私は何日も探し続けた。でも、手がかりは一切見つからず時間だけが過ぎていった。異変解決のため各地を飛び回り情報収集したがこれといった手がかりはなかった。そんなことを続けているうちに3ヶ月が過ぎた。
「今日も成果なしかぁ・・・」
疲れがドッと押し寄せ畳で横になった。異変の主犯と思われる妖怪だが、出てくる気配がない。静かすぎる。いつもなら何かしらの妖気を感じるはずなのに(いつものヤツらを除く)妖気が感じられなかった。
「とりあえず寝ようかな・・・」
そしていつも通り横になろうと布団に入った時。
「霊夢!」
そう言って魔理沙が障子を勢いよく開けて入ってきた。
「急いでくれ!フランが!」
フランに何があったのだろうか。気になりつつも私は紅魔館に向かった。
「フラン!」
油断した。目の前ではフランが何者かに腹を貫かれていた。吸血鬼としての力が残っているはずのフランがここまで圧倒されるものだろうか・・・。
「やっと現れたな。博麗の巫女よ」
そう言ってそいつは私の方を見た。こいつが前に紫が言っていた幻想郷を破滅に導いた妖怪だろう。とてつもない力を持っているのがよくわかった。
「今なら我はこの幻想郷を支配できる。私の望む世界を作るのだ」
聞き飽きた台詞だった。レミリアが前に言っていたので慣れているが、こちらからしたら大迷惑だ。ただでさえまだやりたいことがあるというのに崩壊させられてはそれもできなくなってしまう。しかし、理由はそれだけではない。航生の愛した幻想郷だ。誰にも侵させはしない。
「あなたを倒してこの幻想郷を守る!」
魔理沙と一緒にやつに向かって弾幕を打ち続けた。
ーーーーーーーーーー
『あちゃー、もう始まっちゃったか・・・』
幻想郷では紫たちの封印から逃れた妖怪が暴れ始めたそうだ。もう少しで終わるというところで酷い。ほんのあと数時間だったというのに運が悪かった。
「急いでくれ!早くしないとみんなが・・・」
『これでも充分急いでるんだぞ』
あと数時間かかる所をあと数分まで短縮できたので万々歳だ。霊夢たちが、俺が行くまで持ちこたえてくれることを願うしかなかった。
「頑張ってくれ・・・2人とも・・・」
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「「手強すぎるわ」」
10数分ほど前とはうって変わり少しずつ押され始めていた。威力も負けていないが回避力がすごすぎるあまりほとんど、というか全く当たっていない。相手も妖怪だ。人間と人間だったやつとでもキツいものはキツいのだから、押されて当然ではあるのだが。
「夢符『封魔陣』!」
さらに密度の濃い弾幕が襲いかかった。しかし・・・。
「『反射城壁』」
打った弾幕の軌道が反転し、私たち二人に襲いかかる。魔理沙はその弾幕を書き消そうとマスタースパークを連発しているが、そんなことをして魔力が持つのか心配だ。かくいう私も、霊力と神力の同時使用。普通の人間じゃないからいいが、もしも普通の人間なら体が持たない。私は一応神様と同じ肉体になっているが、半分は人間の血が流れている体なのだから疲労も感じるし、痛みもある。神というのは力を使いすぎると、当たり前のように力は落ちていく。私たちが今のままで戦えるのはあと約30分前後が限界になりそうだった。
「やはり神といえども力は我の足元にも及ばないのだな。ガッカリだ」
妖怪はなぜ生まれたのかわからない。なんの理由があり存在しているのかもわからない。だがしかし、これだけはわかる。私に害をなすやつは全て始末する。それだけだ。それ以外に理由などいらない。私は博麗の巫女。幻想郷を守るために戦うだけ。幻想郷を破壊することは私にとって害。そう、それだけわかっているなら問題ない。
「ぶっ飛ばしてやるわ」
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「なんか霊夢の目が狂気に満ちてるんだけど・・・」
『やばいな。あのまま行くと下手したら・・・』
「下手したらどうなんだ?」
『幻想郷が崩壊する』
意味がわからなくもなかった。力を持つものは狂気に染まると力任せに攻撃をしてしまう。誰だってそうだとは思うが、霊夢の場合は狂気に染まってしまうと、力が大きすぎるあまり余波が形がもうほとんど留められていない博麗大結界が完全に修復不能になってしまう。そうなれば、新しく作ればいいのだがそれだけの時間が残されているだろうか。妖怪は人間を襲うことを生業としていると言ってもいい。博麗大結界が壊れたら外の世界。つまり、元々俺のいた現実世界に進出して色々とやばい絵面になる。本来博麗の巫女は妖怪を退治し、異変を解決したりすることで幻想郷内部のパワーバランスを一定に保つ役割があるが、狂気に満ちた場合霊夢が少しでも「邪魔」とか「ウザイ」とか負の感情を誰かに対して抱いたらそっちにも襲っていくかもしれない。まだ制御できなくなると決まった訳では無いが。
『よし!そろそろ終わるぞ!出れる準備しとけ』
一応目の前にいるやつも神である。そして俺は今その世界に入門したのだった。
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「口ほどにもない・・・あなたそれでこの世界を統べるとか馬鹿げた幻想だわ」
やはり当たり前だった。神対神だから戦闘の激しさはいっそうすごかった。しかし、私が圧勝。目の前では倒れた妖怪がいる。私はそれ以上の力を持っているのだ。
「これで終わりよ、霊符『夢想封印』」
紅白の巨大な陰陽玉を直接食らわせた。
「これで終わったわね」
そう、これで終わりだと思っていた。しかし現実はそう簡単には進まない。生きていれば必ずどこかで躓くのだから。
「な!?」
後ろで魔理沙が口を開けたまま動けずにいた。無理もない。何故ならば倒したはずの妖怪が生きているのだから。殺すつもりでやったせいで負の感情をやつが吸い込み力を増幅させてしまったのだ。負の感情。それは恨み、悲しみ、憎しみと言った感情。確かに私は恨みと悲しみの感情を今抱いているものの攻撃にそれを入れているつもりはなかった。力任せの攻撃は精密さを鈍らせ、感情任せの攻撃は威力を鈍らせる。私の負の感情がやつの力を引き出してしまったのだった。
「冥土の土産に見せてやるぞ、再死『死への帰還』」
飽きるくらいよく見る闇の弾幕。咄嗟の判断で避けていくが反射的に避けるのには限界があり、反射による行動は、思考して行動する時より細かい動きができない。密度の高い弾幕では反射より予想して避ける方がいいのである。
「くっ!」
「霊夢!少し痛くなるかもしれんが踏ん張れ!」
「え?ちょ、何を・・・」
「恋符『マスタースパーク』!」
残りの魔力が怪しい魔理沙が放ったマスタースパーク。極太のレーザーが私と妖怪に直撃(ここから先その妖怪のことをアザゼルとでも言おう)。アザゼルがどのタイプに属しているのかは知らないが、食らえばひとたまりもないだろう。私でさえも堪えたのだから、アザゼルが耐えられるはずがない。
「そんな状態で放たれた魔法など、私には通じないぞ。たしかに今のは少し効いた方だが」
絶望した。魔理沙のフルパワーが通じないのは耐久力が高すぎる。確かに魔力残量は怪しかったが、それでも傷一つつかないのはおかしい。私も今ならつかないかもしれないが前までなら傷はついていた。
「そんな・・・」
「魔理沙!」
後ろで全ての魔力を解き放った魔理沙が倒れた。魔法使いが魔力を使い過ぎるとどうなるかはこの世界のほぼ全員が知っていた。その未来しか見えなかった私は魔理沙を起こそうとした。しかし反応はなかった。
「魔理沙!」
フランもよってきた。魔理沙を起こそうと必死に呼びかけるが応答はやはりない。それどころかどんどん体温が下がってしまっている。心臓は動いているし息もしている。死んでるわけではなさそうだが、普通の人間がこの状態のまま数時間昏睡状態だと、命の危険は免れない。魔理沙の場合魔力の消費もあったため、少なめに見積もってあと1時間が限界だろう。多めに見積もってもそれくらいだ。普通なら永琳のところに連れていくのに、今はそれができる状況ではない。
「魔理沙!起きてよ魔理沙!」
フランの呼び掛けには応答していない。気を失っているのだから当たり前だが、このままでは魔理沙だけでなく、私達も危険だった。フランは魔力がつきそうだし、そのうえ接近戦もしている。いくら吸血鬼でも体力が持つだろうか。私は慣れない神力を操っているため、体力がやばいうえに、霊力の補助もあって使う事で放出効率をあげているので霊力も尽きる可能性がある。しかし、あちら側はまだ余力がありそうだ。明らかにこちらが不利だった。魔理沙はまだ生きているし、フランも持つかどうかわからない。
「スキができてるぞ?」
「フラン!!」
油断した。魔理沙をかばおうとしていたフランが不意をつかれ投げ飛ばされた。
「戦いはそんなに上手くいくものではない。何年も生き戦争の時代を生きたからこそ言えること。お前らのような奴らにはわかりはしないだろう」
いつもなら龍哉が彩夏に助けを求めるのだが、2人は確か白玉楼にいる。そちらの防衛もしないと幽霊や亡霊を従える可能性があったので、お願いしたのだが仇となった。あっちからここに来るにはめんどくさいし、あちら側から戦闘が終了した知らせが来ていない。終わったら必ず連絡するように言ってあるのだ。確かに殺されているのなら話は別だがその都度戦況報告をしてくるので大丈夫そうだった。そして目の前の状況だ。分が悪過ぎる。
「くっ!霊夢!早く・・・逃げ・・・・て・・・・・」
「フラン!!!」
目の前ではフランが首を握られていた。助けようと動いたが、動くことが出来なかった。
「そこには結界が貼ってある。並大抵の力じゃ外せないぞ。お前はそこでこいつが殺されるところを見ているがいい」
二本の手足すべてが結界で縛られた挙句さらにその周りに結界。いつもなら気づくはずの罠にも気づけなかった。咲夜は戦闘不能、レミリアは腹に十字の剣。美鈴は肝臓の辺りを一突き紅魔館の妖精メイドの半数が死亡、残り半数は重軽傷。人里から避難してきた人の10くらいが殺された。魔理沙は魔力の大放出でダウンしている。ここでフランがやられると私だけになる。こいつがボスならこいつを倒せば異変は終わる。
「フランはやらせない・・・幻想郷は私たちが守るんだ!」
私の声ではない。別の誰か聞き覚えのある声。この声の主はさっき倒れたはずの魔理沙だった。
「魔理沙!無茶よ!その体で戦ったら・・・」
「んなこと知るか!吹き飛ばしてやる!」
「ダメ!」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
聞きたくない悲鳴と音声。フランを見た時にはもう遅かった。フランには3本の槍が刺さっていた。2本は手に。残りの1本はフランの胴体(心臓ではない)だ。その時私は何かが吹っ切れた。体の緊張が解けすべてが開放されたような清々しい感覚。目の前には敵。後には仲間。
「地獄の淵に沈め!」
魔理沙のマスタースパークを真似たような極太のレーザーを出してきた。それを私は片手で防ぐ。
「ならばこれならどうだ?境目『世界の終わり』」
自分に降り注ぐ弾幕をすべて防いだ。結界の威力の桁違いさを身にしみて実感した。力の増大の原因は私にもわからなかった。それでも倒せるという確信があった。
「ならばこの世界まるごと消し去ってくれる!」
アザゼルはとてつもなく大きなエネルギー球を放とうとしていた。それを防ぐべく封印結界を出そうとした。しかし、現実は甘くなかった。
「!?」
ここで神力が切れてしまった。霊力も同時にそこをつき体がとてつもない疲労感に襲われた。披露に逆らえず膝をついて座り込んだ。
「こんな時に・・・!」
(ごめん・・・航生・・負けちゃったよ・・・)
そう言って私は目を閉じ死を受け入れた。神の体といえどエネルギーの大きさによっては吹き飛ばされる。今この時がそうだった。
「まだだ!諦めるなみんな!!」
「なんだと!?お前は・・・!」
「霊符『夢想封印』!」
私のスペルだった。この技を私以外に使えるのはさとりとあともう1人。
「間に合ったみたいだな・・・全くあの野郎もっと早く出来ねぇのかよ・・・」
私の前に姿を現したのは私たちのために戦って死んだはずの航生だった。