目立ちたくないので転生特典は魔力ゼロでお願いしますっ!   作:ヒタク

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十二話 決めた。私は活躍してやるんだ、影でっ!

「一体どういうことなんだろう……?」

 

 メアリーしかいなくなった部屋。そこで自身の思いを吐き出すようにメアリーは呟いた。

 フォルカーから衝撃的な事実を聞いた後、呆然自失となりつつも何とか詳しいことを聞いたメアリー。フォルカーは他にやるべきことが出来たらしく、すぐに部屋を出て行ってしまったが、一番気になっていた孤児院について聞くことが出来たのは幸いだった。

 フォルカーから聞いた情報は以下の二つだ。

 

 一つ目。孤児院には予算が大きく割かれている。

 フォルカー曰く、孤児院の出身者は魔力こそ少ないが、ギルドで活躍している者や国の中枢で活躍する者がおり、予算を割かない理由がないとのこと。近年はより高度な教育を受けさせることも視野に入れ、予算が増えたらしい。

 

 そして、二つ目。孤児院の予算を担当している貴族は清廉潔白で有名な貴族である。

 これはフォルカーの受け売りでしかなかったが、孤児院に予算を振り分ける任を担っている貴族は不正を行わない――むしろ不正を嫌っているぐらいらしい――ことで有名な貴族であり、その貴族が着服しているとは考えづらいらしい。

 

 これらの理由から孤児院には予算が割かれているとフォルカーは判断していたらしいが、メアリーから孤児院に援助がないという話を聞いたフォルカーは顔を険しくし、やることが出来たと部屋を出て行ってしまったのだった。

 

(絶対、二つ目が怪しいよね……)

 

 メアリーはフォルカーから聞いた話の内二つ目を疑っていた。

 

(孤児院の予算が割かれているってフォルカーが知っているのは王子であるフォルカーが少しでも国政に関わっているって考えれば、自然だと思う。つまりは予算が編成されているのは本当なんだろうな)

 

 しかし、実際には孤児院には援助がなく、エレナやエドガーが憤慨していた。

 シスターもまた、二人のようには感情を出さなかったが、経営が苦しいということは反応からうかがえた。

 つまりは孤児院に援助がないということは本当なのだろう。

 

(そうなるとやっぱり予算が孤児院に届いていない――貴族が何らかの不正を行っているのは確か、だと思う。……でも、フォルカーがああまで信用しているのはどうしてなんだろうなあ……)

 

 実際、フォルカーが二つ目の理由である貴族について語る時、随分とその貴族について信用しているのか、まるでその貴族が裏切るなどありえないとでも言うかのようだった。

 

(やっぱり、地道に情報を得ていくしかないのかなあ……。早くここから出たいのに一体いつになるんだろう……)

 

 メアリーはなかなか慣れることがないこの広い部屋――メアリーが王の姪であるということもあり、正式にメアリーの部屋となっているらしい――でため息をつくのだった。

 

 

         ◇

 

 

「やばい……!」

 

 マーシャがこしらえた服――驚いたことに普段着だけでなく、寝間着まであった――に身を包み、朝ベッドで目を覚ましたメアリーは呟いた。

 気づけば、メアリーが部屋を与えられてから既に一夜が明けていた。

 

(確かに王族の人達の生活ってすごいなーなんて漫画とかアニメとか小説では思っていたけど! でも、実際に味わってみるとそのすごさは予想以上にも程があるよ!)

 

 あまりにもすごすぎた昨夜のことをメアリーは思い返した。

 夜。そろそろお腹がすいたなとメアリーが考えた時にテーブルの上にいきなり食事が現れた。

 あまりにも突然現れたものだから、随分と驚いてしまったが、現れた食事がおいしそうなものばかりであったが故にすぐに驚きはどこかへ行ってしまい、メアリーは食事を取った。

 実際に食べてみると、日本にいる時と同じぐらいに美味しい物ばかりであり――同時にメアリーとしての意識では初めてというべきであり、美味しさを余計に感じた――、とても満足のいくものであった。

 

 食事を終え、風呂に行きたいな、と考えた時には既に目の前は浴場へと変わっていた。

 またもや驚愕するメアリーだったが、いつの間にか服は消え去っており、裸のまま浴場の前で立っている状態になっていたために湯へと入った。

 

 さすが王宮ということもあってか随分と浴場は広く、何十人といった人数が一度に入れそうなほどだった。

 そんな場所を一人で満喫したメアリーが風呂から上がり、程よい疲れに眠気が誘われた頃、いつの間にかベッドの中に入っていたのだった。

 そして、気づけば朝となっていたというわけだった。

 

(やばすぎるって……! ここまで快適なんて……! というか、漫画とかアニメとか小説でもこんないつの間にか何かが現れたとか、いつの間にかどこかに移動していたとかなんてないって! マーシャ、恐るべし……!)

 

 自身が何かしようと思ったら、いつの間にか全てが用意されている。

 そんな何もしなくてもいいと言わんばかりのマーシャによる行動がメアリーにある恐怖を――

 

(こ、このままじゃ……、私、ダメ人間になっちゃう……!)

 

 単に堕落するのが怖いだけだった。

 その時、扉の外からノックをする音が聞こえてきた。

 

(あれ? こんな朝早くから誰だろう……? も、もしかして、もうマーシャが朝ご飯を用意しているとか……!?)

 

 今までのことを考えるとひどく現実味を帯びていると感じるメアリー。

 しかし――

 

「メアリー。起きているか?」

 

 外から声をかけてきたのはフォルカーだった。

 

「え、あ、起きているよ」

「そうか。入っても大丈夫か?」

「うん」

 

 メアリーの返答を聞いたフォルカーが扉を開け、部屋の中に入ってきた。

 一瞬、メアリーがどこにいるのか分からなかったのか、部屋の中を見渡したフォルカーだったが、メアリーがまだベッドの中にいることに気づくとため息をつきながらメアリーの近くへ歩いてきた。

 

「こんな朝早くからどうしたの?」

「……朝早くってお前なあ……。もう日が昇ってから随分と経つぞ……」

 

 見ればフォルカーは既に身支度を整え終わっている。

 外を見れば確かに日はそれなりの高さにあり、今の時間が七、八時ぐらいだと教えてくれていた――

 

(――ってそんなに遅くはないよね? ……ああ、そうか。この世界って朝は日が昇ったらみんな起きる感じだったっけ)

 

 考えているうちにメアリーの記憶からフォルカーの呆れている原因に気づいた。

 しかし、フォルカーがこの場に来ている理由は未だに分からない。

 そんなメアリーの思考に気づいたのか、フォルカーが口を開いた。

 

「メアリーと一緒に食事をしようと思ってきたんだ。……問題はないか?」

 

「……? 別に問題なんてないよ?」

 

(なんでそんなに気にするんだろう?)

 

 メアリーが首を傾げているとフォルカーは何故か安堵の息をついていた。

 

「メアリーは人の視線にそれほど慣れていないのだろう? 俺たちと食事を取ることもなく、一人で部屋の中で食べていたわけだしな。……でも、もしかすると単に俺たち――いや、俺と一緒に食事をしなかったのは、俺と一緒にいるのが嫌だったのかと考えてしまっていたんだ」

 

(そ、そういうことか! ……まあ、実際はマーシャがすぐに用意してくれていただけだから、そんなこと考えることすらしなかったけどね。……というか、随分と私のことを気にしているなあ?)

 

「ねえ、どうしてそんなに私のことをそこまで気にするの? それってもしかして、私が現人神だから?」

 

 気になったメアリーはフォルカーに問いかけた。

 その言葉にフォルカーは言葉を一瞬詰まらせた後――

 

「……そんなことは関係がない! ……別に現人神だから、とかそんなことは本当にどうでもいいんだ」

 

 そう言い、フォルカーは顔を背けた。

 よくよく見てみると耳が少し赤くなっているところが見える。

 

(な、なにこいつ……! 素直になれない子供かっ!? ……って子供か)

 

「そ、そんなことより! ……メアリーが言っていた孤児院の支援について調べてみたぞ」

 

 咄嗟に口にしたようなフォルカーの言葉だったが、メアリーの関心を引くには十分だった。

 

「は、早いね。……それで、どうだった?」

 

「ああ。結論から言ってしまえば、孤児院に援助は与えられていた」

 

「……え? ……それってシスターが嘘を言っていたということ!?」

 

「いいや、それは違う」

 

「……?」

 

 フォルカーの言葉にメアリーは首を傾げた。

 

「確かに孤児院に支援は出てはいた。だが、同時に支出がそれ以上に増えていたんだ」

 

「支出が?」

 

(でも、別に孤児院の生活は私がメアリーとしての意識を取り戻す前と比べて変わっていなかったよね……? どういうことだろう?)

 

「メアリーは逆位置(リバース)を知っているか?」

 

逆位置(リバース)?」

 

(何だろう、それって……あれ? どこかで聞いたことがあるような……?)

 

「……逆位置(リバース)とは俺たちのような魔力を持つ正位置(ノーマル)とは異なり、反魔力を持つ存在だ。そして、逆位置(リバース)は俺たちの魔力を糧にしている。言ってしまえば俺たちの敵というわけだ」

 

「ふーん」

 

(つまりは魔物みたいな存在ってことかな?)

 

 メアリーは自身の知識と照らし合わせ、そう理解した。

 

「でも、その逆位置(リバース)がどうしたの?」

 

「……どうやら最近は逆位置(リバース)が増えているらしいんだ。そして、その増えた逆位置(リバース)を対処するために税が加算され、孤児院の援助分が費やされてしまっていたようなんだ」

 

「……税が増えたってフォルカーは知らなかったの?」

 

「…………すまない」

 

 メアリーの言葉にフォルカーはただ一言謝った。

 

(まあ、フォルカーが王子っていってもまだ子供だもんね。完全に知っているはずもない、か)

 

 今更ながらにフォルカーの年齢を思い出したメアリー。

 

「でも、そういう税が増えた時って孤児院の援助が更に増えるってことはないの?」

 

 国の支援によって経営が成り立っているのであれば、税金が増えた時でも同じ生活が出来るようにするのではないか、そんな思いからメアリーは言った。

 しかし、フォルカーはメアリーの言葉に首を振った。

 

「無理なんだ。既に孤児院には援助を増やしている。新たな理由なしに更なる追加の援助を行うのは出来ないんだ。それに、そもそもメアリーがいた孤児院はもともと国の援助で経営を行っていたわけではないからな。国の援助はあくまでも補助的な役割であって、本来は貴族が援助をして成り立っていたんだ」

 

「そ、そうなんだ……。……あれ? それなら貴族の援助があれば……」

 

「……それがないんだ。税が原因なのかは分からないが、孤児院に援助していた貴族が援助を止めたらしい」

 

「そ、そんな!」

 

(貴族からの援助がなくなって、国からの援助は新しく増えた税金によって帳消し。……そうか、だからこそエレナがあんなに怒っていたんだ……)

 

 ようやくエレナの憤慨していた理由が分かったメアリー。

 しかし、その問題はなかなかに解決できそうも――

 

(――あれ? もしかして、孤児院に援助する新たな理由って私自身がなること出来る……?)

 

 フォルカーは言っていた。孤児院に更なる援助を行うためには新たな理由がいる、と。

 そして、もともと孤児院が援助を増やされた理由は国やギルドにとって優秀な人材が増えたということだ。そこに現人神とされるメアリーが孤児院出身であるということが加われば、孤児院に援助が増えてもおかしくはない。大きくまとめればメアリーもまた優秀な人材ということになるかもしれないが、さすがに神と同一らしい現人神ならば理由にはなるだろう。

 

(いやいや、でも、そんなことをしたら絶対に私が目立ちまくるよねっ!)

 

 思いついた案ではあったが、それを行いたくないメアリーだった。

 

(他に、他に何か案は……! ……はっ、そうか!)

 

 そして、考えた末、メアリーに天啓が降りた。

 

「フォルカー。逆位置(リバース)ってやっぱり相当強いのかな?」

 

「……? 相手によりはするが、強い逆位置(リバース)だとギルドのSランクや魔法騎士団が十人単位で必要な敵もいるな。それがどうしたんだ?」

 

 フォルカーの言葉にメアリーは笑みを浮かべるだけで返答しない。

 その心では――

 

(やった! 逆位置(リバース)の中には簡単に倒せないものがいる――つまりは倒せれば孤児院に援助をする理由になるということ! ……でも、直接倒しちゃえば私が目立つことは確定的に明らか、だよね)

 

 メアリーは自身の思考により没頭していく。

 

(……そうだ! 逆位置(リバース)を倒すのは何も私じゃなくてもいいんだよっ! つまり、私は誰かの補助をすればいいってこと! ……何なら私が倒しちゃっても他の人が倒したことにすればいいし、いけるよ、これ!)

 

「な、なにを笑っているんだ、メアリー……?」

 

(ふふふ……。やってやる、やってやるんだ! 私は暗躍するぞぉおおおおおおおお)

 

「…………? なぜ、拳を天に掲げているんだ……?」

 

 メアリーが取ったガッツポーズを不思議そうに見つめるフォルカーを前にメアリーは決心したのだった。

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