってしまった。
「なんでだよ・・・なんで効かないんだよ!!」
他のみんなの弾幕もあいつには届いていなかった。みんな戦った。でも結果的には大敗。その後のみんなの顔には再び絶望が浮かび上がっていた。霊夢はいまだに航生を抱きしめて泣いている。帰ってくることの出来ない航生の死体をずっと・・・。そんな霊夢を見た私はなんとかしてやりたいとは思ったが、死者の生命回帰は神にも許されていない禁断の行為。どんな魔法でも命までは戻すことが出来ないのだ。
「・・・ス・・・」
突然霊夢が口を開いた。しかし声が低すぎてほとんど聞き取れていなかった。
「コロス!!」
霊夢の顔が絶望から一転、怒りに満ち溢れた表情に変わった。
「霊夢・・・」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!」
霊力符と大幣を持って突進していく。他のみんなも負けじと突っ込んでいった。もちろん力任せの攻撃が『力』の名を冠するやつに叶うわけはなく、みんなの一斉攻撃は相殺されてしまった。特に霊夢は至近距離の瞬間火力がいちばん大きい時にあたったためダメージは大きく、後に吹き飛ばされ、他の奴らも地面とかに叩きつけられていた。
「霊夢さん・・・霊夢さん!?」
いきなり叫んだのは早苗だった。いつも通りの静かなイメージに反して大きな叫び声だった。
「魔理沙さん!霊夢さんが・・・」
まさかと思って霊夢の脈を見た。早苗も信じたくないだろう。これでは幻想郷が崩壊するのは時間の問題だった。しかしそうであっても、私に残っている最後の手段。これならこいつを倒せるかもしれない。この方法にかけてみるしかない。そう言いながら八卦炉を片手に魔力のチャージを開始した。