異変解決まで後一歩のところまで来た。私は、航生の能力を使って戦えるようになった。と言ってもこの前ゼルエルを倒したことにより私の能力は解放された。そのため異変解決にも普通に出かけられるようになったのだが、何かしらの違和感を私は感じていた。
「その話は私からしましょう」
そう言って目の前に姿を現したのは地獄の裁判長、四季映姫・ヤマザナドゥだ。
「博麗霊夢。あなたをは気づいていないようですが・・・」
「遠回しに言われるのは嫌いなの早めに済ませてくれる?」
「わかりました。博麗霊夢。あなたはもう人間ではないのです」
(・・・はい?なんて言った今・・・)
確か今映姫は『人間ではない』と言った。それはどういうことなのだろうか。私が人間でないというのなら一体何になったのだろうか。
「博麗霊夢。あなたも気づいているはずです。何かしらの違和感に」
たしかにここ数日体に妙な違和感を感じていた。それが何であるか私にはわかっていなかった。
「あなたは人間でない。そうするとだいたい限られてくるはずです。2つの選択肢に」
人間ではないがものに触れられる存在。それは亡霊、もしくは・・・。
「博麗神社の巫女であり、幻想郷の管理者である博麗霊夢よ。あなたは神として今を生きているのです」
予想通りだった。博麗神社に住まう神を見ることが出来ているのは巫女もしくは同じ神様だけ。しかし、普通巫女は見えるというより聞こえる程度なのだ。神様が見えるというのはそういうことだ。
「幻想郷の人間が不老不死になることは大罪です。しかし、あなたはもう人間ではなく神。その罪には縛られなくなった」
「私にどうしろというの?」
「博麗霊夢。あなたの力が大きすぎるあまり下手に動けば幻想郷は崩壊してしまいます。そのため大きすぎる技を使わないように警告に来たのです」
つまり今私は輝夜と同じ不老不死。違う点は神であるか人間であるかということだ。
「頼みましたよ・・・」
「・・・」
何も言えなかった。自分が神になろうがなんだろうがどうでもいいことなのだが、そこではない。私は力がないあまり航生を犠牲にし、人里の人間も何人か死んでしまった。私は人殺しなのだ。それなら殺されるなりなんなりしてバツをつけるのが当然だと思っていたのだが、死ねないということは永遠に罪を背負い生き続けるということになる。罪を背負うのは当たり前だがそれではない何かが私の心を締め付けた。異変が起き、それを解決できず航生という名の少年を連れてきて、異変解決を一任した挙句彼は自分を犠牲にしてまで私たちを救ってくれた。謝りたかった。死なせてしまったことを謝りたかった。
「この異変はまだ解決していません。あなたは戦えるのですから、人々を守る責任があるのです。あなたの博麗の巫女としての仕事なのですから」
少し考えた後、私は人々の犠牲を無駄にしないためにも異変を解決すると決めた。
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どれくらいたっただろう。私の考えは当たっていたようで、霊夢が不老不死になったことは幻想郷の住人全員に知れ渡った。それが霊夢をどれだけ苦しめるかなんて私はその時考えていなかった。不老不死とは皆が望み、そして皆から恐れられるものだ。霊夢は今も異変解決のため各地を飛び回っているが、他のみんなはまだ回復しきれておらず、能力も復活できていないため戦えるのは私とフランだけだが、もちろん私達も戦えるほど回復している訳では無い。出かけた時の霊夢の顔はいつもと違い、責任という言葉を被ったように感じた。
さて、今私たちは異変最後の決戦に向けて準備をしているところなのだが、作戦は思いつかないし、霊夢いないしで会議どころの話ではなかった。霊夢が異変解決以外の目的も持っていたようでそれを知れればもしかしたらなんとか勝てるかもしれないのだが。
「あんまり詮索しないであげてくれる?」
紫からそう言われた。紫は一応私より長く霊夢と一緒にいたためなんとなくでも彼女の考えることがわかるのだ。そして、霊夢が貧乏と言われる理由が紫自身にあるということも紫は理解していたらしい。霊夢の母親がいない間(今もいない)、母親代わりとして見てきたからこそわかることだ。私のように途中で霊夢と戦って負けた悔しさから一緒にいる訳では無い。
「今は、霊夢を自由にさせてあげて?私たちは会議を続けましょう」
私たちが考えたことも理解出来たような口ぶりだった。でもそれこそ長く生きた知恵というやつだ。そこには尊敬できた。
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人というものは、生きることで知恵を身につける生き物。たとえ神といえど生まれたばかりの頃は何も知らないのだ。私はまだ神としての自分を受け入れられていなかった。この私を見たら、航生はなんというのだろう。
「って、なんで航生の事考えてるのよ・・・」
ここ最近よく航生のことを考えてしまう。一応であっても少しは一緒に過ごした仲だ。特別な感情を抱いている訳では無いが、なんとなく寂しさを感じていた。死にかけた時も助けてくれたし、前に行った世界でもずっと一緒にいてくれた。妖怪からは好かれて(1部除く)も人間からの信仰がほとんどないに等しかったこの私と一緒に過ごすというのは下手したらいじめられっ子を助けた子のように嫌われてしまうのだ。博麗の巫女として生きていたため妖怪に強めな姿勢をとるのだが、紫のように親近感を出して近づいてくるやつとかがいるせいで、博麗神社には信仰がないのだ。そんな私を見てくれたことはとても嬉しかった。それでも私は彼を拒絶し続けた。確かに一緒に居たいと感じたこともあり、そういう時は甘えたこともあった。その彼ももういない。二度とこの世界には帰ってこれない。死んだ人間は戻ってこないのは理解しているし、1度経験しているから慣れているといえば慣れているのだが、それでももちろん寂しさを感じるのは人間誰しもそうだ。私も一応存在は神に近いらしいが、人間であった以上人間の心を持っている。当たり前の心。そう信じようとしていた。していたのにできなかった。航生だけはできなかった。魔理沙でも同じことを考えるだろう。もし私が死んでいたら同じことを考え、同じように行動するはずだ。
「そろそろ帰ろうかな・・・」
一応今日の調査を終わりにして、私は博麗神社へと向かった。
博麗神社に着いた私は晩御飯を食べたあと、普通に風呂に入り、布団を敷いてあとは寝るだけなのだが、私はそのまま布団には入らずお茶を入れた。そして縁側に腰をかけ、お茶をすすった。今日は月が今までにないくらい輝いて見えた。
「・・・情けないわね・・・私」
こんなところで感傷に浸っている場合でないのは重々承知しているつもりだ。
「そうよ、ただ元の生活に戻るだけよ・・・」
完全に戻っている訳では無いのにこんなことを口にする。ただただ寂しい。身近にいた人が1人いなくなるだけでここまで寂しくなるものなのだろうか。
「そろそろ布団はいろうかしら」
リボンを外して私は布団に入った。いつもはすぐに眠れる時間なのに、全く眠くならない。その上、寒い。温かみを感じていない。
「なんで・・・なんでいなくなっちゃったのよ・・・!」
目を閉じた瞬間、突如として思い出される思い出。航生と過ごした短い時間は私にとってとても大切なものとなっていた。
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「霊夢・・・」
襖の奥には霊夢がいる。そして奥からは何やら泣いている声が聞こえた。寂しさを完璧に表に出している霊夢を見るのは初めてだった。慰めてやりたいとは思うが、私が言ったところで何が出来るわけではなかった。
「ほっとくのが一番か・・・」
私はその後そのまま家(紅魔館)に帰って、目をつぶった。