全国大会から少し経ったある日、大洗女子が凱旋エキシビションマッチが行われている
「ハァー・・・」
『大洗・知波単連合、攻撃部隊準備整いました。守備隊の状況はどうですか?』
「こちらごりらチーム、対象はこちらに真っ直ぐ来てます。迂回する様子は無し。戦力差から見て持って5分ですね」
『了解です』
ゴルフ場の林の中で、待ち伏せをしているごりらチームの車長アイリは、大きなため息をつきながらも、隊長車であるあんこうチームのⅣ号戦車からの無線に応答する
「ハァー・・・」
「何?どうしたの?さっきからため息ばっかりついて」
「あぁいや、こないだの決勝戦のことで、中学時代の友達とちょっと・・・」
「喧嘩?なら早く謝りなさい。長引かせてもいいことないわよ」
「う、うん・・・そうなんだけさ・・・電話に出てくれなくて」
同じく守備隊のレオポンさんチームやカモさんチームの車長のナカジマやそど子が、ため息ばっかりついているアイリを心配する
決勝戦後の電話以降、アイリたちは愛里寿に何度も電話をかけているが、全く繋がらないのだった
「やっぱ直接会いに行くしかないのかな・・・」
「でも今、大学選抜チームの指導してるんでしょ?会ってくれるかな?」
「困ったなぁ・・・」
っとそのとき、守備隊の戦車たちの前の地面に敵の放った砲弾が突き刺さる
「各車応戦。ただ、まだ序盤なのでここで撃ちすぎると、後半弾が無くなるから注意。無駄弾を撃たないように、しっかり狙って確実に当てるつもりで撃つこと」
『了解です』
『了解しました』
『了解であります』
アイリの指示を聞いた、レオポンさんチームのポルシェティーガー、カモさんチームのルノーB1、そして連合を組んでいる知波単学園から回された九五式軽戦車が発砲を始める
「IS-2の正面はP虎やウチでもやっぱ抜けそうにないか・・・各車、狙いはT-34に集中してください。カモチームと九五式はT-34の横の燃料タンクを狙って。小さいけど時間使ってしっかり狙っていっていいからね」
『了解です』
『了解しました』
『了解であります』
守備隊を突破しようとするプラウダ高校の戦車隊との砲撃戦が始まり、T-34やIS-2の砲弾が守備隊の目の前の坂に突き刺さった。アイリは比較的正面装甲の薄いT-34に狙いを集中させ、少しでも撃破をして戦力の減少を狙う。砲が弱く、撃破を狙えないルノーB1や九五式軽戦車には、燃料タンクを狙わせて、後半の燃焼切れによる行動不能を狙う作戦を指示する
『知波単第1中隊が突撃を敢行につき、我々も続くであります!戦車前進!』
「ふぁっ?!」
突然九五式軽戦車からそんな無線が飛んできたかと思うと、九五式軽戦車は前進を始める
「ちょ、マジ?!カモチーム、進路塞いで、早く!」
『りょ、了解!』
慌ててアイリはカモさんチームに九五式軽戦車の進路を塞ぐように指示を出し、ルノーB1の側面で九五式軽戦車の前進を止めた
「止めないでください!ここで突撃に続かなければ、先輩方に会わす顔がないであります!」
「ここで突撃したら間違いなく撃破されるよ」
「突撃して散るのが我が知波単の伝統であります!」
「いや、散っちゃダメでしょ」
撃破されることが前提の言葉に、ナカジマがキューポラから少し顔を出してツッコミを入れる。攻撃の手が緩んだことで、プラウダ高校の戦車隊の攻勢が強くなる
「こちら守備隊、防衛ライン崩壊、撤退しそちらに合流します」
『了解しました』
「撤退なんて嫌であります!」
「我慢しなさい」
ルノーB1が無理やり九五式軽戦車の進路を変えさせて撤退に移った
「えっと、福田さんだっけ?勘違いしてるようだから言っておくけど、突撃ってのは『死中に活あり』の精神で生き残るために突っ込むものだよ。『死なば諸共』で突っ込むのは突撃じゃない。生きて帰ってこそ、突撃は意味があるんだよ」
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ゴルフ場から、戦いの場所は大洗の市街地に移行した。大通りから入り組んだ路地に入るが、聖グロリアーナのクルセイダー部隊が大洗・知波単連合チームの先回りをしようとしてくる
『ごりらチーム先行してください。重量差で突破してください』
「了解。ナオ」
「おっけー」
操縦手のナオがセンチュリオンを加速させ、Ⅳ号戦車を追い抜いた。そのまま進路を塞ごうとしたクルセイダーに体当たりをして弾き飛ばした。52tで600馬力のセンチュリオンと20tで340馬力のクルセイダーの重量差と馬力差は凄まじく、飛ばされたクルセイダーはガードレールを越え、水路に落ちて盛大な水飛沫を上げた
「あらら、落ちちゃったよ。あそこの水路って深さはどんなもんなのかな?」
「さぁ?海が近いから潮の干満差にもよるだろうけど、流石に完全に水没するほど深くは無いんじゃない?」
「まぁ一応回収しやすいように早々にこの場所から離れてあげよう」
「そだね」
走行不能になった戦車の回収のルールとして、対象戦車が戦闘状態にある空間にある場合は回収を後回しにするという決まりになっているので、ごりらチームの面々は水路に落ちたクルセイダーの乗員を心配して、早めにその場を後にしていくのだった
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少しの間、大洗知波単連合のフラッグ車のⅣ号戦車と聖グロリアーナ・プラウダ連合の追いかけっこが続く中、進路の先回りをした場所にウサギさんチームがいた
「こちらウサギチーム、後ろのほう、任せてもらっていいですか?」
『お願いします』
Ⅳ号戦車が通過し、チャーチルやマチルダ、T-34が後に続いて通過し、最後のIS-2が通過するところでウサギさんチームは行動を開始した
「撃て」
M3の副砲が発射された。砲弾でIS-2の右の履帯が切られ、IS-2は停止した
「よし、行って」
「ウッシャー!!」
ウサギさんチームの操縦手の桂利奈がM3を発進させ、IS-2に一気に接近する
「切れた履帯の隙間に主砲を捻じ込んで奥の車体を撃つ。ごりらチームの先輩たちがやってた必殺の一撃」
「私たちだって!」
全国大会決勝戦のとき、重戦車の相手を買って出たウサギさんチームだったが、エレファントはともかくヤークトティーガーを撃破するプランは、実は彼女たちには無かったのだ。エレファント撃破で行った作戦は、紗希の機転に救わいれて成功したが、ヤークトティーガーはその方法では撃破できないことはわかっていた。最悪逃げて時間稼ぎに徹するつもりだった。だけど、ごりらチームの方法を取れば、自分たちでも重戦車を撃破できる。それを証明するために最後の一撃に向かう
しかし、直後彼女たちの想定外の事態が起こる。右の履帯を切られたIS-2は、残っている左の履帯のみを動かし、車体を旋回させる。同時に砲塔も旋回させ、接近するM3に主砲を向ける。最後の一撃用に主砲は温存し、M3の車体の高い位置にある副砲で下にある履帯を狙ったため、俯角があまり取れず、その分目標までの距離を取るしかなかったことが仇となり、接近するまでに主砲の指向が間に合ってしまったのだ
「少しヒヤッとしました。ですが、まだまだです」
IS-2の車長のノンナは、ウサギさんチームの機転を褒めながら砲撃をした。M3も接近しきれていないが、相打ち狙いでIS-2の足回りに主砲を撃ち込む。M3は撃破され白旗が揚がるが、IS-2は転輪が吹き飛ぶだけで車体に損害は出なかった
『ノンナ、遅れてるわよ!』
「すみませんカチューシャ。思わぬ伏兵に足回りをやられました。伏兵への対処は済みましたが、復旧に少々お時間をいただきます」
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「ミホーシャ無茶しすぎ!」
「どうしますか?」
エキシビジョンマッチ終盤、大洗磯前神社から石階段を駆け下りるあんこうチームのⅣ号戦車。追跡していたT-34に乗るカチューシャとIS-2に乗るノンナ
「追いかけるに決まってるわ。ミホーシャにできて、カチューシャにできないことなんてないわ」
「そうですね。では私は戻って迂回します。先ほど足回りをやられて、痛めていますので」
「わかったわ」
T-34が石階段から降り始め、ウサギさんチームに履帯や転輪を撃たれ、足回りに損傷を負ったIS-2は来た道を戻る
IS-2が大鳥居のところまで戻ってきて、Ⅳ号戦車の先に回ろうと道を左折しようとする
「っ!停止!」
何かに気付き、IS-2を停止させるノンナ。直後、車体が浅く入った砲弾を弾いた。もしも、ノンナが停止を指示していなければ、左折により車体が旋回し入射角が深くなり、砲弾を弾くことはできなかっただろう
「うわ、気付かれたよ」
「カン良過ぎ」
IS-2に向かって砲撃した戦車、センチュリオンのごりらチームは相手の勘のよさに辟易する
「後輩チームの敵討ち、といったところですか」
「ん?なんのこと?」
「ウサギのマークのM3です。全国大会決勝戦であなたたちがティーガーⅡを撃破した方法をアレンジしてました。指導しているのではないのですか?」
「いや、全く」
ノンナの指摘を、アイリは否定する。事実、アイリたちは誰一人として、他のチームに指導らしい指導はしていない
「もし、あの子たちが私たちのやったことを真似たのなら、それはあの子たちが自分で考えてやったことだよ。ホント、ついこの前まで全くの素人だったとは思えないよね」
アイリは後輩の成長に笑顔を浮かべる
「まぁ、そんなわけで、後輩が頑張った以上、先輩も結果を残さないといけないわけよ。実を言うと私たち、この試合でスコア稼げていないのよね。だからここらで大物を取りたいなって」
「・・・わかりました。受けて立ちます」
劇場版のエキシビションマッチ。ごりらチームは守備隊スタート。だから福田の九五式が突撃しかける件に微妙な差異があり。装甲を抜ける抜けないはそのテの知識が無いので適当
アイリの突撃論は決勝戦で体言してます
ハート=アイリは前話で書きましたが。他キャラについては、クラブ=リカ、ダイヤ=カナ、スペード=ナオ、となっています
走行不能戦車の回収のルールは、これも勝手に作った設定。そこが戦闘空間だと、走行不能になった戦車が無くなると、それを盾にする戦術もとれないし、なにより回収員が危ないから、あってもおかしくはないだろうなって
ウサギチームの変化の兆し。劇場版の戦法だと、結局あれでどうやってIS-2を撃破するのか、いまいちわからない。ヤークトのときのように背後に用水路のような大きな溝があるわけでもなさそうだし。これなら、撃破できる可能性はあったし、結果として足回りにダメージを残せたから、行動を制限することができたから、失敗はしたけど意味はあったってことで