衛宮士郎に憧れた少年   作:黒幕系神父

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4話「桜への執念」

「そんな…!」

 

白い妖精の、驚愕した声が聞こえる。が、関係ない。

そうだ。たとえ大英雄であろうと。それでも、俺はヘラクレスを打ち倒さなくてはならない。だから――――

 

 

「カリ、バアアアアアアアアン!!!!!」

 

 

そうして、真名を開放した剣は確かに、岩の巨人に突き刺さった。

 

 

限りなく真に近い剣。現在俺がいる場所がセイバーが召喚されるであろう場所だからか。なんらかの因果が働いたのか分からない。たまたま、というには運命性を感じる剣。

ランクにしてA+。最高峰の剣は確かに大英雄の命のストックを削りきり――――

 

 

 

 

その役目を終えるかのように、カリバーンの刀身はコナゴナになった。

 

 

バーサーカーは呻いている。その隙に彼の剣に当たらない範囲に移動する。

 

 

 

「まさか、まさかバーサーカーのストックを7つも…!」

 

 

7つ。

 

俺は7つ命のストックを削ったのか。そうか、そこまで削れたか。

 

だが、それだけだ。

俺はこれ以上の投影は出来ない。確信がある。これでは勝てない。

ならば―――

 

 

「どうした。アインツベルンのマスター。いや。イリヤスフィールといったほうがいいか?ご自慢のヘラクレスがボロボロになって戦意を喪失したか?」

 

 

「なっ…!」

 

 

彼女はまだ、自分の名前もサーヴァントの名前も出していない。だが、俺は原作知識によってその存在を知っている。彼女からしたら俺の発言はこれで無視できなくなった。

 

「どうした、イリヤスフィール。それとも何か?切嗣の敵討ちでもとろうと?」

 

煽れ。煽るんだ。

イリヤスフィールは切嗣を憎んでいる。

その自分がまさか切嗣の敵討ちをするために来たのだと思われたなら。

 

「ふ、ふざけないで…!」

彼女が切れるのも道理だ。だが、それで判断を鈍らせれば。

 

「で?そんなことどうでもいいが、俺はヘラクレスを確実に殺す術を持っている。それを疑ったとして、俺はサーヴァントを召喚していない。この意味がわかるだろう?」

 

俺は召喚をしている。そしてデミ・サーヴァントになった。けれどそれをイリヤは知らない。だから手の甲にある令呪を見せつければ。それで―――

 

「クッ。…ふん。絶対許してあげないんだから。帰るわよ。バーサーカー。」

 

「それはこちらの台詞だ。次は確実に殺す。覚えておけ。」

 

「ふん!」

 

そうして、鉛色の巨人はイリヤを肩に抱え、帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――危なかった。あのまま戦っていたら確実に負けていた。

彼女が逆上したら、それだけで俺は死んでいた。

綱渡りのような行動だが、それしか俺に生きる術はなかった。上手くいってよかった。

 

ただ、改めて思う。

原作知識は最強の知識だ。

この知識があれば、俺は英雄とも張り合える。

 

聖杯には興味がないけれど、彼ら英霊は現世において邪魔でしかない。

実力で劣ろうが、それでも俺は。

 

勝って勝って勝ち続ける――――!

 

 

 

 

 

こうして、俺の聖杯戦争初めての戦いは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投影技術。

カリバーンを投影してから、俺は確実に投影の技術が増している。それはまるで、自分自身に備わっている聖剣の鞘が動きだしたかのようで。

今の俺なら、無理をすればランクC台ならば投影が可能だろう。つまり、破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)も投影が可能である。

 

 

破戒すべき全ての符

コルキスの女王。メデュアの逸話が昇華した宝具。

生前『裏切りの魔女』と言われた彼女の人生そのものが具現化した短剣。

かの宝具は魔術的な縛り・契約を解除できる能力を持つ。

人外の力を持つサーヴァントを唯一強制的に支配することが出来るマスターの権限・令呪すらも無効にできる。

どころかサーヴァントのマスター権すら解除できるインチキきわまりない武器だ。

 

 

 

これがあれば、桜を救うことが可能になる。だから、俺はまずひと目その宝具を見なければならない。

 

その為に、俺が取る行動はキャスターがいるであろう柳洞寺に向かうこと。何も戦って勝つ必要はない。ただ、ひと目みるだけ。それだけならば今の俺ならば可能だろう。

 

なに。ヘラクレスを打ち倒したんだ。それくらいの自信はある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――大きな階段。山頂にある柳洞寺に繋がる唯一の道。

まったく、いつも思うが遠すぎる。

一成は毎日ここを上り下りしているのか。まともじゃないな。

 

 

夜だからか、そこに気配はない。

 

少し緊張をほぐしながら階段をのぼっていると、つい宙を見てしまう。

 

習慣だろうか。それとも未練だろうか。

もしかしたら、宇宙の果てには俺が生前いた世界があるのかもしれない。

 

そう、思わず感傷に浸ってしまう。

 

どんどん星は近くなる。山道を上ってるのだから当たり前だ。それでも、決して星はオレの手には届かない。

星に手を伸ばしても決して届くことはないけれど――――。

 

それでも。

 

 

 

 

ああ―――いつも通り星がきれいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――何だ…これ…。」

思わず声を失ってしまう。こんなこと、予想できるはずがない。

 

山門を守るアサシンはいなかった。

 

いや、正確にはそうではない。

柳洞寺そのものが跡形もなく吹き飛んでいた。爆撃を受けたかのような、大きな穴があいていた。

ただ、そこに死体はない。

 

 

理由は分からない、が恐らく慎二だろう。

バーサーカーはありえない。ここまでの大穴、バーサーカーが意図して掘らなければあけれない。

ランサーはこんな大勢を巻き込むことはしないはずだし、そもそもマスターである言峰がこんな事させないだろう。

審判役である言峰が修繕することになるから、労力が増えるだけだ。そんなの奴は望まない。

 

アーチャーは召喚されないし、セイバーはまだ召喚されていない。

 

消去法でライダー・慎二以外あり得ない。

 

 

おそらく、慎二なりに考えたことだろう。

慎二は聖杯の呪いを知らない。桜を救うために聖杯を求めるのは当然。

だから、あらゆるマスターを殺しつくそうと考えているのかもしれない。

その為に、厄介なキャスターを先に潰そうとして――――――

 

 

「―――クソッ!!!」

 

 

キャスターが見つからない。そんな事想定していなかった。

 

 

 

もう、どうすることもできない。ルールブレイカーを投影することも出来なくなった。

これでは桜は…

 

 

 

―――バカか。バカか俺は!

 

たかだかその程度の、それだけの理由で彼女を見捨てるなんて出来るわけがないだろうが!

 

そんな程度で諦めるなら、正義の味方なんて辞めてしまえ。

 

 

―――仕方が無い。

策なんて今のところ思いつかないけれど、家に帰って作戦を―――――――――

 

 

 

 

「あ?」

 

あれ。なんだろう。頭が痛い。

 

痛い。痛い。痛い。痛い。痛い

体が重い。動かない。何か、何かが違う。

 

 

ゆっくりと体が倒れる。瞼が、重い。あれ―――?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、体が唐突に軽くなった。

重力から開放されたかのような。そんな、感覚。

先ほどまであった頭痛もなくなっている。

 

よく分からない、がこれなら大丈夫だ。

瞼をあけ、周りを見て―――

 

 

 

「―――なん、だ、これ。」

 

 

そこには、何も無かった。

 

 

白。虚無ともいうべきか。

 

 

何も写さず、何も通さない。濁りきった白。

 

まるでそれは俺の全てをあらわしているようで、酷く醜い白に見えた。

 

この場所は…。

まるで違う景色だが、この空間。異界には覚えがある。

 

俺はこれの担い手だ。だから、その意味が十全に分かる。

 

 

無限の剣製。俺が持つ固有結界。

世界を丸ごと作り出す大魔術。

 

俺だからか、それとも見当違いか。ここには剣も、荒野も。荒れ果てた空もない。

ただ、虚無。無限の白が広がっていた。

 

 

 

 

何もない。そうだ、俺には何もない。

 

 

改めて思わされる。

 

所詮俺の理想は偽者だと、お前に正義の真似事は似合わないと。

そう、突きつけられているようで。

 

 

こんな、こんな場所。大嫌いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、それで正しい。ここは無限の剣製内部。いや、正確に言えば、アンタの心と言ったところか。この空間に魔力はないからな。」

 

 

 

ふと、後ろから声が聞こえた。

 

 

こ、の声は―――

 

 

あり得ない。

彼は消えたはずだ。確かに俺が消したはずだ。

そうだ、あり得ない。俺の心に彼が存在するなどあり得ない。

 

 

だが、この声は。

酷く、聞きなれた声。この、声は…!

 

 

 

 

 

まさか、まさか――――!

 

 

 

 

 

 

 

オレは彼を知っている。

 

そうだ、俺は確かに彼に憧れた。

正義の味方に憧れた。

 

 

俺が奪った罪の象徴であり。

 

俺が信じた正義の象徴。

 

 

 

 

ああ。彼が、彼こそが――――――

 

 

「そんな、見つめないでくれ。流石に照れるよ。」

 

 

 

 

銅色の髪を携え。

真っ直ぐな瞳を覗かせた。

 

 

 

 

衛宮士郎が、そこにいた。

 

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