「西住ちゃーん!ビッグニュースだよー!」
プラウダ高校との準決勝戦を勝利した大洗女子学園。試合後の休息日の次の日のこと、訓練のために戦車ガレージに集まっていた戦車道履修者たち、その中にいた隊長のみほに、学園生徒会長の杏が喜び叫びながら走ってきた
「新しい戦車が見つかったんだよ!!それもすごいの!!」
「ホントですか?!」
「うん、さっき自動車部に回収を指示して来たところだから、もうそろそろここに着くと思うよ!」
杏の言葉にみほや他の戦車道履修者たちが期待に胸を膨らませる中、自動車部が戦車運搬車を運転して戦車ガレージの前までやってきた
みほたちはガレージから走って出て、回収されてきた戦車を見る。そして驚いた
「せ、センチュリオン?!」
「な、なぜにこの戦車が大洗にあるのでありますか?!第二次世界大戦の終盤に試作され、終戦後に量産された重巡航戦車でありますよ?!ハッキリ言って、今のウチにある戦車とは格が違うのであります!!」
運搬車の荷台に載っていた戦車を見て、みほと同じあんこうチームの装填手を務める戦車マニアの優花里が驚きつつも戦車の解説をした
「いやー、それがさー学園艦の貨物搬出入エリアの隅っこにさ、放置されてたんだよね。それをそのエリアの管理主任が教えてくれたんだよ。廃艦のことが、艦内全てに知られちゃったからさ。『この戦車使えないのか?』ってさ」
「でもなんでこんな高性能の戦車が残ってたんだ?」
「そうですよね。20年前に戦車道を廃止した際に、めぼしい戦車は売りに出されたと、記録には残されたましたし・・・」
杏の説明に、みほと優花里と同じくあんこうチームの麻子や華も疑問を持つ
「もしかしたら、規定違反な戦車なのかも・・・」
「その可能性はあるであります。センチュリオンなら、規定に適合しているのはA41の試作車のみであります」
みほは残されていた理由を不安視し、優花里もそれに同意する。規定に適合しないとはいえ高性能戦車ならば、売却額は結構な額になる。しかし規定に合わせて手直しする手間とお金を考えると、購入を渋られるのも納得がいくからだ
「いや、それは無いと思うよー」
「一応持ってくる前にそのあたりはチェックしたけど、整備すればこのまま試合に出せる、規定に適合した戦車だったよ。しかも放置されてた場所がよかったから、三式中戦車に次ぐ状態のよさだよ」
しかし、みほの不安を戦車をここまで運搬してきた自動車部の面々が否定した。彼女たちは大洗女子学園の全ての戦車の整備を受け持つ優秀なメカニックたちである。戦車道の車両規定もキチンと把握しているので、万に一つも見落とすことはない
「まーどうして残ってるのかは知らないけど、使える戦車ならありがたく使わせてもらおうよ」
「そうですね」
杏の一声に、みほも頷いた。次の決勝戦の相手は強敵も強敵の黒森峰学園である。20輌まで使える規定の中、三式中戦車やポルシェティーガーが加わったとはいえ、まだ8輌しかない大洗女子学園には1輌でも多くの車輌数がほしいのが本音だった
しかし・・・
「でも、誰に乗ってもらえばいいか・・・」
「あー、そーだよねー。いい戦車ならしっかり使える人に乗ってもらいたいもんねー」
「はい・・・」
残念ながらみほにも杏にも、乗り手の心当たりはないのであった
自動車部が戦車をガレージの中に入れるため、セミトレーラの運搬車を巧みなハンドルさばきでバックで入れていくのを見ながら、頭を悩ますのであった
そのときである
「あ、見て。センチュリオンだよ」
「ホントだ。いーよねセンチュリオン。エンジン音が低いいい音でさ」
「そうそう。アメリカのマッスルカーみたいなね。ワイルドスピードに出てくるアメ車とか」
「まぁ、センチュリオンのエンジン作ってたのはロールス・ロイス社だからイギリス製なんだけどね」
ガレージに入っていくセンチュリオンを見ながら話す4人の生徒がいた。これ幸いと、杏がその4人に近付いていく
「やぁやぁ君たち。戦車詳しいね。興味あるのかな?折角だから乗ってみないかい?」
「ゲッ、生徒会長・・・」
普段奇行が目立っている生徒会の会長に声を掛けられ、4人は後退りをした
「まぁまぁ、そう構えないでほしいな。今、あのセンチュリオンに乗る人たちがいなくて困ってるんだよ。知ってると思うけど、次の決勝戦で負けると大洗女子学園は廃校、学園艦も廃艦だからさ。できれば乗ってほしいなぁーって」
杏はニコニコと笑顔で4人の『お願い』をする。廃校、廃艦と不安を煽る言葉を並べ、4人を追い詰めていく
「あ、あの!お願いします!戦車、乗ってもらえませんか?」
「うっ・・・」
今にも逃げ出しそうな4人に、みほが駆け寄って頭を下げて頼み込む。さすがにここまで大洗女子学園の戦車隊を引っ張ってきたみほに頭を下げられ、4人は困惑する
「どうする?」
「正直あまり気は乗らないよ」
「あの人にバレたらたぶん怒られるし」
「でもセンチュリオンだよ?」
「「「「うーん・・・」」」」
4人は向かい合ってしゃがみ込み、話し合いをする
「高校生の間は戦車道には関わらないって決めたじゃん」
「でも廃校になると面倒だよ?」
「あの人にバレたらもっと面倒だよ」
「カヴェナンターに押し込まれて蒸されちゃう?」
「「「「・・・」」」」
4人をドヨ~ンとした空気が包み込む
「ま、まず乗るか乗らないか、を決めよう」
「そ、そうだね。それで乗るならどう誤魔化すかを」
「乗らないならどうやってここから逃げるかを」
「じゃあ乗りたい人、挙手」
4人が小さく手を上げた
「全員かよ。まぁやっぱり、廃校はイヤだし」
「履歴書の学歴欄がごっちゃになるからね」
「イチイチ転校理由を聞かれて『廃校になったからです』って答えるのも面倒だし」
「もっと面倒なのは『転校?なんか問題でも起こしたのか?』って勝手に想像されることだよ」
結論が出て、4人が立ち上がって、みほに向き直る
「わかりました。戦車道に参加します。私は工学科2年の・・・」
「?」
自己紹介をしようとしたとき、名前を言う前に4人がアイコンタクトをした
「・・・ハートです」
「じゃあ私はスペードで、同じく工学科2年生」
「クラブです」
「ダイヤです」
「えっと・・・」
本名を名乗らない4人に、みほは困惑する
「まぁ、私たちの本名が出ないほうが、あなた自身のためにもなるので、深く考えないでください。ね?」
「は、はぁ・・・?」
数日後、自動車部によるセンチュリオンの整備が終わり、新たに結成された工学科チーム、ごりらチームの初めての訓練が行われる
ハートが車長、ダイヤが装填手兼無線手、クラブが砲手で、スペードが操縦手に就いた
「ごりらチームって・・・」
「まー本人たちがいいって言うんだからいいんじゃない?」
砲塔の側面にチームエンブレムとして、エ○ゴリ君みたいなゴリラのキャラクターが厳つい笑顔でマッスルポーズをキメている姿のステッカーが貼られている。それを見て、あんこうチームの通信手の沙織はやや引き気味に言葉を漏らし、チーム名を許可した杏が暢気に返す
「アーアー、テステス。車内聞こえる?」
「装填手、オッケー」
「砲手、オッケー」
「操縦手、オッケー」
車長のハートが咽頭マイクに手をやり、音声チェックを行う
「準備はできた?最終チェック」
「装填装置、砲弾積み込み、通信機、オッケー」
「主砲、砲塔旋回、動作異常なし」
「操縦席、計器類、全て正常」
始動前の各部の最終チェックを入念に行うと同時に、各乗員同士のやり取りの確認をする
「じゃあそろそろやろうか。エンジン始動」
「エンジン始動」
操縦席のスペードがエンジンを始動させる。低く唸るようなエンジン音がガレージ内に響く
「アハ、やっぱりいい音」
「ちょっと吹かしてみてよ」
装填手のダイヤと砲手のクラブが、嬉しそうにエンジン音に耳を傾け、スペードがスロットルを開けてエンジンの回転数を上げる
「さて、音に酔いしれるのもいいけど、周りが期待の目を向けてるから、やろうか。戦車前進」
ハートの指示でセンチュリオンが前進し始め、ガレージからゆっくりと出て行く。ガレージから車体が完全に出ると、加速し始め、グラウンドを疾走する
「進路やや右、門を出て訓練用エリアへ」
スピードに乗ったセンチュリオンがクンッと右に曲がり、グラウンドから戦車道訓練用エリアへの門に向かう。4メートルほどしか開いていないその門を、全幅3.4メートルのセンチュリオンがそのままの速度で通過する
「ターゲット、11時方向」
「装填完了」
「照準完了」
「撃て」
行進間射撃でセンチュリオンの主砲が発射される。放たれた砲弾は、射撃訓練用の的に命中した
「左旋回180度・・・次ターゲット、1時方向」
「装填完了」
「照準完了」
「撃て」
センチュリオンが左に180度旋回、旋回中に砲弾の装填を行い、車体の旋回が終わるとほぼ同時に主砲の照準も定まり、次のターゲットへの射撃も狙い違わず命中した
「右旋回90度の後停止・・・ターゲット正面」
ハートの指示通りに、センチュリオンが90度曲がって停止する。センチュリオンの前方の離れたところに最後のターゲットが置かれている
「いつでも撃てます」
「よし、撃て」
砲手のクラブの言葉に、短く射撃命令を出すハート
結果は、言うまでもない
・
・
「あー終わった終わった。お疲れー」
「あーやっぱり体鈍ってるわ。砲弾が重い重い」
「私も止まってる的なんか外したらどうしようって緊張しちゃった」
「ごめんね、旋回で少しドリフトしちゃった」
センチュリオンがガレージに戻ってきた。エンジンの止まったセンチュリオンから、4人が気だるそうに降りてくる。そんな4人を、戦車道履修者たちは皆、驚きの表情で出迎える
「西住殿、あの戦車の動き、もしかして・・・」
「うん・・・」
センチュリオンの動きに気付くものがあったみほと優花里。みほはそれを確認するために4人に駆け寄る
「あの、4人はもしかして・・・っ?!」
4人の正体を言おうとしたみほの口を人差し指で押さえて遮るハート
「私たちが何者か、それをハッキリと明言されると、私たちはこの学園が廃校になるのと同じくらいに困るの。そして、それはあなたにとっても、同じことじゃないかな?西住流さん?」
「っ?!」
「私たちが何者か、あなたは知らない。私たちは、あなたが予想した答えの真似事をしているだけ。ネットに落ちてた動画を見て真似したらできましたってことで。オッケー?」
「・・・」
ハートは、みほが自身が言ったことを理解したことを見届けると、手を引っ込めて4人でガレージから去っていった
オリキャラ4人の具体的な設定はありません
原作開始時点のウサギチームのようなノリで、尚且つ戦車道の経験者であること、の2点だけです
使用戦車がセンチュリオンなのは前書きの通りです。チーム名のごりらは・・・ホラ、ワイルドスピードにはドミニクにホブスにと、ゴリマッチョがいるから・・・