GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート17 嵐を呼ぶ男 その4
除霊の依頼料で皆で豪勢な夕食を食べ、これからよろしくお願いしますと再びお願いしたのが2日前。そこからは怒涛の勢いで除霊の依頼が立て込み美神の事務所は毎日慌しい雰囲気に満ちていた……
「ぴーぎぴぎぴぎーぷぎぎー♪」
「みーむみーむみみーみむー♪」
ボーイの所で世話になりながら、私が感じたのはボーイには引力があると言うことだった。人も、獣も、霊も何もかもを引き寄せる引力……それがボーイにはある。
「のーぶーのぶぶーのーぶー♪」
「なんか皆ご機嫌だなあ」
自分の周りを歩きながら、楽しそうに歌う動物達を見てボーイは嬉しそうに笑う。年相応とは言いがたい、純心な子供のような笑顔だ。記憶の無い私でも判る。ボーイ……横島の心はまるで水晶のように透き通っているのだと
「お兄ちゃん。お仕事無いの?」
「うーん。ごめん、ちょっと休憩中。またお仕事あるんだよ」
えーつまんないーっと頬を膨らませるアリスの頭を撫でるその姿には、父性のような物を感じる。精神性の物なのかは判らないが、ボーイには人を包み込む度量がある
(しかし面白いね)
ボーイの周辺を見ていれば判る。ボーイに想いを寄せるガールは多い……それなのにボーイはそれに気付かない、いや気付かないと言うよりも……
(吊り合わないとでも思っているのかナ?)
ボーイは非常に優秀な頭脳と独創的な発想を持ち合わせている。それなのにどうも自分の評価が低すぎるのだ……だからこそ自分が好かれる筈が無いとでも思っている節があるように見える
(天才と言える部類の人間なんだけどネ)
常人では理解出来ないし、思いもつかない独創的な発想……そして人を扱う才能も恐ろしいほどに高いし、これで自己評価が高ければ、優秀な指導者とだって成り得ただろう。
(この複雑な人間関係は見ていて面白いんだがネ)
人に好かれる才能を持つボーイの周囲はとても複雑だ。人間に、幽霊に、人なざる者。その全てに想いを寄せるガール達がお互いに牽制したり、喧嘩したり、協力したり。見ていて本当に飽きないのだが、動きが無さ過ぎて面白みに欠けるのだ。だから私はほんの少し、ほんの少しだけ……火種を投げ込んでみようと思ったのだ
【ボーイの好きな女性のタイプはどんな感じなのかネ?】
「うえっ!?」
素っ頓狂なボーイの声から少し遅れて、事務所の温度が下がった気がした。そしてガール達の目が言っているのだ……全てを聞き出せと……どうも私が軽い気持ちで投げ入れたのは火種などではなく、導火線に火がついたダイナマイトだと悟るまでそう時間は掛からなかった……
自称記憶喪失の老紳士「アーチャー」さんの放った一言で事務所の空気が一段冷えた気がした。と言うか実際に冷えてると思う、蛍ちゃんとか、おキヌちゃんとか、ノッブさんとかの目がギラギラと光っているように見える……と言うか私も興味があるし……だって今の横島君の好みとか全然判らないし……
(でも今の横島君の方が……素敵)
私の知っている横島君はスケベで馬鹿で、それでも優しくて、気がついたら側にいてくれるそんな人だった。今の横島君はチビちゃん達と暮らしているのが大きいのか、スケベと言う感じじゃなくて、優しくて思いやりに溢れていて……今と未来の横島君を比べたら悪いと思うけど、正直今の横島君の方が私は好きだ。感じとしては結婚して、子供が出来た後の横島君がこんな感じだった
「好きな女性……いや、ここで言う事じゃ【いやいや!ただのレクリエーションだヨ!深く考える事は無いんだ】
横島君から見えない角度で破魔札で脅されているアーチャーさんが慌てて駆け寄り、説得を試みている、横島君は私や蛍ちゃんを見てうーんっと唸っている
「みむ?」
「ぷぎゅ?」
「のぶ?」
「どしたのー?」
この事務所の雰囲気に気付いていないマスコット軍団とアリスちゃんが不思議そうに横島君に尋ねている。子供ってこういう時怖いと思う
【さぁ!ちょーっとした息抜きじゃないか!14時からまた交渉だろう?15分ほどのお遊びじゃないか!】
まぁそれくらいならっと横島君は呟き、うーんっと唸りながら
「やっぱり優しい人かな?」
……横島君の周りの女性は皆横島君に優しいと思うのだけど、あえてそれを言うのねと小さく呟く
【ほほう、優しいと来たかネ?ではボーイにとって優しいとは何かね?】
「え?うーん……俺が馬鹿した時に怒っても、解決策とかを一緒に考えてくれる人ですかね?」
今蛍ちゃんと沖田さんとシズクちゃんが小さく握り拳を作り、書類整理をしていたタマモちゃんが親指を噛み、おキヌちゃんのポルターガイストで植木鉢が浮いた……
「あいだ!?愛子さん、痛いんですジャー」
「あ、あら?ご、ごめんなさい」
私の意思に反して机が動いて、足に当たったタイガー君が悲しそうに言うのでごめんなさいと謝る。マリアさんが今度ドクターカオスと一緒に尋ねてくれると言っていたが、最近バタバタしているのか訪ねてくる気配も無い
(それは別にいいんだけどね)
前は机から離れる事が出来なかった。だから時間がかかっても、机からはなれる事が出来るならと思い我慢できる
【なるほどなるほど。では君は年上か包容力のある人が好きと言う事かネ?】
私がそんな事を考えていると、アーチャーさんが横島君に向けての質問を続けているのを思い出し、書類整理をしている振りをして、その会話に耳を傾ける。横島君の好みを知るのは私にとってもとても大事な事だからだ
「いや別に年上が好きってことじゃないと思うんだけど……」
【母性の象徴のあるなし「セクハラ禁止!」んぐふっ!?ガール、良い左だ。世界を狙えるネ!】
母性の象徴といった瞬間。蛍ちゃんが手にしたファイルを左手で投げつけた、ボクシングの選手のジャブを喰らったみたいに世界を狙えると笑うアーチャーさん。悪い人じゃないんだけど、いまいちこの人の考えている事が判らない
【横島さんは年下とか同年代は嫌いなんですか?】
【そこじゃよね!ワシ、幽霊だけど、年齢凄い事になってるよ!シズクと同じロリ婆……「……誰がロリ婆か」ノッブウウウウウ!?!?】
ファイルで悶えているアーチャーさんの横を通り、おキヌちゃんとノッブちゃんが詰め寄り、シズクちゃんの怒りを買ってノッブちゃんが窓の外に弾き飛ばされた
「いやどうなんだろう?小さい子とかは助けてあげないとって思うけど」
「んー♪」
アリスちゃんの頭を撫でながら横島君がそう呟く。基本的に横島君は善人なので、困ってる人を見捨てるとかは出来ない人種だと思う
「確かに横島さんは年下の人に優しいですけん」
「そりゃ自分よりも年下の子が困っていたら助けてあげないとって思わないか?」
思います。でもワッシは女子は怖いですけんと笑うタイガー君。横島君はでも大分慣れて来てるんじゃないか?と言う、確かに今の事務所は女性の比率が多い、前までのタイガー君なら逃げていたと思う
【ふむ……自分よりも幼い者を護らないとっと君はそう思うのかな?】
アーチャーさんが眼鏡をかけ直しながらそう尋ねる。なんか一々そういう素振りが様になっているように見えるから不思議だ
「そりゃ自分よりも年下とかは助けてあげないといけないって思う物じゃないんですか?」
横島君の問いかけにアーチャーさんはその通りだヨと笑いながら、ふむふむと頷いている
「あ、アーチャーさん。その動きとか教授って感じですね」
【教授?なんだろう?その響き嫌いじゃないヨ】
アーチャーよりよっぽど私らしいねと笑う。じゃあ今度から教授って呼びましょうか?と横島君がのほほんと笑うと、アーチャーさんもそっちがいいねっと楽しそうに笑う。確かにアーチャーさんは学校の先生とかに雰囲気が似てるから、教授って言うのも何か納得できる
【それよりもですよ!横島君は年上は嫌いではないんですよね!?】
「いや、そういうのは考えたこと無いし……」
【年上はアウト・オブ・眼中とかな……かふっ!!!】
エキサイトした沖田さんが吐血して倒れた。ええっと……今まであんまり話したこと無いけど、この人も横島君の事が好きなのかな?幽霊なんだけど……あ、でもそれを言うと私は九十九神なんだよねと心の中で呟く
「興奮したら駄目だって、うりぼー、枕」
「ぷぎゅ」
横島君の指示でうりぼーが枕をずりずり引き摺りながら運んでくる。横島君は枕を沖田さんの頭の下にねじ込む
【ううう……横島君から圧倒的な父性を感じます】
「年下に父性感じてどうするんだよ」
沖田さんの言葉に横島君が苦笑しながら告げる。確かに年下に父性を感じるとか駄目人間一歩手前のように思える
【ふむではボーイは年下、年上関係なく、優しい人が好みと言う事かネ?】
アーチャーさんの言葉に横島君が首を傾げると、アーチャーさんは宜しいっと笑い
【ではいくつか質問をしようかな】
まぁまだ時間があるから良いですけどと言って横島君は了承したのだが、そこからのアーチャーさんの質問は好みのタイプを聞いているとと言うよりも、横島君の人格を調べようとしている。私はそう感じるのだった……
アーチャーさんと言うか、教授と呼んで欲しいと言ったアーチャーさんの目を見ていると、なんか急に眠くなってきた……ふわふわっと気持ち良いなんかそんな感じ……
【ボーイ。君は誰が好きとか判らないと言ったね?】
その言葉に頷く、でも俺的には皆好きなのだ。みんなでわいわい楽しく過ごすのが好きで……誰が1番好きとか、そう言うのは本当に良く判らない
【君はきっと判らないんじゃない、判りたくないんだ】
そうなのかな?……首を傾げると教授の目が更に深い光を放つ、俺の心の奥底まで覗き込んでいるような……そんな感じがする
【君はきっと孤独を恐れているし、誰かから認められたいと思っている。そうであるはずだ、ご両親は君に優しかったかな?】
「ううん、怖かった」
子供の時のことを思い出せば、怒られた記憶、叱られた記憶ばかりを最初に思い出す。その記憶を思い出し終わった後にやっと楽しかった思い出を思い出す事が出来る
【君は認められたいという気持ちが強いのだよ。承認願望とも言えるかな?】
「承認……願望?」
深い水の中にいるようなそんな感覚の中。教授の言葉だけがやけにクリアに聞こえる……
【そう承認願望だ。認められ、頑張っていると言って欲しい。だから君は自分よりも年上に惹かれる、だが母を見ているわけじゃない。自分よりも優れている人間に認めて欲しいと言う気持ちがあるからだ】
そう言われるとそうなのかな?っと思う。頑張って、頑張って、よくやった。頑張ったわねって言われたいって思う……
【だがそれであると同時に、君は自分よりも幼いもの、弱い物を助けたいと思う優しい心がある。それは自分が辛い思いをしたからだろう……だから君は誰にも優しいのだよ】
それが悪い事とは言わないよ?優しい事は十分素晴らしい事だと教授の声が聞こえたと思ったら、パチンっと言う音に一気に意識が覚醒した
【ボーイ。そろそろ行かないと、待ち合わせに遅れるよ?】
「え?あ!?嘘ッ!!俺寝てた!!!」
時間は13時35分。急いで向かわないと間に合わない、慌ててネクタイを締めなおし俺は鞄を手に事務所を飛び出すのだった……
ばたばたと出て行った横島。その後の事務所では
【ボーイに想いを寄せるガールは大変だ。彼はそうそう自分の気持ちを自覚しないだろうね】
アーチャー改め教授と名乗るようになった老紳士は、慣れた手つきでコーヒーをカップに注ぐ
「……お前、横島に催眠術をかけたな?」
【ただのメンタルケアだよ。自分でも出来るなんて思わなかったけどネ!】
昔こんな事をしたような気もするヨ!と教授は笑い。うりぼーにもたれるように眠っているアリスへと視線を向け、机の上にコーヒーのカップを置いて、アリスに自分が着ていたジャケットを着せる
【彼はねぇ。今のこの心地よい場所を壊す気がないのさ、だから好きとかが判らないんだよ】
正しくは判りたくないんだろうねと教授は笑い、コーヒーに口をつける。だが穏やかに笑っているのだが、その目の力は蛍やシズク、そしてノッブ達を圧倒するほどに凄まじい意志を持つ瞳だった……
【まぁ頑張りたまえよ。彼は間違いなく、最優良物件だと思うヨ?……ぶべらっ!?】
だがニコリと笑った瞬間。その正体不明の圧力は消え、教授の顔もこの状況が面白くて仕方ないという様子で、コーヒーを手にしている教授に蛍達が投げつけた辞書や本が命中したのは言うまでも無いだろう……
部下から提出された横島君達の除霊の結果の資料に目を通す。令子ちゃんがいなければ、録に除霊も出来ないと僕は考えていた。冥華さんが一枚も二枚も噛んでやっと除霊などが出来ると考えていた……
(甘かったか)
予想を遥かに超える優秀な成績を横島君は叩き出して見せた。自分では力が足りないからと都内の有数なGSに力を借り、友人のアイドルの事務所の力を借り、素晴らしい成績を上げ続けている。本人は交渉などを行っているのだが、あの歳では舐められまともに交渉できないのが普通なのに、彼は依頼主との交渉も素晴らしいらしい。現に部下に依頼を出して、横島君との交渉をさせてみたのだが
『とても17歳とは思えませんでしたよ。アフタケアや持続的な除霊になる場合の料金プランとかも丁寧に説明してくれました』
彼が事務所を経営すると思うと、オカルトGメンも危ないかもしれないですねと言う感想だ。それは横島君の人徳の高さを示しているだろう。しかし1週間と言う短期間で利益を1.4倍にしたその手腕は正直驚くべき物がある
(こちらに引き込もうと思っていたのだが……難しそうだな)
横島君の経験では事務所の経験は無理だと思い、冥華さんの提案に乗ったのが失敗だったかもしれない……何か失敗をし、フォローする形で横島君に僕は敵ではないと思ってもらうつもりだったのだが完全に後手に回ってしまった
「少しばかり、手荒な事になるかもしれないが……別のアプローチと言うのもありかもしれないな」
神代琉璃と六道冥華が横島君の存在を隠すのに努力していたが、今回の事でそれは全て無駄になった。そう、横島君は優秀すぎたのだ。令子ちゃんがいなくても、恐ろしい成果を上げすぎていた……
「たとえオカルトGメンに来てくれなくても、彼は護らないと」
出来ればオカルトGメンに来て欲しい。そうすれば僕の下で令子ちゃんと共に守る事が出来るから、でもそれでも来てくれないなら来てくれないで、護る方法はいくらでもある
「彼も、令子ちゃんももっと強くならないと」
力だけではこの業界を生き残ることは出来ない、むしろ、横島君の有能さが出てしまった、ここからが勝負なのだ。移籍希望や、助っ人の依頼、それにヘッドハンティング。これから横島君には老獪な相手との駆け引きが要求される、力ではない、頭脳を使った騙し合いだ。これは純粋に経験が物を言う
「憎まれ役も買うしかないか」
もっと危機感を持って貰う為には憎まれ役を買うことも覚悟しないといけないな
「西条さん。書類整理終わったわよ」
「お疲れ様、令子ちゃん」
書類を持ってきた令子ちゃんに笑いかけながら、心の中では横島君を追い詰める一手を考えている。僕もずいぶんと狸になったものだと心の中で呟くのだった……
腕時計を見て、腰掛けていたベンチから立ち上がりゆっくりと歩き出す。そして3分ほど歩いた所で前から歩いてきた人物が私に気付く
「あれ?神宮寺さんじゃないですか?依頼帰りですか?」
「御機嫌よう。横島」
横島の散歩のコースは把握している。この時間にこの周辺にいれば横島と鉢合わせになる事は判りきっていた
「こんにちわー♪」
横島と手を繋いでた幼女が手をぶんぶんと振りながら挨拶をしてくる。見た目は少女だが……
(ゾンビ……いえ、これはゾンビと言えるのですか?)
呼吸をして、感情表現が出来る。確かに生きてはいないのでゾンビにカテゴライズされるだろうが……生きているゾンビ。言うならばゾンビの上位種。なんで横島がそんな存在と一緒にいるのだろうかと思いながらも、ここで揉め事を起こしては待っていた意味が無くなる
「こんにちわ」
出来るだけ平然を装い、少女に挨拶を返すとにぱあっと嬉しそうに笑う
「このお姉ちゃん。黒おじさんと赤おじさんに似てる!」
「え?そうなの?」
黒おじさんと赤おじさん……何もかは判らないが、恐らくは最上級神魔なのだろう。少し話を聞いて見たいが、恐らく魔界にいてもこの少女を見ているだろうから、好奇心を満たすのは止めておいたほうが得策だろう
「ぷぎ」
「みむう!?」
チビが止めに入るが、それを無視してとてとてと近づいて来たうりぼーの頭を撫でる。ぴぎーっと言う嬉しそうな声がする
「ちょっと色々考える事があって散歩と言う所ですわ。横島はずいぶんと疲れていそうですわね?」
「ははは……ちょっとやつれましたかね?」
乾いた声で笑う横島だが、その顔にはかなり濃い疲労の色が見える。作っておいて正解だった
「これをあげましょう」
「これは?」
青い霊薬をいれた瓶を手渡すと横島は首を傾げる。美神と蛍は横島に霊薬の説明すらちゃんとして無いのでしょうかね?
「体力と霊力を回復させる霊薬ですわ。疲れているようなのでどうぞ」
横島の霊体は何回か調べているし、横島の性格や霊力のバランスも当然知っているので、これは完全に横島のみに調整した物だ。
(……横島以外じゃこれ飲めないんですよね)
普通の人間には効力が強すぎる。私と美神はギリギリOKだと思うが、普通の相手では飲めない物だ
「ありがとうございます!本当神宮寺さんは優しいですね」
「ありがとーお姉ちゃん」
何の疑いも、不安も感じていない。純粋な信頼、それを横島から感じる。それは私が知りえないものであり、もっとも私から縁の遠いものでもある
「事務所の経営と言うのは難しいですが、これも勉強。失敗しても責任は貴方にはありませんわ、もっと気楽にやるべきですわよ」
ドクターカオスなり、あの弓兵を名乗る胡散臭い爺なりを矢面に立たせれば良いのだと遠まわしに言う。すると横島は頬を掻きながら笑い
「心配してくれているんですね。ありがとうございます!俺は全然駄目って判ってますけど、自分で出来るなりに頑張ってみます!」
……そうじゃない、横島。お前は全然駄目等では無い、頑張り過ぎていると言う事を言いたかったのだ……
(上手く言葉に出来ないって言うのは何てもどかしいのでしょうか)
私の世界と言うのは私のみで完結していた。そこに突如入り込んできた横島、それは私にとって初めての経験であり、どうすれば良いのか判らないと言うのが本当だ。私の場合、横島の気持ちなどを考えずに一方的に、それも押し付ける形にしかなりえない。他人とどう接すれば良いのか判らないからだ。何か言いたいのだが、言葉になら無い。嫌な沈黙が広がりかけたそのとき
「みみー」
「ぴぐう!」
「あ、すいません。チビ達が散歩を再開したいみたいなんで、俺はこれで」
「じゃねーお姉ちゃん」
うりぼーに引かれて歩いていく横島。その背中に手を伸ばしかけて、手を閉じて
「何か困った事があれば連絡を、すぐに助けに行きますわ」
私の言葉に横島は振り返り、嬉しそうに笑いながら
「はい!ありがとうございます!」
そう言ってうりぼー達と共に公園へと足を向ける。散々待っていて、色気も何も無い会話で終る
「へたれー」
「!?」
突如聞こえてきた声に振り返ると柩はくひひっと笑っていた。見られていた、今のを……
「良し、殺しましょう」
「なんでさ」
あれは私の恥となる。ならばそれを見ていた柩を抹殺しようと思ったのだが、柩は私の手をかわしてリズミカルにスキップしながら
「これでまた横島のくえすへの信頼度は鰻上り、なかなかあざといねえ?」
「え?」
「ん?」
柩の言葉に驚きの声を上げると、柩も同じような声をしたと思うとくすくす笑い出し
「近くにいる人間よりも少し離れた人間の言葉が強く響くこともあるって事だよ」
あーあー……ボクはどうやって横島の信頼度を上げようかなあっと言いながら、人ごみの中に消えていく柩。もしかしなくても、私が横島を待っていたように柩も横島を待っていたのだろうか?そして私が声を掛けてしまったので、声を掛けるのを諦めた?元々横島へは好意的で、個人的にプレゼントを貰うような間柄のようですし
「警戒するべきかも知れ無いですわね」
予知能力をフルに生かして横島と接触しようとするであろう柩を警戒することと、もう少しフレンドリーな会話をするにはどうすれば良いだろうか?と思いながら、私はその場を後にするのだった……
「なんか神宮寺さんが霊薬くれたんだー。あの人本当に良い人だよなあ」
「「「せやな」」」
「なんで大阪弁?」
事務所でくえすから貰った霊薬を嬉しそうに見せる横島に、蛍達が何とも言えない表情をしていたのは言うまでも無い……
埃だらけの座敷を音を立てながら進む男の姿があった。埃や蜘蛛の巣が張っている屋敷に眉を吊り上げながら、一番奥の部屋の扉を乱暴に蹴り開ける
「鷲羽!貴様何故電話に出ない!!!」
その部屋の真ん中で埃だらけの部品に埋もれながら、眠っている無精髭を伸ばした痩せ型の男に怒鳴る
「おんやまあ、ボースー久しぶりですねぇ」
その怒声で目を覚ましたのか、欠伸をしながら男が身体を起こす。だらしなく着崩した着物が更に訪ねて来た男の怒りに火を注ぐ
「昨日から電話したのに何故電話に出ない!」
「ああ?あーすんませんねえ。色々と立て込んでいたんですよ、んでボス?何の用事ですかね?」
ふわあっと欠伸した男に更に眉を吊り上げるが、ボスと呼ばれた男はまだ胡坐をかいて欠伸をしている鷲羽を見下しながら
「横島忠夫の身辺調査及び、戦闘能力の測定。人形使い鷲羽道真(わしゅう・みちざね)これをお前に命じる」
「あれ?そいつは神代の巫女さんと六道の大狸の秘蔵っ子でしょうに、争うつもりですかい?陰陽寮の当主様?」
鷲羽の前にいる人物こそ、24歳と言う若さで現陰陽寮の当主となった天才「躑躅院」の人間だった
「GS協会のあの女と大狸と真っ向から事を構えるほど馬鹿ではない、だが今警護が薄い、今のうちに調査しておいて欲しいんだ」
「まぁ良いですけどねぇ?」
鷲羽は気だるそうに立ち上がり、自身を怒鳴っている男に向けて、親指と人差し指で輪を作りながら
「それでお代はいかほどいただけるんで?」
とにこやかに告げたのだが、その目は獣のように爛々と光り輝いているのだった……
リポート17 嵐を呼ぶ男 その5へ続く
西条、アーチャーから教授に名を改めた老紳士に続き、新たな嵐を呼ぶ男の参戦です。鷲羽のモデルはからくりサーカス「阿紫花英良」ですのであしからず、それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い