GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

160 / 232

どうも混沌の魔法使いです。今回は前回の勝負の後の小竜姫の反応から始まり、モグラちゃんのスーパーパワーの話とヒャクメの登場までを書いて行こうと思います。妙神山は大分長く予定しているので、どうなるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします


その4

 

 

リポート23 妙神山 その4

 

~小竜姫視点~

 

無理をした横島さんをシズクさん達が治療と言って部屋に運ぶのを私は呆然として見つめていた。さっきの横島さんは凄かった……私の動きを完全に真似していた。力や圧は異なるが、自分がもう1人いるとさえ思った。

 

(今であれなら……)

 

横島さんが今後どうなるのか私には見当もつかなかった。長いこと妙神山にいるが、大体見ればどれくらい強くなるかと言うのは見極める事が出来る。蛍さんはまだ霊力も伸びるし、技術も磨くことが出来る。後は切っ掛け次第で、美神さんは霊力、技術共に成長しきっているが、もう一皮剥けると思う。だけど、横島さんは底が全く見えないのだ。

 

「今であれなら……私を……」

 

超えるかもしれない。その言葉は口に出来なかった、そこまで呟いた所で頬が熱いのに気付いてしまった。

 

(いえいえ!わ、私は何を今考えた!?)

 

一瞬思ってしまった、彼ならばと私を倒して婚姻をと一瞬思ってしまったのだ。私が妙神山にいるのは修行のためと言うのもあるが、もう

1つ理由がある、それは婚姻をとうるさい他の竜族と距離を取るためでもある。自分よりも強い相手としか婚姻しないと言ったのは何時のことだったか……思い出せないほど前の話だったのは判っている。結局私が妙神山に来る前に私に勝てた相手は誰一人存在せず、何時までも意地を張らずに婚姻、婚姻とうるさい私に負けた若い竜族の男達の相手をするのも疲れ果て、良縁があるのにとうるさい若い竜族の娘にも疲れ果てた時に竜神王様が私を妙神山の管理人としたのだ。

 

『何時の日か、お前が求める伴侶が出来ると良いな』

 

と笑い、私をこの地の管理人として、妙神山に括られた神としたのだ。ここならば修行で力を求める相手には事欠かない、いずれは私に勝てる相手もと思い、それも忘れかけていた時に熱を与えられたのだ。横島さんが限界を向かえて倒れ、押し倒された時に不思議と嫌な気持ちは感じなかった。

 

「いやいや!彼は人間で!」

 

違う違う、否定する言葉を呟いて、今のが自分の気の迷いと思いたいのに……どうしてもそれを否定しきれない。

 

「彼は人間で私は竜族で」

 

だから彼の方が先に死んでしまう、私はそれを看取る事になるのが嫌なんだ。

 

「で、でも……」

 

もしももしも横島さんが神魔族に認められるような大きな活躍をすれば、今の時代ではありえないが、人間から神になる事だって……不可能じゃ……。

 

「だから違くて!!」

 

そこまで考えた所で違う違うと思わず叫んだ、私が言いたいのはそんなことじゃなくて……それは人の理に反する事で、横島さんを想っている蛍さんに悪くて……。

 

『でも人間だから早く死ぬでしょう?そしたらどうなるのかしら?』

 

「だ、誰!?」

 

今誰かの声が耳元で聞こえた気がした。思わず振り返り、辺りを見回すが誰の姿も無い。でも今の声はやけにはっきりと聞こえた、耳に触れる吐息の温度まで感じたほどだった。

 

「違う違う……」

 

確かに横島さんは好感の持てる人物だ。誠実で真面目で人を思いやれる優しい人で……。

 

「!」

 

ボッと顔が熱くなるのが判った。考えれば、考えるほどに横島さんに惹かれ始めている自分を自覚してしまった。

 

「違う、違います。私はそんなことを考えてない」

 

気を静めるために神剣を振るう。何百年も繰り返したこの動き、だが普段の動きと比べて精細がまるで無いのが判る。それは自分が迷っている。悩んでいるというのが明らかだった。

 

「彼は人間で、私は神族」

 

自分に言い聞かせるように呟きながら剣を振るう。人と神が結ばれることは許されない、寿命も価値観も違う、お互いに悲しい想いをするだけ。だから結ばれてはならないのだ。

 

「これは違います」

 

愛情なんかじゃない。これは、今私の胸を埋め尽くしているのは弟子が大きく成長しようとしていることを喜んでいるだけだ。

 

「弟子の成長は師の喜びだから……」

 

自分を超えて大きく成長しようとしている。その片鱗を見せている横島さんが誇らしいだけで、愛情なんかじゃない。もし愛だとしてもそれは友愛で、決して恋愛感情のもなんかじゃない。

 

『それで自分の気持ちに蓋をするの?』

 

「!?」

 

また耳元に聞こえた声に振り返る。だが先ほどと同じく、やはり声の主の姿は見えない。

 

(幻聴?)

 

私の気の迷いが今の声の正体?誰もいないのに、なんであんなにもあの声が聞こえるのか判らない。最初はもしかして清姫様かと思ったが声が違う……今の……今の声は……。

 

「わ、私の声……や、やっぱり幻聴ですよね」

 

今のは間違いなく私の声だった。声のトーンは少し違うが、発音などは間違いなく自分の声だった……だから幻聴だと思った。声として聞こえたのではなく、私がそう思っているのかもしれないと思ってしまった。

 

「違います、私はそんな事は考えていない」

 

横島さんと蛍さんが一緒にいるのを見て、微笑ましいと思ったのだ。それがねたましいなんて思った事は無いし、蛍さんの場所に自分が入りたいと思った事も無い……そう自分に言い聞かせるように剣を振るうが、振る度に剣の動きは鈍く、精彩を欠いて行った。

 

「……はぁ……はぁ……」

 

違うと言い聞かせる度に迷いが生まれるのが判る。これは禅を組んで気を静めるべきだと思い、私は剣を戻し修行場に足を向けるのだった。

 

【もうちょっと、堕ちてしまえばもっと楽になるのに】

 

勿論言うまでもなく、小竜姫を惑わしているのは未来の自分自身であり、己の心に蓋をした結果を知る自分の言葉だからこそ、それは深く小竜姫を悩ませる結果となった……そしてそれは老師を喜ばせる結果にもなった。

 

「来た来た来た!変われ変われ変われ!!はが!?」

 

「弟子を遊びの対象にするな!」

 

小竜姫の倍率が変動中から計算中に変わった事に興奮している老師の頭に、ロンの溜息と共に繰り出されたチョップが食い込むのはほぼ同時だった……。

 

 

 

 

~美神視点~

 

横島君の治療が終わるのと、シズクとおキヌちゃんによる昼食の準備が終わったのはほぼ同時で、そのまま昼食なった。そしてお昼からの修行は座禅だった。シロは座禅と聞いて露骨に嫌そうな顔をしたので、我関せずという顔をしていたタマモを見て、小竜姫様はにっこりと笑った。

 

「じゃあ、シロさんは、タマモさんと組み手でもいいですよ?」

 

「「え?」」

 

嬉しそうなシロと嫌そうなタマモの声が対照的だった。でも小竜姫様は笑みを浮かべたまま、話を続ける。

 

「霊力をまともにコントロールできないとどうなるのか教えてあげてください」

 

「あーはいはい、判ったわよ」

 

不思議そうな顔をしているシロと、判ったと言う顔をするタマモ。小竜姫様の言いたい事は霊力を駆使して、シロを翻弄し、霊力を感知する事の大事さを認識させろと言う事だろう。私達が言うよりも年齢が近く、そして同じ狼に属するタマモだから、その差をモロに教えれると小竜姫様は考えたのだろう。

 

「あそこの道場を使ってくれて構いません。では美神さん達はこちらへ」

 

奥に見える道場を指差す小竜姫様に頷き、そっちに駆け出すシロとその後を面倒そうに付いていくタマモを見送り、私達も案内された道場に向かった。

 

「もっとこうえっと」

 

こじんまりとした道場で座禅を組むと聞いて、横島君がきょろきょろと周囲を見ながら、言って良いのかな?と言う顔をし、小竜姫様は笑いながら、横島君が尋ねようとした事を当てて見せた。

 

「派手な修行を想像していましたか?でも違います。基本に忠実な修行をするので、こういう地味な修行です」

 

横島君の問いかけに小竜姫様は笑いながら言う。基礎を決定的に鍛えて欲しいと言う頼みをしたが、まさか座禅を組まされるとは思ってなかった。

 

【ワシも?】

 

「ええ、貴女もですよ。ここは竜脈の中心、つまり霊力が満ちている場所になります。だからここで禅を組む事で霊力はより高いレベルで身体に吸収されます」

 

だから霊力の底上げになりますよと小竜姫は笑って口にすると、ノッブ達も座禅を組む。私も大きく深呼吸して、禅を組んだがすぐに顔が歪んだ。

 

(くっ、これは思っていたよりも……辛いわね)

 

意識を集中すれば判る。地面から噴出してくる圧倒的な霊力の波に意識が飲み込まれそうになる。牛若丸やノッブ達も苦しそうにしているし、蛍ちゃんも同様だ。

 

「……無理」

 

【心を静めて、霊力を受け入れろ】

 

「いや、無理。パン!ってパンッ!って破裂しそう」

 

横島君の無理って言う声と心眼の助言の声が響くが、横島君はやっぱり無理と呻いている。

 

(もしかして横島君。こういうの苦手?)

 

今まで表に出なかったが、横島君は身体を動かさない修行が苦手なのかもしれない。だが霊能者にとって霊力を感じ、それを受け入れる事は基礎中の基礎だ。

 

(今まで気付かなかった)

 

横島君は危機的な状況に入る度に新しい力や、新しい才能を開花させてきた。その輝かしい物の後で横島君の弱点は隠されていたのかもしれない……この2週間の間にそれを改善出来れば良いけど……私はそんなことを考えながら、吹き出てくる霊力を受け入れ、それを放出すると言う事を繰り返し、魂へと強い負荷を繰り返し掛けるのだった……。

 

「はい、今日はこれくらいにしましょうか」

 

30分ほどの座禅だったが、身体と魂に掛かった負荷は半端では無かった……小竜姫様の終わりの言葉が響いた時にそのまま崩れ落ちる。

 

【よこしまぁ、眼魂……疲れたぁ】

 

【わ、私もお願いしますぅ】

 

【……】

 

倒れて呻いているノッブ達の声と声も無く這って来る沖田ちゃんを見て、眼魂を取り出す横島君。その中に入っていく英霊組が少しずるいと思う、霊力の回復に適した場所とか、横島君に負担を掛けるけど武器にもなるとか、インチキも良い所だと思う。

 

「では後は身体を休めてくださいね。明日はもう少し時間を延ばしていきますから」

 

その言葉が私には死刑宣告のように聞こえたけど、わかりましたと返事を返す

 

「とりあえず、ここから出ましょうか」

 

「はい」

 

「……うす」

 

この場所にいては何時までも霊力に当てられていて、調子を崩してしまう。だから出ましょうと声を掛け、ぐったりしている横島君と蛍ちゃんと共に瞑想場を後にする。小竜姫様はまだ禅を組むと言っていたが、やはり神族と言う事かと思った。

 

【はい、お水ですよー】

 

縁側で座っているとおキヌちゃんが水を運んできてくれたので、それを口にする。良く冷えた井戸水だからか、身体の火照りが一気に冷えていくのが判った。

 

「どうだった?横島君、蛍ちゃん」

 

座禅の感想を聞いてみる。私でも辛いと思った修行をどう感じたのか尋ねてみたかった。

 

「なんか、外から身体を開かれてるみたいな、そんな感覚で気持ち悪かったです」

 

「俺はあれだな。風船みたいに外から空気を入れられて破裂するかもって思った」

 

2人の言っている事はあながち間違いでは無いか、霊力を意識し、それを外から取り入れる。それは自然に行っていることだが、ここまで霊力の密度と濃度が濃いと、身体に違和感を覚えるのも当然だ。そしてあそこで座禅を組む理由も判った。

 

(魂に強烈な過負荷を掛けて、霊力の保有量の向上ね)

 

霊力と言うのは基本的に持って生まれたものだ。だから横島君や冥子見たいに生まれつき霊力の多い人は優秀とされる、その点で言うと、実は私は差ほどでもない。確かに霊力は多いが潜在霊力として魂に眠っている物はそう多くなく、霊能者と活動する頃には既に自分の霊力を100%扱えていたからだ。だから潜在霊力の多いGSは伸び代が多いと注目される、無論その霊力が目覚めないのもそう珍しい事では無いが、目覚めれば爆発的に成長するというタイプだ。

 

(私は魂に負荷を掛けて、霊力のキャパを増やす。2人は外の霊力に触れさせて、それに感応させて眠っている霊力の開放ね)

 

外の圧倒的な霊力に触れさせて、魂の中に眠る力を引き出すための瞑想だと判断する。

 

「うきゅう!」

 

庭の方からモグラちゃんの気合に満ちた声が聞こえてくる。確かモグラちゃんもロンさんの元で竜気をコントロールしている修行をするって言ってたわね……竜の修行がどんなのか気になるので休憩がてら見てみようと思った。

 

「ちょっと見に行ってみましょうか」

 

「そうですね」

 

どんな修行をしているのか気になるし、シズクが面倒を見てくれているチビ達の様子を見に行こうと思う、奥の道場からは騒がしい声が響いてくる。

 

「なんで当たらないでござるか!?」

 

「それは自分で考えてみたら?ほい、ほいっと」

 

シロの困惑した声とタマモの気の抜けた声が聞こえてくる。どうもまだ組み手は続いているようなので、終わるまで余計な事を言わないように仕様と思った。シロには言葉で言うよりも、自分で体感したほうが良いと思ったからだ。

 

「どんな修行をしてるのかな?」

 

「うーん、想像もつかないわね」

 

竜族の修行。どんな事をしているのかな?と話しながら庭へと向かう、しかしそこで待っていたのは私の想像を超える物だった……。

 

 

 

~蛍視点~

 

霊力に満ちた部屋での座禅を終えてモグラちゃんの修行を見に行ったんだけど……そこで待ち構えていたのは想像もしてない光景だった。

 

「うきゅう……」

 

「なーんで角が伸びるかのう?」

 

「……不思議だな」

 

角が伸びてしょんぼりしているモグラちゃんと不思議そうに首を傾げる、シズクとロンさん。一体どうしてああ言う事になっているのかと思わず首をかしげた。

 

「みむ♪」

 

「ぷぎゅ!」

 

横島が来たと気付いてうりぼーとチビが横島にダッシュして甘えに入る。それを見て、モグラちゃんの角がしゅるしゅると短くなり、横島の元に走ろうとしたが、それはロンさんが尻尾を掴んだ事で止められた。

 

「今は修行の時間じゃ。横島殿も応援してくれるぞ」

 

「うきゅう……」

 

めちゃくちゃ不満そうだ。特にチビとうりぼーが甘えているのを見て、不公平だと思っているのは明らかだった。

 

「モグラちゃん。頑張れ!ここで見てるからな」

 

横島が縁側に座り、応援してくれるのを見ると、尻尾をピンと立ててうきゅうっと元気一杯という様子で鳴き声を上げる。その姿を見て、美神さんと苦笑しながら縁側に座る。おキヌさんは横島の頭の上に浮いてモグラちゃんを見つめている。

 

「ではもう1度じゃ、竜気を徐々に高めていくのじゃぞ?」

 

「……焦るなよ

 

ロンさんとシズクの助言に頷き、モグラちゃんが身体を震わせる。徐々に竜気が高まっているのか、その毛が逆立ち、周囲の小石が浮かび上がる。

 

【な、なんか想像していたのと違うんですけど】

 

「俺もびっくりしてる」

 

モグラちゃんの毛が逆立ち、スパークしている。変身?変身するの!?と思わず思ってしまう。

 

「うきゅうううう!」

 

気合に満ちたモグラちゃんの声。それに合わせる様に竜気が光り輝き……。

 

「うきゅうー……」

 

光が晴れた時そこには角がみょーんっと伸びたモグラちゃんの姿があった……。

 

「鹿みたいで可愛いよ」

 

横島のフォローなのかよく判らない声が響く、モグラちゃんの角はしゅるしゅると短くなって元のサイズに戻る。

 

「途中までは上手く行っているんじゃがな」

 

「……なんで角に竜気が集束するんだろうな?」

 

どうも2人にも事情が良く判っていないようだが、角に竜気が行っては不味いと言う事は判った。

 

「みむう!みみーむ!」

 

「ぷぎゅ!」

 

「うきゅ……」

 

落ち込んでいるモグラちゃんを励ましているチビとうりぼー。いつの間にか、うりぼーとも仲良くなったようだ。

 

「修業上手く行って無いんですか?」

 

「いや、順調すぎるほど順調じゃよ?ただ人化となるとこの有様じゃ」

 

「うきゅ」

 

人化……そっか、モグラちゃんの修行って人化の術だったんだ……それを今初めて知った。想像もしてなかった修行には少し驚いた、でも竜は人に化けれるし……良く考えれば当然の修行なのかもしれない。

 

「強さ的にはもう竜族から見ても最強クラスじゃよ」

 

……え?サラリととんでもないことを告げられた気がする。そして強さを見せてやろうというロンさん、あれよあれよと言う内に鬼門が連れて来られたんだけど……鬼門の顔が死んでいたのがやけに気になった。

 

「では鬼門対孫の戦いを始める。よいか?何時も通りじゃぞ?」

 

「うきゅう!」

 

「……」

 

気合満点のモグラちゃんと遠い目をしている鬼門(右)。横島は大丈夫かなっと心配そうにし、チビ達は応援していると言う、なんかとんでもないことになっていた

 

「うーきゅー!」

 

先手はモグラちゃん。気合満点の声と共に巨大化し、ぺちっと虫を潰すような気軽さで前足を振り下ろした。

 

「がっ!」

 

鬼門はそれを腕をクロスして受け止めるが、即座に後足の蹴りが命中し、鬼門の身体が宙に浮く……なんか前に見た時よりも格段に攻撃力が上がっているんだけど……。

 

「うきゅきゅきゅきゅきゅきゅッ!うっきゅー!!!!」

 

「がぼおおおおおお!?」

 

残像が見えるような連続パンチが浮かび上がった鬼門に叩き込まれ、最後の大きな鳴き声と共に繰り出された右ストレートが鬼門を妙神山の外まで弾き飛ばした。

 

「「「……」」」

 

私と横島と美神さんの沈黙が重なった。強いとかそういう次元じゃないと思うんだけど……鬼門、なんも出来て無かったんですけど……殆どサンドバックになっていたんだけど……。

 

「うむ、良いパンチじゃった」

 

「……竜としても素晴らしい成長具合だ」

 

うんうんと感心しているシズクとロンさん。いや、あれ強すぎると思うんだけど……竜に変化しなくてもあんなに強いとか本当にとんでもないと思う。

 

「では次じゃ」

 

「……はい」

 

震えながらやってきた鬼門を見て、物凄く怯えているのが良く判った。

 

「うーきゅー」

 

「いやああ!嫌だぁ!もう実験台は嫌だああ!」

 

モグラちゃんが空気を吸って大きく膨らんだと所で鬼門が錯乱して叫びだす。一体何が起きるというの?

 

【なにが起きるんでしょうか?】

 

「モグラちゃんビームかな?ほら、チビとうりぼーと一緒」

 

横島がのほほんと言うが、ハムスターサイズのビームって考えたら規格外の攻撃力ってことを良く考えて欲しい。

 

「……」

 

シズクが険しい顔つきで指を鳴らした瞬間。私達の周りに水の壁が現れた。

 

「え!?何!?シズク、無言でバリアとか怖いんだけど!?」

 

「大丈夫!?大丈夫なの!せめて説明して」

 

「美神さんも蛍も怖がり過ぎだって、シズクがやってくれるなら心配ないって」

 

突然の事に動揺する私と美神さんに対して、シズクだから大丈夫と言う全幅の信頼で笑みを浮かべる横島。私たちとの温度差が凄まじいと思った次の瞬間……大きく膨らんだモグラちゃんが口を開いた。

 

「うきゅうううう!!!」

 

「ぎゃーっ!!!」

 

モグラちゃんが凄まじい火炎を吐き出し、鬼門の絶叫が周囲に響き渡る。

 

「あちあちあちいいいい!!!」

 

火達磨になって転げまわる鬼門を遠い目で見ながら、モグラちゃんは身体を震わせながら巨大化し、次の攻撃を繰り出した。

 

「うきゅー!」

 

「……」

 

凄まじい冷気を伴った息を吐き出し、鬼門を氷像へと変えた……ドラゴンの攻撃と言えばブレスだけど、それをモグラの姿のまま放ったと言う事に一瞬思考が停止した。

 

「「「え?」」」

 

火炎からの氷結と言う恐ろしいコンボが炸裂し、氷像にモグラちゃんが爪を向けた。

 

「うきゅ」

 

ツンっと突くと氷像にひびが入り、顔を残して鬼門(左)は粉々に砕け散る。いや、これ強いとか言うレベルじゃないと思うんだけど……。

 

「と、こんな感じじゃな」

 

「モグラちゃん、凄い!」

 

「うきゅーん♪」

 

感激したのか、横島がモグラちゃんに駆け寄り、修行頑張ったんだなあと笑うが、私と美神さんは引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「モグラちゃん、帰って来たら大変なことになるんじゃ」

 

「……今私は全力で帰って来ないでって思ってるわ」

 

横島がモグラちゃんを可愛がっているのは知っているが、今の竜種として恐ろしい成長を遂げたモグラちゃんが事務所に帰って来る事に不安を隠しきれない私と美神さんだった……。

 

なおその後はと言うと、うりぼーとチビノッブも鬼門を相手にトレーニングとなったんだけど……

 

「ぷーぎゅうッ!!!」

 

「げぼろぼあばーーーーッ!!!!」

 

残像を残すようなうりぼーの高速突撃で右の鬼門は星となった。ふんすと、自慢げな顔をしているうりぼーが凄く印象的だ。

 

【のっぶうー、のっぶ!】

 

チビノブが召喚した火縄銃が左の鬼門に向かって放たれ続け、鬼門はそれを器用に回避し自慢げな顔をしていたのだが……。

 

「ええい、そう簡単に……カチ?ギッギャアアアアアアーーーーッ!!!!!」

 

【ノッブウ!】

 

いつの間にかチビノブが配置していた茶釜爆弾で右の鬼門を追って星となった。チビ達の恐ろしいほどの強さに私も美神さんも言葉にならないのだった。

 

 

 

 

~ヒャクメ視点~

 

 

 

仕事を一区切り付けて妙神山に横島さん達の今の霊力量の測定と状態を調べる為に来たんだけど、普段の妙神山とはまるで違う雰囲気に気付いたのね~

 

「……うっう、せんせー、タマモに何も出来なかったでござるよー」

 

「だから嫌でもちゃんと修行しないからだぞ、明日からはちゃんと座禅もするんだぞ?」

 

するでござるーと横島さんに抱きついて泣いている人狼シロ、横島さんはそんなシロを励ましながらも注意している。

 

【おお!やっと来たか!ワシの霊力の今の測定をしてくれ】

 

【よろしくお願いします!】

 

【霊力が戻れば、もっと強くなれますよね!?】

 

英霊3人組に詰め寄られ、奥の部屋から料理を運んでくるシズクさんと小竜姫とおキヌさん……なんかちょっと見ない間にずいぶんと騒がしくなったのねと思い、思わず立ちすくんでしまった。

 

「あ、ヒャクメ。来たんですね?とりあえず霊力の測定の前に、夕食にしましょう?」

 

「あ、そうなのねー?ありがとー」

 

とりあえず普通に食事に招いてもらった事に感謝し、開いている場所に腰を卸すのだった(横島さんから1番遠い場所)

 

「はー疲れた、シロが何度も突っ込んでくるから疲れたわ」

 

「お疲れ」

 

夕食を終え、疲れた疲れたといっているタマモさんと、そんなタマモさんを睨んでうーっと唸っている。何があったのか気になりはしたが、泥沼になりそうだし、それにまだ仕事も全部終わっている訳では無いので、横島さんと色々話をしたいが、そんな時間も無い。

 

(でも2日後にはおやすみなのね~)

 

2週間滞在するらしいので2日後にゆっくり遊びに来ればいいと思い、夕食を終えた後。本来の目的である、霊力の測定を始める。

 

「はーい、じゃあ~英霊さんからこっちに来るのね~♪」

 

愛用の鞄型のコンピューターから出した簡易の霊魂のレントゲン装置や、霊力測定器などを取り出して英霊組みから診察を済ませ、シロさん、タマモさん、蛍さん、美神さんと検査し、最後に横島さんの額に測定器を付けて、横島さんの今の霊体の状態を記録する。

 

「はい、ちょっと失礼するのね~♪」

 

横島さんのデータをコンピューターへと取り込むために、キーボードを操作する。この場で確認も出来るけど、私は如何しても顔に出てしまうので、この場で検査せずにデータを取り込んで鞄を閉じる。

 

「ちょっと検査するのに時間が掛かるから~2日後にまた来るね~」

 

気をつけてと手を振る横島さんに手を振り返し、私は名残惜しいものを感じながら、妙神山を後にして、そしてその場で検査しなかったことに戻ってから心底安堵した。

 

「え、え、う、嘘!?ど、どう言う事なのね!?」

 

横島さんの検査結果を出していて、私はパニックに陥った。私のコンピューターの出した結論を認める事が出来ず、また認めたくなくて……慌てて診察結果を手に部屋を飛び出した。

 

「りゅ、竜神王様~!!」

 

私では対処しきれないし、胸の中に留めておくことも出来ない。私はプリントアウトされたカルテを手に取り、コンピューターの電源を切って竜神王様の元へと走った。

 

「こ、これ~見て欲しいのね~!」

 

「どうした、ヒャクメ。そんなに慌てて」

 

警護の神族に緊急事態と叫んで、慌てて竜神王様に横島さんのカルテの結果を差し出す。

 

「これは……真か?」

 

「は、はいなのね」

 

口にしてはいけない、何処に耳があるのか判らないので、具体的な事は何も口にしない。私の意図を正確に汲み取ってくれた竜神王様は小さく頷いた。

 

「早急な話になる、お前の休暇を早めて、明日からとする。それと妙神山に赴く際に老師が破壊した宝物についての言及に私も向かおう」

 

「ありがとうございますのねー」

 

老師の暴れっぷりは皆知っているので、妙神山で何かを壊したと事に対する言及と言う事にして、竜神王様が妙神山に同行してくれる事に同意してくれた事に私は心の底から安堵した。カルテに出された横島さんの検査結果……それは人間の魂から変質し始めている予兆が出ていると言う事だったから……受け入れたくない現実が重く、私の肩へと圧し掛かっていた。

 

 

リポート23 妙神山 その5へ続く

 

 




次回はちょっとギャグテイストで書いて行こうと思います。シリアスが続いていますからね、モグラちゃんはスーパーモグラちゃんへと進化しました。近接・遠距離に抜群にパワーアップ、今の段階ではマスコットの中で最強なのは間違いないですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
  • 今のままで良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。