GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
リポート19 魔狼の咆哮 その2
謎の黒い人影に襲われた私達はそのまま霊能に関する病院を訪れていた。私は強化セラミックスの鎧のおかげで比較的軽症だったが、霊力を溜め込んでいる髪を切られた事で少し霊力のバランスがおかしい
「ドクターカオス、マリアとテレサは?」
普通に回復するよりも時間が短くて済む。そんな淡い期待を抱きながらマリアとテレサの様子を尋ねる、だがドクターカオスの返事は私の求めていた物ではなかった……
「……マリアは回復まで48時間、テレサは82時間と言う所だ。有機ボデイの分回復までの時間は短縮されているが、失った霊力の回復に時間が掛かる」
ドクターカオスの言葉に眉を顰める。冥子と西条さんは戦闘不能、エミは相手が近接の達人なので役に立たない、唐巣先生は近接の達人だけど、刀を手にしている相手に挑ませるのは無理だし……ブラドー伯爵に助力を頼むのもありだけど……
(あの黒い影の特性を掴まないと)
人型の黒い影。霊力を吸収して自分を強化する正体不明の敵……攻撃が一切通らなかった。あの無敵性を何とかしない事には、どうしようもない
「大丈夫かね?唐巣、それに美神令子」
病院の廊下に響く重い声。その声に顔を上げると漆黒のカソックが視界に飛び込んでくる
「言峰綺礼……」
どうして日本に……と思うが、それと同時にあの正体不明の敵と戦うにはこれくらい人間を辞めている相手が必要なのかもしれない
【ここですね、急患は】
言峰の後から誰かが姿を見せる。それは女性だった、赤い服に身を包み、肩から鞄を下げた女性……見た目は普通なのだが、人魂が近くに浮いているのを見る限り人間じゃない
【では私は治療に入ります】
言うが早く、病室に入っていく女性の後姿を見ていると言峰がその人物について教えてくれた
「英霊ナイチンゲールだ。治療の腕は確かだ」
ナイチンゲール!その名前に医療のスペシャリストと喜んだのだが……
【腕の腱が傷ついていますね、感染症の危険性を考慮して切除しましょう】
「待て待て!大丈夫!ちゃんとくっつくから」
【大丈夫です、私は助けたいのです。貴方を殺してでも】
「だ、誰かアアアアアアアッ!!!!」
病室から聞こえてきた悲鳴に全員が沈黙する中、言峰はにこりと笑いながら
「あの英霊は人の話を聞かない。命を助けるためなら何でもする」
「「「なんて英霊を連れて来たの!?」」」
私とエミと唐巣先生の声が重なるが、言峰は肩を竦め、勝手について来たのだよ?と言う。怪しいと思うが、証拠もないのでこれ以上追求するわけには行かないわよね。とりあえず私も巻き込まれたくないので、西条さんが自分で何とかしてくれる事を祈るだけだ
「綺礼来てくれて助かる。正体不明の黒い人型に襲われたんだが、霊力も効かない、聖句も効かない。対処法がわからないんだ、何か心当たりは無いか?」
「ふむ……色々海外で見てきたが、流石に情報が足りないな。他に何か感じたことは無いか?」
感じたこと……そう言われ、真っ先に思い浮かんだのはあの圧倒的な憎悪を宿した瞳……そしてあの異様な影だろう
「影が何かの獣だったわ」
「獣か……となるとその人型は何かの化身と言う可能性が浮かぶな、神か悪魔かそこまでは判らないがね」
何かの化身……正体の特定をしたいのに、それだけじゃ特定の使用が無い
「あの霊刀……私の髪を切った時。ごっそり霊力を持って行ったわ」
「ふむ。そうなると、相手の目的は霊力を持つ相手を襲う事だろう」
辻斬りをしていたのは霊力を集める為か。となると横島君達が心配になってくるわね
「1度横島君達を集めよう。ブラドー伯爵の所に集まって貰えば良いだろう」
バラバラにしたが、相手の能力を考えると一箇所に集まっていたほうが安全かもしれない。1度横島君達を集めようという流れになったとき
「あ、あれ?なんで美神が……さっき事務所に来るように電話してきたのに……?」
ハーピーがやって来て、何か訳の判らない事を言う
「事務所に来るように?私が電話をした?」
「うん。横島が電話に出てて、みんなで事務所に向かったんだけど……途中でGS協会の人にあって、病院に唐巣神父とかいるって聞いて、あたしが話を聞いてくるように言われてきたんだけど……」
ハーピーの話を最後まで聞かず、廊下のソファーの上に置かれてたエミの鞄を引ったくり走り出す
「エミッ!!バイク借りるわ!」
背後から聞こえてくる後で合流すると言うエミ達の声を聞きながら、階段を駆け下りる。やられた!横島君達が誘い出された!私達が思うよりも、遥かに相手は厄介な絡め手を持っている。だが気付いたのが遅すぎた
「皆無事でいてよ……」
エミのバイクで事務所に向かいながら、私は横島君達の無事を祈り、事務所へと走る。幸いエミのバイクはGSナンバー、スピード違反をしても警察に止められる事は無い。事務所に向かう途中漆黒のバイクが車線に割り込んでくる、一瞬カッとなったが、そのバイクもGSナンバーそして漆黒の車体……まさかと思い加速すると、そのバイクを駆っていたのはやはりくえすだった。ヘルメット越しに一瞬私を見たくえすはそのままエンジンを吹かし、更に加速していく、赤信号も当然無視だ。私は一瞬あっけに取られたが、琉璃に全部丸投げすれば良いと思い。私も赤信号を無視して、前を走るくえすのバイクを追いかけるのだった……なお途中で私とくえすを走って追い抜いて行った言峰に私もくえすもドン引きしたのは言うまでも無い……
美神さんの電話で俺達は事務所に呼び出された。だが、事務所に美神さんの気配は無かった。いや、そもそも美神さんは昨日帰ってきてないといっちゃんが告げた
「蛍。これってまさか……」
「嵌められたわね」
蛍も俺と同じ考えなのか、沈鬱そうな表情で告げる。嵌められた……その言葉に事務所の中に嫌な沈黙が満ちる
「大丈夫です。私がいれば、最悪の結果は防げると思いますよ」
「聖奈さん……」
事務所に来る途中に合流した聖奈さんが大丈夫ですと笑う。確かに魔族の聖奈さんがいれば最悪の事態は防げるだろうし、籠城だって可能だろう
「お兄ちゃん、アリス。暇ー」
「いい子だからちょっと待っててね?」
アリスちゃんを家に置いておくわけには行かないので、一緒に連れて来たが、暇と詰まらなさそうに言う。足元をちょこちょこ歩いていたうりぼーを抱き抱え、アリスちゃんに渡すとうりぼーを抱き抱えて嬉しそうに笑う。これで暫くは大丈夫そうだろう、タマモは嫌がるので、駄目ならチビにもアリスちゃんを宥めるのを手伝って貰う事にしよう
「横島さん。1度美神さん達に電話するほうが良いと思うんですジャー」
「うーん、でも病院って言われても場所まで聞いてないし」
来る途中にあったGS協会の人が唐巣神父達が入院していると聞いて、ハーピーさんに様子を見に行って欲しいとお願いしたが、その時にどこの病院かもちゃんと聞いておくべきだったな……
「しかしゆっくりしている時間は無いぞ?ここに誘いだしたと言う事は、ここに集まった段階で敵は動いている」
ソファーに座って足を組んでいる高城さんが険しい顔で告げる。見た目とその仕草は違和感しかないはずなのに、妙にしっくり来るのが不思議だ
【事務所では戦闘は厳しい、罠と判った以上直ぐに移動するべきだが……】
「……集団で移動すると言うのもネックだな」
本当は移動した方が良いんだろうが、この大人数で移動するのは少々厳しい。ミズチタクシーと言う手もあるが、あれはリスクが高すぎる……
【私が美神さん達を呼んできましょうか?】
「止めておいたほうが良いと思います。下手に移動すれば、おキヌさんが襲われますよ」
美神さん達を呼んできましょうか?とおキヌちゃんが言うが、それは聖奈さんによって却下された。移動するのも駄目、助けを呼ぶのも無理……いや、待てよ?
「ピートだったら安全に行けるんじゃないのか?」
「まぁ。ヴァンパイヤミストと言う手段もありますが、僕の力量では1人が限界です」
そっか……霧で皆まとめて脱出出来ればと思ったんだけど……やっぱり早々上手くは行かないか
「聖奈さん。一回横島の家に設置した転移陣は?」
「すいません、もう撤去してます」
聖奈さんのルーンによる転移でも駄目か……東京なんていう都会なのに、まるで無人島にいるみたいだなと心の中で呟いた時。凄まじい破壊音が響き渡る
「いっちゃん!今のは!?」
【入り口が破壊されました!敵が侵入してきますッ!!】
いっちゃんの悲鳴にも似た声……事務所に来て僅か10分……俺達をここに誘い出した相手の動きは恐ろしいほどに早かった
「いっちゃん、敵の数は?」
【敵の数は1。姿は黒い人影です、手には霊刀と思わしき刀を所持しています】
その言葉に俺達全員の顔が引き攣る。それは西条さんに聞いた辻斬りを連想させたからだ……と言うか、確実に辻斬りを行っている相手だろう
「横島さん、蛍さん、この事務所に何か武器は?」
聖奈さんがその手に槍を作り出しながら尋ねてくる。俺が口を開くよりも早く蛍が
「銀の弾丸を撃つ拳銃とか、破魔札なら近くにあります」
「……ではそれを持ってきて下さい。相手の気配がおかしい……これはヘタな魔族よりも危険かもしれません。シズクさん、助力をお願いします」
聖奈さんが険しい顔でシズクに助太刀を頼む。ノッブちゃんや牛若丸は俺達の護衛に残しておいてくださいと言われ、それだけやばい相手と言うことに気付き、俺は背中に冷たい汗が流れるのを感じ。俺達の話を聞いて、うりぼーを抱き抱え不安そうにこっちを見ているアリスちゃんに俺は大丈夫と言いながら頭を撫でるのがやっとなのだった……
閣下から話には聞いていた正体不明の敵……そこまで警戒していなかったのだが、こうして目の前にした時、その敵は酷く不気味で、そして歪に見えた
(なんですか……あれは)
目も鼻も無いシルエットこそは人間だが、それは人間とは程遠い姿をしていた……そして何よりもだが、その魂が酷く歪だったのだ。人間でも、悪魔でも神族でも無い……その姿から種族を特定できない。
「……酷い匂いだ。死臭がこびりついているな」
シズクさんが顔を歪めながら氷の刃を手にする。私とシズクさんなら足止め出来るとは思うのだが、私達2人を前にして何の反応も見せない……先手を取るべきなのか、それとも相手の動きを見た方が良いのか……そもそも相手がどこを見ているのか?その全てが判らない
(これは早いうちに撤退したほうがいいかもしれないですね)
準備も何もしていないうえに、護るべき相手がいる。そして狭い事務所内に加え、敵の正体が判らない。すべてにおいて不利、この場所で決着をつけようとするほど愚かな事は無いだろう
「……ッ!」
(初動が無いッ!?)
ゆらりと動いたと思った瞬間恐ろしいスピードで踏み込んでくる黒い影。反射的に槍を構えたが、振り下ろされた剣は1回、しかし槍を通じて感じた衝撃は複数回……一振りで複数回の斬撃を繰り出し、当たれば霊力を根こそぎ吸収する
(厄介な獲物ですね)
死臭を感じたのはなにもあの黒い影だけではない、あの剣自体も濃密な死臭を放っている。一体何人切り殺してきたのか……
「……行けッ!!」
シズクさんがペットボトルを投げると同時にそれを起爆させる。水の雫が全て氷の刃に変化し、黒い影に殺到するが……
「……」
「リアクションは無しですか」
神通力の宿った刃だ。神魔族でもダメージは薄くても何らかの反応をするはずだが、それすらもない……ますます、あの黒い影の正体が判らない、まずは情報を得る。それを考えルーン魔術を放った瞬間
「……ッ!!」
黒い影がリアクションを起こした、ルーンに対して左手を突き出し、攻撃を受け止めた……いや私の炎を吸収した
「「!?」」
その予想外の現象に私とシズクさんが一瞬硬直した。数秒にも満たない、コンマ何秒の硬直その一瞬……その一瞬で黒い影は消え去った。逃げたのではないのは言うまでも無い
「……ブリュンヒルデッ!」
「っはい!」
弾かれたように事務所の奥に向かって走り出す。私とシズクさんを倒すよりも、横島さん達を狙った方が良い。そう判断したに違いない、向こうは横島さん達が事務所にいるのを知っているのだから……私とシズクさんが黒い影に追いついた時。やはり黒い影は横島さん達の前にいた……ただ予想外だったのは
「ギギイイッ!」
黒い影が傷を押さえて後ずさる光景と、霊波刀を展開し、振り切った体勢で困惑している横島さんの姿がそこにあった……
それは何かを考えた攻撃と言う訳ではなかった。蛍と協力して美神さんの武器庫からいくつか武器を動かし終わり、結界札などの準備をしている時。俺達の影が濃くなったような気がしたのだ……そしてその影が盛り上がった瞬間。俺は殆ど反射的に霊波刀を作り出し、袈裟切りに振り下ろしていた。ゴムか何かを叩いたような嫌な感触とのた打ち回る黒い影
「ノッブちゃんッ!」
【おうよッ!】
ノッブちゃんの名前を叫ぶと同時に駆け出していたノッブちゃんが刀を振るうが、その刀は黒い影を素通りする
【効いてない!つうか、霊力持ってかれたッ!?】
顔を歪め後退するノッブちゃんと変わって、恐怖を感じながらも前に出て霊波刀を黒い影に向ける
【蛍!ピート!下手に動くな、こいつ……存在自体が霊力を吸収する!私の予想だが、霊刀か、霊波刀しか有効打撃は望めないかもしれない】
心眼の重い言葉に蛍達の顔が曇る、これだけ面子が揃っていても霊刀を使える者はおらず、霊波刀を使えるのは
「俺だけ……か」
使えると言っても俺の技術はそう高い物ではないし、長時間維持出来る物ではない……状況は積みに近い。この黒い影が居ると言うことはシズクと聖奈さんも倒されたと見て……
「……横島ッ!」
「横島さんッ!」
シズクと聖奈さんが扉を蹴り空けて姿を見せる。怪我などをしてないのが判り良かったと思うのだが……とても安心など出来なかった。黒い影は傷を押さえながら立ち上がっているが、その姿にダメージを受けている様子は見えず。更に言えば目も、口も何も無いのでどこを見ているのか判らない。それに気配もそうだ、とても不気味で、こうして見つめているだけでも吐き気を覚える。身体も大きいのか、小さいのか判らない……数の上では圧倒的に優位なのに、全然安心出来ない。普段ならシズクや聖奈さんがいればそれだけで安心できるのに……
「シッ!!!」
逃げるのか、それとも戦うのか、悩んでいたその時。黒い人影がシズクと聖奈さんの横を通り抜けて、鋭い踏み込み音と共に拳を繰り出す
「「「言峰神父ッ!?」」」
「無事か。良かった……」
硬い表情のまま、少し嬉しそうな声を出すという器用な事をする言峰神父。そしてそれから遅れて、バイクのエンジン音が2つ響く
「間に合った!?」
「ギリギリですわね」
赤と黒のバイクが事務所の中に飛び込んでくるなり、黒い影に破魔札を投げつける
「美神さん!それにくえす!?」
蛍が2人の名前を叫ぶが、美神さんはそれに返事を返さず
「ピート!タイガーと一緒に病院に!ブリュンヒルデはアリスちゃんと高城を!蛍ちゃん早く後に乗って!」
皆に素早く指示を出す美神さん。俺はと思っていると神宮寺さんに腕を捕まれ
「早く後に、この場所ではどうしようもなりませんわ」
「は、はいッ!」
少し気恥ずかしい物を感じながらも早く!と言われれば、照れている時間は無い。俺は言われたように神宮寺さんのバイクのタンデムシートに座ると2人はエンジンを吹かし、事務所の窓を突き破って外に飛び出す。着地の凄まじい衝撃に思わず神宮寺さんの細い腰に両腕を回して、しがみつくようにして衝撃に耐える。これからどうするんですかと尋ねる間もなくバイクを走らせる神宮寺さんに今は話をしている場合じゃないという事だと理解し、神宮寺さんの腰にしがみつきながら、背後を振り返る。すると丁度聖奈さんがアリスちゃんを高城さんを抱え事務所から出てくる姿が見えるのだった……
蛍ちゃんをタンデムシートに乗せバイクを走らせる。姿は見えないが、あの黒い影の気配はピッタリと着いて来ている
(予想外の面子が多すぎる)
アリスちゃんに高城のことは考えても無かった。だから聖奈に抱えて貰っているが、もし聖奈がいなければ事務所から逃げる事は出来なかっただろう
「美神さん、駄目です。全然振り切れません」
蛍ちゃんも追いかけてくる気配を感じているのか、顔を歪めながら呟く。言峰が足止めをしてくれると思っていたが、もう追いかけて来ている事を考えると足止めが出来なかったのだろうか
「……いや、違う。あいつは影の中を移動出来るみたいだ」
氷の上を滑って着いてきたシズクの言葉に顔を歪める。今は夜だが、月と街灯であちこち明るい。だから気配が離れる事もなく、ずっとピッタリ着いて来ているのだろう……夜が明けるまではまだ6時間はある。何とか対処法を見出さない事にはここで全滅するのは必須だ
【美神駄目だ!止れッ!!回り込まれている!】
心眼の怒声に慌ててブレーキを掛け、スリップしないようにハンドルを切る。アスファルトにタイヤのスリップ跡をつけながら、私とくえすのバイクが止る。進行方向には街灯もなく、月の光だけが道路を照らしている。バイクから降りて神通棍を構えながら
「横島君、アリスちゃんを聖奈から受け取って、それとノッブちゃんと牛若丸を」
この面子では間違いなく聖奈が最強だ。だからアリスちゃんを受け取り、ノッブ達をとお願いするが
「駄目です。ノッブちゃんの攻撃はあの影に通じないみたいです」
アリスちゃんを抱き抱えながら駄目ですと言って理由も教えてくれた横島君に舌打ちする。英霊が戦力にならない、言ったら悪いがそんな事態を想定などしているわけが無い……本当にあの黒い影の正体が何者なのか、ますます判らなくなった
「グルルルルッ!」
「ウーッ!!!!」
「チビ、それにタマモもうりぼーもどうした?」
チビ達が凄まじい唸り声を上げる、今まで無いことに横島君も困惑しているのが良く判る。動物の本能で何かを感じ取ったのだろうか……
「美神、蛍、横島。何か来ますわ」
「……でかい、なんだ。これは……」
道路の奥からドシャ、ドシャっという重い音を立てて、何かが近づいてくる。アリスちゃんが怖いと言って横島君に抱きつき、高城がやれやれと肩を竦め、折りたたみ式の霊刀を構える
「戦えるの?」
戦ってくれるの?と言う願いを込めて高城に尋ねる。真の蝿の王……そんな彼女が助太刀してくれるなら、これ以上に頼れる相手はいないのだが
(私はルイ様に横島を護れといわれただけだ、お前達を助ける理由は無い)
だが高城の言葉は冷たい物だった。それでも横島君を護ってくれる……それだけで安堵したのも確かだ。横島君が眼魂などを使わないでくれるなら、それに越した事は無い
【ウオオオオオンッ!!!】
地響きを立てて私達の前に現れた何かを見て絶句した。それは3m近い巨体の狼だった……その背中に私達を追い掛け回していた黒い影を乗せ、口に黒い影が手にしていた刀を咥えたその狼は、凄まじい殺意を宿した金色の瞳で私達を睨んでいる。
「美神!来ます!」
それは一瞬のことだった。距離はかなり離れていたし、その巨体だ。見逃す事は無い、そう思っていたのに、狼は一瞬で私と蛍ちゃんの前に移動していて、口に咥えていた刀を振るってきた。その余りに一瞬の事に完全に虚を突かれ動くことが出来なかった……避けられないと判った時つい目を閉じてしまった、横島君の私を呼ぶ声がやけに遠くに聞こえた……
「「え?」」
だが私の耳に飛び込んできたのは甲高い金属音。目を開くと、そこには着物姿の男性が2人。その2人が手にした刀で振るわれた刀を防いでいた
「「でやあああああッ!!」」
裂帛の気合を持って振るわれた刀はその狼の巨体を弾き飛ばす。突然の事に混乱していると今度は後から横島君の混乱した声が響く
「せんせーッ!だいじょうぶでござるか!?」
「シロ!?え、じゃあクロさん!?」
シロにクロさん!?顔を正面に向けると犬の耳と尻尾が2人の男性から生えているのが見えた
「犬塚クロッ!」
「犬飼ポチッ!」
「「義によって助太刀致すッ!!!」」
声を揃えて叫ぶクロさんとポチの声に、黒い影が初めて揺らいだ。巨大な狼に跨っていたのは着物に似た何かを来た首の無い幽霊の姿だった……その姿を認識した時、巨大狼の周囲に響き渡る凄まじい雄叫びが放たれた……
リポート19 魔狼の咆哮 その3
シロ、クロ、ポチに言峰にナイチンゲールを何とか出す事がで来ました。マーボーは今回は短いですが、また出てくるのでその時はもっと出番を与えようと思います。次回は狼とのバトルから書いて行こうと思います、それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い