夢を見ている。
たった一人、僕の心に刺さったまま消えてくれない人。
『ミシェル』
そう、これは過去の記憶。それが夢となって追体験をしている。
嬉しそうにこちらを見てくる彼女の顔はもう霞んでいてろくに思い出せなかった。
それでも、彼女の髪を編むのは僕のささやかな楽しみで、夢の中でも僕は彼女の髪に触れていた。
『みつあみ、緩んでるから直してあげるよ。後ろ向いて』
素直に後ろを向いた彼女の一つにまとめられたみつあみを一度解いてブラシで軽く整える。この時間が唯一の癒やしだった。
その程度のこと。その程度のことのはずなのに、僕の希望と安らぎ。彼女がどう思っていたかはわからないがなんの躊躇いもなく僕に髪を触らせる程度には心を許していると思っている。
その髪を結う空間は石造りの重く冷たい部屋。まるで囚人を収容する牢のようなそれは部屋と言うには少々無理がある。外を見ることのできる小窓には鉄格子がはまっており映る世界はストライプの空。この狭く寒い鳥籠で僕らは寄り添うように些細な幸せを願った。
『ねえミシェル。私、いつか海が見てみたいです』
彼女が呟いた『うみ』というものがなにか一瞬わからなくて数秒の間ができる。そしてようやくあの海だとわかり頷くように言う。
『海……ああ、僕も実物は見てないな……』
『はい、だから、いつか好きな場所にいけるようになったら、二人で海を見に行きましょうね』
『――そうだね。それもいいし、ダンジョンにはもっと美しい光景もあるらしい。そういうのを見に行くのも楽しいと思うよ』
ダンジョンなんて大嫌いだ。僕は所詮、この生まれ持った異能を体よく使われるだけの消耗品にすぎない。
嫌いで、憎くて、でも――まだ純粋だった頃に見た冒険する夢を捨てられないでいた。
ブラシで梳いた髪を3つに分け、ゆるく編んでいく。本当はもっと可愛らしい髪型にしてもいいのだが、彼女はこのみつあみで一つにまとめるのを好む。二つにするとか、編み込みとか色々あるだろうに。
『楽しみです! 早く、大人になりたいですね』
二人とも頭では理解していたのだ。きっとそれは叶わないことだと。それでも、幼い僕たちは夢を見た。憧れを抱いた。そして、依存した。
そんな関係でも、拠り所は拠り所だ。極限にまで追い詰められ、たとえそれが仕組まれたものだとしてもだ。
初恋かと聞かれれば否。嫌いかと聞かれても否。
彼女を独占し、未来を奪うことは僕に許されるはずもないだけだ。
『大人になっても、一緒にいよう』
『はい。ずっと一緒です』
――嘘つき。
過去の自分を嘲笑う。何が一緒にいようだ。結局僕はあの時も自分だけのことしか考えていなかったくせに。
髪を結い終えると彼女の肩をたたいてそれを伝える。
『終わったよ。それにしてもみつあみが好きだね、君も』
なぜかこの髪型をずっと好んでしている。そのきっかけは――きっかけは、なんだっただろうか。確か彼女はその理由を教えてくれたはず。
『はい、だって――』
振り返った彼女。
だがその先はもう見えない。否――塗りつぶされた。
『――――み、――、――ご――なさ――』
雑音のような不快な音に声が掻き消えていく。気づけば自分の姿は幼い頃のものではなく今の――
僕の、今の姿?
鏡面などないからわからないが視線を動かせば見える自分の手や服装は見たことのないもの。髪に触れればなぜかいつもより短い。
これは、本当に僕か?
そんなことを考えている間にも彼女は遠のいていく。
『待って、待ってくれ!』
『――』
声はもう届かない。思い出せなかったはずの彼女の顔がはっきりと、一瞬だけ鮮明になる。僕の知らないはずの、大人になった君の顔は泣いていた。
『――――っ!』
叫んでも自分の声は塗りつぶされ彼女の名を呼ぶことすら許されない。
『許してくれ! 僕は君を見捨てたかったわけじゃない! お願いだ、僕を、僕の手を取って! マリー!』
僕だけが呼ぶ彼女の愛称。僕の大事なマリー。マリー、そうだマリー!
伸ばした手は彼女の指先に触れる。
だが触れたはずの指先に絡みついたものはおぞましくも蠢く『髪』。
彼女の手を取ることはできず僕はただ叫びながら彼女を呼ぶ。
『マリー! 必ず君を救うから! だから!』
一瞬、驚いたように彼女が僕を見る。その姿は知らないはずの、彼女。目を丸くして僕が手をのばすのを信じられないと言いたげに何かを呟いた。
『――、――!』
『迎えに行くから!』
嵐のように消えていく彼女の幻影は世界を壊すかのように激しく吹き荒れる。
ガラスの破片が飛び散るように吹き荒れ、その欠片には見たことのない光景が記憶のように舞う。僕の決して綺麗ではない記憶。意地汚く、惨めでも自由になろうとして、結局大事なものを失った。
欠片は急に重力に従い、そして自分自身も落ちていく。床が抜けたように夢だからかずっと、延々と落ちていく感覚。
『僕の――』
刹那の微睡みに消える夢の出来事であっても、彼女にもう伝えたいことを力の限り叫んだ。
『――
忘れないで。恐ろしいほどに利己的な願いに彼女はなんて言うだろうか。現実にもし会えたとしても、僕は彼女にそんなことを言う資格はとうにないというのに。
それは呆気なく掻き消え、支離滅裂な夢は終わり、朝の日差しが僕に目覚めを促した。
夢を見た。
とても虚しい夢。あまり思い出せないがおそらくいつもの夢だろうと決めいつも通りの支度をする。
硬いベッドで体を起こし、軽く伸びをする。寝汗がひどく、ベタベタと不愉快で溜息をついた。わざわざ水浴びを朝からするのもどうかと考え、取り敢えず身支度を整えるために顔を洗おうと備え付けの洗面所で頭から水を被った。普段ならこれでだいぶ気分が治るのだが今日は効果がないらしい。濡れた髪をガシガシと乱暴に乱すも気分は晴れない。
少し長めの髪がうざったい。濡れた髪が頬や首に張り付いて気持ち悪い。ばっさり切ってしまおうか。長いと女と思われるしめんどくさい。
『ミシェルの髪、これくらいなら私も結んであげられますね』
ふと、ある記憶が蘇る。
――未練がましいな。
「……水浴びするか」
寝間着のまま、宿の一階にある水浴び場へと向かう。その途中、別の冒険者からの視線を何度も浴びて若干の不愉快さが募った。
(顔だけ見やがってほんと……)
これが機嫌のいいときならば自分の顔の良さを得意げにこれでもかと愛想を振りまけるのだが今日は余裕がなかった。元々、自分の顔に自信はあるが同時に厄介の種でもあるためその時の気分によっては忌まわしくさえ思う。
後で知ったのだがこの時の若干不機嫌さが滲み出た姿は一部女性冒険者の何かを刺激したらしく、視線の数はこのときだけは女性が多かったとか。
水浴びで一番嫌なのが複数人で使うタイプだ。さすがに男女は別れているが男は同じ。だが、男の水浴び場に行くとどうしても面倒なことになる。場合によっては欲情する馬鹿すらいる。
一番嫌な理由はまた別にあるのだがとにかく人に裸を見られるのが嫌だ。
この宿に長く泊まっているのはそれが理由だ。ここは料金さえ支払えば個別で水浴びができる部屋を貸してくれる。高く付くが高級宿に比べたら安い。公衆浴場もあるがあれはわざわざ行くのが面倒だしなによりこちらのほうが安い。
金に困っているわけではないし、必要なら使うことは惜しまないが金があると思われると目をつけられるためできるだけ最低限にしか使っていない。まあ、それでも貧困冒険者に比べたら金を使っている方だとは思う。
水浴びをしながら自分の手を見た。疲れているのか、やたら自分の手が小さく頼りないものに思えた。
髪の水分を絞って適当に結って水浴び場から出ると再び視線を感じる。さすがに気になって警戒してみると明らかに自分に対して性的な目を向けている輩がいた。
(これだから見た目でしか判断できない猿は……)
実を言うと割とよくあることだった。というかそういう目を向けられたことがない方が稀だった。
前にも最初は男として接してくれたがいつの間にか性的対象として見るようになり男でもいいから、と迫ってきたパーティメンバーすらいる。男女混合だったのだがまあ、見事にパーティは壊滅した。そりゃそうだろう。新人の男にリーダーが惚れ込んでればドン引きしたり幻滅してしまうのも。そして、被害者でもあるはずの僕は「あいつさえ来なければ」と理不尽な扱いを受ける。
特に女受けは最悪だ。自分よりかわいい顔をした男に男が目を奪われるなどプライドが許さない。
女冒険者と一夜の遊びをしたことがないのはだいたいそれが理由だ。
だが男だけのギルドやパーティはそれはそれで面倒だ。なぜなら女っ気がないから余計に僕を持ち上げてくる。正直言って気持ち悪い。だから女が多いほうが楽だ。女は多くなると群れて強い。均等より女に偏ってるくらいが僕のことを変な目で見ても女の立場が強いから下手なことはできない。
で、だ。視線の主はあっさり特定できた。この宿の客であろう冒険者四人。全員男で値踏みするような目だ。
たいして強そうでもないしこんな場じゃなにもしないだろう。だいたいは人のことを頭の中で勝手にオカズにするに留まる。不愉快だが変に絡んでも面倒なだけだ。
自室に戻り、冒険者としての衣服を身に着け、気を引き締める。いついかなる時も、自分の周りはカモか敵だけ。
信頼できる仲間など、できるはずもない。
協会に寄るか悩んで今日はやめておこうと決めた。今人に群がられたら苛立ちが増すだけだ。
ゆっくり町で品物を見たり買い食いをしながら今日の仕事を考えているとなんとなくだがキゼル産の薬草が目に入る。
あそこは初心者向けではあるがそこそこ人がいる。プラントディアなどの魔物は需要が高く狩人が毛皮や角を求めて小遣い稼ぎに赴くこともしょっちゅうだった。
荷物もそこそこ、まあキゼル程度で小遣い稼ぎをするならむしろ余裕があるくらいだ。数をこなしたいのでポーチの中身はできるだけ減らし、とにかく薬草や弱い魔物の素材を集める。
(今日のキゼルは人の気配が少ない)
初心者向けではあるが不人気ではないのでなんとなく不気味だと思いつつも獲物で揉めることはなさそうだと前向きな考えで黙々と金になる薬草を採取していく。
僕は幸運の女神に愛されている。
まあ言ってしまえば生まれつきの恩恵、一種の能力なのだが大きく間違ってはいない。冒険者カードにはスキルとして表記されることからそれは明らかだ。
幸運の女神による施しは僕の行く先々で幸運を呼ぶ。
(おっと……珍しいキゼルの青リンゴだ)
真っ青な色をしたそれは未熟なリンゴのことではなく『青色』のリンゴだ。地域によっては緑色のリンゴを青リンゴと呼ぶところもあるらしくややこしいことこの上ない。
キゼルの青リンゴは魔力が詰まった貴重なもので甘さは控えめだが色も美しく、そこそこ値がつく。
今日はこれだけで万はいったか。
別にのんびりまだ獲物を探すか薬草採取をするか選べるがやはり気が乗らない。
夢でここまで気分が落ち込むなんて。
後悔し続ける。彼女のことを忘れることはできないから。それなのに、僕は彼女を迎えに行く度胸もなく逃げ続けることしかできない。
感傷に浸っていると複数の足音――それも冒険者のものがこちらに近づいてくる。
姿を目視できたあたりで宿でジロジロ見てきた四人組だということに気づき、ぞわりとする嫌悪感で鳥肌が立つ。
これは迷宮姦だ。
気づいた瞬間逃げようとして後ずさるも地上に戻る道は男たちが来た道だ。
手持ちに有効な道具はあっただろうか。いいや、男四人の動きを封じるものはない。
迷宮での行為は罪に問われない。全て自己責任、油断する方が悪い。
その理の元、今自分ができることはとにかく逃げることだけだ。
出口に出れないのなら誰かほかの冒険者でいい。わかりやすい正義感を煽ってこの顔でちょっと被害者ヅラすればたいていの人間はちっぽけな自尊心が満たされて終わるだろう。
だが、今日に限って人が少ない。何もかもついていない。
ああほんと、嫌になる。どうしてこうも冒険者はロクでなししかいないのか。そして、それをよくわかっているはずの自分がなぜこんな単純なミスを犯したのか。
「はあっ、はぁ――」
後の体力なんて一切考慮せずとにかく走る。
――こんなことになるんだったらもっと道具を持ち込むべきだった。
自分の認識不足に苛立ちながら駆ける。この階層に誰か、誰もいいから人はいないのかと気配を探る。
――いた!
頭の中で地図を思い出して迷いなく角を曲がり、人のいるであろう小部屋へと駆け込んだ。
そこにいたのは冴えない青年だった。歳は僕より上だろうが陰気な雰囲気だからか老けて見える。それ以外は何から何まで地味で、どこにでもいそうな男。
が、この際なんでもいい。幸い僕はこの顔だ。ここは体よく利用しよう。
そう思っていたのになんでか見捨てられそうになるし危うく男に脱がされるところだった。
特別強そうにも見えないがクソ野郎どもをいなしたのを見て少し認識を改める。正直キゼルでちまちま日銭を稼いでいるにしては動きがいい。何よりにじみ出る自信のなさ――過小評価からくる慎重な判断。
これは、狙い目かもしれない。
ソロだとすればちょうどいい。元々この町では組む相手も決めていなかった。そろそろどこかのギルドかパーティーに潜り込むかを考えていたのもあってこの男はいいカモに見えた。
だが、普段なら気色悪いほど他人を引きつけるこの顔は効果がなかった。まあ、男に興味のないタイプなんだろう。それなら増々都合がいい。
僕に下心を持たず、ほどよく稼げる冒険者を探していた。
まあ、すぐに声をかけても反応しないであろうというのはわかったので日をおいて誘ってみようと考え、協会へと向かい、換金を済ませようとして、ふと彼のことが気になって換金を担当している受付嬢に聞いてみた。
「ねえ、ぼさっとした黒髪でヘーゼルアイの暗いというか地味でキゼルに行ってそうな冒険者知らない?」
さすがによくいるような特徴だからわからないかと期待しないで聞いてみたら思い当たることがあったのか受付嬢は少し間を置いて喋る。
「えっ? ああ、多分それならサリーナさんがよくお相手してる人ですね。あの人は……」
受付嬢は少し――なんというか、馬鹿にしたような表情で彼の話をした。
「サリーナさんにしか話しかけないし正直暗くて何考えてるかわからない人なんですよね。ずっと一人だし人とのコミュニケーションが下手っていうか」
「あれはただの馬鹿よ」
話を遮るように言葉をかぶせてきたのはこの協会支部では有名なサリーナ嬢だった。美人でクールなこともあって人気はあるものの基本的にそっけないせいで苦手意識を持つ冒険者もいるという。
受付嬢が少しバツの悪そうな顔で後ろから話に割り込んできたサリーナさんを見る。
「さ、サリーナさん……今の話聞いて……?」
「冒険者の陰口を受付嬢がほかの冒険者に言うもんじゃないわよ。と言いたいけどあいつの場合、陰口っていうより事実だから仕方ないわ。本当に馬鹿なんだもの」
陰口を控えろと言う割には自分も陰口を叩いているけどそれはいいのだろうか。
「彼のこと知ってるのかい?」
「何、あいつが気になるの? あんたが?」
遠回しにお前が気になるなんてどんな心境だと探られているようで少しそれを隠すように目を背けた。
「別に……ちょっと今日会ったから」
「そう。まあ、あんたみたいなのが目をつけるようなやつでもないものね」
若干訳知り顔なサリーナ嬢が少し苛つきを煽る。彼女は元冒険者ということもあってか恐らく僕の過去の
こちらが黙っているとサリーナ嬢が興味を失ったように背を向けながらぼやくように呟いた。
「真性の馬鹿。冒険がしたいなんて子供の夢物語を実行して、現実に打ちのめされて出戻りした馬鹿よ、あれは」
どこか親しみを込めた罵倒に受付嬢は困惑したようにサリーナ嬢を見る。そのまま自分の持ち場へと戻ったサリーナ嬢だったが彼女の言葉を聞いて僕は心が沸き立った。
――昔の夢を思い出す。
『綺麗な景色。見たこともない世界を見たい』
まだ何も知らない僕は純粋にそう願っていた。現実は僕にとってダンジョンはただの掃き溜め。利益に群がる豚どもを見下して主導権を握り、ただただ金と貴重品を集めてハリボテの自由を着飾った。傲慢で虚飾の豚。同じ穴の狢だというのに冒険者を見下してる醜さ。
そんな僕がただひとつだけ、いつかと夢見ること。
同じ夢を持つ、信頼できる仲間と冒険をして世界を見たい。
彼女のことは心のどこかで諦めていた。時折夢に見て、後悔に潰されそうになるけれど、もう取り返しのつかない愚行の結果だ。
だからせめて、たったひとつ残った純粋な願いだけは、いつか、遠い未来でもいいから叶えたいと。
けれど冒険者にそんな志を持つ者はいない。金に名誉、生活のためがほとんど。冒険をする心の余裕などない。そもそもそんなことを夢見るのは子供のうちだけだ。
でも、子供の頃の純粋な願いをきっと彼もまだ持っている。
運命だと、柄にもなく感じた。きっと最初で最後のチャンス。
その後の行動は早かった。住居を突き止め、名前を知り、朝は遅いのか出て来る気配がなかったので少々失礼だが中へと侵入した。
その後の反応を見るに僕のことをあまり良く思っていないのも彼なら変な下心を持たないという確信を抱いた。たとえ同じ夢を持っていたとしても言い寄られるのだけは我慢できない。
正直、楽しくて、ついつい素が漏れてしまうほどに、彼――レブルスは友人としていい相手だった。
けれど、きっとレブルスはなにか傷があって人との関わりを恐れている。この壁を越えられなければチャンスはない。
だから、僕はありったけの真摯さをあの蒼い地底湖でぶつけた。
きっと、わかってくれる。美しい世界はたくさんあって、一人では成し遂げられない道程もある。僕のエゴ、それも確かにあるけど、きっと伝わる。
そう信じて差し伸べた手。その瞬間は永遠に思えるほど長く、繋がれた途端、世界はいつもよりも華やかに見えた。
ここから始まる僕と君の旅路はきっと困難だけど――それでも、君となら楽しいと思ったから。
「どこをどう見たら女なんだよ! 目玉腐ってるんじゃないか!?」
「何もかも女にしか見えねぇよチビ!」
「馬鹿じゃないのか!? せめて確認するなりすればいいのになに勝手に人のこと女だと思ってるんだ! 気持ち悪いんだよ!」
「いっそ頭でも丸めろよ! なんだよ男の癖に髪伸ばしやがって!」
「この程度大して長くもないだろ!?」
帰り道に、馬鹿みたいな喧嘩をしながらそれでも楽しいと……。
「うるせぇカマホモ野郎」
「ほー? 言ったな? 言ったな根暗童貞くんがほざいたな?」
――楽しい、こともあるけどまあ人間なのでたまに喧嘩は必要だと思う。