全て繋がるようにします。
※主人公は死をある程度理解していますが直死の魔眼は持っていません。
――――ああ、この感覚は懐かしい。
ただ、そう思う。嘗ていた場所。そこがここ。死の世界。
数多もの黒い点が隅々まであり。それが全てを覆っていて。
これこそが死であると。そう錯覚させられる。
常人ならば発狂し、精神が崩れる空間。全てが無になり、開放された空間。
感覚はない。何も見えず、何も出来ず。どうしようもなく、寂しさだけがただよう空間。
ただ、この空間はどうしようもなく。
”好き”だ。
生のある世界は巡っている。ただ独り、個人が死のうが関係なく世界は周っている。
ただ、ここは間違いなく俺のための世界。自身が主人公の世界。それこそが死の世界。俺という一個人がいないと成立しない空間。だから、とても好きだ。
ああ。そうか。俺は死ぬことがどうしようもなく、好きだった。そうなんだ。だからこの感覚を一緒に得ようと父親を殺したんだ。
ただそれだけ。一緒の仲間がほしかったから殺した。
世界は矛盾を嫌う。だからか。
この世界の記憶は決して生ある世界に持ち込めない。逆も同じ。
死の世界を生ある人が知覚できないと同じで。死の世界の記憶は死の世界でしか存在しない。
それでも、生前父を殺したことだけは覚えている。
あの、苦しんでいた父を覚えている。
それが俺の始まりだから。それだけは覚えている。
ああ。そうだ。俺がどうやって死んだかすら覚えていないけど。それでも。
あっちの俺がふがいなくても、それでも。
俺は俺として今、”魔法使い”として確かにここに存在している。
ならば、撒き戻そうか。もう独りの”人”としての俺をあの世界へ―――――
ハッピーエンドに至るために。
―――――目を、あける。
また、あの感覚を得た。
いつもいつも得ているあの感覚。どうしようもない黒。
この、生き返る瞬間だけは。数えるのも馬鹿らしいほど得た感覚は酷く嫌いだ。
目の前には、まるで化け物を見る目で、目を見開いたランサーがいた。
「おいおい…。どうなっているんだこりゃ。俺の槍は確実にお前の心臓を穿ったはずだが?」
ふと、胸をさする、が服が破けているだけで傷はない。恐らくアヴァロンだろう。何故、発動したかは分からないが。
ただ、この好機。決して逃がさない。故に
「トレース」
ただ、長く。永く。剣を投影する。
故に強度はいらず。ただあの技術を模倣すればいいだけ。
「オン」
宝具とは呼べない。神秘もない。
ただの名刀。それを以て。
「―――燕返し」
回避不可能の3連激をランサーに叩き込み――――!
…単純な話。
宝具を投影でき。
英霊の筋力を投影、再現でき。
その担い手になることが出来る。
少し劣るとはいえ、あらゆる英霊の良い所どりが出来るような能力。
ハッキリ言って、そんなインチキじみた能力でどう負けるというのか。
無限の剣製。アンリミテッド・ブレイドワークス。それが俺の能力。
いや、衛宮士郎から譲りうけた能力。心の心象風景を映し出す。ただそれだけの能力。
その異能を完全に扱いきれば、どのような存在にも負けることはない。
無敗の英雄。それが持つに相応しい。
なら。
――――この時、彼も気づかないことであったが。
彼の燕返しは劣化をせず、最高峰の技術を以て完璧に投影していた。
それはつまり、投影技術において本物の衛宮士郎。いや、アーチャー。英霊エミヤですら超えていることであり。
そうして――――
始まりは。
始まりは突然だった。そして、かつての世界を。本質を知った。
本質を知る。つまりは。全てを知った。以前の世界は虚構だと。誰かの創作物だと。そう知ってしまった。
自分の過去が、全て偽りに見えた。かつての家族が。かつての信念が嘘だと。そう思わされた。
今までの借り物の、真似ただけの信念。それすらも平等に。全てが嘘だと。
だから、どうしようもなくなった。
全てを壊したくなった。死にたくなった。何も見えなくなった。
あの時、確かに俺の理想は死んだ。
―――――でも、それはいけないことなのか。
人も何も、全てが信じられなくて。からっぽになって。
虚像のように全てが見えたあの日。
何もかもを捨て去って。自分の感情すら定まらなかったあの日。
しょうがないじゃないか。そう、叫びたかった。だって、かつての世界が。
かつての自分が。 『』だったんだから。
衛宮切嗣の”ZERO”を知った。
岸波白野の"EXTRA"を知った。
ジークの”Apocrypha”を知った。
イリヤの”kaleid liner"を知った。
藤丸立香の”Grand Order”を知った。
そして、衛宮士郎の”stay night”を知った。
その時、俺は自分自身が生きる意味、指標を失った。それはつまり、自身の死に他ならない。
俺は確かにあの時死んで。そうして、そんな時に俺はたまたま子供を救って。
彼か、彼女か。誰かは分からないが。
救われた子供のあの笑顔を見て。
俺はあの時、確かに救われた。
誰も傷つかず。全てを救おうと。そんな偽善であっても。それは自分が出した気持ちだから。
この気持ちだけは本物だから。
本当の自分を、これから創っていこうと。
そうして、何度も何度も。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も
消えそうで。
挫けそうで。
あらゆることが磨耗して、消し去って。
何度も何度も転生を。憑依を繰り返した。
ただ一つの、たった一つの願いをかなえるために。
そうして、俺は――――――――
”先輩”
いや、それは―――違う。
そうだ。その願いは違う。それは俺が本当に求めていたものじゃない。
人間なんてそんなものだけど。それでもあの時の気持ちは間違いじゃない。
かつての理想を捨て、正義の味方を張り続けれなくて、それでも。
彼女を。かつての後輩を救うために全てを捨てた。
ゆれていたんだ。あの頃の気持ちが本物か、否か。
そんなの、答えは決まっている。だって、それは俺が受け継いだ気持ちと違う。確かな俺の気持ちなのだから。
それは間違いなく、本物だから。
「あめぇよ」
その3つの絶技はなるほど確かに。完全に再現されていた。
しかし、それでも所詮は人間の放った技。英霊が放った技ではない。
ゆえに圧倒的に神秘が、サーヴァントを倒すためには足りない。
一撃は確かに彼を切り裂くが、ただそれだけ。
霊核を少し傷つけたが、所詮はその程度。クー・フーリンの命には届いていない。
ゆえにカウンターを食らうのは必然であり。
「―――刺し穿つ死棘の槍 ゲイ・ボルク」
極光。圧倒的な赤き輝きとともにその槍は
再度。俺の心臓を貫いた。
確実に、蘇らないように。先ほどとは比べ物にならない呪詛を乗せて。