GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
どうも混沌の魔法使いです。今回は竜の魔女に最初にターゲットにされた横島の視点から書いて行こうと思います。なお、何度も何度も竜の魔女と表記していますが、自身の名前も判らないほどに霊基が歪んでいるのでサーヴァントとしての名前を知らないということになっておりますのでご了承ください。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
リポート16 竜の魔女 その4
全身に走る凄まじい激痛。不発弾か何かが爆発したような……とにかく凄まじい衝撃を感じたのは覚えている
「ははははは!!貴女達なら、私を楽しませてくれるでしょう?ねえ?」
私達を嘲笑うかのような女の笑い声。その声に顔を上げ、私の視線の先にいたのは禍々しい鎧に身を包んだ女の姿だった。鋭利な漆黒の鎧に、蝋人形のような生気の抜け落ちた白い肌。そして狂気の光を宿した金色の瞳……
(人間……違う。あれが……竜の魔女!)
マリア姫が言っていた竜の魔女の外見特徴に完全に一致している。竜の紋章が刻まれた旗と腰に刺した剣……そしてその圧倒的な存在感。小竜姫様と同格かそれ以上……牛若丸やノッブとも、ましてや義経とも違う。私達に向けて恐ろしいほどの殺気を叩きつけてくる
(これが……英霊!)
今まで遭遇した英霊が操られていたり、抑止力と言う存在だった。初めて完全に敵として遭遇した英霊に思わず身震いする、人間では太刀打ち出来ない存在。竜の魔女は私達を値踏みするようにその金色の瞳で見つめ
「まずはお前からだッ!!」
旗をどこかへと消し去り、腰の剣を抜き放ち横島君へと駆け出す
「横島君ッ!」
「横島ッ!!」
私と蛍ちゃんがそう叫んだが遅い、竜の魔女は殆ど一瞬で横島君の前に移動し、剣を振りおろした……
ぼんやりとする視界の中、何かが突進してくるのが見えた。黒い影……その手に鈍く光る何かが握られているのを見て、俺は殆ど反射的に、右手を振り上げた
「へえ?やるじゃない、人間にしては」
「ギッ!?」
振り上げた右腕には栄光の手が発動していた。それでも全身に走る激痛に苦悶の声を上げる、だが右腕を犠牲にしなければ俺は両断されて死んでいた。あの一撃に対応できた理由、それは牛若丸や沖田ちゃんのおかげだろう。だが反応出来ただけで、俺はここから動くことが出来ない
(い、いてえ……)
右腕を犠牲にして受け止めた。だがそこから走った衝撃で足が痙攣して動くことが出来ない
「でも、最初の一発で終わり見たいね!!」
再び振り上げられた剣が迫ってくるのが見える。避けろ、避けろ、と心眼の叫び声が聞こえる。俺も動かなければ死ぬと判っているのに動けない、最初の一撃を防いだ代償。それがあまりに大きすぎた……
「「こっのおッ!!!」」
頭に振り下ろされる瞬間。美神さんと蛍の声が聞こえ、激しい金属音が森の中に響く
「す、すいません!た、助かりました!」
ありがとうございますと礼を言うが、美神さんにお礼は後と怒られてしまった。まだ俺達の命を刈り取れる魔女は目の前にいる、まだ助かってなどはいないのだ
「ふーん……弱いから群れて、みっともないわね」
俺達を見て嘲笑うかのように言う魔女。その目には俺達を馬鹿にするような光が宿っていた
「でもまぁ……人間が何時まで耐えれるかしらッ!?」
再び空気が爆発したような音が聞こえ、魔女の姿が掻き消える。
「背中合わせ!お互いに死角をフォローして!」
美神さんの指示に反射的に動き、背中を合わせて3方向を警戒する。3人で警戒すれば、その姿を確認することが出来る……そう思っていたのだが……姿は愚か、その影すら見る事が出来ない。その余りの速さに目を見開く
【速い……私でも追いきれん!】
心眼は辛うじてその姿を確認する事が出来ているようだが、完全に捕捉することは出来ないのか、指示を出せないでいる。木が砕け、地面が陥没し、石が恐ろしいスピードであらぬ方向に飛んでいく……八兵衛や小竜姫様の超加速とは違う、姿が見えないのは同じだが、破壊される物があるだけ、その脅威が何時自分に迫ってくるのかと言う恐怖が募る
(横島君。反応を見せないで、私の話だけを聞きなさい。陰陽術の用意、話は覚えてるわね?)
小声で話しかけてくる美神さん。話は覚えてるわね?と陰陽術のキーワードに美神さんが何を警戒しているのかは理解出来た、それは炎だ。マリア姫が隠れていた村を焼いた炎……相殺出来るか自信は無いがやるしかない
(散って逃げるのはなし、各個撃破されて終わりだからね、突撃してきたら精霊石、炎なら陰陽術。その後は……臨機応変に考えましょう)
(作戦は何も無いってことですね)
蛍の言葉に美神さんが小さく苦笑する。だがそれは仕方ない事だ、相手が相手。情報も何も無い突発的な遭遇戦、今回は元々ワイバーンを撃退し、時間をかけて砦に戻るという囮作戦だったのだ。魔女と遭遇することも考えていたが、まさかあそこまでの存在とは想定などしているわけも無い。今俺達がやるべき事は魔女を撃退する事ではない、無事に砦に帰還する事。それを最優先課題とするべきだ、最悪の場合川に飛び込むとか、崖から飛び降りるとかする必要もあるかもしれないなと考えていると、心眼の鋭い声が脳裏に響く
【横島!上だ!!】
「消し炭になれッ!!」
反射的に指を噛み切り、陰陽札に文字を刻む。上から俺達を飲み込まんと迫る黒い炎に震えながら陰陽札を握り締め、剣指を切りながら詠唱を叫ぶ
「急急如律令ッ!!!炎の力を散らしめよ!!!!」
俺達を包み込むように霊力の膜が発生し、炎を受け止めるが……
「あちちちちちッ!!!!だ、駄目だぁ!」
手の中で札が異様に発熱している。直撃は避けたが、長時間受け止めるのは不可能だと悟る、そもそも炎に強い俺が熱いと感じる段階で相当危険だ。これ以上持たない、そう思った瞬間。炎は弾ける様に霧散した……
「ふー……ふーっ……」
真っ赤になっている手に息を吹きかけて冷ます。手の中は札は完全に燃え尽きていて、後もう少し炎の持続時間があれば全員が丸こげになっていたと容易に想像できる
「……へえ。お前面白い術を使うわね」
金色の瞳が俺を捉える。その絶対零度の視線に思わず身体が震えた……今まで感じてきた殺気や殺意とは全く異なる気配。虫や何かを見つめるようなその視線に心の底から恐怖した
「みむうっ!!!」
「きゃっ!?」
Gジャンのポケットから顔を出したチビが電気を放つ。パチンっと言う音と共に周囲が一瞬昼間のように明るくなる、そして次の瞬間。身体が何かに持ち上げられた
「ぷぎゅううううう!!!」
俺達を背中に乗せて走り出すうりぼー。自分達で考えて行動に移したと言うのか……
「逃げきれる……とは言えないわね」
美神さんが背後を見てそう呟く、森の中に響く魔女の怒声。うりぼーのスピードは決して遅い物ではないが、逃げ切れるとは思えない
「どうします?美神さん。正直今の装備で勝てると思えないんですけど」
「それは私も感じてるわ、攻撃力がとんでもない。精霊石でも防げるかどうか……」
竜の魔女の力は恐ろしい物だった。その力も脅威なのに、そこに超火力の炎まで加わるとなるとどう考えても勝てるイメージに繋がらない
【とりあえず森を出るべきだ。森に放火されては逃げ道もなくなる】
ワイバーンに囲まれる危険性を考慮して森の中で戦う事を選んだ。それなのに森を出るのか?と呟くと美神さんはいいアイデアかもしれないと呟いた
「あの女。見かけどおりかなり短気よ」
……美神さんも人のことは言えないと思うんだけど、いやいや、それを口にしたら殺されるなとその言葉を飲み込む
「虚仮にされたと思って私達を追いかけてくるでしょうね。直接私達を殺そうとするはず、ワイバーンで逃げれないようにはすると思うけど……3対1に持ち込めるかも……」
「美神さん。3対1でも勝てるなんて思えないんですけど」
蛍の言葉に頷く、あの怪力と炎。正直、数の有利なんて何の役にも立たないと思う
【狭い森なら旗や剣の動きを束縛できると思ったが、効果は無い。それなら開き直って広い場所に出たほうが勝率が上がるかもしれない、それにマリア姫が言っていただろう?情緒不安定だと……もしかするとまたそれが起きるかも知れない、もっと言えば、私達の支援をしてくれていた弓兵部隊が支援に来てくれる可能性もあるだろう】
弓兵部隊と分断されたが、向こうを追いかけている気配は無い、だから無事に砦に戻り、応援を連れて戻ってきてくれるかもしれないと言う拙い可能性と、それと同じくらい信用出来ないマリア姫が殺され掛けた時に情緒不安定になり、逃走したと聞く。だが……とてもではないが、それで大丈夫と思う事など出来る訳も無かった
「心眼。それはあまりに楽観的過ぎないか?」
俺でも思う。希望的観測に楽観的観測、正直に心眼らしくないというと心眼は苦笑するような素振りをしながら
【私でも突発的遭遇であそこまでの化け物と戦う羽目になれば、混乱もする。それともこのままうりぼーに乗って逃げるという手もあるぞ?】
うりぼーに乗って逃走。それは確かに1つの手段だと思うが、周囲から聞こえてくるワイバーンの鳴き声に逃げきるのは無理だと言うのも判っている。俺達の援護をしてくれていた弓兵部隊が砦に戻り、カオスのじーさんとマリアを連れて戻ってくるまで耐える……これも実用的ではないだろう。だが他に手段も無いのも事実だ
「それで行きましょう。広い場所の方が森の中からの不意打ちとか、森を燃やされて逃げれないって事にもなり難いし……」
条件は不利すぎるけど、逃げるのも無理なら迎え撃つしかない。と固い口調で言う美神さん……魔女がまた情緒不安定になるのを祈るしかないという最悪すぎる条件だが、それしかない。草原に出るとワイバーンが逃走経路を塞ぐように滞空しているのを見てうりぼーが立ち止まる。うりぼーの上から降りて、武器を構えているとゆったりとした歩みで竜の魔女が森から姿を見せる。
「さて、追いかけっこはここまで……我が憎しみ、我が恨み。思い知ってもらいましょうか」
俺達を見て獰猛な笑みを浮かべる竜の魔女と、その声に呼応すかのように吼えるワイバーン。死ぬかもしれない恐怖を感じながらも、気持ちだけでは負けないと俺は震えながらも竜の魔女を睨みつけるのだった……
「少しは反撃したらどうです?どうせ死ぬのですから、勇敢に戦った方が死に際も輝くと言う物でしょう?」
まぁ次の瞬間に殺しますがとエガオで言う竜の魔女。笑ったり、怒ったり、無表情になったり、情緒不安定と言うレベルではない。まるで、1つの肉体に複数の精神……多重人格のような印象を受けた
「っはははははははははッ!!!!」
そして再び急に笑い出したと思った瞬間。矢のように駆け出してくる、反射的に横に飛んでその突進を交わす。地面をえぐりながら止り、振り返ると同時に旗を槍のように振るってくる。その攻撃の先は美神さんだ
「ちっ!!くううううっ!このおッ!!」
ドクターカオスから貰った槍で旗を受け止めるが、当然受け止めきれず美神さんの身体が大きく弾け飛ぶ
「蛍!美神さんを頼む!!!」
「判った!」
地面に叩きつけられ転がっていく美神さんに駆け寄る。こんな時シズクがいてくれれば、治療して貰えるのにと思いながら肩を掴んで抱き起こす
「大丈夫ですか!?」
「な、なんとか……直撃したら流石にやばかったわ」
荒い呼吸で返事を返す美神さん。私も含めだが、その顔には濃い疲労の色が浮かんでいる。直撃すれば間違いなくその瞬間に柘榴になる、掠っただけでも致命傷になりかねない相手との近接戦闘は精神の疲労が凄まじい
「ひっ!ひいいいっ!死ぬ!これは死ぬ!!!」
「死ぬ死ぬ言うならさっさと死になさいよッ!!!」
栄光の手とドクターカオスから貰った剣で旗を必死に受け止め、いなし、防いでいる横島を見て驚いた
「対応してる……」
私と美神さんは風を切る音や、訓練や除霊の経験で何とかあの嵐のような攻撃に対応出来ていた。だが私や美神さんよりも戦闘経験が劣る横島が対応出来ている、その事に驚かずに入られなかった。
【右の薙ぎ払い!振り下ろし!そのまま後退ッ!!】
心眼のサポートがあったとしても、私や美神さんではああは行かないだろう。どうしても声を聞いてから反応するというタイムラグがある、それに心眼のサポートは複数の攻撃のうち数回を当てているに過ぎない。それ以外の攻撃を回避しているのは、横島の純然たる実力が大きい。
「みむうっ!」
「ぴぎーッ!!」
「くっ!ええいっ!!鬱陶しい!!」
Gジャンのポケットから顔を出した、チビとうりぼーの電気ショックとビームに竜の魔女が舌打ちしながら後ずさる。横島も荒い呼吸を整えながら後退してくる。幾ら反応出来るとは言え、攻撃が当たればその瞬間に死ぬ。その極限状態での戦闘は横島の精神をかなり削っているだろう……
「横島君!」
「……うっすッ!!!」
美神さんの言葉に力強く返事を返した横島は額の汗を拭い、再び竜の魔女の方に向かって走り出す。恥ずかしい話だが、私と美神さんではあの近距離で戦うことは出来ない。元々が中距離の戦闘を得意としているから、あそこまでの近距離は対応できない
「タマモ。幻術仕掛けてくれる?ここら辺全域に」
「コン!」
竜の魔女から撤退することは考えられない。ならばここら辺一体に幻術を仕掛け、ワイバーンの視界を誤認させ、一瞬の隙を突いて逃げる。その一か八かに賭けるしかないのだろう
「蛍ちゃんは私と一緒に横島君の援護をするわよ」
一箇所に留まらず常に移動しながら、状況に応じて必要なサポートを行う。それは口にするよりも遥かに難しいだろうが、横島にかかっている負担を考えれば、無理。なんて言える訳が無い、私は背中に槍を背負い、霊体ボウガンに矢を装填しながら、判りましたと返事を返すのだった……
状況は最悪だ、竜の魔女と名乗る英霊と思われる女。その強さは神魔に匹敵していた、今の装備も不足している。仲間もいない、この状況ではどう足掻いても勝てるイメージが湧かない。
「は……はっ……はっ……」
横島君の体力と集中力の限界も近い……今のうちに何とかして打開策を考えないと
「本当よく粘るわね!!!」
大振りの旗の一撃を叩き込もうとしたその瞬間。手にしていた霊体ボウガンの引き金を引く
「ちっ!」
「くっ!」
魔女の舌打ちと横島君の舌打ちが同時に響く、私と蛍ちゃんの放ったボウガンを弾くのに左手で剣を抜き切り払う。その一瞬だけ、旗の速度が緩まった、横島君はその隙に頭を抱えて、旗の下を潜り抜けることで命中するはずだったその一撃を避けたのだ
「あ、ありがとう……ございますっ!!」
ふらつきながら立ち上がる横島君。剣はとっくに砕け、今は両手に栄光の手を作り出して対応しているが、その腕が震えているのには気付いていた……極度の筋肉疲労に、栄光の手が明暗を繰り返している。もう横島君に栄光の手を維持するだけの霊力が無いのは目に見えている
「よく頑張ってるわね。でも、何時まで耐えれるかしら?」
右手に旗、左手に剣を握った竜の魔女の嵐のような攻撃が始まる。横島君を鬱陶しいと判断しているのか、旗と剣の攻撃は横島君1人に集中している。その隙に背後から攻撃しようにも……目の前に黒い火花が散るのを見て、慌てて飛びのく。その一瞬で先ほどまで私がいた場所が巨大な黒い炎の火柱に飲み込まれる
(攻守共に、隙がまるで無い)
防御力はさほどではないのだろう。だから霊体ボウガンと破魔札を避ける素振りを見せている、だがその圧倒的な攻撃力。それが強固な守りとなっている……
「蛍ちゃん!これッ!」
私の持っていた霊体ボウガンの矢を蛍ちゃんに投げ渡す。横島君ももう限界が近い、私には横島君ほどの動体視力も反射神経も無いが、むざむざ弟子が殺されるのを見ているわけには行かない。
「ぎっ……く、くそ……」
風船がはじけるような音と共に横島君の両手の栄光の手が消える。栄光の手を維持する霊力が尽きたのだ
「よく頑張ったわね、さぁ、首を切りましょう。おさらばよ」
左手の剣が横島君の首に向かって振るわれるその瞬間。首から下げた精霊石のペンダントを引きちぎる
「精霊石よッ!!!」
「ちっ……まだ抵抗しますか、鬱陶しい」
今手持ちで最大の純度を誇る精霊石の結界はその一撃を防いで見せた。だがその一撃を防ぐだけで精霊石の結界は完全に砕け散った……その桁違いの攻撃力に化け物めと心の中で叫ぶ
「す、す、すみません……ま、まだ……」
「もういい!それ以上は命に関わるわッ!!」
まだやれますと言おうとしていた横島君の言葉を遮って叫ぶ。横島君はとっくに限界を超えている、これ以上は命に関わる
「はいはい、お涙頂戴って訳ね?ま、どうでもいいけど?」
私と横島君のやり取りを見てくだらないと断言し、邪悪な笑みを浮かべた竜の魔女
「全員殺してしまえば、それで済む事ですから」
そう笑った竜の魔女の身体から凄まじい霊力が放たれる……これは、宝具!?逃げようにもうりぼーは力尽きており、巨大化することは出来ない。
「美神さん!私の分の精霊石を!」
蛍ちゃんが精霊石のペンダントを投げ渡しながら、駆け寄ってくる。私の2個と蛍ちゃんの1個……純度はさっきのものよりも劣るが、それでも普通の除霊ならば十分すぎるが……
(これでも耐えれるかどうか……)
ただの攻撃でさえ耐え切れなかった。とても宝具を耐え切れるとは思えないが……やるしかない!
「心眼!結界の構築を手伝って!」
【判ってる!】
私1人ではあの攻撃を防ぐ結界を精霊石を使ったとしても、作り上げることが出来ない。心眼のフォローを頼むが……遅かった
「これは我が……「コーンッ!!!」
宝具が発動しようとした瞬間。タマモが炎を放ったのだ、集中が削がれれば、宝具の発動を妨害できる。だが妨害するにしても、その炎はあまりに弱々しかった……
「こんな……こんな……炎……?」
嘲笑う表情が一瞬無表情になった次の瞬間。私は思わず耳を塞いだ
「っぎゃあああああ!!頭……頭が痛いッ!!!っあああああああああああーーーーーーーッ!!!!!!!」
頭を両手で抱え、草原をのた打ち回る魔女。そのあまりに豹変に私だけじゃない、蛍ちゃんや横島君も困惑の表情浮かべた
「痛い、いたいいたい……ああああ!!痛い、痛いいいッ!!!!熱い!苦しいッ!!!……神よ、何故……何故私を……見捨てたのですか……私、私私私はあ……フランス……フランス……あああああああーーーーッ!!!!!」
そう叫んだ竜の魔女は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。ここから見ても気絶しているように見える……だが竜の魔女は聞き捨てならない台詞をいくつも叫んだ、熱い、苦しい、神、フランス……
「まさか!?」
その叫んだキーワードと少女。その2つからあの英霊の正体が判った、だがそれはどうしてと言う困惑を私に与えた。だってありえない、聖人と言われる英霊が何故と、一瞬硬直した。だが後で私は後悔した、困惑している時間があるのなら、精霊石の結界で拘束するなり、武器を取り上げてしまえば良かったと……
「「「「ギガアアアアアアア!!!!」」」」
「しまっ!?」
自らの失態を理解した時。全てが遅かった、上空から降下してきた銀色のワイバーンが気絶していた竜の魔女を連れて、空へと飛び上がる、人1人抱えているからスピードも高度も低い。今なら打ち落とせる、そう思ったのだがそうはさせないと私達を取り囲んでいたワイバーンがいっせいに動き出す
「不味いッ!」
疲弊した今これだけのワイバーンの群れと戦うことは不可能。ここまでかと思ったその時
「総員構え、撃てええええええ!!!!!」
「「「「オオオオオオーッ!!!」」」」
騎士団長の勇ましい叫び声と逃走した弓兵部隊の怒声が響き、森の中から大量の弓が放たれる
「援軍……来てくれたのね!?」
正直私達はお外様だ、応援に来てくれるという保証は無かった。だがこうして助けに来てくれたのを見ると私達の事を仲間だと思っていてくれたことが判り、助かったと言う安堵の気持ちが胸に広がるが、心眼の鋭い声に状況はまだ悪いままだと悟った
【横島の意識が無い、休ませなければ大変なことになる】
ガープとの戦いの直ぐ後に、この戦いだ。横島君の疲労は私や蛍ちゃんよりも遥かに蓄積していた事を失念していた。本人が元気そうにしているから、大丈夫なのだと思ってしまった
「タマモ!幻術を!蛍ちゃん!横島君をお願いッ!」
「ガアアアアアアア!!!」
雄叫びと共に突っ込んできたワイバーンの口に破魔札を叩き込んで起爆させる。口の中で破魔札が爆発した事でもんどりうって倒れる。それでもまだ大量のワイバーンが降下してくるのだが
「コーンッ!!!!」
タマモの鳴き声が響くと、ワイバーンがふらふらと前後感覚を失ったのか、動きに精細が無くなる。幻術に囚われたであろう今がチャンスだ
「うりぼー!大変だと思うけど、横島を運んでッ!」
「ぷ、ぴゅぎゅう……」
蛍ちゃんの声で横島君が限界で意識を失っているのだと判った。うりぼーが苦しそうに大きくなり、横島君をその背中に乗せて走り出す。蛍ちゃんは反転して、ボウガンを放つ、狙ったのか、運が良かったのか。それはワイバーンの目を貫き、激痛に暴れるワイバーンが仲間を巻き込み、巻き込まれたワイバーンも同じように暴れ仲間割れが始まった。そしてそこに弓兵部隊の弓矢の雨が降り注ぎ、ワイバーンの翼の皮膜を射抜く
「蛍ちゃん!私達も撤退するわよ!」
何時までも仲間割れも、弓兵部隊の矢も続かない。今この好機を逃す訳には行かない、蛍ちゃんに逃げるわよと叫び、先行し走っていたうりぼーの後を追って森へと走る
「はいっ!」
弓兵の弾幕によってワイバーンを退けているが、それも何時までも続かない、弾幕をすり抜けてワイバーンがその牙をむいて襲ってくる
「くっ!鬱陶しい!」
「シッ!」
もとよりワイバーンは強敵だ。それを体力も装備も消耗しきった今の状態で戦える訳が無い、マリアが合流し、弓兵部隊が再度弾雨を降らしてくれる事を期待するしかなかった……だが徐々に、徐々にワイバーンが迫ってくるのを見て、逃げ切るのは無理だと判断した
「うりぼー!先へ行って!こっちがある程度は食い止める!」
これ以上は逃げることが出来ない、一番重症の横島君だけでも先に避難させようと思い、立ち止まって必死に応戦したのだが……マリアは間に合わなかった
「こ、コーンッ!!!!!」
「ぷ、ぷぎーーーーーッ!!!」
タマモとうりぼーの悲壮な鳴き声に振り返った時。私と蛍ちゃんの視界に飛び込んできたのは、月を背中に降下してきたワイバーンの1頭が意識を失っている横島君をその脚で掴み上げ、空へと飛び去る姿だった……
リポート16 竜の魔女 その5へ続く
今回はここまでです。次回は焦燥仕切った蛍や美神、ヌルなどの視点で話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い