GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は影戦から始まり、アルテミス降臨とフェンリル復活まで書いて行こうと思います、原作では長老&横島の組み合わせでしたが、そこも変えて行こうと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


その6

 

 

 

リポート19 魔狼の咆哮 その6

 

私がセーフハウスに戻った日の翌朝。琉璃がセーフハウスに合流してくれた、まさかこれほど早く合流してくれるとは思って無かったので、これには些か驚かされた

 

「神代家で使う神卸しの道具一式をとりあえず持ってきましたよ」

 

除霊に関しては専門家であると言う自負はある。だけど交霊術に関しては正直そこまで詳しいわけではないので、琉璃がきてくれたのは正直ありがたい。それで人狼族の至宝の魔法陣は?と尋ねてくる琉璃に鞄から長老から預かった掛け軸を取り出す

 

「これなんだけど、どうかしら」

 

「……うわ」

 

琉璃の返事は心底嫌そうな声。もしかして満月に間に合わない?と尋ねると琉璃はギリギリです、しかもめちゃくちゃギリギリと返事を返す

 

「カズマさんやクロさんに時間稼ぎを頼む事になると思います」

 

言わなくても分かってると思いますが、横島君は出さないほうが良いと思いますよと琉璃は言う。勿論それは判っている、相手がガープの手の物と判っている段階で横島君は今回は前衛に出すつもりはない

 

「ブリュンヒルデにビュレト、それにクロさんとポチに言峰神父。戦力的には十分だから横島君にも魔法陣を書くのを手伝って貰おうと思ってる。蛍ちゃんやくえすに協力を頼んでもやっぱりギリギリ?」

 

「誰に手伝ってもらってもギリギリですよ。召喚陣が召喚陣ですからね、早速始めたいんですけど、良いですか?」

 

「私は良いけど、琉璃は?」

 

東京から来て直ぐだ。琉璃こそ大丈夫なの?と尋ねるとそんなことを言ってる場合じゃないですからと琉璃は笑う。フェンリルの復活はなんとしても防がないといけない、もしガープ陣営に加わったら、北欧関連の神の力は借りれなくなる。難しい事は百も承知だが、ここで何とか食い止めなければ

 

「美神殿、人狼の里からありったけの武器を持って来たでござる!」

 

「ワシも老体なれど協力しましょうぞ」

 

クロさんと長老が助っ人に来た。これで武器や戦術を整えるという面での準備は出来た。後は……アルテミスを降臨させる為の魔法陣が間に合うかどうかの勝負になるだろう

 

「横島君達を呼んでくるわ」

 

「じゃあ私はテニスコートで準備をしています」

 

フェンリルの前でも正攻法では勝てない相手。ビュレトや、言峰神父の力を借りて何とか出来るだろうか?如何しても勝機の見えない戦いの前に気持ちが暗くなるのを感じながら、私は横島君達を呼ぶ為に川原へと足を向けるのだった……

 

そして満月の夜、危惧していた通り黒い影は私達を襲うために現れるのだった……

 

 

 

 

クロとポチと言う人狼と言峰。そして俺の4人で黒い影を足止めすることになった、ブリュンヒルデとベルゼブルに話は聞いていたが、こうして目の前にしてみると判る。これはもう生きてはいない、幽霊と生者の中間っと言った所か……

 

「前も言ったが正攻法では勝てないぞ」

 

俺とブリュンヒルデで周囲に結界を張っているが、それすらもどこまで効果を発揮するか判らない。満月のせいで影があちこちに出来ているので、相手の能力を制限するのは無理。アルテミスを降臨させる魔法陣を起動させるまでの時間稼ぎだが、それも満足にこなせるか判らない

 

「判っているでござる」

 

「無理はしないさ、無理はな」

 

クロとよく判っていない様子のポチ。そしてその後ろに控えている言峰は何も言わず一歩下がる、幽霊と生物の中間と言う事は言峰の洗礼詠唱が切り札になる可能性もある。だから前衛を張られては困る訳だ

 

「……」

 

言葉を発せず、刀を構える黒い影。足の動きや手の動きから来ている服装は着物に近いのだと予測がつく、俺自身も愛用の剣を構え黒い影と対峙する、話によれば一太刀で8度の攻撃を繰り出す刀とか、俺が4つ、クロとポチで2つずつで4つ弾いてくれば耐える事が出来る計算だが、影の攻撃。これを目にしていないから、それについての対策が今一判らない。とにかく相手の一挙手一投足を見逃さないようにする事だ

 

「……」

 

黒い影は俺や言峰に視線を向けず、クロとポチに視線を向けている。人狼の里から追放された一族と言う話だったが、どうもそれも信憑性を帯びてきたか……しかしそれにしてもまるで気配が無い。そう思った瞬間黒い影が掻き消える。反射的に剣を振り上げる

 

「っぐうっ!」

 

「……」

 

何時の間に上空に移動したのかわからないが、全体重をかけた一撃に顔が歪む。足が地面にめり込むのが判る、どうも俺とブリュンヒルデの影同士の転移はある程度は封じているが、完全に封じることは出来ていないようだ

 

(馬鹿力が!)

 

一太刀で8度の刃が飛ぶと聞いていたが、これは純粋な力だけでも十分な脅威になる。剣を振るい影を弾き飛ばそうとするが

 

「っ!」

 

影の重さが一瞬で消え、力を込めていた分大きくバランスを崩す、慌てて体勢を立てなおそうとするが、今度は地面から槍の形状をした刃がいくつも飛び出す

 

「ちっ!」

 

舌打ちしながら地面を蹴った瞬間。背後で激しい金属音が響く、俺は飛行をキャンセルし、地面に着地する

 

「不用意に飛ばないほうが良さそうだな」

 

音を立てて地面に落ちたのは言峰が手にしているやけに柄が短い剣。そしてその刀身はドリルか何かで抉られたように、穴が空いている

 

「木の葉の影からも刃を出せるようだ。気をつけたほうがいい」

 

「そのようでござるなッ!」

 

言峰の警告とクロの声に振り返ると、クロと影が切り結んでいて俺とポチが動こうとすると再びその姿を消す

 

「ええいっ!鬱陶しい!」

 

「……」

 

今度はポチの背後に現れ刀を振るう。切っ先から飛び出した8つの刃を迎撃していると、背後から切りつけられる

 

「ちいっ!」

 

俺は鎧に加えて全身を魔力で防御しているので、魔力を吸収されるという事は無かったが思った以上に厄介な相手だ。反撃にと剣を振るうが命中する寸前にその姿が再び霧散する

 

「ジリ貧になる!クロとポチはお互いの背後をカバーしろッ!」

 

バラバラになっていたら各個撃破される。俺は大丈夫だが、クロ達は不味い。3人が集まったのを確認すると同時に剣を満月に向かって掲げ、魔力を暴発させる。一瞬周囲が昼間の様に明るくなり、影の姿がはっきりと浮かび上がる。

 

「「でやあッ!!」」

 

「!!!」

 

その隙を見逃すクロ達ではなく、一瞬で間合いを詰めて刀を振るうが、影も影で並大抵の技量ではない。刀の柄でポチの刀を受け止め、刀身でクロの刃を受け流す。命中したのは言峰の投げた剣だけで、しかも浅く切りつけただけでダメージはさほど通ったように思えない

 

(これだけ苦労してやっと一打ちか)

 

しかも録にダメージが通っているように見えない。ガープの事だ、俺が出て来ることは計算して俺の攻撃に対する防御は万全にしているのだろう。俺は溜息を吐きながら剣を構えなおし、揺らめいていた身体が元に戻り刀を構えなおす影を睨みつけながら早く、魔法陣を完成させろと心の中で呟くのだった……

 

 

 

 

遠くから何かの炸裂する音が響き、顔を上げるとセーフハウスのある方角から光の柱が上がっているのが見えた

 

「来たみたいですね。美神さん」

 

「……もう少し時間的な猶予が欲しかったわ」

 

額にタオルを巻いて長い髪が目に掛からないようにしている美神さんが顔を歪めながら呟く、聖奈さんや、琉璃さん、それにくえすも似た様な姿をしている。これだけの面子で魔法陣を連日書いていたが、やはり神を呼び出す魔法陣。満月の日には間に合わなかった……あの影の相手は影から転移してくる。聖奈さんとカズマさん、そしてくえすにシズクの4人の結界で封鎖されているので、影で転移してくることは無いと思うが、フェンリルが復活すればこの結界も役に立たないだろう。フェンリルが復活する前に、なんとしても魔法陣を仕上げなければ……下手をすればカズマさん達は無駄死になってしまう

 

「後1時間……ううん、30分もあれば仕上がるんだけど」

 

「やっぱり途中で魔法陣を変えたのが響いていますわね」

 

長い間保管されていた魔法陣は所々欠損している部分もあり、これでは完全な形で召喚出来ないと瑠璃さんが神代家の知識を使って魔法陣を改良してくれたのだが、それのせいで時間ギリギリで間に合う計算が少しずれてしまった

 

「無いものねだりをしても仕方あるまい。今出来る事を全力でやるべきだ、そうだろ?」

 

ぶつぶつ文句こそ言っているが高城さんの手の動きは早い。聖奈さんよりも琉璃さんよりも遥かに早い、彼女1人で魔法陣の4分の1を仕上げていると言えばその速さがどれだけ異常か判るだろう

 

「閣……んん!高城さん、最悪の場合、私も出ます。その間に何とかなりますか?」

 

最悪自分も時間稼ぎになるので何とかなりますか?と聖奈さんが高城さんに尋ねる

 

「無理だな。焦って仕上げれば荒が出る。ここは時間稼ぎ組の奮闘に頼るべきだろうよ」

 

「確かにそれしかないわよね……それに聖奈、貴女だと正直フェンリルとなると聖奈だと相性が致命的に悪いでしょ?」

 

話をしながらも魔法陣を描く手は一瞬たりとも休むことは無い。勿論私もだ

 

「アリスちゃんは俺と一緒にこの中を塗りつぶそうな」

 

「はーい♪」

 

横島とアリスちゃんにも魔法陣の写しを渡し、色を塗りつぶす所を担当してもらっている。その理由はアリスちゃんを安全に護れる場所が何処にも存在し無いからだ。ネビロスさんとベリアルさんが怒り狂うような展開は避けなくてはならない

 

「そうなればワシが出ます、今回の件はワシの責任ですから」

 

人狼族の長老が沈鬱そうな表情で言う。かつて先祖返りをした一族を殺す事で里を守ろうとした、その責任が回り回って戻って来た。人狼を憎む最悪の存在としてだ、言ったら悪いがその事に関して私達は何も言う事が出来ないし言うつもりも無い。それだけの覚悟があるのなら時間稼ぎに向かってくれても良い、長老は私達が何も言わないのを了承を受け取ったのか、狼男の姿になり森の中に消えていく

 

「長老……美神殿、まだござるか!?」

 

魔法陣の中心にいるシロがまだでござるか!と叫ぶと全員に大人しく黙って座ってろ!と怒鳴り返され、尻尾と耳を垂れさせて座り込む。焦っているのは皆同じなのだ、そこに怒らせるようなことを言わないで欲しい、シロに憑依されるのではなく雌の人狼であるシロと人狼族の秘法の魔法陣を組み合わせる事で他の神ではなく、アルテミスだけに絞込み神霊召喚を行う。シロのコンデイションも大きく作用しているので、動かずに意識を集中してなさいという怒鳴り声があちこちから響く

 

「……ノッブ、牛若丸。ペンキが足りないぞ」

 

私の反対側で魔法陣を書いていたシズクがペンキが足りないと呟く、小さな声なのにそれがやけに響く。それだけ皆集中していて、周囲が静まり返っているという証拠だ

 

【今もって行くわい!色は!】

 

「……黒の42」

 

【他に足りない人はいませんか!】

 

【青の53番ってどこですかー!?】

 

影と戦えない幽霊トリオはペンキ運びに悪戦苦闘している。おキヌさんはともかく、ノッブと牛若丸が絶望的に戦力にならない。そしてチビ達は言うまでも無く戦力外なので、若干つまらなそうに魔法陣の外で大人しく座っている

 

「げ!よ、横島!はみ出しちゃった!」

 

手伝っていたタマモが泣きそうな顔でそう叫ぶ、横島はその声に立ち上がりながら

 

「大丈夫大丈夫!直ぐ行くから!アリスちゃんちょっと待っててな」

 

「はーい」

 

横島はアリスちゃんの面倒を見るだけでではなく、はみ出したや、間違えたという魔法陣の修正作業をしてくれている。小さなペンキ缶を手にし、小さい筆ではみ出した部分を手早く修正してくれている

 

「横島君、悪いけどそれが終わったらこっちもお願い!修正じゃなくて、魔法陣を少し切れてる部分なの!」

 

「それが終わったらこっちですわ!」

 

琉璃さんとくえすの横島を呼ぶ声が重なる。魔法陣を書いて、文字を書いて、そして色を塗る。やることは恐ろしく地味でそして時間の掛かる事だ。しかも文字を刻むのは古代文字なので琉璃さんか聖奈さんの2人に限られるが、魔法陣も書きあがっていない。私とシズクと美神さんとくえすの4人で全力で書いているがとにかく大きい、しかもコンマのズレも許されないという極限の縛りまでついている。色を塗っているタマモとアリスちゃんはアリスちゃんではみ出す事が許されないし、色むらも勿論駄目と言う恐ろしい難易度が付け加えられている

 

「神宮寺さん終わりました!次は!?」

 

「こっち!急いで!」

 

横島があちこち走り回って、必死に魔法陣を修正している。私も手元の魔法陣の全体図と睨めっこをしながら、魔法陣を書き上げることに全神経を向けるのだった……

 

 

 

琉璃さんが合流してから2日。全員が殆ど不眠不休でアルテミスと言う神様を呼び出す魔法陣を描く事に尽力していた……あの影がフェンリルと言う魔獣の影であり、それに対抗できる神様を呼び出すためにだ

 

(カズマさんやクロさん達は大丈夫だろうか)

 

時間稼ぎをすると言ってセーフハウスの近くに待機してくれたカズマさん達、その強さは知っているつもりだが、相手は攻め手が一切判らない正体不明の敵。影を媒介に転移する問い能力を持っている化け物だ。少しでも早く魔法陣が完成して欲しい、俺はそればかりを考えていた

 

「「「「出来たッ!!!」」」」

 

美神さん達の出来たという声が重なり、琉璃さんが掛け軸を広げる。俺は何かあったら危ないと思いアリスちゃんの元へ向かう

 

「お兄ちゃん、どんな神様が出てくるか楽しみだね」

 

そうだねとは返事を返せなかった。俺はアルテミスと言う神様を知らない、楽しみというよりも怖いという気持ちの方が強かった

 

「遥か星霜に去りし古き神よッ!今一度姿を形を成さんことをッ!」

 

魔法陣全体が光り輝き、天を突くような光の柱が魔法陣から噴出す、その光の柱が消えた時、魔法陣の中心に浮かぶように一人の女性の姿があった、短すぎる赤いスカートに、肩や首がむき出しで、胸を僅かに覆っているだけと言う赤いドレス姿の女性。物凄い美女で思わず視線が胸に向けられるが、蛍に尻を抓られ、視線を逸らす。女性はんーっと大きく背伸びをしながら俺達を見つめ

 

「神霊アルテミスでーす!よろしくね!」

 

「ペットとかぬいぐるみとかのオリべえでーす。よーろーしーくー」

 

そしてその女性が抱き抱えている熊のような、訳の判らない生き物が喋りだす。俺はゆっくりと美神さん達の方を見た、美神さん達もあんぐりを口をあけている。これは完全に予想外だったのかも……

 

「それでー私を呼んでどうしたのー?せっかくダーリンと楽しく過ごしてたのに」

 

「ぷぎゅる!?締まってる!首決まってるからぁ!」

 

熊のような生き物を抱えながら女性が魔法陣の上に降りてくる。なんと言うか、軽い。俺の想像していた神様とは違いすぎる

 

「女神様!拙者達に力を貸して欲しいでござる!フェンリル狼が復活をしようとしていて、拙者達ではどうしようもないのでござる」

 

シロがアルテミス様に必死に頼み込むが、アルテミス様はうーんっと腕を組んで反応が芳しくない

 

「私はもう世界を去った神だからねー、そりゃ私を信仰してくれるのは判るけど……ちょっとそれはお門違いじゃないかなー?そういうのはこの世界にいる神様に頼んでよ」

 

自分達で何とかしてという言葉に思わず絶句する。用が無いならもう帰るわよ?と軽い感じで言うが、いなくなられては困る

 

「な、なんとかなりませんか!アルテミス様」

 

聖奈さんがアルテミス様に駆け寄るが、アルテミス様はもう興味は無いと言う感じで一瞥し

 

「だって私もそうだけど、世界を去った神は残ってる神に全部役目を引き継いだでしょ?私じゃなくて、今世界にいる神に頼むべきだと思うのよ?ねえ、そこの金髪の子もそう思うでしょ?」

 

「……さあな」

 

冗談ではなく本心からそう思っているのが良く判る。しかし何でこのタイミングで高城さんだけに声を掛けたのだろうか?実は高城さんも神魔とか……そんな感じなのだろうか?と言う疑問が一瞬頭を過ぎるが、今はそれ所ではない。美神さんや琉璃さんも声を掛けようにも、その冷酷な気配に何も言葉を発する事が出来ないでいる

 

「いやいや、そういうなよ。アルテミス、お嬢さん達。俺がアルテミスを説得してやるから、その素晴らしい胸を少し「ダーリンッ!なん

で浮気するの!」ふぐいいっ!出る!中身!でる!内蔵とか!そんなのが全部口から出るぅ!!!」

 

聖奈さんをナンパしようとした熊の生き物がじたばたと暴れる。アルテミス様はそんな熊を冷めた目で見つめながら

 

「神ってなんも無しに助けるわけじゃないのよ?助けたとして何をくれるの?捧げ物も無いじゃない、久しぶりに呼ばれたから来てみたけどー……ふざけてるの?」

 

その瞬間凄まじい圧力が放たれ、立っていられずにその場に膝を着く。小竜姫様達とは根底から違う、ぷるぷる震えているアリスちゃんの手を握り大丈夫だよという声を掛けることすら出来ない、ポケットの中で震えているチビとうりぼーもアルテミス様に対する恐怖を全身で表していた

 

【なんかワシが想像していた神と違うんじゃが】

 

【そうですね……信じる者は救われるのでは】

 

「……お前ら黙ってろ、神は簡単にへそを曲げるんだから」

 

ひそひそ話しているノッブちゃんと牛若丸に一瞬視線を向けるアルテミス様、シズクやノッブちゃん達を見て、不機嫌そうな顔を更に不機嫌そうに歪め、どこかから取り出した変な形状の弓を俺達に向ける。矢は無いのに、殺される光景を想像して足が竦む

 

「本当なら神罰を下すんだけど、それをしないだけでも良いとして欲しいわね~それか今からでも捧げ物を用意してくれる?それなら考えても良いけど」

 

今から捧げ物なんて準備している時間なんて当然無い

 

「さ、捧げ物以外では駄目でしょうか!用意できるものなら何でも用意します」

 

「宝石とか、金とか、そういうので良ければいくらでも用意するわ」

 

琉璃さんと美神さんがそう言うがアルテミス様の反応はやはり良いものではない

 

「そういうのは全然興味ないのよねー……捧げ物がないなら生贄かなーそこの男の子とか、良い魂してるよね」

 

アルテミス様の視線と弓が俺に向けられ、ぎょっとして思わず後ずさる。美神さん達が険しい顔をして、アルテミス様を睨みつける

 

「あはは!冗談、冗談。私処女神だし、ダーリンいるし、男の生贄はいらないかなー。でも……んー対価をくれないとねー。神って無条件で力を貸すわけじゃないんだから」

 

貴金属も駄目、捧げ物を用意している時間は無い。じゃあどうすればいいんだ……俺達が頭を抱えているとアルテミス様はそうだと言って、弓矢を1度虚空に消し去り、良い事思いついたと言わんばかりに笑い

 

「私恋話とか聞かせて欲しいなー?」

 

はい?まさかの言葉に俺達全員の目が点になる。アルテミス様は熊を抱き抱えながら

 

「恋は良いわー♪私も恋をしたから変わったもの♪浮気癖が少し酷いけど、優しいダーリンがいるし」

 

熊のぬいぐるみを胸元に抱き抱え、さっきの気配と幸せと言うオーラを撒き散らすアルテミス様。胸元の熊の足がぴくぴくと痙攣しているのは指摘したほうが良いのだろうか、さっきの重々しい空気がなくなったので怖いと言っているアリスちゃんにやっと大丈夫と声を掛ける事が出来る中。俺は熊の心配を少しだけしていた

 

「燃えるような純愛も良いし、甘酸っぱい青春の恋も大好き♪そういうのあるー?私そういう話聞くのすッごい大好きなの!恋話たくさん

聞きたいなー聞かせてくれるんなら考えてもいいんだけどなー?」

 

蛍や神宮寺さん達をチラチラっと見つめる、見つめられた蛍と神宮寺さんは一瞬呆けた顔をしたが

 

「し、します!そのしますから!力を貸してくれませんか!?」

 

「わ、私もいたしますから」

 

【ゆ、幽霊でも良いですか!?それならし、します!】

 

顔を赤くして恋話をすると言うとアルテミス様はにまあーっと物凄く嬉しそうな顔をして

 

「それなら手伝っちゃう!それに最近人間界面白そうって思ってたらダーリンとハネムーンしちゃおー♪」

 

「いや、待て待て!俺お前と結婚とか、「ダーリンうるさい」ぴぎゃあ!!」

 

胸元にぎゅっと詰め込まれ痙攣する熊。なんと言うか扱いが酷すぎる気がしなくも無い

 

「じゃー行きましょうか?あ、もし嘘だったら殺すからね?恋話楽しみだなー♪」

 

最後にもう1度全員を威圧するかのように、おそろしい気配を放ち。あっちのほうねと笑って飛んでいくアルテミス様。俺達はその姿を見つめ暫く呆けていたが、アルテミス様の後を追ってセーフハウスの方角へと走り出すのだった……ちなみに走る能力に不安のあるシズクとアリスちゃんは巨大化したうりぼーの背中に乗っていた事を追記するのと、なんかやけに蛍と神宮寺さんが俺を見るのに、どうしたんだろう?と俺は首を傾げるのだった……

 

 

 

セーフハウスの近くの森は既に破壊されつくし、クロとポチの体力は限界が見え始めていた。それは弱いとかではない、相手の狙いがクロとポチだからだ。俺や言峰よりもダメージが大きい

 

「おい、生きてるか」

 

周囲を鮮血に染めているクロ達に生きてるか?と声を掛けながら、2人を庇う様に前に出る

 

「……まだまだ平気でござるよ」

 

「ふん、誇り高き狼がそうそう弱音を言うものか」

 

かなり消耗しているが膝を着かないクロとポチに正直感心する。ダメージも通らない、こっちは良いように嬲られるだけと言う絶望的な状況に良くここまで耐えていると

 

「この御老体は限界だな」

 

「ま、まだまだぁ……」

 

言峰の洗礼詠唱の効果が薄いので回復に回って貰っていた、言峰が素早く人狼の老人の首に腕を回し絞め落とす。その闘志は買うが、既に瀕死の一歩手前長老と言う立場なのだから、自分の身を護ることも考えるべきだ

 

「シッ!」

 

「!!」

 

だんだん馴れてきて、影からの突進と自在に作り出す刃を受け止める事は出来るようになってきたが、それだけだ。反撃は当たらず、当たったとしてもダメージは殆ど入らない。完全なジリ貧だ、しかもやはり俺の魔法に対する防御は完璧で魔法の効果も殆ど無い、あいつら完全に俺が無力になるようにしてやがる……

 

(まだか)

 

有効打がまるで入らない、8連の刃も徐々にその範囲と威力を肥大させ、これ以上耐えるのが難しい所まで来ている。ブリュンヒルデ達はまだかと内心焦り始めた頃

 

「照準よーし!やったれーッ!」

 

「はーいっ♪」

 

この場に似つかわしくない女の声が響いた時。恐ろしい速度で光が駆け抜け、影が手にしていた刀を中ほどから叩き折る

 

「ビュレト様!大丈夫ですか!」

 

「良かった!ギリギリ間に合ったみたいね!」

 

「父上大丈夫でござるか!?」

 

くえすを筆頭に駆けつけてくる美神達。上空に佇む女神を見て間に合ったのかと安堵の溜息を吐く、影は失った獲物を手に呆然としている。その隙に横島達がクロ達に駆け寄り手を貸して、後ろへと下がっていく

 

「クロさん、ポチさん、大丈夫ですか!?」

 

「ギリギリでござるよ」

 

「遅い!もう少し早く出来なかったのか?」

 

獲物を失った影に視線を向けるアルテミス、影もアルテミスを見つめたその瞬間。耳障りな声を出した

 

『遅い……やっと現れたか神よ』

 

ガラスが擦り合わされるかのような不愉快な音、だがその声は動揺しているわけでも、怯えているわけでもない。現れるのが遅いと言わんばかりに不機嫌そうな物だった

 

『神を喰らい、我は完全となる……貴様が来るのを待っていた……』

 

待っていただと!?影の言葉に警戒心が跳ね上がる。ブリュンヒルデに目配せをすると素早くルーン文字を空中に刻み、俺達にルーンで出来た守りを掛ける

 

『偉大なる狼王は既に目覚めた!神!貴様が最初の供物だ!!』

 

凄まじい咆哮と共に影が弾け、見る見る間に巨大化していく、4つの瞳と世界を飲み込むと言われた恐るべき魔狼が自らの復活を喜ぶかのように、凄まじい咆哮を上げるのだった……

 

 

リポート19 魔狼の咆哮 その8へ続く

 

 




次回はフェンリル戦を書いて行きますが、今回は仮面ライダーは出しませんのであしからず、戦力は原作以上ですが相手も原作以上で書いて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

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