GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は勿論前回の続き、やっと出たウィスプの中間フォーム「グレイト」その脅威の能力を書いて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その10

 

 

リポート16 竜の魔女 その10

 

全身から霊力を放つ横島君の新しい姿。金の装飾が施された肩当てや、篭手を装着しているその姿は力強さに加え、一種の美しさを持っていた……

 

「美神さん……今の横島の霊力は……あのガープに匹敵していますね」

 

「ええ。間違いないわ」

 

複製とは言え最上級神魔に匹敵する霊力を放っている。それに横島君の身体に吸い込まれた15の光も気になる……眼魂と言うのはどこまで私達の常識を超えていくのだろうか……そう思うのと同時にまた見ていることしか出来ない事に苛立ちを感じる。師匠なのに何も出来ない、それは自分の不甲斐なさを突きつけられている様で情けなく、そして惨めな気持ちになる

 

「命!燃やすぜッ!!!」

 

「来い!お前の力を見せてみろッ!特異点!横島忠夫ッ!!!!!」

 

私達には見ていることしか出来ない、神魔の戦いが目の前で始まりを告げるのだった……

 

 

 

 

私の命を刈り取りに来る刃……それを紙一重で交わす。その鋭い剣筋と殺意に満ちた一撃は十分な脅威だった……

 

(本体でも危ないかもしれないな)

 

今の横島の力は複製の私と互角。そして更に気合が乗っている……それは十分に脅威と思える勢いを持っていた。だが魔法使いに近接を挑む、それは魔法潰しの基礎戦術……それが通用するのは低位の魔法使いまでの話だ

 

「つまらんぞ、横島忠夫」

 

指を鳴らす。それだけで魔力弾が複数形成され横島に殺到する、慌てて横島が迎撃に入る。だが勢いに任せ間合いを詰めていたその足が止ると言う事は……私の魔法の詠唱を防ぐ事が出来ないと言う事だ

 

「そら防いで見せろ」

 

「!」

 

氷の散弾を再び発動させる。ジャンヌが居たから防げた攻撃……その姿が無い今。防げるはずが無い、そう思っていた……

 

(なんだ!?)

 

だが横島の突き出した右手に霊力が集まるのを見て、嫌な予感がした。計算が狂う……そんな嫌な予感は的中した。霊力が球体に形成される……それは緑色の眼魂だった。横島はそれを即座にベルトに押し込みレバーを引く

 

「変身!」

 

【カイガン!ロビンフッド!ハロー!アロー!森で会おうッ!!】

 

散弾が形成されるまでの僅かな隙。本体ならタイムラグ無しだが、分身体ゆえのタイムラグ……それは横島にとって十分な隙だった……手にした剣も霊力で変化した弓矢へと変貌を遂げていた……

 

【ダイカイガン!ロビンフッド!オメガドライブ!オメガストライクッ!!】

 

「はあああああああッ!!!」

 

横島の姿が弓を引きながらぶれる。その姿は7体……散弾が放たれると同時に分身した横島の手から霊力の矢が放たれる、凄まじい衝撃音と共に氷の散弾と霊力の矢がぶつかりお互いに消滅していく

 

(しまった……)

 

こんな能力は想定外だった。砕け散った氷と砕けた霊力の矢で視界が奪われる

 

「変身ッ!」

 

【カイガン!武蔵!決闘!ズバッと!超剣豪ッ!!】

 

霊力と氷の霧を突っ切って横島が飛び出してくる。だがその姿はまた変わっており、着物を纏った武者と言う姿をしていた

 

「おおおおおおおッ!!」

 

(速い!)

 

勢いに任せた先ほどの一撃とは違う。計算され、回避する事も、防ぐ事も難しい嵐のような連続攻撃が放たれる……袈裟、逆袈裟、薙ぎ払い、突き……どれか一撃でも受ければそこから一気に押しつぶされる圧力を持った一撃……

 

(だが甘い)

 

その一撃は鋭く、そして早い。だが神魔決戦、魔界統一を前線で戦いきった私にとっては十分に対応可能な攻撃だった……両手に魔力を集め、それを駆使し攻撃を弾く

 

「くっ!!」

 

(ちっ……この程度か……)

 

苦しそうに振るわれる刃を迎撃し、内心舌打ちする。最初は驚かされたが、足りない。殺意が、憎悪が足りない。これならばマタドールと戦った姿の方が圧倒的に上だろう、スペックは上昇していても横島自身の殺意が足りない上に……

 

(やはりか)

 

振るわれる刃を白羽取りの要領で受け止め、がら空きの腹に蹴りを叩き込む。鋭く、重い攻撃だが……それは横島の意思ではない。眼魂の意思だ、脅威である私に自動的に反応しているだけの攻撃……そこに横島の意思は無い。あのグレイトと言う黒い眼魂の出力に振り回されているだけである……これでは横島の力を推し量ると言う私の目的を達成する事は出来ない

 

(ならばやるだけだ)

 

横島の観察をして私が得た結論は横島は自分の痛みよりも他人の痛みに過剰に反応する。それが大事な存在であればあるほどだ

 

「おおおおおおッ!!」

 

振り下ろされた2刀を片手の魔力の剣で受け止め、鍔迫り合いの体勢になる。だがこれは私がそうしているだけだ、その気になればこんな振り回されているだけの剣など弾き飛ばすのは容易い

 

「私が崩壊するまで時間を稼げば良いなんて甘い考えをしているんじゃないだろうな」

 

複製体で魔神体になれば複製体は私の魂の出力に耐え切れず崩壊する。いまだ研究段階であるから仕方ない事だが、崩壊による決着など私からしても願い下げだ。ここまで時間と労力を掛けた作戦がそんなくだらない事で終わるなど認めれる訳が無い……だが私に残された時間が僅かなのも事実……だからこそその短時間で出来る事は全て行う

 

「だからこそこんなのはどうだ?」

 

横島の目の前で拳を握り締める。私が地面に刻んだ魔法陣に再び光が灯り……

 

「「っきゃあああああッ!!!!」」

 

その範囲の中にいた美神達の悲鳴が響き渡る。殺すつもりは無い、殺して連れ帰ると口にしたが殺してしまえばその霊力は消える。生かしたまま連れ帰るのが最大の目的だ。だから殺さない程度に調整した電撃で美神と蛍が悲鳴を上げて崩れ落ちる

 

「ガープウウウウウウウッ!!!!」

 

「そうだ!怒れ!もっと憎めッ!!!」

 

私の名前を叫んだ横島の気配が変わった。顔に浮かんでいる瞳が黄色から真紅に染まり、今まで闇雲に振るわれていた攻撃が鋭く、そして容赦の無い物に変わっていく……そうだ、これだ。これが見たかったのだ

 

(これが横島忠夫の本質だ)

 

横島自身は優しく、そして本来なら敵対する種族同士の橋渡しとなりえる素質を持っている。だがその本質は違う、橋渡しになるのは孤独を恐れる心の現われ、そして横島は自分の痛みには耐えれるが、他人の痛みには耐えられない。それは自分が心を許した相手が消えてしまうことに対する恐怖心……つまり横島忠夫の本質。それは狂おしいまでの他人からの承認願望と、孤独を恐れる心だ

 

(良いぞ、良いぞ……)

 

私を生かしていては自分の仲間が死ぬ。その恐怖を認識した横島の魂の出力が恐ろしいほどに上昇していく……しかも私が望んだとおり闇に向かっての上昇だ……

 

(そうだ!堕ちて来い!横島忠夫ッ!!)

 

横島の魂は人間にしては稀有な無色な魂。それは容易く黒にも、白にも染まる……殺意と憎悪は毒のように……水にたらした墨液の様に……横島の心を蝕む……横島を止める者はいない。このまま堕ちきってしまえ……

 

「……ったく……おちおち……寝て……も……いられ……ない……じゃない……」

 

ガープも横島も気付かない所で、血反吐を吐きながら立ち上がる何者かの姿があるのだった……

 

 

 

 

【止めろ横島!!止れ!止るんだ!!!】

 

脳裏に心眼の制止の声が響くが、それを無視する。ガープ、こいつは駄目だ。生かしていてはいけない、ここで殺さないと……消し去ってしまわないと……皆が傷つく、いや死んでしまうかもしれない。だからこいつはここで殺すんだ!!!

 

「アアアアアアアアアアッ!!!!」

 

この時横島の頭の中から目の前のガープが複製である事実や、美神や蛍が意識を取り戻しかけているその光景すら視界に入らなかった……ガープがいたら自分の世界が壊れてしまう。その事に囚われ思考が完全に停止してしまっていた、怒りと恐怖に身を任せガープに向かってガンガンブレードを振り下ろそうとした瞬間……

 

「これ……は憎悪によって……磨かれた……我が……魂の……咆哮……!吼え立……てよ……我が憤怒ッ (ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)ッ!!!!!!」

 

ガープと横島を分断する巨大な炎の壁が現れガープと横島を強引に引き離す……

 

「こ……これは……」

 

「……何やってんのよ……この……馬鹿ッ!!!」

 

突然現れた炎の壁に足が止った直後。横殴りの拳が顔面に叩き込まれる、だがそれは弱い力で殴った本人がよろめいていた……そして俺を殴りつけた人物を見て俺は思わず叫んだ

 

「ジャンヌさん!う、動いたら「黙れッ!!」ッ!!」

 

血の気の失せた青白い顔。石床に血の跡があり体を引き摺ってここまで来たのが判る……目の下に隈があって、口からは吐き出した血の跡……触れただけでも倒れそうな……満身創痍なんて言葉なんて生温い……何時死んでもおかしくないそんな状態のジャンヌさんに俺は完全に気圧された……

 

「……あんたがッ!こっちに来てッ!……どうするのよッ!!!あんたは……こっちに来たらいけないッ!!」

 

パーカーの襟を掴んで文字通り血を吐くようにして叫ぶジャンヌさん

 

「あんたが……優しい……馬鹿だからッ!……っうっ!!!げほっ!げほっ!!!」

 

咳き込んだジャンヌさんの口から赤黒い血液の塊が吐き出される。咳き込みながら倒れるジャンヌさんの身体に手を伸ばすが……それはジャンヌさん自身に振り払われた

 

「わ、私は……自分を!……取り戻したッ!!!……そんな!お前がッ!!こっちに来てどうするッ!!!」

 

肩で息をしながら俺を見つめるジャンヌさんの瞳は激しい怒りの色が浮かんでいた……

 

「お前は!こっちに来るなッ!!!……あんたは……あんたに……復讐者は……似合わないッ!!!」

 

震える手でパーカーの襟を掴んだジャンヌさんが俺を自分の方に引き寄せる……その身体の何処にそんな力があったのかと思うほどに強い力だった……

 

「あんたの敵はッ!!!……私が……倒して……あげるから……ッ!!!……お前はッ!!!優しい……馬鹿で!いなさいよ……ッ!!!」

 

「言いたい事はそれだけか?人形?」

 

見たことの無い優しい表情で笑うジャンヌさんの胸にガープの放った矢が突き刺さる。その光景を目の前で見て、再び目の前が真紅に染まり掛けるが……優しい馬鹿でいろと言うジャンヌさんの言葉が脳裏に響く、殺せと駄目だと言う声が何度も何度も脳裏に響く……

 

【落ち着け!横島!自分を保て!!!】

 

心眼の声が響くが、殺せという声も駄目だと言う声もその両方が正しいように思えて……頭が変になりそうだった

 

「そら、どうした。憎いだろ?私を殺したいだろう……来い。それともお前は……自分を救ってくれた相手の仇を取りたいとも思えない薄情者なのか?」

 

ガープの挑発の声……それが挑発だと判っている。なのに沸きあがる怒りを抑えきれない……ッ拳を握り締めて立ち上がろうとした時……

 

『だから……駄目だって言ってるでしょうが……』

 

ジャンヌさんの声と共にその身体が弾け、目の前に純白の眼魂が現れた……

 

「はは。所詮は人形……その魂さえも紛い物か」

 

純白の眼魂は確かにジャンヌさんのイメージではない、だけどこれは間違いなくジャンヌさんの眼魂だ……それを両手で握り締める

 

(ありがとう……ございます)

 

彼女がいたら俺は冷静になれた。そうで無ければガープの思い通りに良い様に操られていただろう……

 

「力を……貸してください」

 

【アーイッ!ガッチリミナー!ガッチリミナー!】

 

ベルトに純白の眼魂を押し込む、現れたパーカーゴーストはやはり白銀に輝くパーカーだった。それを見てガープが嘲笑う

 

「お前の知るジャンヌ・ダルクなど存在しない。あれは紛い物、存在などしないのだ!!!」

 

違う、例えそうだとしても……俺にとってのジャンヌ・ダルクは彼女しかいない。俺は絶対に彼女を忘れない!

 

「変身ッ!」

 

【カイガン!ジャンヌ!駆けるは戦場!救国聖女ッ!!】

 

白いパーカーが装着されたその瞬間。ベルトから黒い炎の壁が飛び出しゆっくりと迫ってくる……不思議と恐怖は無かった。大丈夫だという確信があった

 

【テンガン!ジャンヌ!振るえよ反旗ッ!竜の魔女ッ!!!】

 

純白のパーカーが一瞬で闇のような黒いパーカーへと変化する。そしてガンガンブレードとトカゲデンワが合体し、霊力で出来た竜の紋章が刻まれた旗が目の前に現れる。それを片手で掴み俺を囲んでいる炎を弾き飛ばす

 

「行くぜガープッ!!!!」

 

怒りの炎は確かにまだ俺の胸の中に燻っている。だが今までのような気が狂いそうになる激情ではない……もう怒りに身を任せ、暴れたりしない。ジャンヌさんが望んでくれたように……俺は優しい馬鹿でいよう。怒りに身を委ねたりしない、俺はジャンヌさんにそう誓うのだった……

 

 

 

 

魔法陣から放たれた電撃で意識は残っていたが、身体が痺れ、動く事も声を発する事も出来なかった。ガープが横島を挑発しているのも、ジャンヌが横島を正気に戻したのもただ見ている事しか出来なかった……

 

「は……ははははっ!!!偶像を現世に呼び戻したのか!!!はははははははッ!!!!お前はどれだけ規格外の化け物だ!このガープが認めてやろう!!お前は正真正銘の化け物だ!人間でありながら神の境界まで足を踏み入れてきたとッ!!!」

 

横島の力を見て狂ったように笑うガープ。横島が何をしたのか、見ていただけの私と美神さんには理解出来なかった……ただ白いパーカーが漆黒へと変化した……その瞬間を目の当たりにしただけだ。まだ痺れている身体を歯を食いしばり必死に起こす

 

「おおおおおッ!!」

 

炎を纏った霊力の旗……武器とは言いがたいそれが恐ろしい速度で縦横無尽に振るわれる。黒い線がガープに襲い掛かっているようにしか見えない

 

「はははッ!!良いぞ!良いぞ!!!もっとだ!もっと見せろ!お前の力の底をッ!!!」

 

追い詰められていると言うのにガープは楽しそうに笑い続ける。身体も崩壊し始めているというのにそんな事はどうでもいいと言わんばかりの態度だ

 

「……っくう……」

 

美神さんが苦悶の声を出しながらやっと身体を起こす。上半身を起こす事ができたが、まだ足は痺れていて動ける段階ではない……ダメージを与えつつ、動きを奪う。それも私と美神さんが感電死しないように威力を調整した魔法……その魔法の効果を見るだけでガープの脅威がどれほどの物なのかと思い知らされる

 

「喰らえッ!!!」

 

ガープが両腕を振り上げると燃えるXの文字が横島へと高速で迫る。

 

「効くかぁッ!!」

 

ベルトにマウントしていた剣でその文字を切り裂き、恐ろしい勢いで間合いをつめ飛び膝蹴りをガープに叩き込む

 

「ぐっ!……だが調子に乗りすぎたな!」

 

ガープの腕が横島の肩を掴み、ガープの身体から恐ろしい電気が溢れ出す

 

「う!うわああああああ!!!」

 

悲鳴と共に横島の身体が大きく弾き飛ばされる。壁に叩きつけられ、ゆっくりと崩れ落ちる

 

「……その姿は……攻撃力と瞬発力に特化する反面……恐ろしいほどに脆いな」

 

「うっせえ……」

 

ガープの言葉にうるさいと横島が叫び、ゆっくりと立ち上がるがその足元はおぼつかず。今にも倒れそうな位ふらふらしていた……たった一撃のダメージとは思えない程に横島はダメージを受けていた。それはガープの言葉が真実と言う証だった……

 

(防御を捨てた攻撃性能……)

 

防御に使われるリソースを全て攻撃と移動速度に回したんだ……だからこそのあの攻撃スピードと破壊力。反撃される前に倒す、圧倒的な破壊力で相手を押しつぶす。それがジャンヌ眼魂の能力なんだ……その事に気付いた時冷や汗が流れるのを感じた。ガープの攻撃力は並じゃない、それを防御が低下している今横島が受けて無事でいられる姿が想像出来なかった……

 

「……チ……ジカン……ガ……」

 

饒舌に喋っていたガープの身体が急激に崩れ、その言葉も途切れ途切れの片言になる。複製体がついにガープの力に耐え切れなくなったのだ

 

「……コレデ……オワランゾ……オマエのチカラノ……ソコヲ……マダ……ミテ……ナイ!!」

 

右腕が崩壊し、左腕も崩壊していると言うのにガープは左腕から魔力の刃を伸ばし。溶けている翼を大きく広げる……最後の一撃に出ようとしているのは明らかだった

 

「俺もこのままお前を逃がすつもりは無い!」

 

【ダイカイガン!ジャンヌ!オメガドライブ!】

 

横島の手にしている剣から漆黒の炎が溢れ出す……お互いに最後の一撃を繰り出そうとしているが判り、両手を組み祈る。横島が無事に帰ってくるようにと……それしか出来ない自分が情けなくて、みっともなくて……でもそれしか出来ないから……

 

「これは憎悪によって磨かれた我が魂の咆哮!」

 

「ガッ!!!!」

 

飛び立とうとしていたガープよりも先に横島の技が発動した。地面を走る漆黒の炎にガープが包まれ、そして地面から突き出した槍がガープの身体を完全に拘束する

 

「吼え立てよ我が憤怒ッ (ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)ッ!!!!!!」

 

飛び上がった横島の身体が漆黒の炎に包まれ、流星のような一撃が崩壊しつつあるガープの上半身を跡形も無く消し飛ばすのだった……

 

 

 

 

城の床を砕きながら着地する。地面を滑った部分が煤け、先ほどの蹴りの火力の凄まじさを物語っている

 

【くっくくく……見たぞ……貴様の力……ははは!!ははははっはははっ!!!!】

 

複製だから倒してもガープは消えない、狂ったような笑い声が響き……その笑い声が徐々に遠くなっていく。完全にその声が聞こえなくなった時……ベルトからオヤスミーと言う声が響く

 

「うっ……」

 

急に身体から力が抜けた。膝を着いて荒い呼吸を必死に整える……心臓が恐ろしいほどに脈打つのが判る

 

【霊力の相性が悪かったんだ】

 

「はは……そうだとしても……俺は構わない」

 

俺はあの人に救われたから、例えジャンヌさんの霊力が俺との相性が悪いとしても……俺は使うだろう。俺は……味方だって約束したから……絶対にジャンヌさんを裏切らないって約束したから……震える足に活を入れて立ち上がる

 

「横島。大丈夫!意識はハッキリしてる!?気分は大丈夫!?」

 

蛍と美神さんがガープの電撃の痺れから回復したのか、駆け寄ってくるのが見える。2人が無事なのに安堵していると、手にしたジャンヌ眼魂から光が溢れる……

 

「ジャンヌさん……」

 

半透明のジャンヌさんの姿が目の前にあった。ジャンヌさんは俺と美神さん達を見て小さく笑い

 

『ありがとう横島。お前の話は楽しかったわ』

 

作られた、歪められた存在で……偽物だったけど……私は少しでも自分の意思で生きたわと笑う

 

「違う!ジャンヌさんは……偽者なんかじゃない!」

 

手を伸ばすが触れることが出来ない、幽霊なのに何で……ジャンヌさんは仕方ないと笑い

 

『だって私は作られた幽霊よ。普通じゃないの……このまま天国にも地獄にも行けずに消えるでしょう』

 

「そんなッ!」

 

ジャンヌさんが居てくれたからガープを退ける事ができた。それなのに、どうして……振り返り美神さんを見るが、美神さんは悲痛そうに首を横に振り

 

「上位の神魔は魂を操り存在を歪める。そうなれば私達に出来る事はないわ……ただ見送るだけよ」

 

助けて貰ったのに何も出来ない……それが悲しくて空しくて……言葉に出来ない感情が胸の中を埋め尽くす

 

『良いの、楽しい夢を見たんだから……夢はいつか終わる物。それが今』

 

余りに時間が短かったけどねと笑うジャンヌさんの笑顔は柔らかく、そして優しい笑顔で

 

『でも夢は何時か続きが見れるかもしれないでしょう?だから……またどこかで会いましょう』

 

さよならではなく、またねと笑うジャンヌさんに俺はいつの間にか流れていた涙をGジャンの袖で拭い

 

「また……どこかで」

 

『ええ。またね、あんたの事……そんなに嫌いじゃなかったわよ』

 

最後にもう1度笑ったジャンヌさんの身体は光の粒子となり、弾けて消えた……音を立てて落ちた旗と白い眼魂……それだけがジャンヌさんが俺達の目の前に居たと証だった……

 

「横島。ごめんね、何も出来なくて」

 

「良い、良いんだ。またって約束したから……」

 

蛍や美神さんは悪くない、俺達よりも遥かに強いガープ相手では何も出来なくて当然……眼魂がなければ俺だって何も出来ないのだから……

 

「ただ……俺は……ジャンヌさんに……色々見せたかった……」

 

俺の話を聞いて、興味深そうに顔を変える姿は歳相応の少女にしか見えなくて……怖い人って言うよりも、俺は可愛い人って思って……

 

「優しい人だったんだ……悪い人なんか……じゃ……無かったんだ……」

 

「うん……うん……」

 

黙って話を聞いてくれる蛍。もう頭の中がぐちゃぐちゃで何も判らない……悲しい、それしか頭に浮かばない……

 

「なんで……どうして……こんな事になるんだろう……」

 

もしももしもガープが居なければ……難しいかもしれないけど、ジャンヌさんも俺達の時代に連れて帰ることが出来たかもしれない。彼女の知らない物を色々と見せれるかもしれない……そんな幻想を胸に抱いた。だけど……それはもう叶わない夢で……

 

「ああ……っ!うああああああ……ッ!!!!」

 

地面に落ちた旗を見て、もう耐える事が出来なかった……俺は涙を流しながらその場に蹲る。蛍が何も言わすに頭を抱いてくれたけど……それでも悲しくて、辛くて……蛍の華奢な身体を抱きしめて涙を流し続けるのだった……

 

 

リポート16 竜の魔女 その11へ続く

 

 




ジャンヌ消滅とガープ「複製」の撃退となりました。次回で過去編は終わり、色んな視点で細かく話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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