自称―――それは自分が“それ”を認めていると言う事であり、周りは認めていないと言う事である。
彼―――直人が自称を付けたのには理由があった。
(まぁ、どんなに報酬が良くても蜥蜴の尻尾きりってのは嫌だしね。)
詰まる所、彼が以来を受けるかどうかは気分と状況であると言う事であった。
しかし、開店したばかりの店に資金などある訳がなく。
「おう兄ちゃん!その板運んでくれ!」
「解りました!」
現在、人里の大工の手伝いに奮闘していた。
少なくとも、明日のご飯が食べられるかどうかと言う話だ。
午前から始めた手伝いは午後で終わり、直人は報酬を受け取った。
「おう!また手が足りなくなったら頼むぜ!」
「今後ともご贔屓に。」
そうして、彼は資金の一部を使い昼食を取る事にした。
―――しばらく歩いていると。
「ん?」
「おや、君か。」
―――腰まで届こうかというまで長い、青のメッシュが入った銀髪。
頭には頂に赤いリボンをつけ、赤い文字のような模様が描かれた青い帽子を乗せている。
衣服は胸元が大きく開き、上下が一体になっている青い服に袖は短く白。
襟は半円をいくつか組み合わせ、それを白が縁取っている。
胸元に赤いリボンをつけている。
下半身のスカート部分には幾重にも重なった白のレースがついて、長い―――
彼女―――上白沢慧音(かみしらさわけいね)は人里の寺子屋の教師であり、人里の守護神である。
「やぁ慧音先生、今夜一晩熱い夜を過ごしませんか?」
彼は即効で口説く。
そして、慧音は笑顔で直人の両肩を掴み―――
「お断りだ!」
ゴチィンッ!
頭突きを喰らった。
「~~~!!!」
「まったく、お前は初めて出会った時もそうだったな。」
ため息を付きながら出会った当初を思い出す慧音。
と言っても、出会いは3日前。
人里の門番に呼び止められて困っていた直人を助けたのが切っ掛けだった。
「もっとも、あの時助けなければ良かったと思ったがな……。」
「いやいや、慧音さんには大きな借りが出来ましたよ。お陰で店も開店できましたし。」
「……まぁ、この幻想郷に何でも屋が今更増えた所で気にはしないがな。」
彼の開店している店以外の何でも屋―――それはこの幻想郷の問題を解決する博麗神社の巫女―――博麗霊夢と、霧雨魔法店店長―――霧雨魔理沙と言う二人の少女達だ。
「とりあえず、専門的な事はあちらに任して俺は俺が解決できる範囲で解決しますよ。」
「それが良いだろう。所で……。」
「何ですか?」
「お前の店は自称何でも屋というらしいが、普通の何でも屋とどう違うんだ?」
「受ける依頼もあれば受けない依頼もあると言う事です。」
「何でも屋なのに依頼のえり好みをすると言うのは矛盾して無いか?」
「えぇ、矛盾してますよ。でも、それで良いんですよ。」
「………そうか。」
特に気になった訳ではなかった話題だが、後になってこの会話に何らかの違和感を感じるのはかなり先の話である。
夕刻―――直人は店に帰る帰路に付く。
「ふぃ~、疲れたなぁ。」
腕を回しながら晩御飯の食料を買った。
「しかし、かまどに火なんて付けられるんだろうか?」
とりあえず火打石と燃えやすい藁がこの世界にあったのでそれを使う。
「やれやれ、外の世界の現代機具が恋しいぜ。………なんてな。」
1人ごちる。
「―――ん?」
店の前に数人の男達が居た。
「何か用かい?」
彼が話しかける。
「………この店の奴か?」
「店長だ。んで何か依頼なのかい?」
人里で会話した事が無い男達だった。
「ああ、依頼だ。」
「内容は?此処で言え無いなら中でも…。」
「いや、今言おう。依頼内容は―――」
―――妖怪の抹殺―――
「………お宅ら、何か勘違いしてないかい?確かに何でも屋だが妖怪を殺せる様な力は無いよ。」
「だろうな。見た目で解る。」
「んじゃ他に当たってくれ。」
「いや、お前にしか頼めんのだよ。」
「………どういう意味だ?」
直人は訝しげにリーダーであろう男を見る。
「お前は“外”から来たのだろう?」
「そうなんだろうな。それで?」
「少なくともまだこの世界の妖怪達に顔を知られていない筈だ、つまりだお前が囮になって妖怪を誘い込み俺達が襲うって寸法だ。」
「はぁ…。んじゃ参考までに聞いておくけど何故妖怪を殺そうと?」
「ふん!あんな危険な奴等が住む世界に安全な場所など無い。殺さなければ殺される、ヤられる前にヤるという事だ。」
「………条件付で受けよう。」
「条件?」
「その条件を飲めないならお断りだ。」
「良いだろう、言ってみろ。」
直人が挙げた条件―――
・俺が獲物を見つけるまで妖怪を襲わない。
・日数制限は無期限。
・報酬は前払い。その代わり成功・追加報酬はいらない。
「………この条件を飲んでくれないと俺も困るのさ。普通の依頼もあるからね。」
「……良いだろう、妖怪を殺せるならそれくらい飲んでやる。」
「契約成立だな。」
―――男共が帰り、彼も店に入る―――
「………はぁ~、めんどくさいなおい。」
彼は乗り気ではなかった。
誰が好き好んで殺しの依頼を受けたがるのか小一時間聞きたい。
「………兎も角、策を練らないとな。」
こうして、彼はこの依頼を乗り切る為に頭を働かせた。
ちょっと行き成りご都合主義を……。