「この力は素晴らしい。私がこの世界を統べる王となるのだ。まずは手始めに・・・」
暗闇に響く不気味な声。その声は何かを呼び覚まそうとするような声なのであった。
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「なんかすることないなー」
「いやいや、朝ごはんまだでしょ」
「はいはい、今作りますよ」
こんな会話ができるのは幸せだ。異変が解決してからもう1週間が経過した。能力が使えなかった他の住人もアザゼルを倒したことで完全に封印が解け、能力が少しずつ使えるようになった。ただ、制限がかかっていたせいでうまく扱えず慣れるには時間がかかるそうだ。
「あんたも取り敢えずご飯食べないと体壊すわよ」
「(っ'-')╮=͟͟͞͞ くブーメラン」
「ダメだこいつ。早く何とかしないと」
なんかすごく馬鹿にされたような気がしたが全く気にしない。今日は特に何もすることないから、白玉楼に行って妖夢と剣を鍛えようと思っていたところだ。ちなみにいつも異変解決後すぐに開く宴会はまだ開いていない。完全に回復するまで待とうという配慮からだった。朝ご飯を作って食べたあと、霊夢も行くというので一緒に行くことにした。ついでに紅魔館にいる龍哉と彩夏も誘うつもりだった。あの二人は一応剣を使うのでちょうどいいと思っていた。
紅魔館に2人を迎えに行ったあと、白玉楼に飛んでいった。龍哉は能力で飛べるが彩夏は無理なのでそこは龍哉に任せた。
「いらっしゃいみんな。取り敢えずあがって。お茶出すから」
さすが幽冥楼閣の守護者だ。気が回るのが早い。妖夢の能力は剣術を扱う程度の能力。主に楼観剣と白楼剣を使う。どちらも日本刀のような感じの剣だ。あまり間近で使っているのを見たことがないから楽しみだ。
「あらあら今日はお客様が多いのね?」
襖の奥から姿を現したのは幽々子さんだった。
「あまり、というか会うのは初めてだったかしら?念の為自己紹介するわ。私の名は西行寺幽々子。この冥界の地獄の閻魔から任されているの。よろしくね」
「ご丁寧にどうも。俺の名前は航生って言います。苗字は聞かないでください。いい思い出はない」
「ふふ、分かったわ。よろしくね。それでみんななんで今日はここにいるのかしら?」
俺達が今日ここにいるのは妖夢と剣を鍛えるためだ。平和ボケして実力を落としたくない。
「あー、それはな幽々子」
龍哉のすごく馴れ馴れしい性格は正直うざいがこういう時に役に立つものなのだな。何回があっているらしいから敬語とかは使わないらしい。しかし、彩夏の方は親しき仲にも礼儀あり。ちゃんと目上には敬語だった。それでも言っている内容は小並感。
「「この2人ついに結婚するんだよ!」」
「「ぶふぅ!!」」
2人して吹き出す。あちら側もすごく息の合った連携だ。白玉楼を守りきっただけのことはある。しかし違う。気にすべきはそこではない。
「な、いやいやいや。結婚!?なんで!?え?何?そういう趣味なの!?」
霊夢が必死に否定しようとする。そこまで強く力説されるとこちらは悲しくなってしまう。
「ぇ━(*´・д・)━!!!2人とも結婚するの!?おめでとう霊夢!」
「夢想封印・・・」
「すみませんでしたm(_ _)m」
端でなんか封印しようとする巫女とされそうになる半人半霊を見かけた気がするが見なかったことにしよう。取り敢えず落ち着こうか霊夢。
「あなたもなんか言ってやってよ!幼馴染なんでしょ!?」
幼馴染だからわかる。こいつら2人は昔からこういう奴らだからもう治らない。どうしようとも治せない。静かに俺は首を横に振った。
「ほらほら航生だって認めてるし、早く結婚式を・・・」
「神霊『夢想封印』」
「え?ちょ、まっ。うぎゃぁぁぁぁああああ」
(ピチューん)
止めておくべきだった。予想はしていたけど、霊夢は恥ずかしさを攻撃して紛らわすから困ったものだ。受けるこちらの身にもなってくれ。
「まったく・・・やめてよね?そんな関係にすらなってないわ」
「あら、残念。ちょっと期待したのに」
期待されても困りますよ幽々子さん。まあ、俺の場合霊夢が望めば受け入れるがな。
「いやいや、一緒に暮らしててもそこまで望まないわ」
「あれ?もしかして聞こえてた?」
「口に出してたじゃない」
出てた感覚なかった。よくある無意識ってやつか。まあ、一応外の世界にいた時は霊夢に会えるなんて思ってなかったし、十分満足だ。というか、一緒に暮らしてる時点でアウトな気がするがそこに気づいていないのだろうか。
「ま、まぁその話はまた後にするとして。約束守ってもらうわよ」
「いいぜ、まずは俺からだ」
ここに来たのは妖夢と手合わせをするためだ。なまった感覚を取り戻したいという願いに答えたのだ。白玉楼の庭に出て2人は剣を構えた。
「じゃあ俺が開始の合図をするわ。まずは妖夢と龍哉だな。行くぞ」
「こっちは準備オッケーだ!」
「こちらも準備出来ました!」
2人の間に少し火花が散っているように見えた。まあ、間違いではないだろう。妖力(妖夢の場合霊力)とぶつかっているのだから。
「3・・・2・・・1・・・始め!」
一応龍哉は刀を使っているので妖夢と似たような戦闘スタイルになるだろう。ただ、妖夢は二刀流のため龍哉には分が悪い。速さも技術も妖夢の方が上だが…。
「やはりやりますね」
「そりゃああの異変の解決者の1人だからな。これくらいはやるさ」
見ないうちに既に鍔迫り合いになっていた。しかし速さと技術が上の妖夢より少なくとも力はある龍哉が押していた。少しずつ後ずさりする妖夢には苦の表情が浮かぶ。
「いけー!龍哉押し勝てー!」
「妖夢も頑張れ!」
鍔迫り合いから抜け出そうとした妖夢が剣をそらし龍哉の刀にかかった力を逃がす。そのまま龍哉はバランスを崩して倒れ込む。そこにすかさず妖夢が飛び込み首元に剣を向けた。
「勝負ありですね」
「参った。やっぱかなうわけないわ」
妖夢もあのまま力押しになっていたら負けていただろう。咄嗟に力を逃がそうとした判断は正解だ。龍哉の場合まだ力で押そうとするくせが抜けていない。そこを直せば妖夢に勝てると思う。
「じゃあ次は私ね」
そう言って彩夏が立ち上がった。さっき聞いたが彩夏はレイピア。正確には細剣を使うらしい。速さで負けにくいがどうなのだろう。細剣は速さでは負けを取らないくらい強いが防御力が皆無だ。無いに等しい防御をどうカバーするかが鍵になってくる。
「じゃあ行くぞ・・・開始!」
先に突っ込んだのは彩夏。低めに剣を構え、妖夢の剣の射程外から刺突を繰り出す。刺突は直線上であれば、速さも威力も増す。しかし射線が読まれやすいのでよくかわされる。目の前では今言った通りギリギリのところでかわされている。妖夢は反撃のチャンスを伺っている。速すぎるため反撃しにくいのだ。少しずつ妖夢が押されていく。このままいけば勝てる。
「・・・!読めた!」
いきなり妖夢がジャンプした。突進していた彩夏は落ちてきた瞬間を狙おうとあとすこしで足がつくタイミングで突撃。そこで妖夢は地面に楼観剣を突き刺した。それを支えにして体を上に押し上げる。ギリギリのところでかわされていたのが完璧にかわされ、彩夏のスピードが落ちた。そこを逃さず妖夢は止まったところに楼観剣で詰め寄る。同じく彩夏も向き直り、妖夢に向かって剣を向けた。それでも妖夢が一足早かった。少しだけ砂煙が上がりその煙が完全になくなった時に見てみると、彩夏の心臓のところに剣が向けられていた。
「良し!」
「無理よこれ。絶対勝てないじゃない」
最後に残ったのは俺。俺は妖夢と力の差が確かにある。神様のような体なのでどうなるか分かったものじゃない。それでも全力でやるつもりだ。
「最後に俺だな」
剣を持って妖夢の正面に立つ。構えは下段だからどういう攻撃が来るかわかりにくいはずだ。攻撃によっては読まれるがまあいいだろう。剣に力を込める。まだ慣れていない新しい体での戦闘だが、記憶でなんとかなるだろう。
「行くぜ!」
俺の剣が発光する。出し惜しみなく行くと決めていた。最初から飛ばす。
「ヴォーパルストライク!」
一直線ではないが突進。妖夢もその技の観察してきた。そして見切れたのか俺の懐に入り込もうとしてきた。しかし、それは俺にとっては鈍作。そんなことを予想していないわけがない。
「あまいぜ!」
剣の軌道を変え、妖夢へ向かわせる。いきなり来た剣に対応が遅れていたがなんとか弾いてきた。さすが剣の達人だ。
「威力おかしいよそれ( ´-ω-)σ」
「これでも力は抑えてる方だぞ。まあ、俺が本気出さなくてすめばいいけど」
「いうね。でも私だって負けないよ!」
楼観剣と白楼剣を交差させて構えている。大して俺は再び剣に光をともらせる。さっきと同じ技は通じないのはわかっていたから違う技にした。
「お前も知ってるやつで行くぜ!」
「私も行きます!」
妖夢の方が少し技の発動が早かった。
「人符『現世斬』」
妖夢のスペルカードだ。力としてはすごいものだが予想できていた。
「人鬼『未来永劫斬』」
力では押し勝てる。剣と剣がぶつかり合う。エネルギーの衝突で衝撃波が周りに広がる。
「「負けるかぁぁぁぁぁぁぁ!」」
その時に感じた。力ではない別の何かを。自分の背後。忍びよろうとする凍りつくような眼差しを感じた。そしていきなり背後の圧力が変化した。何が起きたのかはわからない。既に危険だと判断した。
「『二重結界』!」
剣を1本と依代を2本出現させデルタ状に結界を張る。予想通りそこに何かしらのエネルギーがぶつかった。押さえ込もうとしたが力負けしそうになった。危険だと判断した俺は妖夢を掴んで離脱した。
「妖夢!みんな!」
なんとかその謎のエネルギーを抑え込むことに成功。しかし爆風までは抑え込めなかった。エネルギーが巨大すぎて危ない。
「えええええええ!?ちょ、何を・・・」
咄嗟に抱きつかれた妖夢は何が起こったのか理解出来ず口をパクパクさせている。傍から見たらただ抱きついているようにしか見えていないだろう。この状況を理解しているのは俺だけのようだった。直後に爆散。爆風で結界ごと吹き飛んだ。もちろんそれですぐ近くにいた俺だちが何も被害を受けなかったわけがなく、その爆風で吹き飛んだ。地面に激突し、そのまま転がる。勢いよく白玉楼の木でできた塀に体を強打させた。
「っ!痛てぇー!何者だコノヤロー!」
その声に応答するものは何もなかった。庭に残ったのは爆発で開いた大穴(半径5Mほど)だけだった。爆風で飛んできた石が何本か背中に刺さったが、今はどうでもいい。
「無事かみんな」
あちら側にも結界を張っておいて正解だった。どうやらあちらは無傷のようだ。
「あの、航生。ありがとね…」
「お気になさらず。気がついたからよかったよ」
何故か頬を赤らめる妖夢だったが別に変な意味はない。ただ、守ろうとして体が勝手に動いただけだ。
「妖夢!航生!大丈夫だった!?」
霊夢が走り寄ってくる。もちろん大丈夫だ。俺たちはその日妖夢立ちとお茶を再び飲んだ後、帰ったのだった。