GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート2 これは慰安旅行ですか?いいえ、修羅場です その3
夕食の後、温泉に入りながら、私は今回の事件の事を考えていた今回は楽な依頼だった筈なんだがな……横島には現実を見るのが余りに早すぎた。私はそう思っている
(時間が経とうと、人間はそうは変わらないか)
平安時代。私が高島の世話になっているときも同じような事があった。スライムではなく、餓鬼を使った事件だったが、それもまた使役者本人が餓鬼に食い殺されるという結末で終わった。高島は大人だったので自業自得だと笑っていたが、横島がそんな反応が出来るとは思えない
(落ち込んでいないだろうか……)
まだ横島には人間の闇を見るには早すぎる。やはりあの時、ああなる可能性を考慮して横島と蛍を引き返させるべきだっただろうか……いつかは対面しなければならない問題だが、幾らなんでも早すぎた……
「……そろそろあがるか」
普通は水に入れば無意識に吸収してしまうが、熱湯なのである程度は意識して吸収しない事が出来るが、流石にこれ以上入っていると吸収してしまうそうなので温泉から出る。その瞬間に身体に付着していた水が全て吸収され消えていくので、そのまま浴衣に着替えて横島の部屋へ向かう。空き部屋はいくらでもあるが、余り部屋を使いすぎるのもホテル側に悪いと言う横島の言葉もあり、私と横島は同じ部屋で宿泊することになった。まぁチビ達にノッブの奴も一緒だが……まぁ普段と同じ環境に近くて落ち着くと思う辺り私も大分変わって来ているなと苦笑しながら部屋の鍵を開けて部屋の中に入ると部屋の明かりが消えていた
「……横島?もう寝ているのか?」
まだ21時。寝るには早いが部屋の明かりが消えているので眠っていたら起したら可哀想だと思い、小さく声を掛けてから部屋の中に入る。チビ達も籠で眠っているのが見えた。その部屋の奥を覗き込もうとすると窓際からノッブが声を掛けてくる
【おう、おかえり。横島はさっき寝てしまったぞ】
ワシは出番が無かったと自棄酒を煽っていたノッブがお前も飲むか?と杯を向けてくる。少し考えてからその杯を受け取る
【横島は……うん、良い奴だ。良い奴だが……甘すぎる。人間の負の面を知らなすぎる。これから先もっと人間の醜い部分を見ることもあるじゃろう。ワシはそれを見た時の横島が心配でな】
杯を煽りながら言うノッブの言葉に頷く、人の痛みに共感出来る優しさを持つ横島だ。だが世の中にはその優しさが通用しない悪人と言うのがどうしても存在する。それを見た時の横島が心配だと言うノッブ。
「……だから私は共に居るのかもしれないな」
側にいる限りは私は横島を守るだろう。最初は高島の転生者だからと言う理由で側にいたが、今は自分の意思で側に居ようと思っている
【神をも魅了するか、かっか!おも「……失せろ」の、ノッブウウウウウウ!?!?】
ノッブが私をからかおうとしているのが判ったので、最後まで言い切る前に水鉄砲でノッブを窓の外へと打ち出し、そのまま鍵を閉める。幽霊だから勝手に入ってくる可能性が高いので、鞄から札を2枚取り出して窓と部屋の入り口に張っておく、これでノッブが入ってくる事は無いだろう
「……よく寝ているな」
今日の事があったからもしかしたら眠れないのではないか?と心配していたが、私の取り越し苦労だったようだ
「……私は結局どうしたいんだろうな」
眠っている横島の髪を指で梳きながら呟く。今日のことは横島には早すぎたと思う、横島が知るには人間の闇は深すぎる。今度の事が横島の心に深い影を落とさないかが心配でしょうがない……私は横島が立派な霊能者になるまでは側にいると言った、だが横島が立派な霊能者になったとして……そうなったのなら私はどうすれば良いのだろう?今まで見捨てて来たミズチ達の元へ戻るのか、それとも天界へ戻り竜族としての勤めを果たすのか……それとも横島の元へ居続けるのか……
「……」
眠っている横島を見つめていると、とある欲求が沸いてくる……これはガープに出会った時から時折私を襲っていた
「……っつ……」
横島を喰らってしまいたいと、その血を飲み干したいと、その魂を取り込んでしまいたいと……邪龍としての本能がそれを願っている。そうすれば永久に横島と共にある事が出来ると
「……黙れ……私はそんな事を望んでいない」
頭を数回振ると、その声はだんだん遠くなっていって暫くすると完全に聞こえなくなった。
「……厄介な物だな」
暫くすれば、この声も聞こえなくなるだろうが、それまでが怖い。無意識に横島にこの牙を突き立ててしまうのではないか?現に夢で何度か、その光景を見た。血塗れの横島と、血に濡れた自分の口……いつかそれが現実になってしまうのでは?それを考えるだけで恐ろしい、だがそれでも私は横島の側が良い、だが離れたほうが良いのでは?と思う自分も居る。自分で札を貼ってノッブを弾くようにしたが、私も外に出よう。横島に何かしてしまうのが恐ろしい、そう思って部屋を出ようとすると
「……っと」
横島が無意識なのか私の腕を掴んでベッドの中に引きずり込む。抜け出すことは出来るが……
(……これはこれでいいか……)
神である私が1人で寝るのが怖いなんて実に愚かな事だが、実際そう思う。横島が側にいるととても安心出来た……神に名を連ねる者としてはあるまじき弱さだが、そんな弱さがあっても良い……私はそう思う。そのまま横島の腕の中で眠ったのだが、この日私は悪夢を見る事はなく、久しぶりに穏やかな気持ちで朝まで安眠することが出来たのだった……
(ただな……横島。お前は私のことをロリオカンと呼ぶが……私はお前の母じゃない、判っているか?何故私がお前の側にいるのか?何故お前の世話をしているのか?その理由を……ほんの少しでも考えたことがあるか……?)
そう言う所は高島の時から変わらない、ただそんな横島だからこそ……人や物の怪が集まってくるんだろうな……私はそんな事を考えながら目を閉じて眠りに落ちるのだった……
なお翌朝、一緒のベッドで寝ている私と横島を見て蛍と一悶着あったのだが、それは本当に大したことではないので、態々語るようなことでもないだろう。ただ1つ言えるのは
「ロリコンじゃないのに……」
ロリコンと言われ目に涙を浮かべている横島を見て、何とか竜神としての力をもっと取り戻して、大人の姿を維持出来るようになれないか?と考え始めたと言うことだろう
慰安旅行と言う事ですが、正直私はかなり暇でした。蛍ちゃんやシズクちゃんは生身の身体があるので一緒にプールで泳いだり、遊んだり出来ていますが私にはそれが出来ない。見ているだけがとても辛くて横島さんが昨日の事で落ち込んでいれば励ますとか出来たと思うんですけどそういう素振りも見せてないので私に出来る事は本当に何も無かった
(早く生き返りたい……)
これはずっと前から思っていた事。早く生き返って生身の女の子として横島さんに出会いたい。なまじ生き返る事が出来ると知っているだけに、その時間が長く思えて仕方ない。300年待ったと思えば、それは大した事の無い時間の筈なのにそれを我慢する事が出来ないのだ
(うううっ……どんどん知らない人が増えていますし)
これが私の知っている人物だけなら、こんなに焦ることは無かったと思うのですが、神宮寺さんにシズクちゃんに琉璃さんとか、あの残念吸血鬼は……うん、大丈夫。横島さんがめちゃくちゃ怖がっているから警戒する必要は零だ。寧ろ警戒しないといけないのは先日シズクちゃんから聞いた清姫と言う竜族の姫のほうだと思うんです
『……横島が最近誰かに見られていると言う。間違いなく清姫の奴だ。あいつは天才的な隠形の持ち主だからな、目の前に居ても認識できない可能性がある』
それお姫様の特技としてどうなんですかね?……とは言え、横島さんを見ていると敵意みたいなのも感じるので近くに居るのは間違いないと思うんですが、見つけられないって本当どういうことなんですかね……まぁこのホテルの周辺では感じないので大丈夫だとは思うんですけど……
「死津喪比女かぁ……」
私の命を使って封印した悪霊……今の事務所のメンバーなら倒す事が出来ると思うんですけど、まだ動き出していないのに、行きましょう!と言う事も出来ない。それに蘇れば、横島さんの記憶を失ってしまう……ただ記憶を失うだけなら良い。前はちゃんと取り戻すことが出来たから、でもそれで逆行してきた分の記憶を失ってしまうのが怖い。自分がどれだけ横島さんを想っていたのか?その記憶を失うのが怖い……
(もし記憶を失って……それでもし記憶が戻らなかったなら……)
あの時は記憶は割と直ぐに戻った。でもそれがもし偶然だったのなら?もし蘇って来なかったら?もし蘇るのが遅かったら?そう思うと不安で押しつぶされそうになる……
「おーい!おキヌちゃーん!!!」
不安に押しつぶされそうになっていると横島さんの声が遠くから聞こえてきた。顔を上げると何かの荷物を手にし、私に向かって手を振っている
「いやー、探したぜ。おキヌちゃん、チビ達が探してくれてやっと見つけれたよ」
「みむっ!」
「うっきゅー!」
「コン」
横島さんの足元や肩の上でチビちゃん達がふんすっと胸を張る姿を見ながら
【えっと、私に何か用事でした?】
呼ばれる理由が判らなくて、そう尋ねると横島さんは子供みたいな純粋な笑顔で手にしていた荷物を私に見せながら
「一緒に昼飯食べようぜ!シェフの人に頼んでサンドイッチを作って貰ったんだ」
昼食の誘いに、自分の顔が曇るのが判る。これがノッブちゃんとかなら一緒に食事が出来るんでしょうけど、私は幽霊だから一緒に食事を取ることが出来ない。断ろうと思ったんですが
「あっちに丁度良い感じの木陰があるから行こうぜ」
私の言葉を無視して、手を取って歩き出す横島さんに何も言うことが出来ず、私はそのまま木陰の方へと連れて行かれるのだった
「えーと、これとこれと……後これ」
広げたレジャーシートの上で何かの準備をしている横島さん。私に背中を向けているので何をしているのか判らない
(逃げたい……)
一緒に食事と言っても見ているだけだ。それが辛くて逃げようかな、でも逃げても横島さんの事だからまた私を探しにきそう……我慢しているしかないのかなと思っていると
「良し、これでOK」
私の前にサンドイッチを置いて、その横にリンを置いて目を閉じて手を合わせながらリンを叩く、周囲に澄んだ音が響く……こ、これお供え物ですよね……若干自分の顔が引き攣っているのが判る。だがそれから数秒後
【あ、あれ!?】
口の中にサンドイッチの味が広がって来たのだ。焼かれたパンの香ばしさや、塗られたマヨネーズやケチャップの味。そして挟まれた肉の味が口の中に広がっていく
「どう?味するかな?神宮寺さんとか、蛍に聞いたんだけど、ちゃんとお供え物をすれば味だけなら判るかも?って言われたんだけどさ?」
【し、します、サンドイッチの味がします】
私がそう言うと横島さんは笑いながら自分もサンドイッチを鞄から取り出して齧る
「お、美味いなー!さすが高級ホテルのサンドイッチ、味のグレードが違う!」
美味い美味いと笑いながらサンドイッチを頬張りながら、チビちゃん達にも果物や油揚げを与えている
【あ、ありがとうございます】
「いやさ、最近おキヌちゃん。元気無かったからさ、俺としても気になってたんだよ。やっぱり美少女は笑顔じゃないとさ!」
余りに横島さんらしい言葉に思わず笑ってしまう。横島さんのこの笑顔を見ていると自分の考えていた悩みが何でも無い様に思えてくる。そして確信したのだ
(例え私は記憶が戻らなくても、きっと横島さんを好きになる)
記憶が無くなっても、心が覚えている。このどこまでも優しい人の事を……横島さんの事を忘れるなんてありえない。だから不安に思うことなんて何も無かったのだ。私は何があっても、この人に恋をする……それを確信したから
「サンドイッチ食べ終わって、休憩したら、チビ達の散歩行くけどおキヌちゃんも一緒に来る?」
鞄からごそごそとボールとかを取り出して、散歩の準備をしているチビちゃん達を見ながら尋ねて来る横島さん。私はその姿を見て迷う事無く即答した
【はい!ご一緒します!】
折角一緒に居れるのに、断る理由なんて何もないですから、確かに記憶を失うかもしれないのは怖いけど、だけどやっぱり私は……生き返って横島さんの隣に居たいから……だからきっと記憶は失っても、横島さんを想う心は決して忘れないと確信出来たから……だからもう、なにも怖くないんです
【ところで横島さん?残ったサンドイッチはどうするんですか?】
「そりゃ勿論。お供え物は後で人間が食べるんだよ」
にかっと笑って私の目の前のサンドイッチを頬張る横島さんを見て、吊られて笑ってしまいながらこの人の隣に居たいと強く思うのだった……
リポート2 これは慰安旅行ですか?いいえ、修羅場です その4へ続く
今回はシズクとおキヌちゃんのコミュでした。結構悩んでいるシズクとおキヌちゃんを書くことが出来たかなとか思っています。次回はくえすと蛍で書いて行こうと思っています、多分今回よりかはもう少しコミュ成分を多く出来るとは思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い