GS芦蛍!絶対幸福大作戦!!! セカンド 作:混沌の魔法使い
今回からはやや長くなると思いますが。どうかよろしくお願いします
リポート24 反逆者達の進軍 その6
~ガープ視点~
塔の中に横島達が潜入したと言う報告を聞いて、笑みを浮かべる。このままにしていれば、日本が滅ぶとなれば嫌でも突入しなければならないだろう、ここまでは私の計算通りだ。
「でもさー、それ下手したら横島死ぬでしょ?どうするのさ?」
ソファーに寝転がりどういうつもり?と尋ねてくるセーレに私は手にしていたワイングラスを机の上に置いた。
「あの塔に入った地点で問題は無い。あれは特殊結界で構築されていて、あの中に入っている限りは隕石の追突の衝撃は来ないんだ」
あれは確かに日本に隕石を誘導するための装置でもあるが、それであると同時に横島達の保護具としての機能もあるのだ。
「本当にどっちでもいいと思ってるんだ」
「勿論だ。まぁ正直に言わせて貰うと」
モニターを見ながらチーズを齧る、その濃厚な旨味を楽しみながらワインを口にする。計画通りに進んでいて、気分もいいから酒も美味い。
「直接私が手を下すつもりだ。だからこの程度切り抜けてもらわなければ詰まらないと言うものだ」
アスラは恨みがあるシヴァとヴィシュヌと戦い、2柱と行動不能にしてきた。あの2神を行動不能にさせたのは、非常に大きい戦果だ。
アスモデウスは魔界正規軍の武具庫を潰した
「私の顔を2度に殴ってくれたんだ。この程度でしなれては私の見込み違いと言うことになるさ」
私は正直今回の件は横島達は切り抜けると踏んでいる。犠牲者が出る可能性もあるし、手足の欠損と言うのも考えているが、それでも切り抜けるだろう。そして横島が私への憎悪を向ければ良い、私の計画通りの展開だ。
「教授は捨てるのか?」
「戻ったのか、アスモデウス。しかし捨てると言うのは酷い言い様だ。もう必要ないという事だ」
いや、それは捨てるってことでしょ?と言うセーレにうるさいと怒鳴る。教授の独特な計算式の算出方、そして眼魂に神魔の魂を封じるのも既に実用段階に来た。
「これ以上は教授から得るものは無いと言う事だ」
自我も無い人形にしては良く頑張ってくれた。擬似人格を与えたが、どうしても人形のような気配が消える事はなく、命令しなければ行動できない部下など必要ない。
「更なる上の段階を目指す時に、足を引っ張る部下は必要ない」
机の上に緑色の眼魂を取り出す、刻まれた刻印は「K」それを見て、アスモデウス達が驚いた表情をする。
「む?あの小娘に渡さなかったのか?」
「渡さなかったじゃない、渡せなかったんだ。これは起動しないんだよ」
本来はこれも渡すつもりだったのだが、何度やっても起動せず。教授にも計算させたが、改善案は出ず。教授自身が意識を失う有様だ、だから私は教授を用済みと判断したのだ。
「まだ私にも理解出来ないものがあると言うことだ。初期の実験段階だった、眼魂も再び研究しながら対策を考えるさ」
眼魂と言うのはまだ未知の部分がある。それを知れただけも御の字、ここから更に研究を進めれば良い。今は手探りの段階なのだから、結果を慌てて求める必要も無い。
「それよりもアスモデウスもどうだ?」
「貰おう。丁度いい見世物もあるようだ」
モニターが正面に来る位置に座ったアスモデウスにワイングラスを差し出す。そこには通路に背中を預けてへたり込むビュレトの姿がある
「良いの?仲間だったんじゃないの?」
ビュレトが私達の仲間であったこれはセーレも知っている。私達はワインを飲みながら、モニターに視線を向ける。
「だからこそだ。仲間だったからこそ、苦しまずに死んでくれと願うのだ」
「かつて同じ世界を夢見たからこそな」
どうしようもないほどに違えてしまった道。悲しくはあるが、それもまた私達の運命だったのだ。だが親友であったのも事実、だからこそ、私やアスモデウスの手で殺したくないという気持ちがあるのだ……。
~蛍視点~
塔の内部は突入前の予想と比べて思ったよりも罠は多くなかった。私、美神さん、横島、くえす、シズク、クシナさん、信長、牛若丸、陰念、雪之丞、ブラドー伯爵、三蔵さん、綱手さん、シロ、タマモにカズマさん、マリアさんと聖奈さんの両名も塔に突入してくれた。長い時間は戦えないからとカズマさん、聖奈さんが先陣を切り続けてくれたけど、階段を7つ登った所で限界が来てしまったようだ。
「偉そうなことを言っておいて悪いが、俺とブリュンヒルデはここまでだ」
「……外よりも結界の密度が高くて、流石にこれ以上は……」
結界のせいで力が出ないと言っていたが、ここまで私達を一切疲弊させずに連れて来てくれた。
「マリアとシロとタマモはここに残ってくれる?」
ここに来るまではゾンビしか出なかったが動けない2人を残していくには不安がある。だから美神さんが残ってくれるという面子に声を掛ける。
「私は反対する理由はありません、ちょうど広間もありますし、私には適した条件です」
銃器を使うマリアさんが残る事で階段からの敵の進撃を抑えることが出来る。
「うー拙者はせんせーの側にいたいのでござるが」
「……まぁいいたい事はあると思うけど、我慢した方がいいわよ。シロ、多分元々美神はそのつもりだから」
えっと驚くシロと横島。シロはともかく横島は理解してくれてるって思ってたから、思わず肩を落とす。
「結界さえ破壊出来ればブリュンヒルデもビュレト様も本来の力を発揮出来ます。理想を言えばもう少し上まで行きたい所でしたけどね」
体力と魔力に余裕があっても、結界が強くなり身体が動かなくなってしまった。
「まだ上はあるけど、私や英霊達でお前達の疲弊を少なくして、上層を目指す。でも力尽きた面子を置いて行くわけには行かないから護衛を残すという事だよ」
綱手さんの説明に横島は納得したのか、シズク達に心配そうな視線を向ける。
「気をつけてな。怪我とかしないように」
「敵のど真ん中にいるのに何を言ってるのよ、でも大丈夫だからゾンビ相手なんて怖くも何ともないし」
「拙者も大丈夫でござるよー」
横島がシロとタマモに激励し立ち上がる。時間は1日と言う猶予はあるが、ライダーの存在もある。時間をかけている余裕は無いので、横島に声をかけて階段を駆け上がる。
「敵が全然いないが、これはやっぱり罠なのか?」
階段を駆け上がりながら雪之丞がそう呟く、敵の数は少なく結界さえなければカズマさんと聖奈さんで最後まで登れると言う所だろう。
【さっきも思ったんだけど、あの広間。意図的に安全にされている様な気がするわ】
「確かにね、結界の密度も薄かった」
意図的にセーフスポットが用意されている長い塔……階段を駆け上っている私達の脳裏に最悪の予想が浮かび上がった。そしてそれは間違いなく的中しているだろう。
【これ全体が罠と見るのが正しいじゃろうなぁ】
【ですね。これを破壊しなければ星が落ちてくる、だから嫌でも突入しなければならない、ですが向こうとしては死んでは困る相手もいる】
牛若丸が横島を一瞬見て小声で呟く、ガープ陣営で死んでもらっては困るターゲットとなると美神さんと横島の2人は間違いない、つまりこの塔は隕石の誘導装置であると同時に、私達を捕らえる虫篭でもあったのだ。
「私達を誘き寄せるための罠であると同時に守る結界でもあるって事ね」
「……あいつらの思惑通りに動いているのは腹が立つな」
つまりガープ達にとっては私達がこの塔に侵入するのは計算のうちで、しかも私達を護る為の物でもある。
「日本より価値があるって言われても全然嬉しくないけどね」
日本よりも実験動物としての価値があると言われてる様でむかつくわと美神さんが言う
「話はここまでだよ、次の扉が見えてきた」
綱手さんの言葉に意識を引き締める。7階までのパターンならまたゾンビか悪魔が待ち構えていて戦いながら、上の階層を目指すことになるだろう。
「横島君と陰念は極力戦ったら駄目よ」
私が注意しようとしていた事を、クシナさんが注意する。こんな風には言いたくないが、ライダーに対抗出来るのはライダーの力。つまり横島と陰念だけがあのライダーに対抗出来る私達の切り札になる、勿論まだ不安要素はある、お父さんが言っていた教授……ガープ側にいると言う英霊の存在だ。一応カズマさんが他に強敵がいる可能性があるとは言ってくれたけど、不安要素として重く伸し掛かる。
「じゃあ、今度は私が先陣切るから。私は霊具使い切ったら終わりだしね」
【では私も時間をかけている場合ではありませんからね】
クシナさんと牛若丸が先陣を切ってゾンビを蹴散らしながら走っていく後を追いかける。残り時間は19時間と45分……
~琉璃視点~
美神さん達が突入して3時間。残り時間は18時間弱……残っている面子は美神さん達が塔を破壊してくれることを考え、シェルターなどの見回りに向かってくれている。テレサさんとドクターカオスは戦える人員では無いが、怪我をしてる避難してきている人達を見るために、不動さんと須田さんの護衛であちこちを回っている。
「みむうー」
「ぴぎゅうー」
【大丈夫ですよ。横島さん達はちゃんと戻ってきますから】
窓枠に座り、塔を見つめているチビとうりぼー。あの塔の中が高密度の魔力で満ちているのは火を見るよりか明らかなので、お留守番となっているのだが。窓枠に座りぴくりとも動かない。
【私も一緒に行けたらよかったんですけどね】
「沖田さんは無理しない方がいいですから」
結核と病弱と言う映画の設定に縛られている沖田さんは戦闘力は高いが、スピードが命の今回の作戦で身体に爆弾を抱えている沖田さんを起用するわけには行かなかったのだ。
「神代君、コーヒーでも飲むかね?」
「貰います」
優太郎さんが差し出してくれたコーヒーを1口啜る。こんな事をしている場合では無いのは判っているが、もうここまで来たら美神さん達が無事に塔を破壊してくれるのを祈るしかない。
「運命は今だ見えず、どうなることやら」
「不吉なことを言うな、ダンタリアン」
……今思うとソロモンの魔神が3人もいる部屋でコーヒーを飲んでる私って何なのかしらね?
「これねー、魔界で今流行ってる服なのよー♪きっと柩ちゃんに似合うわー」
「……」
死んだ目でこっちを見ている柩は意図的に無視する、何時も人を引っ掻き回しているのだからたまには苦労すればいい。
「所で優太郎さん。教授と高城の姿が見えませんがどうかしたんですか?」
「……私も探しているんだが、姿は無いんだ。多分高城は上司に呼ばれてそっちに合流していると思うんだけど、教授はわからない」
……幽霊だから消えているという可能性もある。だがここで急に消えた教授に思わず眉を顰める。
【探しに行きましょうか?】
「ううん、良いわ。今は下手に分散すると危ないから」
おキヌちゃんが探しに行ってくれると言うけれど、動き回ることに対してのリスクが高すぎる。教授の事は心配だけど、大丈夫だと無事を祈るしかない。
「悪い知らせだ。美神達は上層にいるが、既に脱落者がかなり出ている」
「うん~やっぱり上に行けば行くほど結界が強くなってるみたいなのよ~」
躑躅院と冥子さんが顔を歪めながら今の状況を報告してくれた。陰陽術で作った護りを塔に突入した班に持たせているので、それで誰がどこにいるのかと言うのは分かるようになっているんだけど、状況は余りよく無いだろう。
「予想よりも厳しいね」
「ですね」
中層に入る手前の広間の辺りにカズマさん、聖奈さん、マリアさん、シロちゃん、タマモちゃんの4人
中層に2箇所ある広間の1箇所目でクシナさんと牛若丸。2個目の所で綱手さん
上層の広間に全員の反応があったけど、そこでは三蔵様と信長の2人の反応が残った
「これで残りは9人ですか」
最悪でも美神さん、蛍ちゃん、くえす、シズク、横島君、陰念君の6人は残す予定だったけど、残りがブラドー伯爵と雪之丞ではやや厳しいかもしれない。
「私が気になってるのは~そこじゃないの~」
冥子さんは塔の外観図を指差し、下の階層に向けて手を広げる。流石に敵の反応までは判らないけれど、戦闘となれば動いたりするので戦ったしているのが判る。私達は外観図を見て、冥子さんが何を言いたいのか理解した。
「下の階層で何も動きが無い?」
下の階層で残っているカズマさん達が戦闘している形跡が無いのだ。広間と言う場所で残ってるから、敵が押しかけてもおかしくないのに?
「……広間はもしかすると安全な場所としてガープが配置したお遊びかもしれないね」
「可能性はあるな。隕石で日本を滅ぼすとしても、ガープにとって有能な駒もいる。全部消し飛ばすとは思えない」
その言葉で優太郎さんとダンタリアンが何を言いたいのか全員が理解した。
「あの塔に突入させること自体が罠だった……?」
広間と言う安全なセーフポイントを作り、隕石が落ちても生存出来る。隕石を止めるには塔に突入する必要があるが、だがそれ自体が罠であると言う事が今更になって判った瞬間だった……。
【……ここに何かある】
琉璃達がガープの策略に気付いたその頃。優太郎のビルを抜け出した教授は塔の前に立っていた。
【何かが、何かが私を呼んでいる……】
激しい焦燥感に駆られ、ここまでやってきた教授は険しい顔つきのまま悪魔達が蔓延る塔の中へと足を踏み入れていくのだった……。
~くえす視点~
突入前に聞いていた一番魔力反応が強い階層へ向かう前の広間でブラドー伯爵が力尽きた。それも当然だ、三蔵と信長が脱落し、そこから私達を疲弊させないために1人で戦い続けたのだ、始祖の吸血鬼だったとしても無茶が過ぎた。
「我の心配はいらぬ。先へ行け、裏腹だが、この広間は安全だ。体力が回復すれば合流する」
ここに来るまでの三蔵たちと同じ言葉を口にし、広間の壁に背中を預け崩れ落ちるブラドー伯爵に背を向けて、階段を走る。残っている面子はこれで8人……正直何の疲労も無くここまで来れたのは奇跡に近いと思う、出来すぎなくらい順調に進めたが、それも此処までだ。
「……とまれ」
シズクの静かな声に全員が足を止める。何故止められたのか、それは全員が理解した。
「静か過ぎる」
「本当だ」
今まではゾンビのうめき声や、悪魔の羽ばたきの音が聞こえていたが、この階層ではそれがない。
「横島。心眼に【既に索敵は済ませた。この階層に敵の気配は無い】
ここに来て、敵の気配がない階層が現れた、それは誰がどう見ても罠であり、そして危険であると判るあからさま過ぎる罠……。
「このまま突っ切ったら……」
「間違いなく待ち構えているだろうな」
横島を徹底的に叩きのめしたライダーが待ち構えているのは間違いない。
「ここまで来たら後は広間が3つ」
最上部まで来ている事は判っている、つまりこれが最後の打ち合わせとなるだろう。
「突入前の通り、ライダーは結界で封じて突破するわ。真っ向から戦うには危険すぎるから」
狂神石で能力を強化している相手と真っ向から戦うなんて無謀を通り越して、自殺行為に等しい。だから結界で封じ込めている間に強行突破。出入り口はシズクの氷と精霊石で更に封じて、後は無謀だろうが無策だろうが残り2つの階層を4人ずつで突破し、最上部の結界の制御装置を破壊する。そうすれば後は力を取り戻したビュレト様達の力を借りてどうにでもなる。
「じゃあ行くわよ」
最後の打ち合わせを済ませ薄暗い通路を進む。そして広間の扉を開いた時、拍手の音が響いた。
【やあ、良く来てくれたね。待っていたよ】
拍手をしながら立ち上がった人物は私達も良く知る教授の姿だった。だがその目は赤く輝き、邪悪な気配を纏っているから私達の知る教授とは別人と言うのは明らかだった。
【私の半身がお世話になったようで感謝するよ、では改めて名乗ろう、私はモリアーティ、ジェームズ・モリアーティだ。お美しいお嬢様方】
ジェームズ・モリアーティ!?犯罪界のナポレオンとまで呼ばれた悪党中の悪党だ。
「教授。あまり挑発しない、私達の仕事はここで全員を捕らえること」
【判っているともさ、レイ。だがここまで来たと言う事自体は賞賛に値する。そうは思わないかね?】
教授が笑みを浮かべながらレイと呼んだ少女は判りませんねと言って、一歩前に出る。その手にはすでに眼魂が握られている。
「……横島忠夫。どうか今回は抵抗なきように私は決して好んで攻撃しているのではないと言う事を理解してください」
「抵抗するなって言われてもそれは難しい話だよな」
普通に会話をしているが、その中でも緊張感は嫌でも高まっていく、お互いに攻撃を仕掛ける隙を狙っているのは明らかだ。
【ここまで来た事は賞賛しよう。だけど、それもここまでゲームオーバー、いや、チェックメイトだね】
モリアーティは何処から取り出した銃剣を手に取り、レイが眼魂のボタンを押し込もうとその時。それこそが私達の待っていた瞬間だった。
「おっらあああああ!!」
今まで黙り込んでいた雪之丞が手にしていた精霊石のフラッシュバンを投げつける。それが炸裂したことで、レイとモリアーティの動きが一瞬止る。
「蛍ちゃん、横島君!」
「「はい!!」」
美神達の声を聞きながら、私とシズクと雪之丞、陰念は次の階層へ続く扉へと走る。そして美神、蛍、横島が分割して持っていた結界札が発動し、2人を閉じ込める。美神達も駆け出してきて、計画通りこの階層を突破できると思ったその時、モリアーティの邪悪さを秘めた声が響き渡った。
【残念だが、これは余りに計算通りだよ】
モリアーティの声が響き、ピシっと言う皹の入る音が響く、思わず振り返ると、結界に細かい傷が入り始めていた。
「そんな!?どうして!?」
【簡単な話だよ。君達の方にビュレト、ブリュンヒルデの両名がいるのはこちらも把握している。対策さえ取れれば】
モリアーティは手にしていた杖で結界を叩く、その瞬間にガラスの砕けるような音と共に結界は砕け散った。
【この通り、結界などガラスにも劣る。ではレイ君、後は頼めるかな?】
「ええ、こちらの計画通りですね」
【スカサハ!】
レイが手にした眼魂を押し、ガントレットに嵌める姿が見える。次の階層に続く階段への扉はまだ先だ、ここで戦闘になる事を想定していたのか、他の広間と比べて距離がある……変身する前に扉から外に出るのは不可能だ。それでも走る足は止めない、ここで止れば全滅するのが判っているから……。
【セット!スカサハ!レディ?】
「……変身」
【ダンス・オブ・マカブル!ファントムコール!!!】
レイと呼ばれた少女が変わった。紫と赤を貴重にしたパーカーに身を包み、顔には槍の穂先を思わせるマスク。
「……苦しまぬように、一撃で終らせてあげます」
レイが手を掲げると魔法陣から血のように紅い槍が姿を現す。それを見れば判る、あれはゲイボルグ。スカサハはケルト神話に出てくる魔女にして影の国の女王。英雄クーフーリンの師にしてルーン魔術の使い手だ、英雄であり、神。極めて厄介で、そして強大な存在だった。
(だからですか!)
ブリュンヒルデのルーン魔術は間違いなく、神代のレベル。だがスカサハはその更に上を行く、だからルーン魔術の結界は効果を発揮しなかった。
【シンピガン!スカサハ!ファントムバースト!】
召喚された魔槍が唸りを上げ、恐ろしい魔力を放ち始める。逃げ切れない、そう思った瞬間横島が踏み止まり、白銀の眼魂のボタンを押し込む。
【アーイ!シッカリミナー!シッカリミナー!】
純白のパーカーが横島の周りを踊るのを見て思わず足を止めかけるが、1人だけ足を止めた横島の声が響いた。
「早く!1回しか防げない!俺もすぐに行きますから早く!!」
それを見た横島の怒声で止りかけた足を再び前へと走らせる。
「横島……くっ!判ったわ!すぐに来るのよ!」
「横島……」
当初の計画と違うが、塔の最上部に行けば横島を助けることが出来る。足を止めるのではなく、前へ進むこと。それが横島を助けることに繋がると広間を走る。
「変身!」
【カイガン!ジャンヌ!駆けるは戦場!救国聖女ッ!!!】
純白のパーカーに身を包み、ガンガンブレードとトカゲデンワが合体した旗を手にする横島。
「影の国へ連れて行きましょう」
魔力を放つ槍を放し、爪先に乗せたレイがゲイボルグを上空へと蹴り上げ、その後を追って跳躍した音が聞こえた。
「防いでみせるッ!」
【ダイカイガン!ジャンヌッ!!!】
横島の身体が黄金の霊力に包まれ、旗が光り輝き、背後から凄まじい光が私達を照らす。
「主の御業をここに 我が旗よ、我が同胞を守りたまえ!」
その時発せられた声は横島の物ではなく、女性の声だった
「蹴り穿つ死翔の槍【ゲイ・ボルク・オルタナティブ】ッ!!」
「我が神はここにありて【リュミノジテ・エテルネッル】ッ!!」
無数に分裂した槍が掲げられた旗から放たれた光が受け止める。永遠とも思える数秒……勝ったのは横島だった。
「……驚きました。今のを防ぎますか」
【いや!素晴らしい、まさか呪いの槍を全て防ぐとは、君の事は上方修正しておこう】
レイとモリアーティが横島を賞賛する。まだ光の壁は消えていない、扉の前で立ち止まり横島の方に視線を向ける。
「横島君!早く!」
「横島!今のうちに!」
私達が早く来るように横島を呼ぶが、横島は旗を手にしたまま、ぴくりとも動かない。もう1度早く来るように叫んだ時、横島の小さな声が響いた・
「すんません、1個嘘付きました」
横島はその態勢のまま私達に向かって声を掛ける。
「これ使うと、俺は動けません。効果が切れるまで俺はこのままです」
その言葉に目を見開く、だが横島は前を向いたまま私達に声を掛けてくる。
「出来る限りここで時間を稼ぎます。美神さん、神宮寺さん、蛍、シズク、陰念、雪之丞。出来るだけ早く、戻ってきて下さいね」
横島の声は笑っている、ブリキが切れたような緩慢な動きで横島はゆっくりと立ち上がり、扉の前に立つ。その姿を見ればこれ以上何を言っても無粋と言うのは分かった。
「すぐに戻るから!」
「横島!無理しないでね!本当にすぐ戻るから!」
美神と蛍が声をかけ、階段を駆け上っていく。無理をするな、無茶をするなんて安い言葉だ。英霊1体とライダー1人、横島が決死の覚悟でここを死守しようとしている、心配するのは当然。だがその心意気を無駄には出来ない、少しでも早く結界の基点を壊すことが邪を助けることに繋がる。
「……横島……死ぬなよ」
「すぐに戻りますわ」
シズクと共に階段を駆け上る。残っている階層は2つ、だがそれを安全を期して攻略している時間は無い。同時攻略、それが私達が横島を救えるただ1つの手段だ。
「雪之丞!陰念!急ぎなさい!」
時間がない、とにかく急いで階層を進む……焦りと心配で胸が埋め尽くされる中。自分達が横島を救える手段は前に進むしかないのだから……。
「横島ぁ!!俺は約束は守る!てめえも約束を破るんじゃねえぞ!!!」
「……任せろ」
2人の声が階段の中にまで響く、それに対して横島の声は静かだったが、ここまで響いてきた。
「ああ。頼んだぜ、ここは俺に任せろ」
横島の小さな声が不思議と階段の中に響いた、私達はその声に後ろ髪を引かれる思いで階段を駆け上るのだった。
「待っててくれたのか」
光の壁が消えるまでの10分、レイとモリアーティは横島に対して何もしなかった。効果が切れて、自由が戻って来た横島が立ち上がりながら2人に問いかける。
「待つも何も貴方が最優先ターゲットですので、この場に残るのなら追う必要はありません」
【と、いう訳だよ、ボーイ。君を捕らえれば、私達の勝利条件は達成。後は君を連れて塔を出て、後で塔の中に残っているあとの面子を回収すれば完全勝利と言う事だよ】
物分りの悪い子供に説明するような口調の2人に横島はなるほどと頷き、旗を回転させて槍のように構える。
【抵抗する気かね?君は1人。私達は2人、どっちが有利かなんて簡単に判るだろう?】
「大人しくしてくれれば痛くしませんよ?」
負けると判っているのだから大人しく負けを認めろという2人に対して横島は首を左右に振った。
「そうだな、多分負けるだろうけど、俺は美神さん達が結界の基点を壊してくれるまで耐えればいい」
【ははは、ボーイ、それは確かにその通りだが、基点に誰もいないとでも思っているのかね?】
「逆に言うぜ。お前達は美神さん達がどれだけ強いのか判ってない」
横島の声に不安や恐怖は無い。自分が力尽きる前に美神達が戻ってきてくれると心から信じているからだ。
【仮に先に行ったお嬢様方が強いとして、君はレイ……いや、レブナントと私に勝てるとでも】
槍の切っ先と銃の銃口を向けられた横島は小さく苦笑する。
「勝てないのは判ってるけど……こっちだってそう簡単に負けてやらない!」
気迫に満ちた声にモリアーティはくっくっくと喉を鳴らし、楽しくてしょうがないと言わんばかりの笑みを浮かべる。
【ではやって見せてもらおうか。では行こうかレブナント】
「……はい。覚悟を決める時間はもうあげましたしね」
美神達が走り抜けた広間で戦いの火蓋が切って落とされるのだった……。
~ベルゼブル視点~
「おお!やっと始まったか、待ちわびたぞ」
何時までも横島が戦わないので暇を持て余している様子のルイ様と女帝だが、横島が戦い始めればがばっと跳ね起き、その戦いに視線を向ける。
「ふむ、今回は防御して耐えるつもりか、2対1だからあながち間違いでは無いね」
「つまらぬなぁ、戦いならば前に出るものだ」
ルイ様と女帝の言葉を聞きながら、思わず足踏みする。何故横島を一人で残したのか、せめてシズクかくえすがいればイーブンな戦いが出来たはずなのに。
「そんなに心配かい?ベルゼブル?」
からかうようなルイ様の言葉に内心しまったと思いながら
「はい、横島は稀少な存在ですので、ここで失うには余りに痛いかと」
特異点の可能性を秘め、恐ろしい才覚に溢れている横島をこのままガープ達に渡してしまって良いのかと言うと、ルイ様と女帝はきょとんとした顔をした後、声を上げて笑い出した。
「お前はまだ横島を理解していないな」
「全くだ」
はははっと笑い続ける2人を見つめていると、2人は笑ったまま自信に満ちた表情で告げた。
「横島は勝つよ、己がない相手と植え付けられた自己を持つ相手などに負けるものか」
「うむ、まぁ護る者が近くにいないだけ、力を発揮しきれぬと思うが、それでも負けるとは思えんよ」
2人はそう笑うと今正に落下してきている隕石を見つめ、楽しくて仕方ないという表情で笑いあう。
「のう、明星よ。横島が面白いものを見せてくれれば、あれをどっかに跳ばしてしまおうか」
「いいね、つまり日本の命運は横島に掛かってるって訳だ」
楽しそうに笑いあう2人、神魔よりも遥か高みにいる2人の考えは私には理解出来ない。だが少なくとも完全に見捨てるという訳では無いと言う事に安堵し、空中に映し出されている横島と英霊ともう1人のライダーの戦いに私も視線を向けるのだった……。
リポート24 反逆者達の進軍 その7へ続く
次回は「横島VSレブナント&教授」と「美神、蛍、くえすVSキマイラ」と「雪之丞&陰念VS???」の三つの視点で書いていこうと思います。横島ほどでは無いですが、どの視点もかなりの強敵との戦いを書いていこうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
視点が変わる時にそのキャラの視点と言う事を表記するべきか
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サイドまたは視点は必要
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今のままで良い