GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は人狼の里での話、横島とシロの訓練の話、東京での話、そしてガープの話と4つの話で書いて行こうと思います。サイドがころころ変わるので少し見にくいかも知れませんが、今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

 

 

リポート19 魔狼の咆哮 その5

 

「なるほど……事情は判りました」

 

ドッグフードを勢いよく食べていた長老が湯呑みを手にして、一息つきながら口を開く

 

「しかし相手が相手ですので、我らは……「そんなにフェンリル狼が怖い?」

 

私の言葉に長老がクロさんを見つめるが、私は違うわよと即答する。確かにクロさんの話で確信を持ったのは事実だが、あの姿、あの威圧感を感じればフェンリル狼の事は容易に想像がつく

 

「北欧神話によるとかつてこの世は精霊と神々の物だった」

 

別に北欧神話は専攻していたわけじゃない。それでもGSなんていう家業についていれば、自然とそういう伝説や神話には詳しくなっていく物だ

 

「悪神ロキの息子でその口は世界を飲み込むほどに大きく、戦いの神テュールの腕を食いちぎり、神々の全面戦争の折には主神オーディンを食い殺した。そして神々は滅び、人の時代になった」

 

「良くご存知ですな」

 

長老が小さく笑みを浮かべ、家の中の人狼達を見渡し、そこまでご存知ならばと呟く

 

「我らは皆フェンリル狼の魔力を引き継いだ者達ですじゃ。そして八房はフェンリル狼の牙で作った刀……あれにはまだフェンリル狼の意志が宿っているとされております」

 

嫌な情報が出てきたわね……あの黒い影と狼。あれがもしガープが呼び出した何かと仮定すると……

 

「長老。拙者達が戦った狼は古い人狼族の着物を着ていたように見えた」

 

「……昔里を出て、海を渡った者達がいたな。いや、誤魔化しはやめよう。フェンリル狼の意志に飲まれた者達をワシは里から追い出した……数の少ない人狼を減らす訳にはいかなかったから」

 

人狼を狙うのは、自分達を迫害した者への復讐って訳か。通りで私達よりもクロさん、ポチを狙ったわけだわ……

 

「ちなみに復活したときの対処法とかは伝わってないの?」

 

まだ完全に復活する前ならば対処法もあるかもしれない。何か無いのか?と尋ねると長老は顎鬚を摩りながら

 

「里に伝わっている銀の弓矢などが武器としてはありますが……クロ。どう見る?」

 

「足りん。全く持って足りん、相手の力の底が見えんからな」

 

影を操る能力と卓越した剣術を持つ黒い影。それだけでも脅威なのに、巨大な狼としての姿もある……銀の弓矢だけではとてもじゃないが勝機なんて見いだせない

 

「……人狼族の守護女神の力を借りれば、勝てるやも知れませぬ」

 

「守護女神?そんなの聞いた事が無いでござるが?」

 

あちこちからそんな話は聞いた事が無いと言う声が上がる。深く溜息を吐く姿からその情報を意図的に隠していたのが一目瞭然だった。ゆっくりと立ち上がり、掛け軸の手を伸ばす長老

 

「我らの守護女神……それは」

 

掛け軸を勢いよく引くとその後ろに隠された物があらわになる。それは複雑に入り組んだ魔法陣……

 

「我ら人狼族の守護女神……アルテミス様を召喚する為の魔法陣それを貴女に託しましょう」

 

差し出された掛け軸をしっかりと受け取る。フェンリル狼に対する切り札は確かに人狼族の里にあったのだ……だが問題は

 

(なんていう複雑な魔法陣)

 

しかも複雑なだけではない、面積もとんでもないものだ。私はその掛け軸を手に立ち上がり

 

「クロさん、先に戻るわ。あとで武器を持って戻ってきて」

 

「それは構わないでござるが……それで何とかなるのではないか?」

 

「この魔法陣を用意しようと思うと準備が物凄く大変なのよ、今からやっても満月に間に合うかギリギリなの。だから早く戻って準備をしてくるわ」

 

くえすにブリュンヒルデ……それと東京からエミを呼んでもギリギリだろう。私は急いで来た道を引き返し、山の麓に停めているバイクの元へ走るのだった……

 

 

 

ブリュンヒルデと蛍から連絡を受けて横島達を合流した。フェンリルの牙を使った刀を持つ相手との戦いに備えて特訓しているとの事だが、横島の訓練を見ていて問題点は直ぐに判った

 

「横島。お前は止めておけ、ポチに師事をしてもお前は強くなれない」

 

ポチという人狼の腕は確かだった。攻撃のタイミング、防御勘、間合いの取り方など一流だ。正に正統派の剣士と言えるだろう。だが横島の師匠としては全く持って向いていないのが数分見ただけで判った

 

「ビュレト様もそう思いますか?」

 

「ああ。横島とポチじゃ駄目だな」

 

俺が感じたんだ。恐らくブリュンヒルデも同じ感想を抱いたはず。蛍やくえすに判らないだろう、これが判るのは俺やブリュンヒルデと言う武器を使う者だけだろう

 

「どういうことですか?横島はずいぶん頑張っていると思いますけど……」

 

「霊波刀の圧縮もかなり上手くなっていますわ。ビュレト様」

 

蛍とくえすがそう言う、俺は頭をかきながら違うそうじゃないと言って、横島に近づいて

 

「お前には正道の剣術は合わない。お前だって判っているんじゃないのか?」

 

「……なんとなくは……牛若丸とかノッブちゃんによく言われますから」

 

本人が反抗しなかったのは自分でもうすうす感づいていたからだ。ポチの剣と自分の剣は致命的に違うのだと

 

「どういうことでござるか?」

 

「それは俺も感じていた、名も知らぬ神よ。横島には教えれる事は何も無い」

 

訳が判らないという人狼の少女……シロと言うらしい、彼女は首を傾げどういうことでござるか?とつぶやき、その隣でやはりかと呟くポチ。見ている分には良い感じに見えたが、やはり本人同士が一番それを感じていたのだろう

 

「横島の剣は邪道だ。構えも、剣の振り方も正道とは程遠い」

 

シロとポチが正眼に構えるのに対して、横島の構えは足を肩幅に開き、身体は斜に構えている。それが癖になっているのに、それを正眼に構えるのに矯正すれば横島のよさは簡単に消えてしまうだろう

 

「言峰。お前とブリュンヒルデと組み手をするのが一番横島にとって良いと思うが、どうだ?」

 

正直俺も魔術や体術を組み合わせるが基本的には正道に近い、ここまで邪道剣を使う横島を師事するのは申し訳ないが無理だ。牛若丸とノッブがどんな苦労をして横島に剣の構えなどを教えたかが、容易に想像できる

 

「私は構わないが、私は手加減などと言う器用な真似は出来ない」

 

そこは横島自身の陰陽術とブリュンヒルデのルーン魔術で対応してもらえば問題ないだろう。

 

「横島は実戦稽古の方が向いてるだろう。言峰とブリュンヒルデに見て貰え」

 

判りましたと返事を返す、横島達を見ながら再び丸太の上に腰掛ける

 

「……ビュレト、魔界と天界の方は正直どうなんだ?」

 

「酷い騒ぎだ、シズク」

 

蛍やくえすも横島の訓練を見ているので、離れた所で今現在の天界と魔界の話をするが、正直酷い有様だ

 

「アスモデウス達が天界と魔界に同時に侵攻している。そっちの対応で天界と魔界は動けない」

 

「……フェンリルの復活が近づいていてもか」

 

シズクの言葉に小さく頷く、ブリュンヒルデでは魔界と連絡が取れないが、俺の権限を使えば連絡はつく。フェンリル狼と聞いて、正規軍に安置されているスレイプニルをジークやワルキューレに届けて貰おうと思ったのだが、まさかの同時テロ。しかも魔装術と狂神石で凶暴化した連中を大量にぶつけて来た、流石にそうなると天界と魔界は動けない。これは恐らくフェンリル狼の復活を邪魔させないための進軍だ。

 

「……小竜姫とあの猿は?」

 

「お前知ってたのか」

 

妙神山にハヌマンがいるのを知っていたのかと問いかけると、知っていたが黙っていたと返事を返す。揉め事はお断りだからなと言うシズク

 

(横島本位か)

 

横島の為になるかどうかで考えて、今はまだ早いと判断したと言うところだな。時期が来ればこっちが言わなくても言いそうだが

 

「妙神山も襲われている。そもそも人間界に近い、神魔の駐屯所だ。真っ先に狙われてる」

 

だからメドーサもそっちに合流しているのだ、だがそれでも小竜姫とハヌマンも動けないと言うとシズクはそうかと呟き、横島の方に足を向ける。話が終わればいなくなるか、どこまでも横島本位だなと苦笑するが、状況はかなり悪い。本当にフェンリル狼が蘇るとなると魔人もアスモデウス達よりも脅威となる。それなのに天界と魔界の正規軍は動けないように足止めを受けている

 

(最悪あいつも引っ張り出すか)

 

最悪の場合アシュタロスも引っ張り出さないと手が足りない。だがそれは本当に本当の最終手段だ、それは絶対に切ってはいけない鬼札だ。まずは俺が全力を出せる場を整えるか、俺は丸太から立ち上がり、この周辺に俺が全力で戦っても大丈夫のように強力な結界を作るためにその場を後にするのだった……

 

 

 

 

横島の訓練を命じられ、実戦形式で手合わせをしているが、私は直ぐに横島の評価を改める事になった

 

(反射神経、運動神経、それに目……あと思いきりもいい)

 

臆病な性格と私の攻撃に過剰に反応しているが、完全に避ける事が出来ている。ブリュンヒルデの魔術は防御力の強化だけなので、横島の自前の運動能力で私の攻撃に反応しているとなると流石に驚きを感じずにはいられない

 

「ふっ!!」

 

流石に本気で八極の業を使うと横島を壊しかねないので、震脚を使わずに筋力だけだが外門頂肘を繰り出す

 

「とっとおっ!?」

 

大袈裟に仰け反るが、横島は目で見て反応をしていた。そこから更に踏み込み肘を水平にして裡門頂肘に繋ぐがそれは霊波刀で受け止められた。

 

「ふっ!」

 

だが受け止められるのは計算のうち、そこから身体を回転させ背中による打撃技「鉄山靠」と繋ぎ、横島を大きく弾き飛ばすが

 

(手応えが薄い)

 

自分で飛んだか、体勢を素早く立て直し横島を正面に捉えようとするが……居ない。いやそれ所か気配も無い、訓練を見ている蛍や神宮寺の驚愕の声が聞こえるから回り込んでいるなどではなく、本当に完全に消えているのだろう。それならと懐から黒剣を取り出して360度全てに投げる

 

「どわーっ!?」

 

「そこか!」

 

「そこかちゃうわーッ!!」

 

岩の上にインクが滲む様に横島が姿を見せる。その手には穴の空いた札……恐らく陰陽術で姿を隠していたと言うことか。それにしても反応を見せずに発動させるとは……だが姿さえ確認出来ればとその方向に走り出した瞬間。横島が先ほどの情けない泣き顔ではなく、にやりと笑い

 

「掛かったな!」

 

横島は親指を噛み切るが、だが札を手にしていないもう陰陽術を使えないと思ったのだが、横島は空中に血文字を描き印を結んだ

 

「むっ!?」

 

地面が消えた、身体が突如現れた穴の中に吸い込まれる。その穴の深さは私の身長の2倍近い

 

「どうだー!」

 

「やれやれ」

 

俺の勝ちだと笑う横島に肩を竦め、膝を曲げておもっいきりジャンプすることで穴から飛び出す

 

「へ?へもっ!?」

 

横島の頭に全力で拳骨を落とし、横島が奇声を上げて倒れこむ。私はカソックについた砂を払いながら

 

(実戦形式と言ったのは失敗だったな)

 

霊波刀の訓練のはずが、本当に何でもありの実戦になってしまっていた。次の組み手は霊波刀に絞ったほうが良さそうだ

 

「……やれやれ、ちゃんと霊波刀を使わないからだ」

 

シズク様が文句を言いながら、横島の治療をしているのを見ながらまだ、先ほどの光景を見て絶句している蛍に尋ねてみた

 

「陰陽術は札がなくても使えるのかね?」

 

私はカトリック系なので日本由来の陰陽術など知らない。横島の事を知っているであろう蛍にそう問いかける

 

「い、いえ、無理ですよ。札っていう媒介があってこそですし」

 

「理論としては空中を札として認識したでしょうけど……それもありえないですわね」

 

話を聞く限り、どうも普通は出来ない事を平然とやってのけたらしい。牛若丸と信長はうーっと唸って頭を摩っている横島を見ながら

 

【また面白いことを身に付けたようじゃな】

 

【ですね。あれを組み合わせたら、また主殿の戦術が広がりますね】

 

平安時代の天才武将と戦国大名という組み合わせ、さらにそこにシズク様が加わった文字通りの英才教育……

 

(バチカンに知られると問題になりそうだな)

 

日本以外の組織に知られるとそれだけで横島の危険性が上がる。私は今見たことを誰にも話すまいと心に決め、再び拳を握る

 

「では横島。今度はお前の栄光の手と霊波刀だけで、組み手だ。それ以外は禁止とする、良いな」

 

「うーす……痛いのは嫌だけど頑張りますよ」

 

よっと跳ね起き、両手に霊力を集め篭手にする横島。簡単そうにしているがそれだけでも普通の霊能者には出来ない芸当だ……才能の塊、いやびっくり箱かと苦笑し、カソックの両袖を振るい、そこから棒を取り出し連結させて構える

 

「なんやそれは!?」

 

「八極拳は体術のみにあらず、槍術も一流なのだよ。とは言え私のは未熟だが……4連激までくらいなら出来る」

 

8つの斬激を飛ばす八房には程遠いが、ある程度は感覚を掴めるだろう

 

「ただし手加減は出来ない、私も修めている途中だからな。骨の1本や2本貰う事になるかもしれんが……どうする?」

 

私の問いかけに横島の顔が引き締まる。護るための力、それが横島の本質なのだろう

 

「シズク、聖奈さん。怪我したら治療お願いします」

 

シズク様に頭を下げてそう頼み、左手の篭手を霊波刀に変形させこちらを見据え

 

「お願いします。言峰神父」

 

「良い覚悟だ、行くぞッ!」

 

手加減無しで全力で横島に向かって槍を突き出す、必死に反応する横島だが4つのうち2つが直撃し、身体が大きく吹き飛ぶ。蛍の悲鳴が聞こえるが横島は立ち上がる

 

「全然大丈夫だから、心配しなくて良い」

 

真剣な表情で今度こそ全部避けると意気込んでいる横島。手加減無しで打ち込んだので、確実に骨が折れたか、皹が入っているだろうにその痛みを少しも見せない

 

「よかろう。お前が動けなくなるまで何度でも付き合おう」

 

槍を振るい再び穂先を下に向けて構え、横島を睨みつける。怯えはあるが、引くものかという強い決意を見せる横島に向かって、私は再び槍を走らせるのだった……

 

 

 

 

『どう?琉璃出来る?』

 

2回目の美神さんからの連絡に私はむうっと言う返事を返すことしか出来なかった。フェンリルに対抗して守護女神のアルテミスを呼び出すというのは判る……判るけど

 

「すっごいギリギリになりますよ?」

 

神を呼び出すサイズとなるとめちゃくちゃ大きくなるし、ミスも許されない。幸い魔法陣に精通しているくえすが一緒でもかなり厳しいだろう

 

『エミを応援にって無理?』

 

「エミさんは呪い専門じゃないですか」

 

黒魔術には詳しいが、魔法陣までを使うのは少し不安が残るだろう。私は少し考えてから

 

「判りました。私が行きます」

 

『……良いの?』

 

良いも悪いも、今GS協会や、六道の中で一番召喚に詳しいのは私だろう。

 

「明日の夜までには合流します。美神さんも無理せずに戻ってください」

 

人狼の里からセーフハウスに戻る途中のガソリンスタンドで電話を借りていると言っていたので、美神さんも無理をしないでくださいと言うと、受話器から美神さんの苦笑が聞こえてくる

 

『無理しないといけない段階だからね。でもありがと、気をつけるわ。じゃあ待ってるから』

 

電話が切れツーツーッと言う音が響く、私は溜息を吐きながら受話器を元に戻し

 

「柩の言う通りになったわ」

 

「くひひ、少し遅れたみたいで悪いね」

 

能力を制限するチョーカーで前よりは僅かに未来予知の精度が落ちているが、それでもこうして情報を事前に持ってきてくれたのはありがたい。話を聞いた段階である程度私も覚悟をしていたから

 

「私がいない間、未来予知の情報を唐巣神父とかに流してくれる?」

 

「良いよー~その代わり、依頼料は貰うよ?」

 

こっちも生活が掛かってるからねと笑う柩に判ってるわよと返事を返し、小切手に手早く数字を書き込んで柩に渡す

 

「……何回予知すれば良いのかな?これ?」

 

「多めにお願い、何時戻れるか判らないから」

 

フェンリルの復活はなんとしても防がないといけないが、その間に私の失脚とかを狙っている相手にGS協会会長の地位を奪われては目も当てられない

 

「くひ、確かにそうだね、引き受けたよ。でも無事に終わったら特別手当を要求するよ」

 

めちゃくちゃ予知必要そうだからねと言う柩に無事に帰れたらねと約束し、準備を整えGS協会を後にする。エミさんに唐巣神父、それに冥華さんに回る所はいくつもあるし、準備も必要だ。だが何よりも今必要なのは……と病院に足を向ける

 

【これは神代会長こんばんわ】

 

「こ、こんばんわ」

 

鬼の表情をしているナイチンゲールさんがめっちゃくちゃ怖い。彼女は私を見つめると鞄から何かを取り出す

 

【疲労などに効く薬です、無理をしないでくださいね】

 

「あ、ありがとうございます」

 

殺してでも治療すると言われるかと思ったが、そうじゃなかったことに安堵し西条さん達が入院している階に足を向ける

 

「琉璃?どうしたワケ?」

 

「エミさん。実は美神さんから連絡が合って暫く東京を離れます」

 

私の言葉にエミさんと唐巣神父の顔が険しい物になる

 

「私や小笠原君では駄目なのかな?」

 

「はい、私じゃないと駄目なんです。神卸の必要がありますので」

 

これは私以外の誰にも出来ない事ですのでと言うと、唐巣神父もエミさんも納得したように頷く

 

「判った。暫くオタクの代わりに動けば良いってことね?」

 

「私も全力を勤めさせてもらうよ」

 

唐巣神父とエミさんによろしくお願いしますと頭を下げる。本当は西条さんにも頼みたいんだけど

 

【あー彼は駄目だよ?無理をしていたから、あの凶暴な看護婦さんにKOされてるよ。ナイチンゲール48の医療術。フローレンスバスターとかで泡吹いてたよ】

 

いつの間にか現れた教授が禁煙パイプを吹かしながら笑う。フローレンスバスターって何?もしかして

 

「あのさっきの蜘蛛の巣状の破壊のあとって?」

 

【彼女が着地したあとだね!良く西条は生きてたよ!】

 

あっはははっと笑う教授だが、正直笑う所じゃないと思うんだけど、それ……

 

【でも私が一応オカルトGメンの仮所長になってるよ、人員いないんだけどね!】

 

むちゃくちゃ上機嫌で笑うわね……果てしなく胡散臭い人物だ。だがその知性はとても役に立つ

 

「オカルトGメンの装備の貸し出しお願いできる?」

 

【勿論だよ?西条も頼んでいたよ。泡を吹いて気絶する前にね】

 

人員はこっちが確保して、道具はオカルトGメンが用意する。他の国とかとは違い、友好的な関係をこれからも築いて行きたいわね

 

「じゃあ、あとはお願いします」

 

時間が無いので挨拶もそこそこに病院を後にし、今度は病室を回り手を握り病人を励ましているナイチンゲールの背後を駆け抜け、待っていて貰ったタクシーに乗り込み

 

「六道の屋敷までお願いします」

 

今度は冥華さんに私が居ない時の頼みをする為に六道の屋敷へと向かうのだった……

 

 

 

「教授、理論値は?」

 

「……オールクリア」

 

教授からの返答に笑みを零す。やっとだ、やっと理論が完成した……本当ならば完全な形で英霊を制御したいが、英霊にも性格と言う物がある。それを考えれば如何しても御すことが出来ない相手と言うのは少なからず存在する、例えばかの英雄王ギルガメッシュなどはどう考えても制御できる相手ではないが、戦力として考えればあれ以上優秀な英霊は存在しないのもまた事実。ではどうするか?となれば簡単だ、狂わせればいい、しかしジャンヌダルクのようでは駄目だ、しかしかといって教授のようになられてもまた意味が無い。そう考えた時、私が目をつけたのは牛若丸と義経だ。1人の人物を子供の時代と大人の時代に分ける、そしてその上で精神制御を施す。そうなることで欠けた魂を求めるが故に私の術に自ら掛かりに来る。

 

「お前も足りない半身が欲しいよな?」

 

「……」

 

ちっ詰まらん奴め、指示に従うが感情が無い、意志が無い、これでは人形と代わらない。感情のある英霊だからこそ手駒として役立つと言うのに、もう言い下がれと命じると頭を下げて教授は部屋を出て行く。私はその背中を見つめながら、深く溜息を吐く、策略は上手く行っているというのに思ったよりも成果が出ない。それは宇宙意志の妨害とでも言うのだろうか?本当ならばもう少し大きな戦果が出ていてもおかしくないだけに、これだけ知略を振るっているのに成果が出ないことに僅かばかりの苛立ちを覚える

 

「だがそれももう終わる」

 

魔人、そして今回のフェンリルは私の動きを感知させないために動かしたに過ぎない、フェンリルに関しては個人的には成功して欲しいと願っているのだが、それもどうなるか判らない。だがアスモデウスの同時テロにフェンリル、魔人と無視できない脅威が重なった事で警備が緩んだ場所がある。そして私はその場所に昨日やっともぐりこむことに成功し……手にしたのだ

 

「ふふふ。もうすぐ……もう直ぐだ」

 

私の視線の先には赤黒い1つの球体が転がっていた。それは眼魂であり、そしてある神をその中に封じ込めた極めて強力な眼魂……そしてそれを使う存在ももう直ぐ『出来る』そこからが私が長い時間を使いたてた計画が動き出す時だ。私は笑みを押さえる事が出来ないのだった……

 

 

 

リポート19 魔狼の咆哮 その6へ続く

 

 




今回は色々話を動かしてみました。次回は琉璃とクロさんとの合流、アルテミス降臨とフェンリル戦まで書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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