主人公とヒロインが死別がする作品が本当に好きでたまらないです。
悲しいハッピーエンド が大好き。
fate本編でもHFノーマルエンドが一番好きだったり。
―――夢を見ている。
それは、少年が夢を諦めても二人の女の子を救おうと頑張る物語。
結局少年は誰も助けれなくて、その物語はバッドエンドだった。
記憶が磨耗して、それでも過去にしがみついて。
今の自分は確かに衛宮士郎であり、桜を愛した人間であり。イリヤの弟なのだと。それだけは覚えていて。
最後に、その気持ちがなくなるまで、必死にそれにしがみついた。胸を締め付ける哀しみも。喉が渇く自身への怒りも。その全てが自分が自分である証明。自分が衛宮士郎だから。
ここにいるのは衛宮士郎だから。それだけは変わらないと、そう願い続けた。
結局。必死にしがみついてもその思いは消えうせて。それでも、一歩ずつ彼は歩いていった。
まるでなくしたものを探すように。全てがなくなっても歩き続ける。
その物語がバッドエンドでも。
彼の生き方はとても、とても美しく感じた。
記憶をなくしても、数多の世界をめぐりわたった彼の物語を見て、嗚呼。余りにも彼の生き様は美しくて。
数多の悲劇があった。
人が化け物になり、文明が滅びた世界。
あらゆる病魔が世界を覆い、絶望しかない世界。
ふとした日常から一転、血に塗れた地獄と化す防衛機能が機能していない世界。
あらゆる地獄を、彼は数多ある世界を憑依転生して経験していた。
死にたい、と。何度願ったか。何度、いなくなろうと。消え去ろうと思ったか。
それでも、記憶がなくなっても、強烈な自殺願望に犯されても、彼は常に正しくあろうとした。
初めは、身体を奪われたことによる憤りを感じた。当たり前だ。自分自身の身体を奪われて、かつての家族は、友人はみな死んだ。世界全てを呪い尽くそうと思ったこともある。けれども、自身を乗っ取った彼の。未来の自分自身が余りにも格好良かったから。
彼に、自分の身体を渡そうと思った。
たとえ彼が破滅しても、それでも自分に後悔はない。
何故なら、身体を渡せば。彼は。否、俺は数多の人を救うことが出来るのだから。
それが、憑依されて本来の人格を心の奥底に封じ込められた衛宮士郎の願い。
彼の心象風景で初めて彼に姿を見せた。本来の身体の持ち主、衛宮士郎の。
「こんにちは。君が士郎くんだね。率直に聞くけど、孤児院に預けられるか初めて会ったおじさんに引き取られるか。君はどっちがいいかな?」
ただ一つの、残された願いだった。
「―-――-ッ」
目を、開ける。
ただ、声が。喉がカスれて何も声が出ない。
気づけばそこにはボロボロに、まともな形を成していない寺しかなく。
「―――――」
自身を、解析。血流は正常に流れ、心臓が―――戻っている。あり得ない。アヴァロンでは、決して復活しない。
これは、まさか。
辺りを探すと。なるほど、見つけた。
この、赤色の宝石は。やはり――-ああ、そうか。
原作とは場所が違うけれど、それでもこの運命は確定しているのか。
遠坂には、助けられてばかりなのかもしれない。あの時も俺は――――
…あの時?俺は、別に遠坂としゃべったことが無い。
そのはずなのに、何故だろう。
何かを忘れている気がする。
とても、大切な事を。
思い出せない。ピシリ、と頭が疼く。けれど、それは結局思い出せなくて。
そうして、フラフラと地に落ちない歩き方で。俺は、血に塗れた状態で、帰路に着いた。
夢を見た。
「先輩、先輩はどうして、料理がそこまで上手なんです?料理人も顔負けじゃないですか?」
「ああ。実は、切嗣。俺の親父にハンバーグを作ったんだ。」
「その時の、親父の顔を見て、料理が好きになったんだよ。俺なんかより、桜はどうして料理が好きなんだ?」
「え、あの。それは」
「なんだか言いたくなさそうだな。言いたくないなら言わなくてもいいぞ?」
「そうですか、なら」
「ああ、遠坂も呼ぶか。イリヤとセイバーと、藤ねえの分も必要だから、っと。」
「やっぱり、大勢で食べたほうが美味しいですもんね。先輩。私も頑張ります!」
「うん、大人数で食べたほうが、美味しいに決まっている。…決まっている」
「先輩?どうしました?」
「―――いや、何でもないよ。桜。じゃあ、盛り付けの準備をするか」
「はい!」
そんな、一コマの、幸せな。夢を見た。
「あ、れ…?」
目が、霞む。何か夢を見た。とても、とても大切な夢を。けれど思い出せない。
胸に来るこの哀しみは。喉が渇いて。息がしづらいこの感覚は。
嗚呼、どうしようもなく。何かを俺は懐かしんで。ただ、悲しんだんだ。
何が、俺には。衛宮士郎になる前。憑依転生を繰り返した俺が、いったい何をしたのか。どんな人物だったのか。
磨耗して、忘れてしまったけれど。それでも。
それはきっと大切な日常の思い出だと、そう、思った。
そんな時、頭が酷く痛く。
”お前はいったい何をしている”
何、を。
”はて、そのような状態で。貴様は何をしている?”
頭に響く、剣が軋むような声。アーチャー、か。
「何を、か。俺は何をしているんだろうな。」
結局、正義の味方とは何なのか分からずに。何か不思議な記憶を見せられて。否、見せられてもソレを記憶できずにいて。
今の俺は正義の味方じゃなく、ただ、桜を。親友の妹を救おうとガムシャラになっているだけの愚者。それが俺。
”違う、そういう意味じゃない。”
…何を言っているのか分からない。お前は何をいっている。それは、どういう――――
”いつまで、目を。現実から目を背ける。お前はもうとっくに、あの頃の記憶を思い出しているはずだろう”
な、にを―――――。
そう、問いただしても。結局、その後に響く声はなかった。
所詮は偽者だと、そういうかのように。アーチャーは何も答えてくれなかった。
喉が渇く、イライラする。無償に、苛立つ、俺はいったい。何を忘れていて。何から目を背けているというんだ…。
それが、アーチャーとの最後の会話。
結局、その後の体調は最悪だった。
何かが、グシャリとグシャリと。そう、頭が軋むように痛かった。
学校だとか、聖杯戦争だとか。そんな事同でもいいと思えるほどに、全てが。自身が軋んでいく感覚がある。
アーチャーが言っていてたこと。それはどうしようもなく胸に突っかかって。自身が何者かすら定まらなくなっていく。
-――俺は衛宮士郎じゃない。そう思うことが、何故かシックリくる。そうだ、俺は衛宮士郎じゃない。
だったら、俺が忘れた記憶とは。いったいなんだ?
俺はこの世界じゃない。別の世界で桜を知っている。そんな気がする。あくまで気がするだけだ。
でも、それはどうしようもない確信を持っていて。
ならば、何故俺は衛宮士郎じゃない?
桜を知っている。とてつもなく酷いことをしたことを、なんとなく理解している。
それが何かはわからないけれど、じゃあなぜ俺は衛宮士郎じゃないんだ?
ワカラナイ。わからない。わからない。
たとえ、俺が元々衛宮士郎だったとして。ならば何故俺は今あるこの身体が自身の物だと思えないんだ?
俺の精神に今あるこの身体の衛宮士郎の精神があるから?
――違う。それはきっと、違うと思う。何故かはわからないけれど、俺は衛宮士郎じゃない。
じゃあ、俺は…?俺はいったい、なんなんだ?
グルグル、と。頭が可笑しくなりそうなくらい回転している。
フラフラ、と。まるで行き着く未来がわからないようで、そうして、いつの間にか
「――-もう、夜か。」
気がついたら、冬木大橋に自分はいた。
いつ来たのか、どうしてきたのか。わからない。
あたりには誰もいない。だが、誰もいないのがどうも気持ちがいい。
やはり一人というのはいいものだ。独り。孤独。それはかつての俺のようで。
かつての俺は…。
そうして、決して蘇らない記憶を思い出そうと必死に頭をめぐらせていると、そこに音が響いた。
カツ、カツ。と誰かが歩く音。その数は、二人。
何もおかしくない。ここは橋の上だ。だから別に人がいても可笑しくない。
けれど、何かが可笑しく、不思議な感覚を持っていて。
ふと、音のなる方を見た。
「――------」
神様。これは、卑怯だろう。
俺が衛宮士郎を知ったキッカケ。
「こんにちは、衛宮君。」
見えない、遠坂の声が理解できない。頭が空っぽになる。
「あの時は気づかなかったけど、その腕の魔力。あなた、マスターだったのね。この程度の暗示に引っかかるようじゃ、まだまだだけど。」
何を言っているのか分からない。そんなことに興味はない。ただ俺が、遠坂の隣にいる彼女に。
――――裏切りだと思った。俺が衛宮士郎を目指すのなら、決してしてはいけない選択。
彼女を殺すことは、反転していない彼女を殺すことだけは、衛宮士郎になってからしてはいけないと。そう誓ったはずなのに。
だけど、それでも。俺は、俺は彼女
「…ジロジロ見るな。メイガス。」
初めて恋をした少女。金髪の少女。あの時見た理想。
目の前に現れた金髪の少女。セイバー。
俺の、憧れ。
嗚呼。だがどうしてか、ワカラナイが。
殺意が沸いた。彼女は絶対に殺さなくてはいけないと。そう感覚が言っている。
俺は、彼女を殺す。
ピシリ、と。欠けたピースがくっ付いたような気がした。