ガルパン 意味無し二次短編   作:rockless

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8話

『敵センチュリオン、西裏門を強行突破!!なんだあれは?!化物か!!』

 

「とうとう動き出したね、愛里寿ちゃん」

 

 通用門が再封鎖されて、早数十分。最低限の戦力を通用門に残し、残り2つの出入口に戦力を再配分した結果、戦闘は膠着状態となっていた。しかし、監視偵察役のCV-33からの驚愕に染まった声での連絡に、アイリたちは顔を顰める

 

『こちら西裏門の西です。知波単全車走行不能。申し訳ありません!!』

 

『同じくサンダースも全車やられたわ。気をつけて、敵が雪崩れ込むわよ』

 

 西裏門の警戒を任されていた知波単学園の戦車たちと、再配分で回されたサンダースの戦車たちがまとめて撃破され、遊園地内に大学選抜チームの戦車隊が侵入し始める

 

『正面出入口の状況を教えてください』

 

『こちら正面出入口、敵は少数。だが連携がよく、攻勢に出られず、付き合わされている感がある』

 

『わかりました・・・正面出入口、通用門、共に放棄してください。敵戦車を全て遊園地内に引き込み、プランFで戦います』

 

 

 遊園地内のサファリエリア、そこに2輌のセンチュリオンが対峙している。一方は大学選抜の黒のセンチュリオン。もう一方は濃緑にゴリラのチームエンブレムと大洗女子の校章が貼られた大洗女子学園のアイリたちが乗るセンチュリオンである

遊園地内の各所で戦闘が行われている中、アイリたちのセンチュリオンは大学選抜チームの目を掻い潜り、愛里寿のセンチュリオンのところまでやってきた。忍者戦法の島田流の教えを受ける大学選抜チームだが、彼女たちもまた、島田流の門下生なのだ

 

「久しぶり・・・愛里寿ちゃん」

 

 アイリたちのセンチュリオンに搭載された車外スピーカーから、拡声されたアイリの声が発せられる

 

「少し、大きくなったね。髪も伸びて大人っぽくなったかな」

 

 アイリがかけた言葉に、砲弾が返ってくる。操縦手のナオがセンチュリオンを前進させて砲弾をかわす。アイリは愛里寿の拒絶の姿勢に一瞬表情を曇らせたが、すぐに引き締める

 前進し、加速したアイリたちのセンチュリオンが、愛里寿のセンチュリオンにぶつかりそうになるが、愛里寿のセンチュリオンが僅かに後退して衝突は回避される。すれ違い間際、アイリたちのセンチュリオンが発砲。愛里寿のセンチュリオンが角度を変えて弾き、弾かれた砲弾がライオンのオブジェの頭を砕いた

 

 その後も、2輌のセンチュリオンが狙って撃って回避するを繰り返す。あるときはゾウのオブジェを体当たりで破壊しながら。またあるときはキリンのオブジェの後ろ足を車体で折り、倒れたオブジェ越しに発砲して胴体を木っ端微塵にしたり・・・その動きはとてもそれぞれが4人の乗員で動かしているとは思えないほどに、統率されていて、まるで戦車が一つの生物のように見えるほどである

 

「愛里寿ちゃん、私たち謝らないよ」

 

「っ!」

 

「だって愛里寿ちゃんとの約束を違えたつもりはないから」

 

「っ!!」

 

 アイリの呼びかけの言葉に愛里寿が表情を変える。そして反論代わりに砲弾が飛んでくる

 

「あのときの約束は、私たちは今も変わらず思い続けてる」

 

「・・・だったら、だったらどうして?!」

 

 愛里寿が叫んだ。愛里寿の声が聞けて、アイリは内心喜ぶ

 

「学校を、学園艦を守りたかったからだよ。島田流で愛里寿ちゃんと一緒にすごした時間よりは短いけど、あそこも私たちにとっては間違いなく居場所だから。失いたくない場所だから。生徒会は適当で下らないことしかしないし、小さめの規模の学園艦だから大して面白いものがあるわけでもない、唯一のメリットが公立校の学費で学園艦の教育を受けられることってだけだけど・・・」

 

「なんか言ってて悲しくなるね」

 

「だけどねー、今は違う」

 

 アイリの言葉に、リカが突っ込む。カナが通信機を操作して、無線通信を車外スピーカーに出力した

 

『あんこうチーム、巨大迷路でカメさんチームと共同でパーシング2輌を撃破』

 

『こちらカバさんチーム、時代劇エリアにてマカロニ作戦ツヴァイ成功しパーシング2輌を撃破!だけど3回目失敗し走行不能。すまない』

 

『プラウダチーム、三式とポルシェティーガーと共同でウェスタンエリアでパーシング5輌撃破したわ!』

 

『こちらダージリン、プラウダの頼れる同志の力を借りてT28を片付けたわ』

 

『こちらアンツィオ!偵察がバレてチャーフィーに追われてる!誰か助けてー!!』

 

『こちら江戸村エリア、ローズヒップですわ。チャーフィー1輌と相討ちですわ。ごめんなさいですの』

 

『ウサギチーム、ジェットコースターのレール上のでCV-33を攻撃中のチャーフィー2輌を撃破しました』

 

『助かったーありがとう!!』

 

『黒森峰チーム2輌、パーシング3輌と交戦中、かなりの腕だ。連携もいい』

 

 スピーカーから次々と戦況の報告連絡が上がってくる

 

「そんな学校を、学園艦を取り戻すために、みんなが頑張ってる。私たちには戦車を動かすスキルがある。それで居場所を取り戻せるなら、私たちは迷わない」

 

 てゆーか・・・っとアイリは言葉を続ける

 

「なーにが『嘘つき』だ!愛里寿ちゃん、私らが大洗女子学園に進学したら、自分は飛び級して大学生とか!!そんで大学選抜で戦車乗ってて、自分はどうなんだ、自分は?!」

 

「っ?!」

 

 ズビシッと指を刺してアイリが愛里寿に矛盾を指摘する

 

「私らと一緒に戦車乗りたいなら、高校に飛び級でくればいいのに、なーんで大学入っちゃうかな?!」

 

「だって!高校戦車道は西住流が蔓延ってるからってお母さんが・・・あとお母さんが大学戦車道連盟の理事やってるから」

 

「そんなのどーだって、いーじゃん。私らと一緒に高校戦車道界に島田流広めていけば!!黒森峰やっつけて、島田流最強ガッハッハってやればいいじゃん!!」

 

「むぅ~~~」

 

 アイリの言葉に、愛里寿は隊長としての上っ面が剥げていく。かつてアイリたちと一緒にいたときの、歳相応の子どもらしい表情に戻っていく。ちなみに両戦車とも戦闘中である

 

「だいたいこの試合でそっちが勝って、なんのメリットがあるのさ?!高校戦車道のイメージ悪化と縮小は、回りまわって大学戦車道の競技人口減少に繋がるんだよ!!売られた喧嘩だから買うまでってのは西住流の思考でしょ!!」

 

「っ!・・・私にも、守りたいものがあるから、勝ちたいんだ!」

 

 愛里寿のセンチュリオンがアイリたちのセンチュリオンに体当たりをした。アイリたちのセンチュリオンのサイドスカートが歪み、金属が擦れる音が車内に響く

 

「まずい。履帯がサイドスカートに擦ってる。このままじゃ切れかねない」

 

「んじゃ、決めるしかないよね。カナ、1回だけでいいから、装填時間を短くして」

 

「アハッ、今でも結構頑張ってるほうなんだけど・・・まぁ1回だけなら」

 

「ナオ、リカ、――――――」

 

 アイリが、操縦手と砲手の2人に作戦を指示する

 

「オッケー」

 

「いっちょ驚かせて上げますか」

 

 そうして2輌のセンチュリオンは、もう何度目かになる真正面からの対峙となる。両車が真っ直ぐと加速して接近していく

 

「撃て」

 

 早めのタイミングでアイリたちのセンチュリオンが発砲する。砲弾は愛里寿のセンチュリオンの操縦手が最小限の操縦で回避した

 

「よっこいしょういちっと!!おっけー」

 

 カナが自動装填機並みの早さで砲弾を装填する。安全性を度外視して片手のみで砲弾を砲弾架から持ち上げ、同時に他の作業をもう片方の手で行うことで、装填時間を約半分に縮ることに成功する

 

「向こうは多分、必中距離まで引っ張ると思うから」

 

「こっちはもう避ける気ないけどね」

 

 両車の距離が20メートルを切ったところで、愛里寿のセンチュリオンが発砲した。アイリたちのセンチュリオンが砲塔正面に砲弾を食らうと同時にリカも発砲

 

「っ?!」

 

 愛里寿がアイリたちのセンチュリオンの発砲に驚く。さらにナオがセンチュリオンの変速機のギアを1つ下げ、センチュリオンの加速が増した。砲塔正面への被弾による衝撃、発砲の反動、そして増した加速の慣性モーメント。3つが合わさってセンチュリオンの車体前面が持ち上がる。ウィリーのような体勢でアイリたちのセンチュリオンが愛里寿のセンチュリオンにぶつかろうとする

 しかし、愛里寿のセンチュリオンの操縦手がそれを回避するため、進路を変えた

 

「チッ、外れる!」

 

 アイリの言葉に、ナオが反射的にさらにスロットルを開けた。回転が速くなる履帯に、サイドスカートの干渉が負荷となり、片側の履帯が切れる。左右のバランスが崩れ、ウィリーの体勢が維持できなくなり、履帯が無くなり前進する力が無くなった方へ捻りながら車体が倒れ始める

 その方向が、幸か不幸か愛里寿のセンチュリオンの変えた進路と重なった

 

「愛里寿ちゃん、車内に避難してよ!」

 

 アイリの言葉と同時に、アイリたちのセンチュリオンは愛里寿のセンチュリオンを押し潰すように倒れて乗り上げる。アイリたちのセンチュリオンは愛里寿のセンチュリオンのやや前方部に重なり、愛里寿のセンチュリオンの主砲身を折っていた。さらに約50tのプレスに左右両方のサスペンションは耐え切れず破壊され、駆動系も破損していた。また、アイリたちのセンチュリオンも砲塔正面の被弾により走行不能判定が出される

 結果、両センチュリオンから、走行不能の白旗が上がる

 

「ふぅー・・・」

 

 アイリは深く息を吐いて自身を一旦落ち着ける。そして咽頭マイクに手を当て、オンマイクにして口を開く

 

「こちらごりらチーム、センチュリオン・・・大学選抜チーム隊長車センチュリオンを、相討ちにて撃破!!」

 

 数秒後、無線から歓喜の声が割れんばかりに入ってくるのだった

 

 

 結果として、試合は大洗女子学園チームが勝利した。隊長の愛里寿を失った大学選抜チームの下がった士気と、逆に勢い付いた大洗女子学園チームの士気の差は如何ともし難く、試合終了時に大洗女子学園チームで生存していた車輌数は10輌を越えていた

 

「愛里寿ちゃん」

 

「・・・ごめんなさい。その、嘘つきって言って」

 

 勝利に沸く大洗女子学園チームの輪から外れた場所で、アイリたちと愛里寿がいた。愛里寿はアイリたちに頭を下げて自身の言ったことを謝罪する

 

「もういいよ。気にしてないから。私たちも、知らせなかった落ち度はあるから」

 

「仲間外れみたいにしちゃってごめんね」

 

「それに、私たちは謝ってほしかったんじゃないよ」

 

「そうそう。ただ、わかってほしかっただけだから」

 

 そう言って、4人は大洗女子学園の仲間たちのほうを見る。愛里寿も同じように視線を向けた

 

「楽しそう。ちょっと羨ましいかな」

 

「なら来てみる?」

 

「え・・・」

 

「別に驚くことでもないじゃん。試合中も言ったけど、飛び級できるんだから大洗女子にも通えるでしょ」

 

「でも・・・」

 

 愛里寿は戸惑いながら、回収車に乗ったアイリたちのセンチュリオンを見る。センチュリオンの乗員は4人なので、アイリたち4人と愛里寿の5人だと、1人あふれてしまうのだ

 

「そこはほら、生徒会に頼んでセンチュリオンを売っ払って、5人乗りのを買えばさ」

 

「あーうん、愛里寿ちゃんが仲間になるなら、あの生徒会はそれくらいやりそう・・・」

 

「あ-でも、あの渋くていいエンジン音のセンチュリオンを手放すのは惜しいなぁ」

 

 アイリの提案に、リカとナオがそれぞれ反応する

 

「ってかさ、アイリの代わりに愛里寿ちゃんが車長になってもらったらよくない?」

 

「「「それだっ!!」」」

 

「いやいやいや!『それだっ!!』じゃないよ」

 

 カナの言葉に、リカとナオと愛里寿が揃って反応した。アイリは思わずツッコミを入れる

 

「私どうするのさ?!」

 

「うーん・・・戦力外?」

 

「今までお疲れ様?」

 

「あなたとは遊びだったのよ・・・?」

 

 リカたち3人が愛里寿を囲むように抱き付いた。愛里寿は抱き付かれたことに少し照れながらもハーレムを主張するかのように左右にいる2人に腕を回す

 

「えと・・・ごめんね、アイリ」

 

「ぐぬぬ・・・悔しい!でも可愛いから許しちゃう!!」

 

 そしてアイリもまた、愛里寿に抱き付くのだった




T28封じと通用門再封鎖で各出入口で膠着状態になっているので島田愛里寿が単独で強行突破して防衛ラインに穴を開ける。知波単とサンダースはかませ的に全滅・・・知波単の変化の兆しはどこへやら・・・

すぐにアイリたちと島田愛里寿の戦闘シーンになってますので、観覧車先輩の出番無し。無線の中で頼れる同志が本当に頼れてる件。車外スピーカー?みんなの戦車にも付いてるんでしょ?試合開始前に使ってたし・・・

最後の決着の仕方が無茶苦茶という意見は受け付けません。だってフェイズエリカでは継続のT28がウィリーするんだぜ?

悲報、アイリ、他乗員をNTRされる。ちなみにアイリは元々通信手という設定。センチュリオンは装填手と通信手が兼任なので、元々装填手のカナがそのポジションに、余ったアイリが車長になってただけです

意味も無く、テーマもないこんな話を読んでくださり、ありがとうございました

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