衛宮士郎に憧れた少年   作:黒幕系神父

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―――それは、呪い。


最終回「真実」

ふわふわと、宙を浮いている。そこは黒い渦のような場所。俺、衛宮士郎が知ることが出来る場所。それだけを知っている。そこに理由はない。

 

とても、とても――――ここを、悲しい場所だと思った。

自身の執念の正体を知った。そして、彼女に全てを託したと思ったら俺はここにいた。

恐らく、彼女は俺の代わりに戦っている。けれど、理解してしまう。彼女では敵わないと。あの岩の巨人には届かないと。

―――この世界はひび割れている。恐らく、ここは彼女の心象風景。

黒く、黒く。悪意が集まる世界。ボロボロの世界。それは、彼女がもう自我を保てないと言ってるようなもので―――――。

 

それに――――この世界には悪意しかない。否。この世界はそれが濃縮したもの。まるでソレは、世界は醜いものだと、そう錯覚してしまうようなもので――――。

 

 

 

ピシリ、と。あの時と同じ。頭に何かが開いた感覚。

「――――――」

そこで、とある少女の生涯を見た。

 

 

 

 

彼女は人ではなかった。否。彼女は元々は人だった。けれど、とある研究者が生み出したウイルス。それが世界を覆いつくし、結果彼らは人であり、人でない存在となった。

その肌は緑色であり、30歳を超える頃にはウイルスに耐えられなくなって化け物となる。そんな世界で、かつての隣人、家族全てを衛宮士郎に殺された少女。名を、――――何の因果か。桜、と。それが少女の名前だった。

それを偶然と切り捨てたのが、衛宮士郎の最大の失敗。

とある世界において衛宮士郎は桜を救おうとして――――失敗した。それでも、彼女を助けようと、生き返らせようと世界を何度もやり直して、結局ソレが原因で世界から追放された。そうして、あらゆる他者に乗り移った。

 

でも―――彼は、衛宮士郎は桜を求めた。それが結果か、理由か。それはわからないが。

彼は数多ある平行世界の衛宮士郎に憑依して、そしてあらゆる平行世界の桜を殺しつくした。

そうだ――――彼が手にかけた少女。緑色の肌の少女。それは、世界が違う故に姿形が違うが、確かに桜だった。結局彼は桜を殺す運命に縛られていた。

彼は、あらゆる他者に乗り移っていなかった。

他者に魂を移す?そんな事をすれば、肉体と魂のズレで崩壊を迎えに決まっている

シェロ・ループライン?それは平行世界の衛宮士郎の名前だ。もとより、彼は衛宮士郎だった。

 

 

それが答え。それが結末。結局衛宮士郎は何度憑依しようが衛宮士郎以外にはなれず、何度繰り返しても最終的には桜を殺す。それが結末。

 

 

そんな、そんな余りにも残酷な結末を知った。

彼らは満足して消えていったかもしれない。執念の少女。桜すらもそれは変わらない。

けれど―――それは、本当に。

 

 

本当に、彼らは幸せだったのか?

 

 

 

俺は俺だ。衛宮士郎だ。慎二を殺し、切嗣を騙し続け、桜の記憶を奪い、結局彼女に救われた存在。彼らとは違う。それでも――――

 

それでも、平行世界の彼らは幸せじゃなかったとしても―――それでも、その信念に向かって突き進んだ彼らは余りにも――――遠い…。

 

世界をなかったことにしてでも、数多の世界を渡り歩いても。

数多ある衛宮士郎に憑依した初代衛宮士郎。彼が、否。彼と一緒に歩み続けたあらゆる平行世界の衛宮士郎。

何万年も歩み続けた彼らを超えることが出来ると――――とても、思えなかった。

 

俺は彼らを超えれない。俺はたまたま、桜を救えただけで彼らのように何万年も歩み続けることなんて出来ると思えない。

 

俺は彼らが求めた桜を知らない。だから、助けようとは思えない。けれど――――それでも、それでも…!

心から湧き出た気持ちに嘘はつけない。

彼らの死を――――なかったことにしてはならないと、そう思ったんだ。

 

 

ふと、そんなことを思った時。暗闇、黒い渦の中から。突如として目の前に衛宮士郎が現れた。

それは俺とかがみ写しのよう―――ではない。違う。

まとう雰囲気が違う。何より、この男には決定的な年期がある。

この男は誰だ。俺ではない。俺はここまで完成されていない。

俺ではない衛宮士郎―――ならば、平行世界の?

 

 

そんな、怪しむ俺のことなんて知ったことかと、目の前の衛宮士郎は笑顔で手を差し出して。

 

 

 

気づけば俺は。

 

俺は、その手を握ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、呪いかもしれない。

未来永劫続く衛宮士郎の呪い。正義の味方に、少女の味方になり続けるという願い。

ソレが続く限り、彼に終わりはない。

執念から彼へバトンは渡された。

 

 

彼は桜を救った。それはもう一つの未来。とある世界の衛宮士郎にとっての最高のハッピーエンド。だが、桜を救うという未来は確かに存在した。

 

 

―――けれど、代償は存在する。

人生はプラスマイナス0である。それは変わらない。

彼は桜を助けた。そして、ヘラクレスをも打ち破った。それはプラスだろう。

しかして、この世界は本来とは違う。

世界に対して怒りに満ちた天草四郎時貞がいる。

かつて、切り捨てた慎二がいない。

その極大のマイナスが存在するだけで。

それだけで、未来は大きく変わる。

 

3つの平行世界があった。それはとある世界でfate、UBW、HFと呼ばれた世界。

fateの世界では桜と、慎二を犠牲にし。

UBWの世界では桜とイリヤを犠牲にし。

HFの世界ではセイバーとイリヤ、慎二を犠牲にした。

最優の、最も犠牲の少ない3つの世界。それらすら最小限の犠牲はあった。

 

この世界はそれとは違う。最優の世界ではない。ならば――――。

これ以上衛宮士郎の周りに犠牲が増えることは、運命として決まっている。

 

 

 

それに気づけるのは、その3つ以上の世界を掴み取れるのは世界をゲームとして見れる上位世界に行った事がある衛宮士郎だけだった。

上位世界に行き、運命を操る魔法を持つことが出来た衛宮士郎のみ。

 

彼は、違う――――。上位世界に一度も行った事がない衛宮士郎。彼は、最優の世界を超えることが出来るのか。はたまた、そんな世界に横槍を入れるものが現れるのか。

 

それは、世界にしか分からないことだった。

 

 

END




…唐突に見えるエンド。実は2部を書き始めてから決まっていたことだったり。
2部は1部の補完として書いてます。一度1部を書き終わった後、実は完結に設定したんですが掘り下げがたりねーな。と思い2部を書き始めました。

いやまあ…本当はもうちょっと、続けたかったんじゃよ?でも、もうなんていうか自分が思う主人公の底の底を書きつくした感が個人的にあって…。もう掘り下げる所ねーじゃんってなっちゃって。

原作の3ルートを超える完全無欠のハッピーエンドなんて存在しないです。それを超えるハッピーエンドは、かつての3ルートの衛宮士郎が間違えたといってるようなもの。それは冒涜というものです。1部最終回の衛宮士郎すら、3ルートと同等にはハッピーエンドですがそれ以上ではないです。


この後の話のヒントとして、1部主人公の原初衛宮士郎といいますか、運命を操る魔法を持つ衛宮士郎。1部ラスト・エピローグの衛宮士郎ですね。彼は桜を求めて歩き続けています。その為にあらゆる平行世界を歩き続けています…。


これで、終わります。
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