GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート17 嵐を呼ぶ男 その5
美神がオカルトGメンに出向し、横島が所長代理をしている。私も柩も最初は助っ人を考えていたが、琉璃にストップを掛けられてしまった。フォローの出来る人材が少ないので何かミスをしないかと心配に思い、暫く情報収集をしていたのだが、入ってくる情報は良い情報ばかりだった。昨日の疲れた表情から、何か失敗でもしているのかと思い、心配になって調べたがどれも成功していて。純粋な疲労で横島はやつれていたようだ
「しかし本当に規格外の男ですこと」
六道の大狸がバックについているから失敗したとしても、六道がバックアップするだろう。まぁその代わりに美神は莫大な貸を六道に作る事になるが、それでも横島と蛍の経歴には傷がつかない。六道も失敗する事を前提に考えていたでしょう、私も何かミスをするのでは?と心配していたのだが、横島は優秀だった。知り合いに声を掛け、助っ人を頼み。そしてその助っ人の能力を生かせる場所に配置し、自身は依頼人との交渉を務める。口で言うのは簡単だが、それは事務所を経営している人間ならその苦労を知る事が出来るだろう
「横島の母親の血ですかね」
横島の母親、旧姓紅百合子。なんでもスーパーOLとして、恐ろしいほどの経営手腕や、業務のプランニング能力を持っていたという。その血を引いているのですかね?と呟きながら、私は取り寄せた資料に目を向けた
「さて、あの胡散臭い英霊の正体の特定くらいはしておかないと」
横島の家に転がり込んだあの記憶喪失だという英霊。自身を弓兵と名乗ったと言うことは弓や銃に関係する英霊と言う可能性もあるが、正直それはそこまで信用しているわけではない。こうして取り寄せた資料もどこまで頼りになるかなんて判らない
「ですがそれもフェイクと言う可能性もある」
そもそも記憶喪失なのだ。そんな男の言っていることを鵜呑みにする馬鹿はいない
「ヨーロッパ系で晩年に死んだ男……」
あの外見年齢から考えて、50代だろう……となると学者と言う線が最有力だろう。趣味や何かで銃を嗜んでいてアーチャーを名乗っている……しかしヨーロッパ系の学者となると恐ろしい数の人物が候補に挙がるだろう。しかし私の感覚ではあの老人は正道の英霊ではない、恐らく反英霊に属する俗に言う悪党と呼ばれるタイプのような気がする……そう感じているのは美神も同じだろう。信長や牛若丸とは、根本的に存在が違うと感じるからだ……それが反英霊とは言い切れないが、その可能性は高い
「ドクターカオスが手掛かりですかね」
私で調べるよりもヨーロッパの魔王の異名を持つドクターカオスならば、もしかしたら知り合いで心当たりがあるかもしれない。そんなことを考えていると、電話が鳴る
「もしもし?神宮寺除霊事務所ですが」
『神宮寺!横島が!!横島がいなくなった!!!シズクとか、タマモも場所を特定出来ないって!力を貸して!!!』
受話器越しの大声に眉を顰めながらも魂が繋がっている、シズクやタマモが発見出来ないと言うのは相当な異常事態だ
「事務所の結界を解除しておきなさい!転移で飛びますわ」
蛍の判ったと言う返事を聞くのと同時に私は転移で美神の事務所へと飛ぶのだった……
横島は昼過ぎに依頼主からの電話があって、打ち合わせ場所が変わったと言って出かけて行った。打ち合わせ場所が変わるという事は珍しい話ではないので、気をつけてと行って見送ったのだが、それから2時間後依頼主の方が尋ねて来て
「すいません、お約束の時間をずらしていただきありがとうございました」
「え?」
その言葉に思わずそんな声が出た。依頼主の初老の男性は首を傾げながら
「そちらの従業員だと言う、痩せてる無精髭の方にそうお伝えしたのですが?」
その言葉に異常事態だと言うことに初めて気付いた。横島の所に来た電話と、依頼主の所にやって来たという男……
(やられた!)
横島をどこか別の場所に連れて行かれた。その事に気付きながらも依頼主との依頼料の話し合いをしないわけにはいかず、シズクとタマモに目配せをしてから応接間で依頼主との話し合いを済ませ、事務所の外まで見送って応接間に戻る
「……くそッ!!どこのどいつだ!!横島の場所を特定出来ない!」
「魂で繋がってるのに、何で判らないのよ!」
シズクとタマモが顔を歪めながら叫ぶ。私はシズクとタマモがいれば横島のいる場所を簡単に見つける事が出来ると思っていた
「判らない!?それどういう事!?」
どうしてタマモとシズクで場所が特定できないのか?まさかガープに浚われたのかと言う考えが脳裏を過ぎる
【ボーイは東京内にいる事は判っている。だが場所の特定が出来ないそうだ……まるで強力な結界に阻まれているようにと……】
教授が沈鬱そうな表情で呟く。神族のシズクの探知と最上級の妖怪であるタマモの探知を拒む結界……それがどれほど規格外かその一言で察する事が出来た
「ピートさん!唐巣神父に連絡してください!タイガーさんはエミさんに!おキヌさんは美神さんを呼んで!マリアさんとテレサさんはドクターカオスを!私は琉璃さん達に電話するわ」
早く横島を見つけないと大変な事になる。事務所の中にいる面子にそれぞれの師匠を呼んでくれと頼み、受話器を手にするのだった……
「横島君が何者かに襲撃を受けているのは間違いないわね」
それから15分ほどで美神さん達は事務所に来てくれた。琉璃さんだけは来る事が出来ないけど、協会の職員を捜索に回し、自身も探しに出てくれると折り返し電話を掛けて来てくれた
「東京にいるのは間違いないが、場所を特定出来ない……結界と言うのは直ぐに思い浮かぶが……」
「……私とタマモの探知をすり抜ける結界など信じられない」
唐巣神父の言葉にシズクがぶすっとした表情で告げる。シズクとタマモは横島への加護がある、それを妨害する結界なんてそう易々と準備出来るとは思えない
「神魔でしょうか?」
「それは無いワケ。神魔ならもう横島は連れ去られてるワケ」
私の呟きにエミさんがそれは絶対に無いと断言し、その言葉の後にドクターカオスが口を開く
「シズクとタマモはそれぞれ有名すぎる。それだけに特化すれば、人間でも2人の感覚を欺く事は出来る筈じゃ」
「水神と九尾ですものね、確かに特化すれば私でもその感覚は妨害出来ますわ」
現に1度やって見せたでしょう?と神宮寺が涼やかな表情で告げるが、足を小刻みに動かしている所から、かなり焦っているのが判る
【……駄目だ、横島の魂に移動出来ない】
【となると相当厳しいの……】
【もう手当たり次第探すほうが早いんじゃないですか!?】
【落ち着け馬鹿、お前直ぐ吐血してダウンするんじゃから】
【じゃあ私が!】
【お前も霊力尽きたら消えるじゃろうが!!動くな馬鹿者!】
一縷の望みを託し心眼に横島の所に移動出来ないか試して貰ったが、それも駄目だった。ノッブが心眼の言葉に頭を抱えながら呟き、慌てて駆け出そうとする沖田さんの服を掴んで止め、牛若丸を止める。なんと言うかとてもぐだぐだだった……
「だーっ!!ここでぐだぐだ話し合っても埒があかねぇ!!!探しに「黙ってなさい」へぐろっ!?」
このままここにいても埒が明かないと言う伊達の顔面にクシナさんが裏拳を叩き込み黙らせる、陰念は顔が物凄い引き攣っている
「メドーサ様は居なかったから神魔の協力は得れない。となれば人海戦術しかないと思うけど……どうかしら?」
クシナさんがそう告げるが、人海戦術で全然違う場所を探していては意味が無い
「横島さんはそんなに遠くに移動になってないっていましたジャー」
【近くまでタクシーで行って、あとは歩くつもりって言ってたわ】
タイガーと愛子さんが追加で情報をくれるが、それもあやふやな物だ。依頼主事務所の周辺か、それとも除霊現場の周辺かが判らないからだ
「今現在都内で霊力の反応は感知できません。戦闘にはなってないと思いますが……」
「でもなんかざわざわした気配を感じるよ……何これ……」
レーダーで都内を調べていたマリアさんとテレサさんが顔を歪めながら呟く、霊力を察知して横島を見つけてくれようとしていたと思うのだけど、結界でその痕跡さえも隠されていると可能性が高い。時間が経てば経つほど横島が危ない。それが判っているから焦りばかりが募ってくる
「ある程度場所を絞り込んで動くか、琉璃君からの情報を待って動くか……」
「唐巣先生、それでは手遅れになる可能性があります」
場所を絞り込んだほうがいいと唐巣神父が言いかけるが、美神さんがその言葉を遮る。確かにここまで念入りにして横島を隔離したのだ、手を拱いていては手遅れになる可能性が高い
「依頼主の家、除霊した現場周辺をしらみつぶしに潰すしかないね。僕の車は生憎2人乗りだ、先に行くよ!」
西条さんがそう言って事務所を飛び出し、美神さんもバンのキーを握り締め
「雪之丞、陰念、蛍ちゃん!タマモ!行くわよ!時間が無いから!」
「私はバイクで行くわ、雪之丞、陰念。美神さんに迷惑を掛けるんじゃないわよ」
クシナさんの言葉にうっすと返事を返す2人を見ていると、チビとうりぼーを抱き抱えたタマモが脇を駆け抜けていく、私は机の上の心眼を首に巻き
「横島の気配を感じたら教えて!」
【言われるまでも無い。急ぐぞ!!】
ヴァンパイヤミストで唐巣神父と共に窓から飛び出したピートさん。タイガーを連れて、事務所を出て行くエミさん。幽霊のノッブと沖田さん、教授にシズクは既にその姿を消し、神宮寺なんて真っ先にその姿を消している。私も階段を駆け下りていく、美神さんの後を追って走り出すのだった……
ボロボロの廃倉庫の中のドラム缶の影に隠れ、必死に息を整える。闇の中から聞こえてくるカチャカチャと言う音が不気味さと恐怖を煽る……
(くっそお……なんだよ、あれは!!!)
依頼主の使いと言う男からの電話で、料金の受け取り場所が変わったと聞き。指定された場所に来た……来た当時は綺麗な物流倉庫に見えていたのだが、中に入ると同時に一瞬でボロボロの廃倉庫へと変わった。そしてそれから俺はある化け物に追い回されていた
『キチキチキチ』
小刻みに響く時計の様な音……近くにいると悟り息を殺し、身を潜める。ドラム缶の影から通路の様子を窺っていると、俺の目の前を何かが通過していく……それは漆黒の体と8本の足を持つ蜘蛛のような異形の姿。だが生き物と言う感じはしない……生きているという感じがしないのだ
(なんだあれ……)
こうして近くで見れば見るほど訳が判らなくなる。見た目は生き物なのに、生命の気配を感じない……悪魔なのか、それともガーゴイルなのか……俺にはそのどちらなのか特定が出来ない。だがその化け物を観察していた時、首筋に静電気が走ったような感覚がした
『キュイ!』
「くそっ!新手かよッ!!!」
闇の中から飛び出てきた青い鳥。回転する嘴を俺に向けて降下してくるのを見て、頭を抱えてドラム缶の影から飛び出す。鳥は回転する嘴でドラム缶をまるで紙のように簡単に引き裂く……そしてその音で蜘蛛の化け物が音を立て俺の方へ突進してくる
「くそッ!!!」
栄光の手で手摺を掴み飛び降りる。栄光の手が伸びて1階のドラム缶の上に足が乗ったのを確認するのと同時に、栄光の手を解除して走り出す。蜘蛛の移動は基本遅く、俺を見つければ猛烈な勢いで突進してくる。口からは霊力の網を吐き出す、これは蜘蛛の糸同様身体につくとそう簡単に外す事が出来ない
(でもそう思い込むのは危険か)
蜘蛛の糸は透明な物だ。あの様にあからさまに光るのは明らかに罠と思える
(心眼がいてくれれば)
俺も霊視は出来るが、心眼ほどの精度は無い。それに心眼がいなければベルトも出す事が出来ない……
(シズクも来ないしな)
廃倉庫の中には雨水が溜まっている部分もあり、シズクが見つけてくれるのでは?と言う淡い期待を抱きながら声を掛けたが反応は無かった。出口にも向かったが、何かに弾かれ外に出ることは出来なかった……つまり俺はこの廃倉庫の中に閉じ込められ、そしてシズク達も俺を見つけれないと言う絶望的な状況である事が判った。外に出るにはあの蜘蛛か、鳥かそのどちらかか、もしくは両方を撃破しなければならないのだろう
(栄光の手、勝利すべき拳、陰陽札に霊波刀……やれるか?)
心眼のフォローも蛍も、美神さんもシズクもいない。完全な俺1人で、俺よりも強い相手2体との戦い……心臓がばくばくと脈打つのが判るが……やるしかない、俺は覚悟を決めネクタイとジャケットを脱ぎ。近くに落ちていた棒や本を使い、後ろを向いて座っているように見せかけ逆方向へと走り出すのだった……
姿隠しの札で姿を隠しながら、横島忠夫の戦力分析をしていた。恨みは無いが、これも仕事。強いては金の為だからと割り切る
(まぁ殺しはしないから、安心しな、ボーヤ)
今回は戦力分析、殺せや浚えという命令ではない。だから殺しはしない、操っている人形も適当に組み上げた蜘蛛と分析及び、録画をしている鳥だけだ。
(眼がいいねぇ……)
蜘蛛の吐き出す霊糸は絡めとれば、人間は愚か、魔獣や妖獣さえも簡単に動きを封じる事が出来る。適当に組み上げた中でもこのからくりだけは本気で作ったのだが、見えない糸、見える糸を組み合わせているのに、それをことごとく交す
(攻撃力だけじゃ無しと……)
GS試験での圧倒的な攻撃力こそ聞いていたが、どうも横島の場合直接的な戦闘力よりもその眼と瞬発力。そしてそのスタミナを警戒するべきに思えてくる。かなり多角的に追い回しているのだが、それでも疲れた素振りを見せない。これには正直おどろか……っちい!!左手の霊糸と繋がっている手袋を振り上げ、蜘蛛の関節を一時的に解除する。これで立体的な姿を維持できず、蜘蛛が床に倒れ付し、その上を火球が通り過ぎていく
(ふーやっべえ……油断したぜ……それにしても陰陽術か)
陰陽寮の血統だけで威張り腐っている馬鹿共よりも精度も術を組み上げるまでも圧倒的に早かった。再び指を動かして、関節を入れなおすが、今のはやばかったな……
「五行陰陽道……ったく、ボスと同じかよ。ちくしょうめ」
陰陽術には様々なバリエーションがあるがその中でも平安時代の天才術師「高島忠助」のみが使いこなし、婚姻を結ぶという話が出た「躑躅院」に伝えた五行陰陽術。陰陽術は全ては陰陽五行思想によって構築されているが、高島の術はその中でも特異な形態だったと聞く
「こりゃ相当な相手か?」
霊力の篭手、奇妙な球体という話は噂で聞いていたが、陰陽術まではとは知らなかった。六道と神代が隠していたのは明らかだし、何よりも……ボスよりも出力が強い。しかも術式も違う
「ボスも熱を上げそうだよ、全く」
今は碌な陰陽師が陰陽寮にいない。大体がボスが作った札を使い、除霊する連中ばかりだ。だからこそ若いボスに対する反抗心なども無い……だがそれは全てボスの負担へと直結している。それなのに若いボスを蔑ろにする連中には正直むかっ腹も立つと言う物……
「っととと……やばいやばい」
両手の手袋に意識を集中させ、指一本一本を丁寧に動かし蜘蛛を操作する。壁越しに横島が叫んでいるのが聞こえるし、鳥の見ている光景があっしの目には映っている
(霊波刀に伸び縮みする霊力の篭手……なるほどねえ)
横島の戦闘スタイルは大分読めてきた。伸縮自在の霊力の篭手と霊波刀を組み合わせ、近~中距離に特化した戦闘スタイル。そこに陰陽術による全体支援……
「急急如律令ッ!風精招来!我に宿れッ!!」
無地の札に親指を噛み切りだした血で素早く文字を刻み、詠唱を唱える横島。その呪文を聞いて、あっしは思わず叫びだしそうになった
(おいおいおい!!マジかッ!?!?)
陰陽五行は木、火、土、金、水からなる思想であり、陰陽術の術の基本だ。その中で風は木に属するが、気難しい精霊でありボスはもっぱら木による治癒などを扱う。風精を呼び出し、憑依させ加速力を上げる……これはボスでも無理な術だ。六道の大狸が隠し通そうとした理由も判る。六道も高島に縁のある家系……あっし達よりも先に横島が高島の転生者と言う考えに辿り着いていたのだろう
(やっべえ……これはマジでやばいぞッ!!!)
必死に糸を繰るが、元々適当に組み上げた人形だ。あっしの操りの術についていけていない、鳥の支援も合わせて何とか捌いているが、徐々に差し込まれているのが判る。適当なところで引き上げる事を考え始めた時
「横島君大丈夫か!?」
「西条……さん!?どうしてここが!?」
横島の問いに直感だ!と叫ぶ長髪の男。オカルトGメンの西条輝彦の到着にあっしは心の底から溜息を吐いた。蜘蛛がぶっ壊されるのは確実……もっと手を抜いたからくりにすれば良かったと後悔したのだが、時既に遅しだと言うことに気付いてしまったから……
「しゃーねえ」
鳥だけでも回収しようと思い。鳥を回収するために右手の手袋を大きく動かすのだった……
霊感が囁くという感覚をずっと感じていた。それに突き動かされるように僕は車を市街地の中の廃倉庫へと向けた……数ヶ月前に除霊を済ませ、売却地になっているという場所。既に霊などは存在しない完全に浄化されたその場所に結界が張られているのを見て、霊剣ジャスティスを突き立て抉じ開けると中から激しい霊力の流れが噴出してきた
(これで令子ちゃん達もこの場所を見つけたはずだ)
これだけの霊力の噴出。令子ちゃん達なら確実に見つけてくれるはず、ジャスティスを結界から抜いて、中に入ろうとしたが
「これは!?」
ジャスティスを引き抜こうとすると結界が閉じてしまう。だが手を拱いていては……少し悩んだが、僕は懐の精霊石の弾頭を持つニューナンブを手に、結界の中に飛び込んだ
「くっ!このッ!!!」
『キチキチキチッ!!!』
横島君の怒声と耳障りな歯車の回る音。それを頼りに暗い廃倉庫の中を駆け抜ける、倒壊した機械の向こう側に横島君と蜘蛛のからくりを見つける。
(からくり人形……だと)
昔の道具使いが使っていた人形。特殊な加工を施し、悪霊等とも戦える人形。だがそれを繰る術は難しく、今では使う人間が居ない特別な除霊具……それと横島君が戦っている事に驚きながらも、何とかあの場所へ行く方法を考える。倒れた機械や、瓦礫で最短ルートは無理、かと言って遠回りしている時間は無い。その時天上からぶら下がっているクレーンを見つけ
「あれしかない」
階段を駆け上りニューナンブを懐に戻す。相当な高さだが、ここから飛んでクレーンの先にぶら下がり、機械の上に着地する。それしかない、後で思うがもっと他にいい方法が会ったのでは?と思ったが、この時は本当にこれしか思いつかなかった
「うおおおッ!!!」
手摺を踏み台にして思いっきり飛ぶ。両手を必死に伸ばし、クレーンを掴むとがくんっと身体が大きく揺れる
「くっ!!!」
それでも必死にクレーンの先にぶら下がり倒壊している機械を乗り越えると同時に手を放す
「はぁ……はぁ……」
さ、流石に今のは危なかったと呟くと同時に機械の上から飛び降り、倉庫内に反響する音を頼りに走り出す
「横島君!無事か!?」
「西条……さん!?どうしてここが!?
蜘蛛と霊波刀で鍔迫り合いをしている横島君を見ると同時に、蜘蛛の頭部目掛け、迷う事無くニューナンブの引き金を引く
『キリキリ!?』
頭部が大きく弾かれ、バランスを崩す蜘蛛を横島君が蹴りつけると音を立てて蜘蛛が倒れる
「こっちだ!早く!」
「っはい!!」
蜘蛛が倒れていたのはほんの数秒。直ぐに立ち上がり、横島君を追いかけて来る蜘蛛目掛け続けてニューナンブの引き金を引くが……
(やっぱりか!)
人形は悪霊や実体を持つ妖怪と戦う人形だ。霊波には恐ろしいほどに強いのは言うまでも無いが、物理防御も凄まじい。精霊石の銃弾を簡単に弾き飛ばす姿に焦りが湧く
「西条さん!これ!!」
横島君が倒れかけの機械に体当たりをしているのを見て、それで通路を塞ごうとしていると理解し、僕もその機械に体当たりをする。2人の体当たりで機械は倒れ、通路を塞いだが正直時間稼ぎにしかならないだろう
「た、助かりました……はぁ……はぁ」
座り込み荒い呼吸を整えている横島君の額には大粒の汗が浮かんでいる
「大丈夫かい?」
「な、なんとか……こっちの攻撃全然利かないしあれ何なんですか?化け物?妖怪?」
横島君の問いかけに操り人形のことを説明すると、そんなのもあるんですねと驚いた様子で呟いた後
「それで倒す方法とかってあります?」
「武器が無い」
ジャスティスでも力不足だ、もっと重量のあるハンマーみたいな武器じゃないとと言うと横島君は最後の札ですけどと呟き、指を噛み切って文字を刻み
「急急如律令ッ!土精招来!我が矛となれ!」
土……いや、石か!?石が盛り上がり幅広のバスターソードのような形になる
「これでどうですかね?」
「っ少し重いが……行けそうだ」
バスターソードを握り締め持ち上げる。かなりの重量があるが、これだけの重量があれば……
「しかし陰陽術をここまで使うとは、恐れ入るよ」
「ぶっつけ本番ですよ」
上手く行く自信も無かったですと言うが、それでもこの技量には正直感心する
「ではぶっつけ本番ついでだ。これを使ってみてくれ」
「け、拳銃!?」
「そうだ。僕がこの剣であの人形を破壊する、君には支援を頼みたい。出来るか?」
使い方は教えるというと横島君は少し考え込む素振りを見せた後。やりますと呟く
「では簡単に使い方を教える。それと君が囮になることも自覚してくれ」
横島君を狙っているのは明らか、横島君を囮にし、一撃で決める打ち合わせをする。横島君は不安そうだが、その目は強い光を放っていて……これなら大丈夫という確信があった
「くっ!このおっ!!」
ガン!ガンッ!!!と銃声の響く音が倉庫内に響く、それを僕は機械の上で見ていた。剣の重さはかなりの物で腕力で振り回すのは無理だ、落下による重力を利用しないととても振り下ろす事が出来ない
(いい眼をしている)
簡単にレクチャーしただけなのに、横島君の射撃は的を得ていた。これは鍛えれば射撃も十全に使いこなせそうだ
(今だ!)
銃弾を弾き飛ばし、横島君へと近づいた蜘蛛が前足を振り上げたのと同時に、機械から飛び降り
「でやああああああ!!!!」
斬るというよりかは押しつぶす、重力と剣の重さを利用した一撃を蜘蛛の胴体に叩き込む。めきめきと言う音を立てて、剣が胴体にめり込んでいく歯車やバネが剣のめり込んだ場所から飛び出し、蜘蛛は大きく1度痙攣するとその動きを止めた
「お疲れ様。とりあえずこの倉庫を『キリキリッ!!!』なっ!?」
頭部だけが胴体から分離し、その牙を僕に向けてくる。終わったと思っていたから、反応が遅れたその瞬間
「急急如律令ッ!炎よ!我が敵を喰らえッ!!!」
横島君の手から炎が打ち出され、頭部を燃やす。もう札はないって言っていたのに
「あはは……空中に血文字書いたら出来ました……俺ってもしかして天才?」
媒介をなしに陰陽術を使った。その事と背後から迫る敵に僕が気付かなかった……その2つを見た瞬間、一瞬意識が飛んだ
「ああ、お前は何時だって天才だよ。高島」
「はい?」
横島君の呆然とした声にふっと意識が戻り。僕は頭を振りながら
「とりあえず外で令子ちゃん達を待とう。頭痛とかは無いかい?」
大丈夫ですと返事を返す横島君を見ながら、今僕はなんと言ったのだろうか?無意識に口にした言葉なのでなんと口にしたのは覚えていない……だけど妙に懐かしいような……そんな風に感じながらふらついている横島君に肩を貸して、僕はその場を後にするのだった……
横島の戦闘力分析に来たが、あっしの評価は規格外としか言いようがない
「化けもんだなあ……こりゃボスも本気で動くなあ……っと」
「貴方……何者?」
この場を後にしようと思ったその時。背中に刃物を突きつけられ、ぱっと両手を挙げる。窓ガラスに反射した背後の人物を見て溜息を吐く
「こりゃ神代の巫女姫さんじゃないですかい?」
横島と西条の2人に意識を向きすぎて、背後に立つ人間に気付かないなんて、あっしも錆付いたもんですねぇ……
「……お前。どこの手の者だ」
たたきつけられる圧力と殺気……ボスよりも若いくせにGS協会会長なんて役職についているのも納得だ。雰囲気とかうちのボスによく似てやがる
「あっしは只のどこにでもいるぷーたろーでさぁ?」
ボロボロのジーンズと色褪せたシャツと、くたびれたジャケットを見せながら言うが、巫女姫の視線は服装ではなく、あっしの両手に向けられていた
「嘘言うな。その手袋……人形使いね」
その言葉に内心舌打ちする。この手袋を知っている人間は少ない、既に人形使いは殆どいないからだ
「まぁぱっとしないあっしですが、1つ誇りがあるんですわ」
「GS協会で聞いてあげるわよ」
「あっしは仕事をミスした事が無いんですわ、それがあっしの誇りでねぇ!!」
「しまっ!?」
奥歯に仕込んでいた閃光弾を舌で起動させ吐き出す。周囲が真っ白に染まるなか、札を取り出し、地面に叩きつける。巨大な鳥のからくりが姿を見せると同時に手袋から霊糸を出しからくりと繋ぐ
「じゃーなー巫女姫さんよお!またどっかで会いましょうや!!」
からくりが空に舞い上がり、その勢いで地面から足が離れるのを感じながら、ボスにどうやって言い訳しようか必死に頭を巡らせるのだった……
「やられた……どこの組織よ」
人形使いはいまや殆どいない、それを実践級で操る男。これは生半可な相手ではない、横島君の情報がGS協会以外に流れた事を知り、どうしようと琉璃は小さく呟くのだった……その視線の先には鳥のからくりで空高くへ逃げ去った男が逃げる方向へと向けられていた……
リポート17 嵐を呼ぶ男 その6へ続く
西条と横島が一時タッグを組み、道真の人形を撃破しました。しかし陰陽寮などに横島の情報が流れる結果となりましたね、次回でリポート17は最後。その後は別件で白竜組の話を書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い