「なんだったんだろうな昨日の」
昨日起きた出来事は幻想郷中に知らせておいた。新たに襲撃が来るなら対策をしないといけない。「まあ、それは私も調べるわ。もう異変なんてこりごりよ」
珍しく働く霊夢に感心する。
「・・・まあいいわ。朝ごはん頼むわね」
「またかよ・・・了解」
最近は霊夢にめちゃくちゃこき使われるから正直言っちゃうとめんどくさい。朝5~6時に起きて、朝ごはんの支度をし、神社の清掃を手伝わされる。洗濯もやらされるし、ほとんどの仕事が俺任せだ。神社の清掃は神社に住み込むものとして当然だが、せめて洗濯くらいしてくれ。それにたまには霊夢の作る朝ごはんも食べたい。俺は使用人じゃないっつーの。
「家があるだけ感謝しなさい」
「昨日結婚の話でめちゃくちゃ動揺してたくせに何を言う」
何故か知らんが結婚でここまで動揺するやつは初めて見た。正直どうでもいい。楽しければ人生それでいいと思っている。その手段の一つとして結婚というものがあるだけなのだ。
「逆に反発しないあなたも頭おかしいと思うわよ」
よくあるツンデレというやつだろうか。なんかそんな感じがする。
「俺は迎え入れる準備出来てるぞ笑笑」
「今住んでるんだから迎え入れられてるっていうべきじゃない?」
「ごもっとも」
その後は何も言わずおかずをつつき、朝ご飯を食べ終わった。
「じゃあ、アレやるかな」
俺はあの異変が解決した後、幻想郷各地を週一で飛び回り状況を記録して紫に報告している。正確には他の地方でいなくなった、もしくは死んだ人数の計測だ。幻想郷は人間と妖怪の数の力が均等になって形を作っている。片方に力が偏らないように管理をしなければならないそうだ。霊夢が起きる前に飛び回って人数に関してはわかっているので資料を作ればいいだけだ。この資料は幻想郷縁起にも載せるそうだ。起きた異変の最終的な結果に付け加えたいと、稗田阿求から直接(紫を通して)言われたのだ。その異変のために来た俺と龍哉。そして彩夏も載せると言っていた。幻想郷の歴史には関わるから残しておくべきということだ。別に嫌ではないので許可はしておいた。ただ一つ気になったのは、外来人の欄に載せるのか、それとも英雄伝の方に載せるのかということ。龍哉と彩夏はおそらく英雄伝の方に載るだろう。しかし、1番めんどくさいのは俺と霊夢だ。霊夢は元は英雄伝に載っていたが、今は神霊のような体であるため神霊の類に入ると思っていたのだが、先日阿求から英雄伝の欄にそのまま載せておくそうだ。ちなみに俺も英雄伝に載るらしい。幻想郷のスターになった気分だがそんなに驚くことは無い。
「じゃあ人里行って資料渡してくるわ」
「私も少し慧音に用があるから付いてくわ」
お茶を飲んだあと2人で空に飛び立った。
ーーーーーーーーーーーーー
人里の入口に到着。そのまま地面に着地。途中まで進んだところで後で合流することにして1度分かれた。
私は人里の大通りを通って寺子屋に行った。そこでは時間的に1時間目の授業の始まる前だった。忙しそうだったが取り敢えずなかに入った。
「おお、霊夢じゃないか!」
「久しぶりな気がするわね。お邪魔するわ」
「もうすぐ授業だから私の部屋で終わるまで待っててくれるか?お茶と茶菓子くらいは出す」
「よし乗った」
早めに終わらせて帰りたいが、最近食べてない茶菓子は食べたいものだ。授業が終わるまでの約50分間私はずっと考えていた。あの時航生が言った言葉だ。
『俺にだって大切なものがあるから戦うんだよ!』
この言葉の意味。それをまだちゃんと理解出来ていなかった。私だって大切なものはある。そこではない。人それぞれ大切なものは違うのだ。では航生の大切なものとは一体何なのだろうか。自分、世界。友達や親。他にも沢山候補はある。大切なものの意味も価値も違う。それが何を意味しようと他人が首を突っ込んでいいものではない。しかし頭から離れない。私が考える必要はないのかもしれないが、どうしても気になって仕方がない。
「今日帰ったら聞いてみようかしらね」そう言いながら私は再びお茶を啜った。
「済まない霊夢待たせたな」
扉の奥から慧音が姿を現した。途中までの記憶が無い。どうやら寝てしまっていたようだ。
「なんか寝てたみたいだし、大丈夫よ」
私がここに来た理由を慧音に説明した。異変についての資料の全般をもうひとつ作っていたらしく、慧音に渡してほしいと航生に頼まれたのだ。慧音は「すまないな」と言ってその資料を山積みの資料の横に置いた。そしてもう1つ用があった。こちらが本命だ。
「ねぇ、慧音。1つ聞きたいんだけど……」
「答えられる範囲で答えるぞ」
「私、博麗の巫女としてこれまで生きてきたけど、今はもう巫女としての仕事をしているけど、私がなんで博麗の巫女なのか考えてるんだけど、なんでだと思う?」
「すごく答えにくい質問をするな。うーんそうだな」
さすがに無理だっただろうか。歴史を知る人物(半獣)だからわかると思ったがさすがに無理だったようだ。
「無理なら無理に答えなくてもいいわよ」
「推測でよければわかるぞ」
推測でもなんでもいい。それがわかるのなら何だっていい。私のいる意味を見つけたい。
「推測だがその答えは霊夢、お前だからだ」
「どういうことよ」
「お前のお母さんの時代から私はいるが先代は今より殺伐としていた。悪さをした妖怪を片っ端から倒していったんだ。ただ、心の中では人間と妖怪が手を取り合い生きていく世を望んでいたんだ。しかしそれは実現出来なかった。なぜだと思う?」
今答えを言っていたではないか。それはお母さんが妖怪を片っ端から倒したからだ。そうすれば博麗の巫女を恐れ妖怪側が敵対意識を持つに決まっている。なおかつ、妖怪を助けようとすれば人間からも敵対意識を持たれ、博麗の巫女としての仕事がしにくくなる。どっちをとってもお母さんには悪いことしか起きなかったのだ。だから、実現することは出来なかった。
「だからこそ、お前のお母さん。つまり先代博麗の巫女、博麗霊奈はお前にその夢を託したんだ。私はそうだと思っている」
私は結果的にスペルカードルールを作成した事で妖怪は博麗の巫女をそのルールの上では倒せるようになり、力のない人間も妖怪を撃退しやすくなった。結果、私を倒そうとする妖怪はいない。
「そういうことだ。霊夢、お前はもう既に博麗の巫女としての仕事が出来る状態ではない。それはお前もよくわかっているだろう?」
博麗の巫女は、結界の管理、妖怪退治、異変解決を生業とする職業だ。妖怪退治というのは単に妖怪を退治するのではなく、人間に対して悪さをしたもの全てを退治するということ。それは神だろうと関係ない。私は体の性質だけは神様と似たような感じになっている。だから、逆に言えば私は倒される側なのだ。しかし、博麗の巫女がいなくなるのを避けるため、今も私が博麗の巫女をしている。
「すみませーん!慧音さんに手紙が来ていまーす!」
「ああ、わかった!今行くぞー」
すると慧音は玄関に手紙を取りに行った。慧音に入れてもらったお茶をすする。出涸らしとは大違いでとても濃いいいお茶だった。すごく久しぶりに飲んだ感じがする。
「霊夢ー!今すぐ来てくれ!」
「おーい!霊夢早く頼む!」
「はーい!今行くわよ!ちょっとくらい待ちなさい!」
取り敢えず航生と慧音のいる玄関に向かった。
玄関のドアを開けると…。
「なにこれ!?」
引き戸の外の世界は地獄絵図だった。血が飛び散り、切られた破片がそこら辺に転がっている。人里の人間も何人か首が飛んで転がっている。慧音も満月のおかげでハクタクの妖怪に変身している。力も上がっているはずなのに血だらけだった。
「慧音先生!下がっててください!」
その奥では航生が剣を持っている。その服は血で真っ赤に染まっていた。左手の動きが鈍くなっているところを見るに、捻挫か骨折というところか。
「霊夢!早く逃げ・・・」
台詞を言い終わらずに私の方を向いた航生は何かで心臓を貫かれた。
「ガバッ!」
「航生!!」
そのまま地面に倒れ込む。すぐに駆け寄るが既に息はしていなかった。そんな私に少しずつ妖怪達が近づいてくる。それを見た時体の力が抜け、膝をついてしまった。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「・・・・む・・・いむ・・・霊夢!」
いきなり聞こえた声に飛び上がる。目の前には心臓を貫かれたはずの航生がいた。何事も無かったかのように座っている。
「どうしたんだよ、随分うなされてたじゃないか」
「え、ええ……大丈夫よ」
ーーーーーーーーーーーーー
「んん・・・朝か?早く起きすぎたな……」
いつもより早く起きてしまったため、とても眠い。もうひと眠りしようとしたが何故か眠くならなかったため、起きて朝ごはんの支度をした。
朝飯の支度が終わったため、霊夢を起こそうと彼女の所へ向かうと。
「霊夢!」
体をうならせて、うなされている霊夢がいた。汗もすごくて、心臓の鼓動も今まで以上速かった。何があったのか分からず、とにかく起こそうとした。
「あ……あれ?航生?」
「どうしたんだよ?随分とうなされてたじゃないか」
「え、ええ……大丈夫よ」
すると霊夢が・・・何も言わずに俺に抱きついてきた。
「良かった……ほんとに良かった……」
何やら霊夢が抱きついた目のところがほんのり温かい。変な夢でも見て怖かったのだろうか。少しだけ霊夢から幼さを感じた。
「大丈夫だ……俺はいなくなったりしないから……気にしなくていいんだぞ」
「……(コクリ)」
霊夢の目にはまだ涙が浮かんでいる。俺に涙を見せまいと下を向いているが服が冷えて冷たいのでバレバレだ。外の世界では気の強い性格だが、実際はその裏にもちゃんと女の子らしい感情はあるらしい。そんな霊夢も可愛いと思う。
「でもどんな夢見てたんだ?」
思い出したくないようで顔を埋めたまま動かない。まあ、無理に聞いたら可愛そうだし聞かない方がいいだろう。
「今日は人里に用があるから言ってくるわ。なるべく早く帰るから」
靴を履いて出ようとした時再び霊夢が後から抱きついてきた。今度はさっきより強くて引き剥がそうにもできなかった。その体はとても小刻みに震えていた。博麗の巫女が恐れるものはないはずだが、何が怖いのだろうか。何をしようにもこのままでは何も出来ない。
「……ほんとに何も出来ないから放して欲しいんだけど」
「・・・・・」
「はぁ(*´Д`)わかったよ……でも条件だ。お前が見た夢の内容を教えろ」
「ありがとう。実は……」
「そういう事だったのか……その対策はすぐ思いついた。それを試して様子を見る。それでどうだ?」
「連れてって………」
「なんて?」
「私も連れてって」
離れたくないのか、少しずつ力が強くなっていく。流石に苦しくなってくるから弱めてほしいところだが、言っても聞かないだろう。夢が正夢になるとは思えない。
「わかった……行くぞ」
霊夢を連れて俺は家を出た。
人里についた俺は人里全体を覆う大きな結界を張った。神力で作った結界のためそれを通ろうとすると必然的に浄化される仕組みになっている(手を加えただけ)。力が強い場合その力を抑え込むようにしておいた。これで霊夢の夢のようにはならないはずだ。
「よし。これで大丈夫なはずだ。手短に用事を済ませるから寺子屋で待っててくれ」
「分かったわ……でも気をつけてね」
「当たり前だ」
ーーーーーーーーーーーーー
航生と別れたあと私は寺子屋に向かった。あの時なぜ戦えなかったのか。戦えていれば助けられたのに、と後悔していた。寺子屋につくと授業中だった。夢の中ではついた時10分前だったから単純に考えて10分間抱きついていたことになる。その事を考えた瞬間急に顔が熱くなった。誰かに見られているかもしれないと思い、両手で顔を隠す。隠していた手も熱くなってきた。こんな惨めな博麗の巫女を誰が見たことがあるだろうか。慧音に待っているように言われた部屋で待っているのだがとても平常心ではいられなかった。
数分してやっと落ち着いた。数分と言っても途中からの記憶はなかった。そして襖の奥からちょうど慧音が出てきたところを見るにゆうに50分は経っているだろう。しばらく休み時間なので慧音と話そうとしていたところ・・・。
「せんせー!せんせー!」
「おー!どうした?」
「なんかお腹に木の棒が刺さった血だらけの人が来た!」
「なんだと!?わかった!今行く!」
なんかとんでもない言葉を教えたなこの先生は。なんかとんでもないことが起きているらしい。迷いの竹林の自警団をよく呼ぶ慧音に助けを求めたのか知らないがその人は寺子屋に来たのだ。
「どうしたんだその怪我!とりあえず中に入れ!」
呑気にお茶を飲んでいる場合ではないと思い、玄関先に行くとそこにはさっきの叫び声通りの状況に陥っている航生がいた。
「航生!どうしたのその怪我!」
「すまん霊夢。力負けしたわ」
「それで!?そいつらは倒せたの!?」
「ああ、なんとか……」
さっきなんとなく感じた寒気はこの事だったのだ。航生は腹に刺さった槍を引き抜くと粉々に打ち砕いた。その破片は風で四散して無くなったのだが、その直後に航生から力が一気に抜けてその場に倒れ込んだ。それを滑り込んで頭を打つのを阻止した。
「すまないな霊夢……力が入らないわ……」
よく見ると頭からも血が出ていた。どうやら鈍器か何かで頭を強打されたのだろう。そのせいで神経感覚が鈍って動きにくいのだ。傷は見ぬうちにどんどん塞がっていったが、中身まではどうしようもできなかった。
「取り敢えず休みなさい。この状態じゃあっち着くまでに倒れちゃうわ。慧音、あなたの布団借りて寝かせていいかしら?」
「それは別に構わないがお前はどうする?完治するまで何をするつもりだ?」
「流石に看病くらいするわ。一応同居人なんだから」
というか、慧音は応急処置はできても大体を永遠亭に連れていくので、長期間になりかねない治療や世話には向いていない。今この状態でもし博麗神社に帰ったら襲撃があった際に航生は戦えず、結果として幻想郷が終わる。それにしても回復力は半分は人間だが、もう半分は人間ではないので超人的な回復力を持つ。航生の場合は神力も操るので完治するまでに3日くらいで大丈夫なはずだ。
「わかった。完治するまでここにいても構わないが、ここにいる以上生活時間とか頼む仕事とかはこちらで決めさせてもらうぞ?」
「交渉成立!」
私は慧音も死ぬはずだった未来も夢で見てしまった。予知夢というべきなのだろうか。この時の私は夢がどれだけ大切なものかちゃんと理解していなかった。