GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は塔突入に向けての準備や、対策などを色々な視点で書いていこうと思います。ちょっと長くなると思いますが、今回の更新もどうかよろしくお願いします


その5

 

リポート24 反逆者達の進軍 その5

 

~アシュタロス視点~

 

薄暗い部屋に私とドクターカオスのキーボードを叩く音だけが響く、残り時間52時間……作業を始めて20時間と少し、作業は当初難航すると思っていたのだが、思ったよりもスムーズに作業を進める事が出来ていた。

 

「……やはりここは精霊石を結界形式で配置して、防御力に回すべきだと思うんじゃが」

 

「そうすると攻撃に回す分が足りなくなりますから……」

 

攻撃力と防御力を両立させなくてはならない、ドクターカオスの考え方は徹底して防御に傾倒している。その理由は少しでも生存率をと考えているのは判る。

 

「私はプロテクターに精霊石を使わず、貴方の擬似精霊石の粉末と私の魔術を併用するべきだと思います」

 

神代君がGS協会か持ち出してきた精霊石と、小笠原君、六道君、冥華さんが持ち出してきた精霊石は4人で20近く、普通の除霊で使うには過剰すぎるほどの量が集まっているが、あの塔の中身がどうなっているのか判ら無いが、100%断言できる。悪辣な罠と無数のゾンビや悪魔で埋め尽くされていると、防御を固めるのは確かに生存率を高める上で非常に重要なファクターになると思う

 

「囲まれたりする場合を考えれば、やはり状況を打破出来る広域に広がる武器が必要だ」

 

「……むう、それもそうか」

 

生存できたとしても囲まれて突破出来ないのでは、闇雲に消耗し、そして時間だけを浪費する事になる。

 

「武器を作る方向でいいですね?」

 

「うむ、そうじゃな」

 

1人では話し合いなどは出来ない、かと言って2人だと意見がぶつかることもある。だが、こうして意見を交えることが何よりも大事なのだ

 

【分析などはいらないかネ?私にはそれくらいしか手伝いが出来ないのだけれド】

 

教授が地下の開発室にやってきて手伝えることは無いかね?と尋ねてくる。2人で開発して、強化して計算するでは明らかに時間が足りなくなる。

 

「すまないが、これの計算式を出して欲しい」

 

【任されたヨ!】

 

擬似精霊石と言うのは擬似と名の付くとおり、ほかの物質で精霊石と同じ効果を持つように生成された物質だ。つまり通常なら精霊石と相性の良い素材との組み合わせなどでは逆に効果を発揮できない可能性がある。そうなると折角作った道具が無駄になると言う事になる、道具を作る予定だったが、素材の組み合わせで不安になる物は後回しにして、今の段階で堅実に効果のある物を優先してきた。

 

(それにも限界はある)

 

堅実と言うのは安定して使えるとも言えるが、突出した物がないと言う事は秀でた物が無いと言う事になる。普段なら計算しつつ作業すると言う事も可能だが、制限時間が限られている今。計算している時間が無い、だから教授に計算を頼むことで、私もドクターカオスに作業に取り組むことが出来るが、私には1つの懸念があった。

 

(教授……か)

 

ガープの方にいた『教授』そして私達の方にいる『教授』。ガープは正義を語る不完全な部分を切り捨て捨てたと言った、そして横島君は流れてくる教授を保護した……もしも、もしも今私達の方にいる教授が、ガープが切り捨てた善の部分だというのならば……教授が鬼札になるかもしれない。

 

(力を取り戻せば……あるいは……)

 

この状況を引っくり返す鬼札になるか、それとも凶悪な敵になるか……。

 

(あーくそ、真名を聞いておけば良かった)

 

真名が判れば何らかのアプローチも取れるのにと思っていると、地下の研究室の扉が開いた。

 

「ドクターカオス、ブリュンヒルデさんの拠点の魔法陣に反応があったそうです。支援物資か、援軍かはわかりませんがどうするべきか、意見を聞かせて欲しいとのことです」

 

このタイミングでの魔法陣に反応。援軍だとすれば結界の弱体に引っ掛かり動けなくなるだろう、それが判らないほどオーディンは馬鹿じゃない、確実に結界の影響を受けない物資に間違いない。

 

「恐らく支援物資じゃ、回収できるのならば向かうべきだと思うがどうじゃ?」

 

「私も同意です」

 

まず間違いなく支援物資だ、残り時間が少ない中。1から作り上げるよりも、元からある物を改修したほうが時間を短縮できる。私とドクターカオスは支援物資の可能性を考え、意見を聞きに来たマリアに回収に向かうべきだと告げるのだった……。

 

 

~琉璃視点~

 

手にしたトランシーバーから聞こえてくる声に安堵する。緊急マニュアルA……GS協会職員がチームで避難所に向かい民間人の保護を行う。6チーム全員が避難所に無事に到達したとの報告に心底安堵する。

 

『避難所に備蓄してある結界札などで篭城は可能そうです』

 

篭城……普通ならそれでいいんだけど、50時間で隕石が落ちるなんてとてもじゃないが言えなくて、そのまま待機としか言えなかった。

 

(やっぱり無理なものは無理だしね)

 

言峰神父とクロさん、ポチさんの3人も何とか引っ張り出せないか?と考えたのだが、そこはバーサーカー「ナイチンゲール」が立ち塞がった。

 

【負傷者を戦わせる訳には行きません。即刻お引取りを】

 

と言って戦うに出るぞと騒いでいたクロさんとポチさんを締め落とし意識を刈り取った。

 

「私には子羊を救う使命がある」

 

【そうですか、私にも怪我人を救うと言う使命があるのですよ】

 

言峰と取っ組み合いをしているナイチンゲールと言峰神父を見て、増援は無理だと諦めたのは記憶に新しい。思わず深く溜息を吐く、少しでも戦力が欲しいがナイチンゲールの言っていることも最だった。

 

「お疲れ様、神代会長」

 

私がまさか病院での惨劇を見て疲れているとは思っていない西条さんが差し出してくれたインスタントコーヒーを飲みながら、気になっていた事を尋ねてみる。

 

「……オカルトGメンの新入りは?」

 

あれだけエリート風を吹かせていたのだ。多少なりとも戦力になるだろうと思い、今まで1度も話題に出なかったことを尋ねてみる。

 

「……全員職場放棄して避難所に行ったよ。まぁこれで僕に従わないって事で、日本支部から追い出せると思う事にするよ」

 

軽く言うが、西条さんが動き出すまでに相当時間があった。恐らく時間ギリギリまで説得を試みたのだろう、結果は恐らく我先にシェルターに隠れて終わりだったのだろう。

 

「ドクターカオスと芦さんは回収に向かうべきだと」

 

地下から戻って来たマリアさんの言葉に私も西条さんも顔色を変える。頭脳班の2人の意見を聞いた上で作戦を決行するか考えていたのだ、2人のGOが出れば可能な限り短時間で道具の回収をしたい。

 

「マリアさん、そのまま悪いんですが、不動さん、須田さん、エミさん、冥子さん、タイガーさん、シルフィーさん、ピートさんを呼んできてください」

 

突入班になるであろう美神さん達は動かせない。冥子さん、エミさん、シルフィーさん、ピートさんは卒なくこなせるが、逆にそれが今回は足を引っ張ることになる。一点特化の突破力、それが今回の作戦で要求される大きな要素になる。塔に突入できないメンバーは突入班のサポートに回るべきだ。

 

「判りました。ついでにトラックの準備もします」

 

マリアさんにお願いしますと言って、私は振り返る。

 

「という訳で、西条さん。どっちが現場指揮をとりますか?」

 

私か西条さん。どちらかが道具回収に出て、どちらかがこの場に残る。流石に2人とも出るわけには行かないと思いながら言うと、西条さんが僕が行こうと手を上げた。

 

「いや、神代会長。君には君でやるべき事がありそうだよ」

 

西条さんが視線を上げる。その視線に吊られて顔を上げる、そこには外を写しているモニターがあるのだが、そこに写されている人物の姿が問題だった。

 

「躑躅院!?なんでここに」

 

陰陽寮のトップと言うべき躑躅院がこの場にいる。その事に私は困惑し、それと同時に不味いことになっていると悟った。横島君の能力をい見せるつもりがないのに、この場に居ると言うことは嫌でもその姿を見せる事になるからだ。

 

「……視察団が何かを仕掛けていたという可能性もあると思うがどう見る?」

 

「むしろそれしかないですよね」

 

私と西条さんを失脚させたいと思っていた連中だ。内密に躑躅院と連絡を取っていた可能性はゼロでは無い、だがどうしてこの場所を……いや、普通に考えて神魔がこれだけ集まっている拠点だ。神通力を頼りにこの場に来たと考えるべきよね。

 

「私が応対するので、西条さん。現場指揮お願いします」

 

西条さんは初見だし、ここは私が対応するしかない。私は西条さんに現場指揮を頼んで、ビルの出入り口へと走った。

 

「……神代琉璃?そうか、神通力を頼りに来たが、ここが拠点か」

 

「拠点として間借りしてるだけよ、GS協会とオカルトGメンの支部は一時的に放棄してるから」

 

悪魔とゾンビが集中してることを考え、放棄してると言ってから私は躑躅院を観察する。着ているスーツはボロボロで上着は既に脱ぎ捨てられている。中性的な容姿なのでやはり男か女かは特定できない……もしくは何かの術で性別に関する認識を捻じ曲げている可能性もある。

 

「なんで東京にいるの?」

 

「ああ、GS協会の視察団とかいう連中から呼ばれていて昨日東京入りした所だ」

 

これがその手紙と言って差し出されたものを見ると、確かにGS協会の判が押されている。勿論私が押した覚えは無い、恐らく査問会が勝手に動いた結果だろう。

 

「状況が悪いのは判っている。私も何か手伝えると思うのだが」

 

善意なのか、それとも悪意なのか……だがこうしてGS協会の視察団が勝手に動いていたと言う証拠を手土産に来たと言う事で否が応でも警戒心は生まれる。

 

「それは助かるわ~是非手伝ってもらいましょう~」

 

「め、冥華さん!?」

 

突然割り込んできた冥華さんに驚き、思わずその名を呼ぶが、私はそれ以上言葉を発する事が出来なかった。笑っている、笑っているのだが、その気配は微笑みから程遠い覇気に満ちていた。

 

「今は~貴方の言い分を全部信じてあげるわ~♪今はね」

 

今はを強調する冥華さんは目が全く笑ってない笑みを浮かべ、ゆっくりと振り返った。

 

「令子ちゃんや~横島君に紹介しましょうか~一時的な協力者として。それでいいでしょう~?」

 

「ええ、構いません。陰陽寮はオカルトGメン、GS協会とは協力するつもりはありませんからね。生き残るために力を貸す、それで良いでしょう?」

 

とんとんで話が進んでいるが、私に割り込む余地は無い。完全に主導権は冥華さんに移っていたから、私は口を挟む事が出来ない。

 

「じゃあ行きましょうか~あ、そうそう」

 

冥華さんが私と躑躅院を先導して歩き出そうとして立ち止まり、にこにこと笑いながら躑躅院に釘を刺した。

 

「高島忠助の陰陽術を唯一現在に受け継ぐ、躑躅院は、素人の陰陽術に目くじらを立てたりしないわよね~?」

 

え?私はその言葉に躑躅院を見てしまった。その顔は今までの飄々としたものと異なり、唇を噛み締めその目に強い怒りを宿していた。

 

「ええ、私は何もしませんよ?」

 

「そう良かったわ~」

 

その反応で理解した。迎え入れはするが、余計な事をするなと言う事をいっているのだと。陰陽寮は基本的に登録されていないモグリの陰陽術師を厳しく罰する傾向にある。生き残るために力を貸すという言葉を引き出し、そしてその上で釘を刺した。生き残れるんなら、それ以外は目を瞑るでしょう?と言う事だ。

 

(やっぱり私はまだまだだわ)

 

相手の動きを封じる言葉を相手自ら引き出す、こういう駆け引きは私にはまだまだだと思うのだった……。

 

 

 

~西条視点~

 

戦えるほどの霊力が回復していないブリュンヒルデさんを車の助手席に乗せ、彼女の拠点近くまで来たが……そこにはやっぱりと言う光景が広がっていた。

 

「へっ、予想通り過ぎて笑っちまうぜ」

 

魔法陣の反応に惹かれたのか悪魔とゾンビで大通りは溢れかえっていた。

 

「全くだな。竜也」

 

元テロリストと元オカルトGメン職員。本来なら相反する組み合わせなのだが、何故かこの2人は相性がいいらしい。

 

「おい、西条さんよ。俺と須田に任せときな、全員消耗する必要はねえぜ」

 

サブマシンガンにマガジンをセットして獰猛な笑みを浮かべる不動。そしてその隣では須田が何かの準備をしていたのだが……その光景が少し、いやかなりやばい。

 

「ヒヒヒ……ようやくこいつを試せるぜ」

 

なんか手袋型の霊具をつけて怪しい笑みを浮かべている須田。僕は少し考えてから、後部座席の2人に視線を向けた。

 

「あのマンションまで小笠原君と寅吉君の護衛を頼む、残りの面子はこのトラックを防衛しよう」

 

思いっきり引き攣った顔をしている小笠原君、別に君に全てを押し付けるつもりは無い。

 

「冥子さん、僕も出るので、ピート君とシルフェニア君と一緒にトラックの護衛をお願いします」

 

12神将は暴走さえしなければ、火力は高い。だからトラックの護衛と言う名目で暴走する危険性がある冥子さんをこの場に残す。

 

「う、うーん、頑張るわぁ~横島君に励ましてもらったし~うん、大丈夫、大丈夫、私は出来る~」

 

……大丈夫だろうかという不安は残るが、正直いつ爆発するかわからない人物と一緒にいるのは避けたいのでヴァンピールの2人に任せよう。

 

「鏡原君。もし最悪の場合は場所を移動しても構わないけど。その場合は式神札を飛ばしてくれ」

 

「は、はい!判りました。お気をつけて」

 

「申し訳ありません。私がこんなありさまで」

 

助手席で申し訳ありませんというブリュンヒルデさんに大丈夫ですよと声を掛け、僕達はトラックから降りた。

 

「おらおらおらおらあああ!!!」

 

「ヒャハハハハハアッ!」

 

……もうお前等だけでいいだろ?と思ったのは言うまでもない。適性がないからという理由で首にされた不動竜也だが、適性がないのではなく、上司が扱いきれなかっただけだろう。あの男はブレーキのない車と同じだからだ、戦力としては申し分ないが、あれを扱うとなると上司は始末書との戦いになるだろう。

 

「くたばりやがれええええええ!!!」

 

トラックから降りると同時にサブマシンガンを両手に持って突撃していく馬鹿を僕は見た事がない。反動が凄まじいサブマシンガンを両手で扱うとか尋常じゃない。

 

「ハハハハアアア!目だ!鼻だぁ!耳だああ!!!」

 

霊波の爪で悪魔をつぶし、鼻を抉り、耳を切断するあいつは多分キチガイだ。あれがキチガイじゃなきゃ、誰がキチガイだと言わざるを得ない。

 

「は!やっぱり俺はこれは性にあわねえなあ!!!」

 

サブマシンガンが弾切れしたら、それで直接ゾンビをぶん殴り、倒れた踵で頭蓋骨を踏み砕いた。おかしいな、霊能者の筈なのに空手家か何かのようにしか見えない。

 

「……あれ、元オカルトGメンって聞いてたけど?」

 

「ええ。僕も名前だけは」

 

誰がどう見てもオカルトGメンではなく、テロリストのそれである。だが一応は国家試験に通っているだけの頭脳はあるはずなのだが……何故ああも獰猛な笑みが似合うのだろう謎だ。

 

「戦闘狂ですかノー?」

 

寅吉君の言うとおり不動は戦闘狂と言っても問題ないだろう。いまなんて、斧を両手に持ってゾンビを頭から勝ち割ってる。

 

「おい!俺と準が止めておいてやる!さっさと行きやがれ!!!おい!手榴弾寄越せ!」

 

「そら!」

 

「てめえ!ピン抜いて投げるんじゃ……ねえっ!!!」

 

ピンを抜かれ投げられた手榴弾を蹴り飛ばし、悪魔の軍勢の中央で炸裂させる。

 

「頭下げろぉ!」

 

須田の影から飛び出した悪魔に手にした斧を投げつける不動。

 

「お前だって危ないだろうが」

 

「はっ!お互い様だ」

 

あの危険児2人といては僕達の方に被害が出る。幸いにも手榴弾とサブマシンガンの掃射で大分数が減っている今がチャンスだ、僕達はブリュンヒルデさんに聞いていた彼女の部屋に飛び込んだ。

 

「はは……これは紛れも無く切り札だな」

 

そこにあったのは精霊石で構築された篭手や剣の数々と人間界ではありえないほどの大きさの精霊石などの数々だった……これを運び出せば勝機はある、僕も、小笠原君も間違いなくそう思っただろう……。

 

残り時間49時間……

 

なおトラックに残った面子はマンションのほうから聞こえてくる爆音と高笑いに顔を引き攣らせながら。

 

「「「残れて良かった~」」」

 

囲まれる可能性はある物の、危険人物と一緒じゃなくて良かったと心から安堵しているのだった……。

 

 

 

 

~美神視点~

 

 

私とくえすは会議室に冥華おば様達の後仏頂面で入ってきた若い人物に眉を顰めた。男か、女か判らない独特の雰囲気を持つその人物は私達を見て、頭を下げた。

 

「陰陽寮当主躑躅院と言う。名は掟で隠す物としているので躑躅院と呼んでくれればいい」

 

陰陽寮当主。その言葉に嫌でも警戒心と何で連れて来たと言う気持ちが沸く、冥華さんも陰陽寮の危険性は知っている筈なのに、何故当主を連れて来たのか理解出来なかった。

 

「躑躅院は~どうもね~GS協会の視察団に呼ばれてきたんだけど~この状況でしょ?生き残りたいから~協力するって~陰陽寮とか関係無しで~ただのこの事態に巻き込まれた霊能者として~協力してくれるそうよ~」

 

ニコニコと笑う冥華おば様の隣で苦虫を噛み潰したような顔をする躑躅院。冥華おば様に丸め込まれて、言質を取られたって所ね。

 

「それなら助かるわ。『陰陽寮』の躑躅院じゃなくて、ただの霊能者の躑躅院として協力してくれるなら本当に助かるわ」

 

私の言葉にギッと睨んでくるが、正直怖いとも思えない。自分の思い通りに成らなくて八つ当たりしてる相手なんて怖くもなんともない……ただその後が不安要素として生まれてしまった。

 

(後が問題かな)

 

陰陽寮は陰陽術や札に関してはめちゃくちゃうるさい。今回の事は不問だが、横島君が陰陽術とかを使ってる所を見られると今後不味いかもねと思いながらも、横島君は霊波刀や栄光の手の操作を格段に上げた。表立って使わせないようにすればいい、そうでなければ後で横島君を突くことは出来なくなるからだ。

 

「とりあえずだけど、これ今の段階で判ってることだから」

 

武器の回収に行く前に冥子が写真として置いて行ってくれた塔内部の写真を回す。

 

「……これがあの塔の内部か?」

 

「そうよ、どう見る?」

 

私とくえすと琉璃は既に見ている。だから躑躅院の意見を求める、躑躅院は写真をジッと見つめる。

 

「これは罠ではないのか?」

 

私達と同じ結論を出した。塔内部が異界になっていることを私達は警戒していたが、異界になっておらず。普通の塔となっていた、塔の中身は1階から頂上まで全て一貫されており、通路、階段、広場と次の階層に続く階段と言う作りが頂上まで延々と続いていた。

 

「私達はこの塔が破壊されることをガープ達が想定していると思ってる」

 

塔に向かって隕石が落ちてくる。日本を滅ぼす事が目的だと思っていたが、実際は違うかもしれない。ガープにとっては潰されても構わないと捨て鉢としての作戦とも思えるのだ。

 

「私達は嫌でもあの塔に向かわなければならない。それは嫌でもあの塔に私達の注目が向くと言う事ですわ、塔を隠れ蓑にし、何かをしていると言う可能性が浮上しましたから」

 

塔を破壊されても構わない、むしろ破壊してくれればその間自分達への注目を逸らす事が出来る。高城とカズマの意見はあの塔は神魔の注目を集めるデコイであり、そして私達を誘い込む罠でもあり、そして私達や神魔が動かなければ日本を滅ぼすと言う3重の手であると言う意見を出した。

 

「今考えている作戦だと一点突破力のある美神さん達を主軸に、塔の頂上を目指すことしかないのよね」

 

だから今は装備や、霊力を回復させることに努めてると言うと躑躅院は資料をじっと見つめて黙りこむ。協力してくれると言質を取られているのでいやでも協力するしかないが、既に作戦は決まり、後は準備を整える段階なのだ。

 

「躑躅院には~陰陽札とかを可能な限り~準備して欲しいの~、突入するメンバーと階層の特徴は教えるから~こっちに来てね~」

 

冥華おば様が躑躅院を連れて行く、恐らく別室で札などを作らせる計画なのだろう。私達は嘘は言っていない、作戦も決まっているし、そして突入するメンバーももう既に決まっている。

 

「それで美神、これはどうするつもりですの?」

 

「……それを今から考えるのよ」

 

横島君を一方的に叩きのめした少女。あの少女があの塔の責任者だと私達は思っていた、だけど冥子の透視で写された最後の写真には、黒いローブを身に纏った何者かの存在が写されていた。

 

「明らかに気配が違いますよね」

 

「うん、多分こっちがあの塔を支配してるガープの部下だと思うのよね」

 

最上階には何かの機械が置かれており、あれが間違いなく結界の基点と塔に隕石を誘導させている物だろうけど……そんな場所に護衛を置いていない訳が無い。

 

「結界で閉じ込めやはり強行突破しかないですわよね」

 

「それしかないでしょ」

 

何度考えても、何度シュミレートしても、今の戦力であの少女が変身したライダーを突破する事は出来ない。結界を破壊して本来の力を取り戻した聖奈達がきてやっとだろう。

 

「……すまん、見つからなかった」

 

「ごめんねー、大分頑張ったんだけどねー」

 

カズマとゴモリーが会議室に入ってくる。東京にいる筈のアルテミスを探してもらっていたんだけど、どうも見つける事が出来なかったようだ。

 

「動くのが辛いのに探しに行ってくれてありがとうございました」

 

少しでも戦力をと思ったけど、やっぱり無理そうだったみたいね。フェンリルの時に判っていたけど、自分本位の神様だから見つけたとしても助力を得るのは難しかったかもしれない。

 

「んーどうしても力が足りないなら、私と契約する?」

 

「……それは本当に本当の最終手段にしたいと思うんだけど」

 

魔装術の契約をする?と尋ねてくるゴモリー。最上級神魔と契約すれば、それは間違いなく戦力になるだろう。だがその後に後遺症などで悩むことを考えれば避けたいと思うのは当然の事だ。

 

「それよりも美神さんもくえすももう少ししたら休んでくださいね。当事者なしで話し合うのは嫌ですけど、道具の確認とかは私たちでやりますし、霊力と体力が足りないなんて冗談じゃないですよ?」

 

琉璃の言葉に判ったわよと返事を返し、くえすと共に会議室を出る。

 

「実際くえすはどう思う?今回の作戦」

 

「作戦?特攻の間違いでしょう?」

 

嫌味っぽく言うくえすだが、その通りだ。今回は特攻としか言いようがない、罠と知りながら突っ込むしかない。それが皆判っている、最悪でも横島君達だけでも転移させれないかと言う願いは不可能と言われてしまったから……どうせ道が残されていないのならば、少しでも勝ちの目のある方に全賭けするしかない。

 

「流れ星なら願いが叶うって言うけど」

 

「私達に迫ってるのは終末の星とでも言いますかね」

 

窓から見ても星は間違いなく近づいて来ている。天井が迫ってくるように思える、もうお前達には道など残されていないといわれてるようなきもしてくるが、まず気持ちで負けないこと。それが何よりも大事だろう、気持ちで負けては勝てる勝負も勝てなくなってしまう。

 

「行きましょう。少しでも身体を休めましょう」

 

残り時間47時間。恐らくあと8時間寝て、装備などの最終調整を済ませる事を考えるとやはりこれも10時間近く掛かるだろう、その後最後の眠りを取り7時間として残り時間は22時間。予定よりも多くの時間を残せた事に感謝しながら、私とくえすは睡眠を取る為に仮眠室へと足を向けるのだった……。

 

 

 

~雪之丞視点~

 

「ん、んん……」

 

突入班に選ばれた俺は寝て休めと言うママお師匠様や綱手の言葉で、レジャーマットと毛布で眠っていたのだが、ふと目が開いた。突入班に選ばれたのは横島、蛍、美神、シズク、沖田、信長、牛若丸、神宮寺、陰念、ブラドー伯爵、ママお師匠様、綱手、シロ、タマモ。装備が整えばクシナやマリア、テレサも参加すると聞いている。

 

(ン?)

 

皆寝て少しでも霊力と体力を回復させようとしているので、俺ももう一眠りしようと思ったのだが陰念の姿が無いので、身体を起こすと。毛布の上に据わっている横島に近づいているのが見え、なにやってるんだ?と思いながら俺も立ち上がり横島の方へと向かうのだった。

 

「雪之丞と陰念かどうかしたか?」

 

横島が俺達に気付いてそう声を掛けてくる。座っている横島の近くには、うりぼーを筆頭に蛍や沖田達の姿がある。

 

「お前こそ何をしてる。早く寝るべきだろうが」

 

陰念の言葉に横島は苦笑しながら立ち上がり、顔の前で手を合わせながら俺達に頭を下げる。

 

「起きてるなら悪いんだけど、ちょっと俺に付き合ってくれねえ?皆寝てる今の内しか多分話してる時間がないんだよ」

 

なにか覚悟を決めた表情をしている横島の言葉に、俺も陰念も言葉を挟む余地など無かった。横島に連れられ、仮眠室を出た。そしてそこで告げられた言葉に俺も陰念も勿論反対した。だが横島は自分の意見を曲げなかった。

 

「こんなこと頼めるの雪之丞と陰念くらいしかいないだよ。多分皆止めるから、それに最悪の結果を考えての事だから。そうならなければそれでいい」

 

実行するとは言い切れないと言う横島の言葉に、俺も陰念も止めなければと判っていたのに、その覚悟を決めた瞳に判ったと返事を返してしまった。

 

「もし怒られたら俺の責任にしてくれていいから、無事にやり遂げようぜ」

 

そう笑って部屋に戻っていく横島を俺と陰念は黙って見送ることしか出来ず、翌日を迎えてしまった。

 

(あの後寝れたか?)

 

陰念の小声の問いかけに眠れなかったと返事を返した。どうしても横島の頼みの内容が頭を過ぎって眠る事が出来なかったのだ。

 

「何かあった?」

 

クシナが俺と陰念に何かあった?と尋ねてくる。見るだけで判るほどに疲弊しているのかと思いながらも何とか誤魔化す言葉を考える。

 

「これをやり遂げないと、死ぬと思うとな。流石に怖いと思ってな」

 

陰念がぱっと口にしたので俺もそれに合わせることにした。

 

「ああ、こんなに早く死んだんじゃ、ママに合わせる顔がないから、絶対やり遂げるって思ったら眠れなくてな」

 

俺と陰念の言葉にクシナはふーんっと返事を返しながらも、疑いの眼差しを向けてきた。

 

「ま、いいけど、無茶なことをするなら止めときなさいよ?」

 

そう忠告して去って行くクシナに内心冷や汗を流しながら、霊具の調整をするために地下に向かう。

 

「横島君はこれとこれ、蛍ちゃんはこっち」

 

「はい、えーっとこれなんなんですか?」

 

「霊波障壁を発生させるやつ、そのまま殴ったり出来るらしいわ」

 

「へーすごいっすね!」

 

地下で開発されたという霊具の調整をしている間も、食事をしている間も昨日の話のほんの一握りさえ、横島は告げる事はなく平然としていた。俺も陰念も話さなければと判っていた。横島の昨日の頼みの内容をママお師匠様でも、美神にでも話さなければいけないと判っていたのに、昨日の覚悟を決めた横島の目を思い出すと如何しても口にする事は出来ず。時間はあっと言う間に過ぎ……塔へと突入する時間が来てしまうのだった……。

 

 

隕石落下まで残り……22時間……

 

 

 

リポート24 反逆者達の進軍 その6へ続く

 

 




次回は塔に突入した美神達の視点と、アシュタロスのビルに残った面子の視点で書いていこうと思います。横島が陰念と雪之丞に頼んだ事が何だったのか、そこを楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします

視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか

  • サイドまたは視点は必要
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